IARCのがん評価もWHO勧告も否定する
時代遅れの電力関係会社

いつまで「影響を及ぼしません」なのですか

□世界から置いてきぼりにされますよ
 埼玉県所沢市の会員Uさん宛てに電源開発(株)(ダムなどつくる国策会社)から下記の回答文がきました。Uさんは送電線の影響で健康を害されたとして再三にわたって電源開発に抗議をしている人です。
 回答では、IARC(国際がん研究機関)の6月27日の極低周波電磁波の発がん性評価「2B(発がん可能性あり=possible)」を「(4mG以上磁界で小児白血病2倍は)一部にそのような論文があったということを述べているもので、この数値を普遍的なものとして認定したわけではありません」と、あたかも“一時的”でただの“研究論文紹介”でしかないように言ってます。
 これはとんでもない言い訳です。

□WHO下部機関は「発ガン性」を認めた
 IARCは国連機関WHOの正式な研究機関で、そこが世界10ヵ国・21名の科学専門家を集めてEMFの発がん性を評価したものです。しかも21名全員一致で2Bとランク付けしたのです。
 そのためWHOも10月3日にファクトシ−トを発表したのです。

□WHOは「予防対策の勧告・推奨をしていない」か?
 また回答では「(WHOは)ホ−ムペ−ジで予防対策を示していますが、(中略)予防対策の実施の勧告や推奨をおこなっているものではありません。」としています。
 これも意図的にねじまげた見解です。
 「WHOファクトシ−トN−263」(2001年10月)は「政府と企業(業界)」に対し次のように書いています。
「政府や企業(業界)は最新の科学的新事実を認識すべきだし、EMFリスクに関する偏りのない、わかりやすい、総合的な情報を多くの人に知らせるべきだ。また、被曝低減のための安全で、低コストな方法を提案すべきだ。政府、企業(業界)はさらに健康リスクアセスメント(評価)をするためのよりよい情報を導きだすための研究調査を促進すべきだ」

 曇りのない眼で読めばWHOはなにを言いたいか一目瞭然でしょう。どうしてこれが「予防対策の実施の勧告や推奨をおこなっているものではありません」といえるのでしょうか。
 頭のよくない電源開発鰍フために付言すると、たしかに「勧告」や「推奨」は強制力はありません。それを実施するしないは各国の政府と企業(業界)の問題です。しかし「勧告でも推奨でもない」というとは大人気なさすぎます。

□WHOの最新見解を認めない電力会社
 会員から送られてきた九州電力と中国電力の資料を末尾に掲載しますが、他の電力会社の見解もそう変わりないでしょう。
 電力会社が「電力設備から生じる電磁界(つまり50・60ヘルツの極低周波電磁波)が、人の健康に影響をおよばすことはないと考え」る根拠は、8ペ−ジの資料のように1987年のWHO「環境保健基準69」や1998年の「国際非電離放射線防護委員会」(ICNIRP)の評価、あるいは日本の資源エネルギ−庁(1993年)や環境庁(1995年)の見解です。
 そのうち日本の官庁の見解はレベルが低いのでここではオミットしますが、2001年6月27日のIARC評価や同年10月3日のWHO見解こそ、「1987年WHO環境保健基準」が時代に合わないため、今日的な科学研究結果に基づいた「新しいWHO環境保健基準づくり」のための一環の動きなのです。
 その内容が「疫学調査によると、3〜4ミリガウスの極低周波磁界で小児白血病が約2倍になる」し、「電磁波被曝量の低減のために安全で低コストな方法を提案」し「一般の人は電磁波被曝を減らすため一定の電気器具の使用を最小に」にせよ、としているのです。
 いつまで日本の電力会社はこのような曲解を言い続けるのでしょうか。


《資料》 電源開発(株)がUさんに出した「回答」


平成13年12月27日

○○○○○様

電源開発株式会社
関 東 支 部

拝啓 時下ますますご清栄のこととお喜び申し上げます。弊社事業に格段のご高配とご協力を賜り厚く 御礼申し上げます。
 さて、先般、ご質問いただきました件につきまして、ご返事が大変に遅くなり申し訳ございません。次 のとおりご返事させていただきます。

 今年6月末に、国際ガン研究機関(IARC)からの、4mG以上の磁界に曝露されていると小児白 血病が2倍になるという報告については、電磁界の発ガン性評価を行うために多くの研究論文をレビュ ーした結果、一部にそのような論文があったということを述べているものであり、この数値を普遍的な ものとして認定したわけではありません。さらに、IARCは、この調査自体について調査方法の偏り などの課題が残されていると評価しておりますし、WHOも「超低周波磁界への曝露と小児白血病との 間に観察される関連性について、他の説明がある可能性が残ります。」との見解をホームページで示し ております。また、WHOは同じホームページで予防対策を示していますが、これは、電磁界問題への 対処方法の一例として、自発的対策事例を紹介しているもので、WHOにおいて予防対策の実施の勧告 や推奨を行っているものではありません。
 これらのことから、当社としては、「居住環境において、電力設備から生じる電磁界が人の健康に有 害な影響を及ぼすという証拠は認められない。」とした。これまでの多くの公的機関の見解と何等変る ものではないと認識しております。よって、電力設備から生じる電磁界が健康に有害な影響を及ぼすこ とはないと考えており、これまで通りの設備運営を行なっていくことと考えておりますので、よろしく お願い申しあげます。

敬具


《資料》WHOファクトシ−トN−263:2001年10月より


〈政府と企業(業界)に対して〉
 政府や企業(業界)は最新の科学的新事実を認識すべきだし、EMFリスクに関する偏りのない、わかりやすい、総合的な情報を多くの人に知らせるべきだ。また、被曝低減のための安全で、低コストな方法を提案すべきだ。政府、企業(業界)はまた健康リスク評価(アセスメント)をするための、よりよい情報を導きだすための研究調査を促進すべきだ。
〈個人に対して〉
 一般の人は、一定の電気器具の使用を最小にすることでEMF曝露(被曝)を減らすよう選択したり、比較的高い電磁波を出すものを距離を離すことで被曝を減らすようにする。
〈送配電線の新設の際は、自治体・企業・住民は協議する〉
 送配電線が消費者に電力を供給するため設置される必要があることは明らかだ。設置の決定にはしばしば、美観(景観)や住民感情を配慮することが要求される。また設置の決定には住民への曝露(量)低減方法を考慮すべきである。
〈健康情報とコミュニケ−ションの効果的システムについて〉
 科学者、政府、企業、住民は極低周波(電磁)場を扱う計画を広く知らせるようにすべきだ。そして不信感や恐怖感を減らすようにすべきだ。

<中国電力の資料>

<九州電力の資料>


会報第14号インデックスページに戻る