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原子力安全委員会傍聴記録

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Bコース連続講座

「原子力問題研究グループ」メンバーによる原子力安全委員会、専門部会、分科会の傍聴記録を掲載いたします。

原子力安全委員会傍聴記録

原子力関連リンク
◆2002.10.16 ヨウ素剤検討会 まとめ ヨウ素剤Q&Aとして
◆200 2.3.26 原子力安全委員会 原子力施設等防災専門部会 被ばく医療分科会 ヨウ素剤検討会 第6回会合 傍聴記録
◆2001.12.4 原子力安全委員会 原子力施設等防災専門部会 被ばく医療分科会 ヨウ素剤検討会 第5回会合 傍聴記録

◆2001.11.13 原子力安全委員会 原子力施設等防災専門部会 被ばく医療分科会 ヨウ素剤検討会 第4回会合 傍聴記録 

◆2001.10.20 原子力安全委員会 原子力施設等防災専門部会 被ばく医療分科会 ヨウ素剤検討会 第3回会合 傍聴記録

《参考》各国の安定ヨウ素剤服用に係る指標

ヨウ素剤検討会 まとめ ヨウ素剤Q&Aとして

2002年10月16日  原子力問題研究グループ 崎山比早子

1.ヨウ素剤Q&A

原子力安全委員会、原子力施設等防災専部会では7回にわたったヨウ素検討会のまとめを「原子力災害時における安定ヨウ素剤予防服用の考え方について」として報告しました。

詳細は http://nsc.jst.go.jp/senmon/shidai/senkaisi_kensaku_f.htm で見ることが出来ます。

またこの報告書に対する意見募集を行い、寄せられた意見とそれに対する回答もこのページに公開されています。

2回から6回の検討会の傍聴記録は原問研のページに記載されていますのでご参照下さい。

ここでは報告書の重要なポイントと一般的な知識をQ&A方式でまとめてみましたので参考にしてください。なお注は私たちの意見です。

Q1)なぜヨウ素剤を飲むの?

A: 原子力施設に事故が起こった場合、いろいろな放射性物質が施設から放 

   出されます。放射性ヨウ素もその中の一つです。

放出された放射性ヨウ素は、呼吸や食物とともに体の中に取り込まれ、甲状腺に集まります。そのため甲状腺がんの原因になるおそれがあります。これに対し、前もってヨウ素剤を飲んでおけば、放射性ヨウ素が甲状腺に集まることを防ぎ尿や便から排出されて、発がんの危険性(リスク)を低減することが出来ます。

Q2)どのような場合にヨウ素剤をくばるの?

事故の規模などから計算して、甲状腺の被曝線量が100mSv(ミリシーベルト)をこえると予測されたときにくばられます。(単位については最後にまとめて説明があります)

Q3)大気中の放射性ヨウ素をはかる方法は?

  第3回ヨウ素剤検討会の資料によれば以下の通りです。

1分間に50リットル程度を吸引するローボリュームエアサンプラにダスト用ろ紙と活性炭カートリッジと取り付け、10分間吸引する。ダスト用ろ紙と活性炭カートリッジをポリ袋に入れ、NaIサーベイメータの検出部を密着させて測定する。測定時間は数分。

Q4)100mSvの被曝を受けるのは大気中にどのくらいの放射性ヨウ素があるの?

大気中の放射性ヨウ素が4,200Bq(べくレム)/m3の場合24時間その空気を吸入することによって小児甲状腺は被曝線量が100mSvとなると予測されます。

注1: チェルノブイリ事故で甲状腺がんになったのは主に子供でしたから、子供には予測被曝線量が低い場合でもヨウ素剤を与える方が望ましいのです。しかし、このような議論は検討会の中でされたにもかかわらず、最後の報告書からは姿を消しました。

注2: 小児が甲状腺癌になりやすいことを考慮してベルギーでは、0から19歳までの若年者、妊婦、授乳婦は10mSv、オーストラリア(0から16歳、妊婦、授乳婦)、ドイツ(0から45歳)、アメリカ(0から18歳、妊婦、授乳婦)では50mSvを越えると予測されたときにヨウ素剤を服用します。WHOも若年者に対しては、予測線量が10mSvを越える場合に服用することを推奨しています。

注3: 各国のヨウ素剤を配布する予測線量、配布場所などに関しては原問研のページにまとめてあります。

Q5)ヨウ素剤はどこでくばるの?

ヨウ素剤の配布は各避難所などで行われます。

注1:布場所などの詳細は地方によって事情が異なりますから、一様ではない可能性があります。保健所などに問い合わせておくと良いでしょう。

注2:常時に、あらかじめ各家庭に配ることはしないと決められました。

Q6)ヨウ素剤はいつ飲むのが効果的?

 ヨウ素剤は放射性ヨウ素が体内に取り込まれる以前、または直後に服用するのが効果的です。この時期に飲めば甲状腺にたまる放射性ヨウ素の90%以上を抑えますが、放射性ヨウ素が摂取された後4時間以内では抑制効果が50%に落ち、6時間以降であれば効果は激減します。

 放射性ヨウ素は呼吸により気管支や肺から、また口から入ったものは消化管から吸収され血液の中に入ります。このように取り込まれた放射性ヨウ素の10から30%は、24時間以内に甲状腺に集まり、残りの大部分は尿から排出されます。

Q7)ヨウ素剤は何回のむの?

