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台湾の元「慰安婦」訴訟
決 定
上記当事者間の東京高等裁判所平成14年(ネ)第5850号損害賠償請求事件について,
同裁判所が平成16年2月9日に言い渡した判決に対し,上告人兼申立人らから上告
及び上告受理の申立てがあった。 よって,当裁判所は,次のとおり決定する。
主 文
本件上告を棄却する。
本件を上告審として受理しない。
上告費用及び申立て費用は上告人兼申立人らの負担とする。
理 由
1 上告について
民事事件について最高裁判所に上告をすることが許されるのは,民訴法312条1項又は
2項所定の場合に限られるところ,本件上告理由は,違憲をいうが,その実質は単な
る法令違反を主張するものであって,明らかに上記各項に規定する事由に該当し
ない。
2 上告受理申立てについて
本件申立ての理由によれば,本件は,民訴法318条1項により受理すべきものとは認められない。
よって,裁判官全員一致の意見で,主文のとおり決定する。
平成17年2月25日
最高裁判所第二小法廷
裁判長裁判官 今井 功
裁判官 福田 博
裁判官 滝井 繁男
裁判官 津野 修
以上の短いものです。判決ではありません。審理しないことに決定した、いわ
ば門前払いです。民訴法(民事訴訟法)312条1項、2項の場合にのみ上告が許さ
れるという意味は、「判決に憲法の解釈の誤りがあることその他憲法の違反があ
ることを理由とする」ときには上告することができる。つまりそれ以外は審理し
ないし、受理しない、ということです。
私たちには、「慰安婦」損害賠償・謝罪請求事件は、審理しなければならない十分な
内容を含んでいると思えるのですが、最高裁では受理しない、審理しないという結論
を出したということです。
第1審である東京地裁判決は、事実認定すらしておらず、弁護団をして「血も涙もな
い判決」といわせるものでした。
第2審の東京高裁判決は、一審判決を上回るそっけないもので、判決内容のたったふたこと
「請求を棄却する」「費用は控訴人の負担とする」を原告であるおばあさんたちに通訳する
時間もあたえず、裁判官たちは消え去ったというものでした。
しかも、口頭弁論もたった4回で、その4回の内容も書類の提出や、次回の日程をきめると
いうようなもので証人申請も受け付けてもらえませんでした。その事実認定すら
ない、「何も内容がない」といえる判決内容が確定してしまいました。
「女性らが慰安婦だったか否か判断しないまま請求を棄却(一部却下)した1審を支持した
東京高裁判決(昨年2月)が確定した。」(毎日新聞2.26付)を読んだとき、胸
をえぐられるようでした。
昨今の、私たちを取り巻く日本の状況だけの問題ではなく、私たちの力のなさにも深く思いを
及ぼさざるを得ません。
原告である阿媽たちの悲しみと怒りを思うと、顔をあげられない思いです。