[投稿]2月13日NHKクローズアップ現代「補助金凍結・基地の町の波紋」を観て
2月13日のNHKクローズアップ現代『補助金凍結・基地の町の波紋』を観て、私は政府の露骨なやり方に、怒りがこみあげてきました。番組前半では空母艦載機59機移駐反対が争点にされた山口県岩国市長選で国の補助金凍結という「ムチ」がどの様に市民を2つに分断し、移駐容認派の福田氏を当選させたのかを克明にレポートしています。後半では、沖縄県金武町で米軍基地での自衛隊射撃訓練受け入れを表明したことに、国の補助金交付が効果があったことを取り上げています。国がいかに補助金という「アメとムチ」を使い、問答無用で「米軍再編」を押し進めているのか、現地住民が基地被害を被っているのかを浮き彫りにしています。
地域のコミュニテイーを破壊する補助金分断政策
最初で取り上げられた岩国市長選が闘われている最中(2月3日〜9日)の様子に焦点をあてている。まず移駐容認派の福田氏の集会に出かけた理髪業の青年に注目する。彼は06年の移駐の賛否を問う住民投票では「反対」に投票したが、国が35億の補助金を凍結し、国との対立が続き、市が発展しないことに嫌気がさして、もし受け入れれば少しは市が発展するかと思い、今回の市長選では賛成派に投票する事にしたという。彼は福田氏に「市を2つに分けないでほしい。暮らしていけない。負けた方の言い分も聞かないといけない」と発言した。福田氏は、支持者たちの支援集会なのに皆から突き上げられているようにも見え、表情も明るくない。市民の苦悩が如実に表れていた。次に、基地周辺地区の自治会長が賛成反対で住民の意見が真二つに分かれたことに対して「悲しいことだ。挨拶や会話をしても、あの人はは賛成派だ・反対派だと、心の中で思ってしまう。誰がこうことにしてしまったのか」と話した。国の「アメとムチ」分断政策が地域のコミュニテイーを破壊している。その深刻さは私の想像を遙かに超えるものであった。
「今でも頭のてっぺんから足下まで全部基地です」
次に沖縄県の米軍基地キャンプハンセンがある金武町に「米軍再編」計画の中で陸上自衛隊の共同使用を受け入れさせる国の説得工作をレポートしている。金武町は1年半にわたって拒んできたが、昨年11月に受け入れを表明した。基地周辺の女性は、騒音(射撃演習の爆音など)で不眠症になり睡眠薬を手放せなくなっている。自衛隊が来れば訓練の時間がさらに増えるのではないかと不安になっている。彼女は「これ以上受け入れたら大変です。今でも頭のてっぺんから足下まで全部基地です」と絶望感に打ちひしがれていた。
防衛省職員が直接乗り込み、卑劣な懐柔工作
なぜ町は受け入れに転じたのか。国は昨年8月に沖縄防衛施設局に金武町をはじめ周辺市町村の米軍再編に関わる担当者を集め、「再編をスピーディーかつ円滑にやる交付金だ」とはじめて今年度総額51億円の米軍再編交付金を説明した。内容は「受け入れ表明で10%、移転に向けた工事が始まれば66%、実際に訓練や運用が始まれば100%払う」という露骨なものである。その2ヶ月後、国は再編交付金を渡す33の自治体を発表したが、反対の態度を崩さなかった7つの自治体は外され、その中に金武町も入っていた。11月5日に国の決定を受けて金武町の全員の議員が議会に集まった。交付金をもらえなくても受け入れに反対を決議するためだった。そこに5人の防衛省の職員が来ていた。3日前に「再編計画を詳しく説明する」と理由を付けて来たものだった。国は「再編交付金を一端0と通告したが、今からでも間に合う、100%支払う用意がある」という懐柔工作だった。ある議員は「住民の負担を馬鹿にした。金をちらつかせたいいぶりだった。アメとムチみたいな」と憤る。
交付金は基地の町にハコモノと借金を押しつけるもの
さらに国は、従来も1億2千万円の交付金も出していると、町の財政が交付金に頼っていることにも言及した。ある議員は「反対を続けると岩国みたいに他の補助金も凍結されるんじゃないかと不安になった」と話した。国は「今回の補助金は、ハコモノだけでなく、教育・福祉・健康スポーツに使えるソフトなものだ」と懐柔した。たしかにこれまでの補助金は使途がハコモノに限定されていたが、米軍基地再編推進法に基づく再編交付金は、それ以外にも使えるという。議員たちも町民のために使えると言って反対を表明せず、町は受け入れを表明し、10年間で9億6千万円が支給される見込みとなった。だが、これまで交付金に群がった利権構造とハコモノの維持費、自治体の負担分捻出のために発行した地方債の返済費用などを考えれば、使途は決まっているようなものだ。国は「アメとムチ」で町を押しつぶしていったのだ。
(2008年2月20日 KB)