  服用回数は1回とされました。それ以上服用することが必要と予測される

ときには避難を優先するそうです。

注:原発震災などで避難が出来なくなった場合等は考慮されていません。また事故の規模もチェルノブイリ級の事故は原子炉の設計が異なるなどの理由を挙げて、日本では起こりえないとしています。

Q8)飲むヨウ素剤の量はどれくらい?

ヨウ素剤を飲む量は以下のように年齢によって異なります。

        年齢       ヨウ素量    ヨウ化カリウム量

      新生児         12.5mg      16.3mg

      生後1ヶ月から3歳未満 25mg       32.5mg

      3歳以上13歳未満   38mg       50mg

      13歳以上40歳未満   76mg       100mg

      40歳以上は投与しない

・新生児から3歳未満の小児についてはヨウ化カリウムの粉末を水に溶解して与えます。ヨウ化カリウムは湿気を吸いやすく、またいったん水に溶かしてしまうと不安定になりますので、水溶液の状態で長く保存することは出来ません。

・現在あるヨウ素剤はヨウ素量38mg、ヨウ化カリウム量50mgを含む丸薬1種類なので、当面これを使用するそうです。従って

・ 3歳以上13歳までは丸薬を1錠(ヨウ素量38mg)

・13歳以上の場合は丸薬を2錠(ヨウ素量76mg)

注:ヨウ化カリウムの製剤で30mg以上服用すれば、放射性ヨウ素が甲状腺へ集まるのを95%抑制することができるという実験結果を根拠にしています。

・ 40歳以上にヨウ素剤を投与しないのは、放射性ヨウ素によって甲状腺癌の発生率が増加しないためと説明しています。

Q9)ヨウ素を含む食品を食べると効果があるの?

ヨウ素は海産物特にコンブに多く含まれています。コンブ乾燥重量100gあたりには100から300mgのヨウ素が含まれています。しかしコンブを食べることによって短時間に大量のヨウ素を体内に取り入れることは難しいようです。

各家庭にあるヨウ素を含むうがい薬や外用薬を飲むことについて。

これは、安全性が確認されていませんし、ヨウ素含有量が少ないため、放射性ヨウ素が甲状腺に集まるのを防ぐ効果は少ないそうです。従って服用してはいけないと指導しています。

Q10)ヨウ素剤を服用することによる副作用について。

 主なものは甲状腺機能低下症、甲状腺機能亢進症などです。

注1: ヨウ素剤服用による副作用は非常に希です。国際原子力機関(IAEA)の資料では、一日あたり300mg(ここで決められた服用量の4倍から8倍量)のヨウ素を服用した場合でも100万人から1000万人に一人の確率で皮膚のかゆみや赤斑、甲状腺機能低下症、甲状腺機能亢進症などの副作用がでるとしています。死亡する確率は10億分の1だそうです。

 これに対しチェルノブイリ事故により15歳以下で被曝した人が生涯をとおして甲状腺がんになるリスクは1x10?5/mSvと計算されています。ポーランドで小児甲1050万人にヨウ素剤を与えて副作用がないと計算されたことから、ヨウ素剤の副作用がでるリスクは1000万分の1以下と考えられます。放射性ヨウ素による発がんのリスクが1000万分の1になる線量は10μSv(マイクロシーベルト)程度です。従って、ヨウ素剤の副作用と放射性ヨウ素被曝によりがんになるリスクが釣り合うのは10μSv以下になります。ヨウ素剤を配布する基準はこの値から実に1万倍の線量に設定されているのです。

注2: 本来ヨウ素というものは人間の生命にとって無くてはならない甲状腺ホルモンを作るために必須の元素です。生体にヨウ素に対する拒否反応がある方が生命にとって危険であると考えられます。

ヨウ素検討会ではQ7)の答えで述べた量を1回服用させるだけですが、この希な副作用を非常に重視し、検討を重ねたことになります。これは基本的には望ましい姿勢だと思われます。原子力施設の事故想定に対してもこのくらい慎重に安全側にシフトした考え方を採用して欲しいです。そうでなければ、住民に原子力施設の事故に対する不安を与えないために基準値を高く設定したと勘ぐられることになります。

Q11)なぜ、小児は放射性ヨウ素によってがんになりやすいの?

  小児は成長が盛んなために代謝も盛んです。甲状腺の細胞も盛んに分裂しています。本来放射線による傷害を受けやすいのは盛んに分裂している細胞です。代謝が盛んだということは甲状腺ホルモンの産生も高く、従ってヨウ素を沢山取り込むのです。その結果、放射性ヨウ素を多く取り込んでしまうことになり、放射線によって遺伝子に傷がつき後にがんになる危険性が高まるのです。

Q12)ヨウ素剤を服用させない方がよいと考えられた疾患は?

