<海外情報>
(抄訳 TOKAI)
マイクロウェ-ブ・ニュ-ス2002年1〜2月号より
□ヨ−ロッパ中に知れ渡っている事件
スペインの首都マドリッドの北西に位置するバリャドリッド市でがんが多発しているがその原因は通信用アンテナと毒性化学物質のせいだ、という話はスペインばかりでなくヨ−ロッパ中で関心を呼んでいる。
話の発端は2000年12月のこと。バリャドリッド市の生徒数約450人の小学校で、3人も白血病に罹っているのがわかった。白血病は、毎年1万人に4.3人しか罹らないまれな病気だがこの小学校の発症率は全国平均の何倍にもなる。
そのうえ、生徒数の4分の1がホジキンス病に罹っていた。ホジキンス病は悪性リンパ腫の一種である。
□親たちは裁判に訴えた
そこで2001年10月、親たちは通信アンテナ送信装置(3.5ギガヘルツと26ギガヘルツ)の電源の使用を中止させる裁判を起こした。通信アンテナは学校の近くのビルの屋上に設置されている。
対象となる周辺住民への健康予備調査の報告書は2001年11月に出された。当初、病気の原因としてアンテナは意図的に除外された。それは最初の患者が診断されるわずか1ヵ月前に通信用アンテナは供用を開始したのだから原因にはならない、という判断からだ。
□住民の力でアンテナ発信止めさせる
しかし住民たちは通信アンテナが原因と考えていたのでこの判断に納得せず、裁判に訴え2001年12月21日、地裁はアンテナからの発信を止めるよう「命令」を出した。
この事件は欧州で大きく広くメディアを通じて扱われたため、WHO・EMFプロジェクトも無視できなくなり、それまでWHO・EMFプロジェクトは「携帯電話や中継基地局からの放射線(電磁波)への健康影響への見解は歪曲されている」と否定的だったのが、2002年1月23日の記者会見では今までの見解を訂正するまでになった。
その一方で、WHO・EMFプロジェクトの共同責任者であるリ−カ・カイフェッツ(Leeka Kheifets)とマイケル・レパチョリ(Michael Repacholi) は記者たちにELFEMF(極低周波電磁場)とマイクロ波を区別するように言った。つまり、昨年夏にIARC(国際がん研究機関)が「ヒトへの発がん可能性あり」と分類したのはマイクロ波でなくELFEMFだと説明した。
フルスケ−ルの住民健康調査は現在進行中である。『ランセット』1月12日号によると、子供への毒性化学物質の曝露と、電離放射線と非電離放射線の両方の曝露に重点が置かれて調査は進められている、という。