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台湾元「慰安婦」裁判控訴審判決にあたっての声明

 

 

 戦時中、強制、あるいは騙されて日本軍の性奴隷とされた台湾の女性たちが、沈黙の半世紀を経て後、正義に訴えて戦後補償を求めた裁判を起こして以来、5年が経過した。自らのうちに秘めて、なかったことにして置きたい凌辱の事実を、苦痛に耐えつつ公表し、日本の恥部を指摘した被害者の真摯な叫びに応えて、われわれは彼女たちの裁判を支援してきた。

 国連の人権委員もわれわれと同じ見解を示して日本政府に勧告し、世界の国際法学界も日本政府の人権意識の低さを警告する。だが、第一審は無情にして粗笨(そほん)というほかない文章で判決を示した。それでも、われわれは司法に良心と誤判訂正機能が残っていることを信じたく思うので、控訴した原告犠牲者の支援を続行した。

 しかし、本日このような、他国の人の痛みも、日本国における正義の喪失も感じることの出来ない精神による第二審の判断を示され、この国に住む市民として、正しい裁判が行なわれていない事実が露呈されたことを極めて遺憾に思う。

 今や政府、与野党の多く、また財界も、あげて日本を戦争国家に転換させようとし、そのため、かつて戦争遂行に伴って起こった不法行為の国家責任を不問に付そうとしているかのように見受けられる。不義を訴える犠牲者の嘆きを聞き取るのが司法の本務であるとわれわれは考えるが、日本の司法は政府に与(くみ)することしか考えず、秤の衡平を回復しようとする誠意を欠いていることが明白になった。

 しかし、われわれは信じる。正義は必ず勝つ。正義に逆行する裁判はやがてその破綻を示して、裁く者が裁かれる立場になり、歴史の復讐を味わわねばならないであろう。その日の到来を信じ、われわれは最高裁に訴えるとともに、最高裁よりもさらに権威ある真理の法廷に訴え、女性として、植民地人として、強制的に「慰安婦」とされ、戦後今に至るまで弱き者の立場を押し付けられて来た人々の人権の回復を勝ち取り、かつ日本国が責任を弁える国となって諸国民の信頼を回復する日まで戦おうと決意する。

 

台湾の元「慰安婦」裁判を支援する会

200429