  ヨウ素過敏症(ヨウ素を含む造影剤過敏症、低補体性血管炎、ジューリン

  グ疱疹状皮膚炎、甲状腺機能異常症等です。

  これらの疾患を抱えている人は医師に相談し、普段からどうすればよいか

  を考えておきましょう。

Q13)どんな放射能でもヨウ素剤で取り込みを予防できるの?

 ヨウ素剤によって体の中に取り込む放射能を少なくできるのは放射性

ヨウ素だけです。ほかの放射性物質、放射線に対しては、全く効果はありませんs。

参考のために

 行政がヨウ素剤の家庭配布をしないと決めたため、いざというときに手元にヨウ素剤が無い事もあり得ます。特に原発立地県に住んでいて、19歳以下の子供がいる家庭では行政をうごかすなどしてヨウ素剤を手元に置いておく方が安心です。不安な方は、同じような不安を持つ人と話し合い共同でヨウ素剤を買い求め用意しておくと良いでしょう。

ヨウ素剤は、決められた量を1回服用する場合あまり心配ありませんが、長期間連続服用しますと、甲状腺機能亢進症や、甲状腺機能低下症などを引き起こすおそれがありますので注意が必要です。

コンブなどから十分なヨウ素を取り入れることは出来ないといっていますが、手元にヨウ素剤がなければ、コンブを食べないよりは食べた方が少しでも危険を軽減できるのではないでしょうか。



放射線の単位の説明

グレイ(Gy):物質1kgにつき1ジュール(J)エネルギーが与えられた時の吸収線量を1Gyという。

シーベルト(Sv):同じ1Gyでも中性子線とX線とでは人体に与える障害の程度が異なる。その違いを考慮して被曝の効果をあらわす量を実行線量と言い、Svであらわす。

X線、ガンマ線などでは1Gy=1Svと考えて良い。

中性子線、アルファ線などでは1Gy=5ないし20Svとなる。

1Sv=1000mSv、

1mSv=1000マイクロSv

                                     (先頭へ)

 





ヨウ素剤検討会 第6回会合(2002.3.26開催) 傍聴記録

2002年3月26日  原子力問題研究グループ 崎山比早子

1.議事次第
2.傍聴記録

1.議事次第

原子力安全委員会 被ばく医療分科会

ヨウ素剤検討会第6回会合 

1. 日 時   平成14年3月26日(火)11時00分〜12時30分

2. 場 所   虎ノ門三井ビル2階、第1、2会議室


                                     (先頭へ)

 


2.傍聴記録

今日のヨウ素剤検討会の議題

(1) 安定ヨウ素剤の準備、服(2) 用方法について

1、 安定ヨウ素剤の服2、 用に係わる基本的な考え方(保健医学の立場から)

          長崎大学医学部教授 寺崎 明美

 寺崎委員は安定ヨウ素剤の配布、服用に関して配慮すべき事項について発表。ヨウ素剤の配布、服用に関しては医療関係者が係わることが望ましいと言う意見を述べた。これに関し他の委員から実際には医療関係者の数は不足する可能性もあり、ヨウ素剤配布は保健師など医療関係者以外の人が携わる可能性の方が高いという指摘があった。また、他の委員から現状では医師、保健師に対しヨウ素剤配布、服用に関する教育をしている自治体は皆無である。これを徹底して行うべきという指摘もなされた。

2、安定ヨウ素剤の服用に係わる基本的な考え方

   長崎大学医学部教授 佐々木 均

(現在あるヨウ素剤は38mgヨウ素を含む丸薬で、水に溶けにくく乳児、小児に服用させることが困難である。3歳以下の乳児や小児に服用させるためにヨウ化カリウムを水に溶かして与える方法が考えられている。この方法について佐々木委員が発表。)

●ヨウ化カリウムは白色の粉末で非常に水に溶けやすい。

●水溶液にはかなり強い苦味があるので乳児や小児は吐き出してしまう可能性 

 がある。

●苦味を消すためにシロップを50%位くわえる。

●水溶液の作り方

ヨウ化カリウム81gを計量しメスシリンダーにて注射水で500mlとする。これを5リットルのポリタンクに移し、シロップ2.5リットル、注射水2リットルを加えて5リットルにする。これをよく撹拌して小瓶に分注する。

そこからスポイトで新生児には1ml。

生後1ヶ月以上3歳未満の小児及には2ml

3歳以上13歳未満は4ml

13歳以上40歳未満は8ml計りとり服用させる。

(この方法を採用すると水溶液5リットルを調剤するのに5分くらいかかり、大人では625人分にしかならない。数千人分を調剤し、計量して服用させるのには時間がかかりすぎ、なるべく早い時期に多くの人に服用してもらうためには現実的ではない。丸薬とヨウ化カリウム水溶液で、吸収時間に大きな差はないので、大人は現在ある錠剤を服用するのが適当という指摘がなされた。)

