海外情報

(抄訳 TOKAI)
マイクロウェ-ブ・ニュ-ス2001年3〜4月号より

電化が小児がんを大きく増加させた

米国ミルハムらが分析〜交流電気を根本から問う問題

☆小児白血病の60%は電気が原因
 米国ワシントン州オリンピア市の「州健康局」に勤務するサミュエル・ミルハム・ジュニア(Samuel Milham Jr.)とエリック・オシアンダ−(Eric Ossiander)両博士が新しく研究分析したところによると、「小児白血病の60%は家(居住)での電化が原因である」とした。両博士は「だから防ぐこともできる」としている。
 「小児白血病の最も大きな特徴は、2歳から4歳に罹病のピ−クがあることだ。そして世界中どこでもこの罹病ピ−クは電化が原因である。したがって電気のない地域ではこのピ−クもない」という。両博士の論文は『医学仮説(Medical Hypotheses)』に掲載される。
 この現象は英国でも米国でも日本でも起こったが、電化の進んでいないアフリカの一部地域ではこのピ−ク現象はない。

☆電化とともに死亡率は増える
 小児白血病の死亡率は1920年代は10万人に約2人だったが、1950年代から1960年代に6人から8人に増えた(図1参照)。

<図1:米国白人の小児白血病死亡数>

 1928年から32年の間、米国で75%以上電化された州の5歳以下の小児白血病は年々増え、他の州は減った。1949年から51年の間はすべての州で小児白血病はピ−クとなったが電化もすべての州でハイレベルに達した(図2参照)。

<図2:米国の州の電化率と小児白血病による死亡率の相関>

 ミルハムの仮説は「小児白血病は感染性病原体から起こる」とする説と対立する。ミルハムはイスラエルとガザ地区(パレスチナアラブ人自治区)の例を挙げる。小児白血病のピ−クははじめイスラエルで出たがガザ地区には遅れて出た。イスラエルとパレスチナ人はいつも衝突しているが(したがって“交流”〔交錯?〕も必然的だ)このピ−クの時間差はガザ地区の電化の遅れのせいだ、とミルハムはみる。

☆交流電気と健康の関係の論争は根深い
 1990年代早期、デビッド・ジャクソン(David Jackson)とロバ−ト・アデア(Robert Adair)の両医師は、EMF(電磁場)と小児白血病は無関係としたがその理由は「がん発生率と電気消費量に相関関係がない」からだとした。
 しかしこの見解には多くの疫学者から反論が出ている。たとえばナンシ−・ワルトハイマ−(Nancy Wertheimer)、アンダ−ス・ア−ルボム(Anders Ahlbom)、デビッド・サビッツ(David Savitz)らである。ただしディミトリオス・トリコポウロス(Dimitrios Trichopoulos)はジャクソンらを支持する発言をした。
 一方で、カナダ・ウィニペグ市にあるマニトバ大学のアレン・クロ−ト(Allen Kraut)博士は、小児白血病罹病率と家での電気消費量に相関関係があることを94年に発表している。
 ちなみにミルハムは、電気関係に従事する労働者と白血病の関係を初めて明らかにした疫学者である。


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