携帯電話基地局設置の理由による家賃引下げの承認を求める裁判の判例

判決日 1998年3月27日
ミュンヘン区裁判所
訴訟文書番号 432 C 7381/95

(翻訳:加藤尚子)

ドイツ語原文:http://www.baubiologie.net/docs/mietminder.html

 「賃借入居者は、賃貸契約成立後に携帯電話基地局が建物屋上に設置されたことを侵害と感じる場合、賃料を引下げてもよい。」広く知られていないが、ミュンヘンの区裁判所および州裁判所は1988年にこの判決を下した。

 ミュンヘン区裁は、借家法の枠内で審議した結果、20%の賃料引下げを認めた。集合住宅の屋上に携帯電話基地局が設置され、賃借入居者の住居がその直下にある。家主は賃貸入居者に差額の支払いを要求したが、裁判官はこれを退けた。

「賃借入居者が心身の健康的な生活を営むには、基地局の短期的に表れる影響ではなく、たとえ将来的に無害性が確立されたとしても現時点では健康被害への恐れが存在することが問題となる。」とされた。過去において新たな技術の産物から生じたリスクについて誤った評価が再三あったことを熟慮し、多数の学者から批判的な警告の声が上がっていることを慎重に考えると、無害であることには疑念が残った。Eプルス社(ドイツの携帯電話会社)の通信ネットワークの歴史はまだ浅く、長年にわたる影響については何も確定的に述べることができない。「不安や恐れを感じさせるということだけでも、すでに民法第537条第1項の趣旨における侵害に該当する。」とされた。

 「賃借入居人は、賃貸契約後に家主が契約時に予期しえないような利用を建物に施すことで賃借人に健康被害への不安を負わせないよう要求する権利を持つ。」とされた。

判決の根拠について区裁のマンフレット・ゼールケ裁判官は、「争点である基地局が法的に設置を認められたもので、その出力が現在のドイツの規準値を遵守しているということは、本件においては重視されていない。」と述べた。たとえば、工事の騒音を理由とする賃料引下げの権利についても、隣人の工事が合法か非合法かは問われないのだ。

この区裁の判決に対し、家主は控訴したが、ミュンヘンのバイエルン州裁はそれを棄却した。(訴訟文書番号 14 S 6614/98)


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