3、 乳幼児薬剤服4、 用の実際について

           千葉県こども病院看護師長 前田 宏美

乳児、新生児、幼児に苦味のある薬剤を与える場合には溶液を甘くする。

乳児に対しては乳首をくわえさせて、溶液の必要量をスポイトか注射器で口の中に入れる。

幼児の場合はスポイトか注射器で口腔内に注入する。

ミルクなどにヨウ化カリウム製剤を入れ、哺乳させる事は絶対にしてはいけない。なぜならそのミルクを全量飲まなければ、必要量を服用できないため。

新生児は、授乳直後に服用指せると、吐き出したり、嘔吐を誘発したりする事があるので注意が必要。

特に苦味のある薬剤を服用させる時にはなるべく少量にして(薄めないで)飲ませる事が必要。

全体を通して委員からの提案

ヨウ化カリウムの水溶液を準備し、配付する場所に持って行き、服用させる迄にどのくらい時間がかかるのか、EPZ内が最も人口密度の高い鳥取、最も低い北海道を例にとってシミュレーションをしてみてはどうか。

(事務局はこれに対して前向きに検討するらしい。)

事務局からの発言

水溶液の調剤を事故の知らせがあってから、何時始めるのかなどの問題は各市長村長がきめる事になっている。


                                   (先頭へ)


 

 

 




ヨウ素剤検討会 第5回会合(2001.12.4開催) 傍聴記録

2001年12月4日  原子力問題研究グループ 崎山比早子

1.議事次第
2.傍聴記録
3.リンク

1.議事次第

原子力安全委員会 被ばく医療分科会

ヨウ素剤検討会第5回会合 議事次第

1. 日 時   平成13年12月4日(火)13時30分〜16時30分

2. 場 所   虎ノ門三井ビル2階、第1、2会議室

3. 議 題   (1) 「原子力災害時における安定ヨウ素剤予防服用の考え方について」(報告書案)について

  (2) その他

4. 配 布 資 料 資料第5−1号 ヨウ素剤検討会第4回会合議事概要(案)

資料第5−2号 原子力災害時における安定ヨウ素剤予防服用の考え方について(案)

[常備資料] 原子力施設等の防災対策について

緊急被ばく医療のあり方について


                                     (先頭へ)

 


2.傍聴記録

今日のヨウ素剤検討会の議題

「原子力災害時における安定ヨウ素剤予防服用の考え方について」(案)

 これまで4回にわたり検討されてきた内容をまとめ、被ばく医療分科会に提出するための「案」を検討しました。
目次からまとめまで16ページの報告書を事務局が、えんえんと朗読。
内容的はこれまで報告してきたことをまとめただけですが、細かい言い回し等なるべく住民に不安を与えないように、学問的に横やりが入らないように気を使っています。この「案」は今日の論議をもとに事務局が書き直し、12月17日の被ばく医療分科会に提出するのだそうです。「案」は高木学校事務局にも1部あります。興味のある方はお問い合わせください。

ヨウ素剤(安定ヨウ素)を服用する基準となる予測線量は、ほとんど議論もなく100mSvと決まっているかのように見えました。そのためか、これまで4回にわたる検討会で一番問題にされたのは、副作用についてでした。これは前にも報告しましたように、ほとんど真剣に取り上げる程のこともないものです。ポーランドの例では小児1050万人に安定ヨウ素が投与されましたが、重篤な副作用は見られませんでしたし、NCRPレポートによればヨウ素剤1錠(1000mg)当たりの副作用の出現頻度は百万分の1から千万分の1です。そしてこの副作用は投与を止めれば問題がないのです。専門医が患者にヨウ素剤を与える時に副作用について心配したことはないといっているにも関わらず、これをえんえん4回にわたって議論し、他方放射性ヨウ素によるリスク評価についての議論の比重は小さかったと言えます。

今日の議論で注目すべきところをあげてみます。

1.原子力災害時における)放射性ヨウ素の放出と安定ヨウ素剤の関係

(1)放射性ヨウ素の放出形態 の所に以下のような記述があります。

「……核然料施設において、臨界事故が発生した場合、核分裂反応によって生じた核分裂生成物である稀ガスとともにヨウ素が放出されることが想定されるが、総量は原子炉施設にくらべて極めて少ない。」

この過小評価には、さすがの原子力案全委員飛岡利明氏も「再処理施設において臨界事故が起きれば、相当ひどいことになる」とコメントしました。

2.放射性ヨウ素による健康への影響

(1)甲状腺がん

チェルノブイリ事故で甲状腺がんになった小児のうち、大部分は5歳未満で被曝している。 
この事実は5歳未満の小児が大人よりも放射性ヨウ素による発がんの危険性が高いことを意味しています。ポーランドで証明されたようにヨウ素剤による副作用がほとんどないのであれば、小児にヨウ素剤を投与する基準は当然大人より低くしなければいけないはずです。しかし、この考えは投与時に混乱を招くという理由で採用されませんでした。委員のうち誰も小児に投与する場合の予測線量を低い基準にすると主張した人はいませんでした。加えて、非常におかしなことは、ロシア、べラルーシでの線量測定は、あまり当てにならないという発言がよくあることです。事故後いち早くソ連に行き被曝者の治療にあたったR.P.ゲイル氏は「チェルノブイリ」の中で、ソ連の医師達の放射線障害に対する知識の確かさを高く評価していますが、この委員達はこの本を読んでいるのか、と思いました。

