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日本の「女性のためのアジア平和国民基金」反対運動の展開
金 信 実(挺身隊問題対策協議会 生存者福祉委員長)
★「国民基金」の始まり
1994年8月15日日本政府は敗戦50年を迎えて、当時日本首相だった村山の談話文発表を通して「女性のためのアジア平和国民基金」(以下「国民基金」)が始まった。 この談話の主な内容は、日本軍「慰安婦」問題に対する日本政府の立場を表明する形であって、なかみは加害の対象や責任を明確にしない謝罪と反省だった。結局、村山談話は具体的な謝罪と賠償をしないという日本政府の明らかな態度表示であったわけだ。
またこれを起点として、日本政府は「慰安婦」被害者補償問題が「対日請求権協定」で一段落したという前提で、政府の財源による個人補償を排除したまま、いわゆる「国民基金」設置を通して国民から集めた慰め金200万円、政府の国庫から出る医療福祉金300万円と総理個人の謝罪文を被害者個々人にに伝達することによって、当面の問題の解決を模索した。
★「国民基金」反対の理由
「村山談話」から始まった「国民基金」はわが国の被害者ハルモニたちと挺対協にこれまでの歳月、力に余る闘争をさせてきた。
「国民と政府が協力して補償を」というスローガンをかかげた「国民基金」は次のような意味で国家犯罪としての「慰安婦」問題の犯罪性を隠蔽するものであった。
第1に、「国民基金」は運動の主体であるハルモニたちを憐れみの対象、慈善金の恵みに与る受恵者に転落させ、もう一度、人権を侵害したのである。
第2に、それだけでなく、「国民基金」は猛烈な分裂工作を通して、挺対協と被害者、被害者と被害者の間などを分裂させた。まともでない方法で基金を受け取る過程で、受け取らなかったハルモニも受け取ったといううわさを流し、正当だと言えない施しの過程によって被害者たちの間に不信を助長し、罪のない被害者たちの名誉を毀損した。
第3に、「国民基金」は日本軍性奴隷問題が国家犯罪だという事実を隠蔽するために作られた自国中心主義、帝国主義思想の具体的な表現だという点である。
私たちが「国民基金」に反対し、日本軍「慰安婦」問題の正しい解決のために、日本政府の公式謝罪と法的賠償を要求する理由は、日本政府の責任を問うことによって被害者たちの名誉を回復し、不正な暴力の歴史に対する責任を問うことによって、もっと平和と人権のための歴史を作って行くための日本の意志を要求することである。
それにも関わらず、日本政府が公式謝罪と法的賠償を回避しているのは、結局、自分たちの暴力の歴史を誤りだと認めていないことであり、いつでも自国の利益のために暴力が再び行われることがあり得るという日本政府の態度を示すものであると言える。
それだから昨年のように日本の教科書歪曲の行為が公公然と繰り返して表われるのだということができる。
★「国民基金」を受け取ったハルモニたち
これまでの挺対協の闘争は、「国民基金」の本質を暴露し、被害者ハルモニたちを国民基金の誘惑から守ることに集中した。結局、「国民基金」を拒否する多くのハルモニたちの意志と、挺対協を始めとする国内外の諸団体の「国民基金」阻止の運動を通して、「国民基金」は有名無実な組織に転落してしまった。1997年「国民基金」が極秘のうちにソウル、プラザホテルで「国民基金」を手渡したときに受け取ったハルモニは7名であった。このとき政府に登録されていた被害者ハルモニたちの数は155名であった。
これ以後、4名のハルモニにも支給され、全部で11名の被害者に支給された。これは挺対協が正確に把握している現況である。その後に展開されている状況はまだ私たちは知ることができない。
私たちは日本の「国民基金」が、数名の被害者に金を伝達する過程で、本当に加害国が被害者にしてはならないことをやってのけたという事実を改めて確認した。明らかに外交的な事柄であるにも関わらず、韓国政府が反対しており、彼らの行動が韓国の国内世論にどのように働くかをよく知っていながらも、被害者たちのもういちど傷を負わせるそのようなやり方をしてきた。ここでも、彼らは自分たちには責任はなく、韓国が被害者たちを苦しめているという主張をしてきた。
私たちは日本政府に、国民基金に問いたい。彼らの方法が正当であるとすれば、なぜ、公式的に、公開で近づくことができなかったのか? 夜の客人が他人の家の塀をのり越えるようにこっそりと訪韓し、まるで60年前に韓半島の少女たちを日本軍「慰安婦」として動員して行ったときのように、そんなにこっそりと近付いて来たのか?
