<海外情報>
(抄訳 TOKAI)
マイクロウェ-ブ・ニュ-ス2001年9〜10月号より
□それにしてもひどい改悪案
米国電気電子技術者協会(IEEE)のICES(IEEE国際電磁安全委員会)は高周波(ラジオ波/マイクロ波)の曝露基準の大幅な緩和案を起草し業界に都合のいいように動いている。
一つには、現在「労働環境基準」と「一般環境基準」の二つの基準が設定されているが、それを「労働環境基準」に一本化しようというのだ。「一般環境基準」は子供や老人・病弱者も対象とするため、労働者対象の「労働環境基準」より5倍厳しい。つまり起草案では現行より5倍甘くなる。具体的には携帯電話のSAR(エネルギ−吸収比)は局所SARで「1.6W/s」から「10W/s」に一足飛びに緩くなる。 全身SARは現行では「一般環境基準」は「0.08W/s」だがこれを「0.4W/s」にする。
さらに、測定方法も変更する。現行は組織1g当たりだったのを組織10g当たりにする。
一般人への曝露基準は現行「200マイクロW/cm2」を、100〜300MHz帯で「1ミリW(1000マイクロW)/cm2」にするし、他の周波数でも出力密度は甘くなる。
□チョウやアデアが仕掛人?
起草の責任者は米携帯会社モトロ−ラのC.K.チョウ博士である。今回起草したICESはふつう「SCC−28」として知られている小委員会だが、そこの新議長はエリノア・アデア博士だ。彼女はテキサス州サンアントニオのブルック空軍基地で働いているが、今回の起草を当然支持している。
しかしあまりにも露骨な業界よりの中身のため、新起草で中心的役割だったリチャ−ド・テル(ラスベガスのコンサルタント)ですら「小委員会は一般の反応を心配している」し、ロン・ピ−タ−ソン(SCC−28の諮問委員会メンバ−)も「一本化する今回の新基準案を政治的に宣伝するのは難しい」と語っている。
□ICNIRPに近づける改悪案
FCC(連邦通信委員会=米国郵政省)はすべての携帯電話を「1g当たり、平均SAR1.6W/sに合致する」よう求めているが、今回の起草案はSARを10W/sにするだけでなく組織10g当たりにも変更しようとするものだ。ICNIRP(国際非電離放射線)の基準「組織10g当たり2W/s」は、組織1g当たりにすると4〜6W/sに相当する。
つまり現行基準を企業よりのIEEEやICNIRPの方向に傾けさせようというのが業界のねらいである。