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   女性のためのアジア平和国民基金(以下、「国民基金」)に対する抗議声明


1995年、「女性のためのアジア平和国民基金」は、韓国やフイリピン、台湾における元日本軍「性奴隷」とされた女性たちに対して、国民から募金したお金を「償い金」として渡し、日本政府の法的賠償責任を免れる、つまり「補償に代る措置」として、創設されました。
「国民基金」がスタートした当初から、被害国の被害当事者はもちろん、支援団体などから猛反発を受け、その事業は拒否されました。なぜなら、被害者たちは単にお金だけを要求しているのではなく、自らの女性としての尊厳・名誉の回復を求め、日本政府の公式謝罪と法的責任を果たすことを望み、きちんと賠償をすることを要求していたからです。「国民基金」の欺まん性は、元「慰安婦」だった女性たちに鋭く見抜かれました。しかし、「国民基金」の強引な行動はお金を受け取る人、受け取らなかった人等、被害当事者や支援団体、日本の支援運動間にも亀裂をもたらしました。
台湾では、阿媽たち、支援団体である婦女救援基金会、台湾政府など一致して「国民基金」受領を拒否し、そのために大きなエネルギーを費やしてきました。
「国民基金」は、台湾での事業が2002年5月で期限が切れるため、台湾の大手新聞に「5月1日までに申請するように」という公告を出しました。この「国民基金」のやり方に対して婦女救援基金会も抗議の声明を発表しています。
以下は、私たち支援する会が、「国民基金」に対して送った抗議声明です。

          
         日本政府と「国民基金」への抗議

 私たち「台湾の元『慰安婦』裁判を支援する会」は、1999年7月、日本政府の謝罪と賠償を求めて台湾の「慰安婦」被害者が、東京地方裁判所に提訴した民事訴訟をこれまで2年半にわたって支援してきました。その過程で、私たちは幸いにも原告たちの知遇を得て、被害者たちのことをよく知るようになりましたし、法廷での日本政府側からの準備書面を通して日本政府の主張についても承知しています。台湾の原告たちが日本政府に求めてきたものは、政府による真の謝罪と、法的な賠償です。それに対して、日本政府は一貫して、法律上の賠償はできないと繰り返し主張してきました。

 私たちは「女性のためのアジア平和国民基金」(以下「国民基金」)が先頃、台湾で出された新聞広告を大きな驚きと戸惑いとをもって読みました。広告には、日本政府が「慰安婦」被害者に対して「お詫びと反省の意」を表し、国民とともに「補償の心意」をもって「慰撫金」を支給すると書かれていたからです。日本政府が「補償」をするというならどうして年老いた被害者たちがわざわざ裁判を続ける必要があるでしょうか?

 しかし、文面を読むと、このお金は「補償のつもりで」出すものであり、日本政府は「道義的」な責任を感ずるのであって、「法的責任」を果たすものではないことが分かります。

 元来、法的責任とは義務として最低の基準であり、それすら拒否し続けているものが、どうして、道義的責任をとることができるのでしょうか。私たちはここにはっきりと日本政府と「国民基金」による欺瞞をみることができると思います。

 1995年7月、「国民基金」が設置されたのは、日本政府の「補償に代わる措置」であり、政府の公金をもってする代わりに、民間募金によって見舞い金を支給するというものでした。今回の広告にはその経緯の説明はありませんが、要するに「国民基金」は日本政府の法的な賠償の義務を免れるためのお金というより他ありません。しかし、海外ではお金を受け取らせるために、あたかも日本政府が謝罪し、国民とともに補償するかのような装いをとっています。本当にこれは被害当事者たちを惑わせ、分断するものだと言わざるを得ません。       

 私たちの支援する裁判の原告が、訴訟に踏み切ったのは、決して金銭だけを目当てとするものではないと私たちは考えており、それだからこそ、私たちはこの訴訟を支援しております。植民地統治の下で連行された被害者たちがいま正義を求めて声をあげています。それに対して日本政府と「国民基金」は、金銭でことを解決しようとするのでしょうか。これは被害者に対する侮辱に他なりません。私たちは「国民基金」が台湾での活動を速やかに中止することを求めます。また日本政府に対して、被害者たちが堂々と受け取り、それによって自らの名誉と尊厳を回復することのできる「法的賠償」を行なうよう強く要請いたします。


      2002年2月12日  台湾の元「慰安婦」裁判を支援する会

 

 

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