なおWHOによるガイドラインでは、若年者の服用について10mSvを推奨しています。各国の基準については第4回の報告にあります。

ヨウ素剤の配布方法

「……安定ヨウ素剤の服用により回避される甲状腺等価線量が50mGy(Sv)を超さない場合には、その服用が正当化されない」という記述があり問題になりました。
この書き方だと、50mSv以下の時にヨウ素剤を投与して、万が一副作用が出た場合には、投与した人がなんらかの責任をとらなければならないように受け止められます。
配布方法についてはこの検討会ではほとんど手付かずです。ヨウ素検討会からの結論を参考にして、防災指針を決め、これを妨災基本計画の中に組み込むのだそうです。基本的には各家庭配布はないでしょう。

服用回数及び服用量

「基本的に1回投与。2回目の投与を考慮しなければならない状況では、避難等の防護対策を優先させるべきである。」
ヨウ素剤を服用して更に避難するという考えは、浮かばないらしいように見えました。事故が長時間終息しないで、しかも遠くに逃げられないという想定もあり得るはずです。

服用量については

      新生児12.5mg (ヨウ素として)、

      生後1ヶ月から3歳25mg、

      3歳から12歳50mg、

      13歳以上100mg

      40歳以上は投与しない

現在ある錠剤は38mgのもの1種類で、しかもこの錠剤は割れにくく溶けにくいという問題があります。それに対する対策としては新生児と3歳未満児に対してはヨウ化カリウム粉末を水にとかして与える。安定ヨウ素剤の投与量が30mg以上であれば効果は同じなので、50mgと100mgには、それぞれ38mgと76mgで代用する。という案が検討されています。将来的にこれでいいのか疑問です。

放射性ヨウ素の量が多く、甲状腺細胞の障害が起きることが予想される時には、40歳以上の人も服用することになりますが、その線量をどこにきめるのか問題。

長崎のデータでは0.7Sv以上で障害が出ると報告されています。外国の報告では5Svです。どちらをとるのか、今後の課題。


                                   (先頭へ)


 

 


3.関連リンク

原子力安全委員会 … http://nsc.jst.go.jp/

 


ヨウ素剤検討会 第4回会合(2001.11.13開催) 傍聴記録

2001年11月13日  原子力問題研究グループ 崎山比早子

1.議事次第
2.傍聴記録
3.リンク

1.議事次第

原子力安全委員会 被ばく医療分科会 ヨウ素剤検討会第4回会合 議事次第

1. 日 時   平成13年11月13日(火)13時30分〜16時30分

2. 場 所   虎ノ門三井ビル2階、第1、2会議室

3. 議 題   (1) 介入レベルの考え方について

  (2) 回避線量の考え方について

  (3) ヨウ素剤予防投与の必要性について

   (3-1)    対象年齢       (継続)

   (3-2)    投与回数、投与量   (継続)

   (3-3)    禁忌対象者、副作用など(継続)

   (3-4)    ヨウ素含有食品による甲状腺防護の適否

  (4) 自治体におけるヨウ素剤予防投与の現状

  (5) その他

                                     (先頭へ)

 


2.傍聴記録

今日のヨウ素剤検討会の議題

1) 介入レベルの考え方
2) 回避線量の考え方
3) 投与する対象年令
4) 投与回数、投与量
5) 禁忌対象者、副作用
6) ヨウ素含有食品による甲状腺防護の適否
7) 自治体におけるヨウ素剤予防投与の現状       

1)介入レベルの考え方

甲状腺予測線量がどのくらいになったらヨウ素剤を投与するか。
いろいろ議論の後、被ばく線量が100mSvと予測された時に投与するという結論になりそう。
参考:各国のヨウ素剤投与基準

ドイツ(18歳以下50mSv、45歳以下250mSv)
イギリス(全年令100mSv、子供100mSv以下、45歳以上投与せず)
オーストラリア(0から16歳50mSv、17から45歳250mSv、46歳以上投与せず)
フランス(一律100mSv)
ベルギー(0から19歳、妊婦、授乳中10mSv、20から40歳100mSv、41歳以上500mSv)

《参考》各国の安定ヨウ素剤服用に係る指標等

2) 回避線量の考え方

防護措置をとらない場合に予測される被ばく線量をAmSv、防護措置をとった場合に予測される被ばく線量をBmSvとした場合、回避線量は(A-B)mSvで現される。

回避線量を90%とするためには、ヨウ素剤を放射性ヨウ素摂取とほぼ同時くらいに飲むのが望ましい。実験では同時に飲めば100%回避できるという結果もある。

3) 投与する対象年令

広島、長崎の追跡調査結果と、チェルノブイリ事故後の甲状腺癌発症調査結果から、放射性ヨウ素によって甲状腺癌が誘発されるのは、19歳未満が優位に多く、40歳以上ではほとんど見られないことがわかった。20歳から39歳迄は発症率は低いがゼロではない。従って投与する対象年令は39歳以下の人とし、40歳以上の人には投与しない。妊婦、乳児も禁忌としない。