★「国民基金」に対する対応
挺対協は「国民基金」に対する強力な反対運動、抗議活動をいろいろな方面で続けてきた。
★募金運動及び韓国政府の被害者支援
挺対協の運動初期に被害者の生活がたいそう困難な状況だったので、まずこの問題を解決するために力を集めた。韓国政府に向かっては、政府が被害者たちのため生活救護措置特別法を制定するように要求する運動を展開する一方、国民を対象にした募金運動をはじめた。
1992年12月<挺身隊ハルモニ生活基金募金国民運動本部>を発足させ、汎国民的1億5千万ウォンを目標に募金運動を展開し、1993年7月にハルモニ26人に250万ウォンずつを支給した。
最初の募金運動に続いて、第2次の挺身隊ハルモニを助ける募金運動は日本の「国民基金」を阻止しようという目的で進められた。
日本政府が被害者たちの大部分の生活が貧しいということをいいことにして、慰めを云々することを防ぐためにものであった。すなわち、「被害者に対する慰めはわれわれがする。日本政府は慰めではなく、法的賠償を実施せよ」であった。このような理由で全国民を対象に挺身隊ハルモニはわれわれが守るというスローガンの下に、<強制連行された日本軍「慰安婦」ハルモニを守る市民連帯>を結成した。その結果、1996年10月から1997年10月まで全国民募金を行い、155名のハルモニに350万ウォンを支給した。
しかし、日本の国民基金側が韓国政府と韓国国民の立場を無視したまま、こっそりと訪韓して秘密の場所で数名の被害者たちと会い、慰め金支給を強行するや、政府の後援で第3次募金が始まった。1997年10月から始まった全国民募金運動は1998年まで60億ウォンを目標に進められた。しかし、IMF寒波によって目標額60億の達成が難しくなると、挺対協は金大中政府に残りの分を支給するように要求し、1998年5月に政府の支援で1人当たり3150万ウォンを支給し、挺対協は第3次募金分の410万8千ウォンを支給した。しかし、この募金の目的が「国民基金」を受け取らないということにあったので、「国民基金」を受け取った一部のハルモニたちは支給対象から除外された。このようにして挺対協は「国民基金」を阻止するための募金額総額3910万ウォンを被害者に伝達した。
★「国民基金」撤回のための挺対協の活動
挺対協は内部的には上のように被害者たちを支援し、生活を安定させ、福祉水準を高める活動を進めながら、外部的には、日本政府が日本軍「慰安婦」犯罪の認定と法的責任を回避するために設立した「国民基金」を解体させるよう活動を展開した。
数百の声明書の発表と集会、被害者たちの記者会見などと私たちの活動は続けられてきた。502回を越え今も続いている水曜デモの場でも毎週、日本の「国民基金」解体を要求する被害者たちの喚声が起こり、ひろがっている。
第1にアジア被害国と連帯しての「国民基金」反対運動展開:1995年2月27日から3月1日、挺対協はソウルで第3回『日本軍「慰安婦」問題アジア連帯会議』(第1回は1992年8月9日〜11日・ソウル)を開催し、被害者たちとアジア被害国はなぜ国民基金に反対するのか、なぜ法的賠償を要求するのかについて決意をともにした。それ以後、アジア被害国は引き続いて日本の国民基金反対運動を展開してきたし、国際舞台でもともに連帯して活動してきた。
第2に、日本の市民団体と連帯して日本政府の国民基金反対運動を展開:1994年村山談話発表以後、そして95年日本の敗戦50周年を期して、日本軍「慰安婦」犯罪に対する日本政府の法的賠償実施と「国民基金」撤回を要求する日本全国の巡回集会をし、日本国会議員との面談、政府官僚との面談、赤十字社の訪問、「国民基金」関係者たちに被害者の立場を伝える等、7年を越える時間を「国民基金」撤回を要求してきた。未だにこの闘いは続いており、この闘いには今も多くの日本の市民団体がともに連帯している。
第3に、国連人権委員会など国際社会に国民基金反対の世論形成:挺対協は日本政府に最も効率的に圧力をかけるみちは国際世論だと判断した。村山談話の発表以後、挺対協は国連人権委員会、国連人権小委員会、ILO、世界女性会議など国際機構を通して反対の立場を公開的に伝達し、国連の特別報告官たちの報告書もいくつかの韓国でも日本軍「慰安婦」問題をとりあげさせるように運動を繰り広げた。
第4に韓国政府に対する活動:挺対協はこのような民間次元での運動と同時に韓国政府が「国民基金」に積極的に対応することを求める運動を繰りひろげた。1996年6月韓国政府は基金に対して事業の中止を要求した。
現在、韓国政府はこの問題に対して日本政府に、「国民基金」は正しい解決の方案ではなく、法的責任があるという立場をとっている。
これは去る3月20日、挺対協共同代表と外務部アジア太平洋局長との面談でももう一度確認された内容である。
もちろん、挺対協は韓国政府がこのような姿勢からさらに一段階積極的に進み、日本政府に国連など国際機構の勧告を履行することを要求するように持続的な活動をひろげている。
★「国民基金」の現在
日本の国民の税金38億円を越える金を投資して、やっと5億円程度の募金をした国民基金、彼らはすでに引き続き存在しなければならない正当性をこれ以上もてなくなった。最も強力に反対している韓国に対して5年間の支給の時効である2002年1月10日になると、国民基金は韓国での事業を延長すると発表した。
これに対応して挺対協は1月14日、抗議文を公表し、日本大使館に伝達し、これを韓国のマスコミが報道した。
そうすると、2月20日、「国民基金」は再び記者会見を開き、韓国の事業を5月1日まで申請を受け付けたあとで終了すると発表し、挺対協も韓国政府もこれに対して反対する公式論評を2月22日発表した。
★私たちの主張
私たちは日本政府がこれ以上日本国民の税金を国民基金のために消耗しないで、即刻解体することを主張する。そして、どうすれば韓国の日本軍「慰安婦」被害者たちを含むアジアの被害者たちに謝罪することができるかをよく考え、それには法的賠償だけが唯一の道であることを、その道は決して避けて通れないということを知らねばならない。
運動が始まって以来、205名の日本軍「慰安婦」被害者が韓国で確認され、以後、今年3月に亡くなった一人のハルモニを含めて63名のハルモニが死亡した。日本政府はこれ以上、解決を引き伸ばしてはならない。
国連の諸勧告から、そして2000年女性国際法廷の判決文が要求しているように、被害者たちに謝罪し、法的賠償を行うことを今一度、強力に要求する。始めから私たちと志をともにして活動してきた日本の市民団体も最後まで、日本に正義をきちんと建て、被害者ハルモニたちに名誉を回復させるその日までともにしてくださるようお願いする。