□正しい住民の闘いは妨害できません
福岡県三瀦町(みずままち)で九州NTTドコモは2001年11月21日、40メ−トルの携帯電話中継塔建設工事強行しようとしたことに対し、住民たちは抗議行動をとりました。この住民の行動に対し、ドコモは同年12月21日に「工事妨害禁止仮処分命令申立」を福岡地方裁判所久留米支部に行ない、今年3月8日、仮処分の決定が下りました。つまり住民の“工事妨害”を認めたのです。
物事には経緯というものがあります。ドコモはいまから3年前の99年4月に三瀦町生岩地区の地権者とのみ極秘に会い、鉄塔建設を決めました。鉄塔建設計画を周辺住民が知ったのは同年8月で、それも予定地の竹薮を作業員が伐採しているのを近くの住民が不審に思い作業員に尋ねて知ったのです。つまりドコモは周辺住民に一切知らせず自社の利益追求の立場から40メ−トルの巨大な鉄塔を建てようとしたのです。住民が止むに止まれず工事強行に抗議行動をとったのは、このドコモの住民無視の姿勢に原因があるのです。
現在の裁判制度の不備から、今回ドコモ側に立った「仮処分決定」が出ましたが、そのことがドコモを正当化するものではまったくありません。
自分たちの住環境は自分たちで守ろうとする住民たちのまっとうな意志を妨害することは誰にもできません。
□「無理が通れば道理引っ込む」
2月2日付けの『朝日新聞』で、九州NTTドコモの渡辺憲一基盤建設推進部長は「地権者と契約する前に(周辺住民に)打診でもしたら、計画は必ずつぶされる」と語っています。語るに落ちる、とはこのことです。
携帯会社は「電磁波は人体に有害ではありません。これが科学的立場に立つ人にとって世界的なコンセンサスです」と住民説明会で豪語します。それはドコモも同じです。であるならば、正々堂々と彼らの信じる“電磁波安全説”を建設前に住民に披露し説得すればいいのです。
携帯電話基地局を建設するのは携帯電話会社です。だとしたら、住民にその必要性を説明する責任が建てる側に生じるのは道理ではないでしょうか。ましてや鉄塔そのものは地権者の土地に立つとしても、周辺住民に24時間間断なく電磁波が照射されるという携帯中継基地局の特性からしても事前の説明は行なうのが企業の社会責任というものです。
イタリアの例を示します。バチカン放送局のラジオ塔が教会敷地内にあり「バチカン市国」の領土であることをいいことに、イタリアの電磁波基準に服さない、と市国は主張しました。これに対しイタリア環境大臣のウィラ−・ボ−ドンは「ラジオ塔は市国の領土にあってもそこから発射される電磁波はイタリア領土の住民に浴びせられる。もし誰かが大使館の窓から冷蔵庫を投げ、それが下の通りを歩いている人に当たるならその人を守ろうとして対策をとるのは当たり前である」と反論しました。
「無理が通れば道理は引っ込む」そんなことを許す訳にはいきません。
□三瀦の闘いは全国で支えましょう
ドコモは「事前に周辺住民に建設計画を説明するという道理が通ったら、中継基地局建設計画は必ずつぶされる」と臆面もなく語っています。こんな非常識な主張をする企業の横暴を許していいのでしょうか。
IARCは2001年6月、極低周波電磁波を「ヒトへの発がん性の可能性あり」と分類しました。極低周波と高周波の違いはありますが少なくとも「電磁波は百%安全ではない」ことを初めて国際機関が認めたのです。人体への影響が灰色な電磁波に対する賢明な対応は「予防原則」なのです。
三瀦の闘いを成功させましょう。