4) 投与回数、投与量

投与回数は1回とする。

その理由は:経口投与では投与後24時間で甲状腺内のヨウ素量は最大値に達し、そのレベルが2日から3日続く。30mgのヨウ素剤を毎日8日間、あるいは100mgを5日間飲み続けると確実に甲状腺機能低下症を引き起こす。

 投与量は、新生児12.5mg (ヨウ素として)、

      生後1ヶ月から3歳25mg、

      3歳から12歳25mg、

      13歳以上76mg

      40歳以上は投与しない

 現在使われている丸薬(38mg)はハンマーでも割れにくく、水にも溶けにくいため、新たに小児用として開発する必要がある。

5) 禁忌対象者、副作用

ヨウ素過敏症、造影剤過敏症、泡疹状皮膚炎、血管炎の患者には禁忌とする。健常者には副作用はほとんどない。

6) ヨウ素含有食品による甲状腺防護の適否

海草をたくさん食べればヨウ素剤の代用になるかという質問が良くあるが、事故時には、甲状腺にヨウ素を急速に飽和させなければならないので食品からとるのは不適当である。昆布からヨウ素を十分に摂取できるとは考えにくい。

7) 自治体におけるヨウ素剤予防投与の現状  

佐賀県から 竹下義洋委員報告

ヨウ素剤は診療所、保険所に一元的に保管してある。
ヨウ素剤38mgの錠剤を

   大人 2錠/日

   子供 1錠/日

配布マニュアルに従って職員が住民に配布する。
佐賀県ではコンクリート屋内退避をする、コンクリートの建物は、学校、役場などを除きほとんどない。
有効期限が3年といわれていたため3年毎に新しくしている。

青森県から宮川隆美委員報告
核燃サイクルで、現在稼動しているのは、ウラン濃縮工場、低レベル廃棄物の貯蔵、高レベル廃棄物の一部貯蔵で、再処理はまだ始まっていない。
六ヶ所から10km離れた放射線監視局にヨウ素剤23万錠保管、事故時にはここから避難所に運ぶ予定。

六ヶ所村全人口は1万人

1歳以上2錠/日

1歳以下1錠/日 10日分

医療所、保険所職員25名が配布予定
避難所をどこにするか、どこの住民がどこに避難するかも決まっていない。
事故の時にヨウ素剤を保管場所から六ヶ所に運ぶのに1、5時間から2時間かかる。

北海道から永井孝一委員報告

3町1村 27000人 10日分 70万錠 用意してある。
5診療所、1保険所に保管

使用説明書とともに配布

1歳以上2錠/日

1歳以下1錠/日 

国の指導のもとに行動することを強調。


                                   (先頭へ)


 

 


3.関連リンク

原子力安全委員会 … http://nsc.jst.go.jp/





ヨウ素剤検討会 第3回会合(2001.10.20開催) 傍聴記録

2001年10月22日  原子力問題研究グループ 崎山比早子

1.解説
2.(用語)放射性ヨウ素とヨウ素剤
3.(用語)甲状腺と甲状腺ホルモン
4.会合議事次第
5.傍聴記録
6.問題点
7.関連リンク
1.解説
 チェルノブイリ事故後も、原子力事故は起こらない前提で原子力発電を続けてきた日本でも、1999年9月30日におきたJCO事故により、原子力防災計画をたてざるを得なくなりました。原子力災害特別措置法に基づく、原子力防災計画のなかで、緊急医療体制をどのように整えてゆくのか現在原子力安全委員会 被ばく医療分科会で検討されています。その一つにヨウ素剤検討会があり、ヨウ素剤の配布について審議しています。ヨウ素剤を、いつ、どこで、どのくらい配布するのかを、検討するのがこの委員会の目的です。(先頭へ)
2.放射性ヨウ素とヨウ素剤

 

ヨウ素剤 (茨城県HPより)

 原子力施設の事故時に放出される放射性ヨウ素は、呼吸や食物と共に体内に取り込まれ、甲状腺に蓄積します。チェルノブイリ事故後ベラルーシ、ウクライナ、ロシアなどで子供に甲状腺癌が増えたのは、放射性ヨウ素による被ばくが原因でした。放射性ヨウ素が特に危険なのは20歳以下の子供です。40歳以上の大人ではこれまでのところ甲状腺癌の増加は見られていないといわれています。また、放射性ヨウ素が体に入っても、既に体の中に十分な量の「放射性でないヨウ素」(安定ヨウ素)があれば、放射性ヨウ素を尿や便の中に排出してしまい、甲状腺にたまるのを防ぐことが出来ます。そのために事故の時にヨウ素剤を飲むのです。

 ヨウ素剤を長期間飲み過ぎると、甲状腺機能の低下を起こす恐れがありますので、妊婦や乳幼児は飲み過ぎないように医師の指導が必要です。しかし、その他の場合はヨウ素剤による副作用を心配する必要はあまりないといえます。ヨウ素剤を飲んだ時にでる副作用の危険(リスク)と、ヨウ素剤を飲んで癌から救われる利益(ベネフィット)とをはかりにかけて、ヨウ素剤を投与するかどうかをきめるわけです。この検討会を傍聴していて理解できたことは、ヨウ素による副作用は非常に稀で特殊な場合を除きほとんど心配する必要はないということです。従って甲状腺癌のリスクを考えれば、早めに飲んでおく方がより効果的だといえます。

