日本政府への緊急要請


 2001年9月11日。ハイジャックされた民間航空機が、ニューヨークの「世界貿易センター」ビルに激突、富と繁栄を象徴する巨大なビルが炎上・崩壊し、同時に5千人以上の市民と乗客が犠牲になりました。その映像は繰り返し放映され、世界中の人々に痛ましい記憶として焼き付けられました。
 ブッシュ大統領は、同時多発テロに対する報復戦争を同盟国に呼びかけ、「自由と民主主義を守る正義の戦い」と宣言し、アフガニスタン戦争を開始しました。そして、EU諸国も「集団自衛権」を理由に参戦しました。日本政府は「ショウ・ザ・フラッグ(日の丸を見せろ)」と言う米国の強い要請に応えるように、自衛隊法を改悪し、テロ対策法を制定し参戦準備を進めています。
 キリスト教圏の欧米諸国とアラブ・イスラム社会の全面衝突は、第三次世界大戦の撃鉄をひくことにつながりかねません。このような狂気が世界を席捲することに、私たち沖縄県民は底知れぬ恐怖を感じています。
 アラブ・イスラム社会の千年以上にも及ぶ戦争の歴史、大地を奪われ家族や同胞が殺されていく悲惨、差別と抑圧の苦難と怨念は私たちの想像を絶するものがあります。報復戦争をやめさせ、このアラブ・イスラム社会の歴史の事実を重く受け止め、富を分かち合い貧困をなくしていく努力にこそ、平和的解決の糸口があると思います。市民が殺され、老人や子どもたちが瓦礫の中で餓死していく悲惨な状況のどこに「正義と平和」があるのですか。いかなる理由があろうとも、自らの命を軽んじた自爆テロや、組織テロ、国家の報復テロなど、どんな暴力もあってはなりません。なぜなら、人々の幸福は、さまざまな暴力により常にうち砕かれてきたからです。
 この50年間の米国政府は、朝鮮戦争、ベトナム戦争、湾岸戦争、そしてユーゴ戦争を仕掛け、今度は「善と悪の戦い」「新しい戦争」だと暴言しアフガン戦争を始めました。そのたびに沖縄の基地から爆撃機が出撃しました。爆弾が投下される国の向こうに、この島の基地の影が重なるようです。ゆえに押しつけられた在沖米軍基地がテロの標的になる可能性は大きいと言わざるをえません。しかし、テロの恐怖以上に、多くの命を奪い、悲惨を繰り返す戦争への加担を否応なく強いられることの辛さ、やめさせることのできない悔しさ。これがこの沖縄県民の現実の声なのです。
 テロ発生の6日前に、アメリカ政府は「沖縄など、在日米軍基地にテロの危機が迫っている」との情報を日本政府に知らせたようですが、沖縄県民には知らされたなかったようです。日本政府の卑劣な仕打ちに憤りを感じました。
 しかし、50年以上もの長きに渡り米軍基地と共に危険を押しつけられ、差別され、米軍の卑劣なやり方に歯斬りしながら耐え、平和・人権・環境を守るために闘ってきた、私たちウチナーの先人たちは、私たちに最も崇高な教えとして『命どぅ宝』を語り伝えてくれました。いまこそ世界中がその事に目覚め、平和と共に生きる世界をめざすべき時ではないでしょうか。人類は、何千年にもわたり戦争、殺戮、破壊を繰り返し、いったい何時になったら、「もう、うんざりだ」と言って武器を捨てるのでしょうか。
 今こそ日米両政府は、『命どぅ宝』の精神をもって、正しい方向に進路を変え、平和と調和の中に生きることのできる、国際政治と外交を行うべきです。

私たちは、日本政府に怒りの抗議をすると同時に次の事を要請します。
一、私たちは「テロ対策特別措置法案」「自衛隊法改正案」に反対します。
一、日本政府は憲法9条の精神を尊重し、武力によらない「平和と共生」の世界秩序の回復に努力してください。

2001年10月16日

東アジアの平和・人権・環境を守る沖縄満月まつり実行委員会
代表 高江洲 あやの
心に届け女たちの声ネットワーク
代表    国政 美恵



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