3.甲状腺と甲状腺ホルモン

 甲状腺は、甲状腺ホルモンを分泌する器官です。甲状腺ホルモンにはヨウ素が含まれており、このホルモンの合成にはヨウ素が必要です。そのために、血液中にあるヨウ素の30%は甲状腺に取り込まれます。ヨウ素剤を飲むことによりヨウ素は甲状腺に取り込まれます。甲状腺の中にたまる量が最高値に達するのは約24時間後です。そしてその値は2日から3日続きます。

 甲状腺ホルモンは全身の組織の代謝を調節し、成長や成熟に大切な役割を果たしています。甲状腺の機能が高まりすぎると代謝が高まり、酸素の消費量が増し、呼吸数が増え、汗をかきやすくなります。また逆に機能が低下すると代謝が低くなり、成長が妨げられます。特に重要なのは中枢神経系の発達に及ぼす影響です。胎児の発達段階の初期に甲状腺ホルモンが減少すると、脳や神経系の発達に重大な障害が起き、知能障害を起こします。

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4.議事次第

原子力安全委員会 被ばく医療分科会 ヨウ素剤検討会3回会合議事次第

1. 日 時  平成13年10月12日(金)13時30分〜16時30分

2. 場 所  虎ノ門三井ビル2階、第1、2会議室

3. 議 題  (1)  ヨウ素剤予防投与の必要性について

          (1-1) ヨウ素剤予防投与方法、回数及び量(薬剤形に関する検討)

          (1-2) ヨウ素剤の予防投与対象(継続)

          (1-3) ヨウ素剤の効用及び副作用

          (1-4) 日本人におけるヨウ素摂取及び代謝状況について

          (1-5) 緊急時における放射性ヨウ素測定法について

         (2)  ヨウ素剤予防投与の国際趨勢について

          (2-1) 国際原子力機関ヨウ素剤予防投与技術検討委員会審議報告

         (3)  その他

                                     (先頭へ)

 


5.傍聴記録


ヨウ素剤は、甲状腺機能亢進症の治療薬として使われることがある。

1)現在日本にあるヨウ素剤の種類

 ヨウ素カリウム丸  1錠50mg(ヨウ素として38mg)

ヨウ化カリウム溶液(KI液)(1滴中ヨウ素として10mg)

 ヨウ素レシチン錠  1錠中50マイクログラムと100マイクログラム

 (通常薬局で、自由に買うことは出来ない)

2)ヨウ素剤の副作用

 ・ヨウ素剤の内服による副作用はきわめてまれ。

 ・専門医として、ヨウ素剤を投与するときに副作用を心配して患者に説明することはない。

 ・甲状腺疾患の専門医でも、ヨウ素剤による副作用を経験した人はほとんどいない。

 ・ヨウ素性過敏症: ヨウ素を含む造影剤によるアレルギーは、造影剤に含まれる他の成分に対するアレルギーであり、ヨウ素に対するアレルギーではない。

  ヨウ素に対するアレルギーはほとんど知られていない。

・ 長期間連用することにより甲状腺機能異常を起こすことがある。

その場合は、服用を中止すればよい。

・ ヨウ素剤1錠(300mg)の副作用出現のリスクは、百万分の1から一千万分の1である。(NCRPレポートNo55 (1977)による。)

3)ヨウ素剤を投与すべきでない

  ヨウ素剤の添付文書には、

  腎機能不全のある患者・・投与により血清カリウムが上昇、症状悪化

  先天性筋硬直の患者・・カリウムにより症状が悪化

  甲状腺機能亢進症、甲状腺機能低下症の場合は与えてはいけないなどと書かれているが、緊急時の1回投与であれば、問題ない。

  高カリウム血症の患者・・1回投与では血液中のカリウムは上昇しないので、問題ない。

4)日本でのヨウ素剤投与の現状

  乳児   1錠/日(38mg)

  1歳以上 2錠/日(76mg)

  飲めない子供については、砕いて、液体に混ぜてのませる。

  (実際に砕いてみると砕けず、水にも溶けにくい)

5)WHOや欧州では、乳幼児に多く与えすぎると甲状腺機能低下症を起こす可能性があるため、投与量を減らすことを推奨。

  新生児      12.5mg

  生後1ヶ月−3歳 25mg

  3歳−12歳   50mg

  13−40歳  100mg

  40歳以上では、被ばくにより甲状腺がんになる確率はほとんどないため、がんを予防する目的では投与しない。但し、被ばく線量が5グレイ(Gy)を越える場合は、放射線被ばくによって甲状腺機能が低下する可能性があるため、被ばくを避ける目的で投与する。

6)錠剤の形について

  日本にある丸薬では、正確に1/2にしたり、1/4にしたりすることが出来ず、砕くのも容易ではない。これから日本でも、年齢別に投与量を変えるのであれば、4分割、8分割しやすい錠剤を作る必要あり。あるいは乳幼児用に別の錠剤を作るか。

7)有効期限について

 現在ヨウ化カリウム錠剤の有効期限は3年とされている。

 WHOでは錠剤は、少なくとも5年は安定といっている。

 NRCでは、ヨウ化カリウムの有効期限は7−10年と考えている。 

 (製造後11年経っても99.1%の活性があるという報告があるため)

 今後、有効期限についても、再考されなければならない。

8)ヨウ素摂取と代謝について

 吸入摂取

 ・元素ヨウ素は、ほとんど気道に沈着し、沈着したヨウ素の大部分は、10分のオーダーの半減期で、血中に移行する。

・ ヨウ化メチルは、70%が、気道に沈着し、血中への移行は半減期5秒。 

・ 粒子状エアロゾルは粒子の大きさによって異なるが、10分のオーダーの半減期で血中に移行。

 経口摂取

 経口摂取したヨウ素は、主に小腸から取り込まれる(食べてから約4時間後)。

 国際放射線防護委員会(ICRP)では、食材に混入したヨウ素は、完全に吸収されると仮定している。

血液に入ったヨウ素の約30%が甲状腺へ、残りが尿中に排泄される。

甲状腺中のヨウ素は約24時間後に最大値になる。

甲状腺に入ったヨウ素の生物学的半減期は、年齢により異なる。

欧米のデータでは、

3ヶ月児  11.2日

1歳児   15日

5歳児   23日

10歳児  58日

15歳児  67日

成人    80日

日本人はヨウ素の摂取率が高いため、半減期は成人男子で35日とされている。

乳幼児のデータは、示されなかった。(ないのか、あるいは委員が知らないだけなのか不明。次回までに、事務局と委員が調べてくる)

9)安定ヨウ素の効果持続性

 成人の場合安定ヨウ素100mgを1回投与すると、甲状腺内の安定ヨウ素が充分満たされ、その状態は数日間持続する。

幼小児の場合は、代謝回転がそれよりも速いことから、効果持続時間は短いと推察される。放射性ヨウ素による被曝時間が数日に及ぶ時には、ヨウ素剤投与により甲状腺内に安定ヨウ素を満たす必要がある。

ヨウ素剤投与により放射性ヨウ素の甲状腺内移行が1/10に減少すれば、回避率は90%と考える。

10)ポーランドの事例

ポーランドでは1986年4月26,27日に空気中の放射性ヨウ素が、1立方メートルあたり504ベクレル(Bq)になった。これは通常の値の1.55-3倍。甲状腺の介入線量は子供で50ミリシーベルト(mSv)/年、大人で500mSv/年を越えない、子供の甲状腺線量はいつでも5,700Bqを越えないとした。小児1050万人、大人700万人にヨウ化カリウム溶液が投薬された。(他の文献によると溶液ではなくて錠剤になっている)。

子供には副作用は観察されず、大人2名に重篤な呼吸器症状がでた。内1名はヨウ素過敏症?

<世界最大級のKI溶液の大量一般住民への処方及び5月15日までは一切の国内乳製品の経口摂取を放棄する。4歳以下の全ての乳幼児に粉ミルクを供給する。その粉ミルクは約3000トンをオランダから調達する。子供と妊婦は5月16日まで新鮮な野菜の摂取を控えるように勧告した。という、前代未聞の国家的対策は、広範な環境放射能汚染の健康影響防止という原発事故対策の緊急性を社会問題として捉えて、多くの住民や機関を統合して組織だった対応をすべきことを教訓としている>

チェルノブイリ事故に対するポーランドの対応と対比して、ウクライナ、ベラルーシにおける、対応の違いが、両国における甲状腺がんの激増をもたらした。

11)介入レベルをどこにするか(被曝線量がどのくらいと予測されたときにヨウ素剤を投与するか)

IAEA /WHOの共同主催による放射線ヨウ素の関する国際会議が9月17−19日にあった。WHOはIAEAに対し、乳幼児に対する介入レベルを10mSvにした方がよいと勧告。IAEAがこれに従うかどうかは未定。

日本では100mSvにしようとしている。(ドイツでは50mSv、ベルギーでは10mSv)

                                   (先頭へ)


6.問題点

 

 ヨウ素剤投与による副作用が、ほとんどないといいながら、日本では、各家庭、あるいは、学校、保健所に普段からヨウ素剤を配布しておかないとか、介入レベルを高くしておこうとする意図が、見えるのは何故か。(介入レベルを低く設定すると、住民が不安を抱く?)

住民に事故時にはヨウ素剤をのまなければならないと、事前に教育しておく必要があるにもかかわらず、それをしないのは、住民に不安を抱かせないため。(これは、事務局の発言)。(先頭へ)


7.関連リンク

原子力安全委員会 … http://nsc.jst.go.jp/

「ヨウ素剤とは?」 茨城県原子力安全対策課 … http://www.pref.ibaraki.jp/bukyoku/seikan/gentai/youso.htm