集会報告−−−−−−−−−−−−−−−−−−
韓国の反基地・反戦平和運動との連帯を目指して
2002年燃え上がった反基地闘争、広がる反米闘争
韓国からの報告
駐韓米軍犯罪根絶運動本部事務局長
李韶熙(イ・ソヒ)さん講演会 |
(1) 年末だったにもかかわらずたくさんの方が集まってくださいました。参加者は100人を超えました。参加者全員が上映されたビデオに、李韶熙さんの講演に、真剣に見入り聞き入るという感じでした。
参加者の顔ぶれも多彩でした。在日韓国・朝鮮人の方々、沖縄出身の方々も多数来られていました。京都や金沢、東京など遠方から来てくださった方もいました。
韓国で起こっている事態の大きさと駐韓米軍犯罪根絶運動本部・李さんの活動が多くの人を会場に引き寄せたのです。民衆の力で新たな大統領を誕生させた韓国のパワーに触れ、学びたいと思った方が多くいたことと思います。今の日本の閉塞状態を何とかしたいというのは、いろいろな分野で苦労されているみなさんの共通の願いではないでしょか。李さんの講演から何かを得ようと、最後まで集中して熱心にお話を聞かれていた参加者のみなさんの様子が心に残りました。
(2) 駐韓米軍犯罪根絶運動本部事務局長の李韶熙さんは、2人の少女がれき殺されるという事件が起こったその時から半年間、この問題を追及し運動に大きな役割を果たし続けています。事件が起こってからちょうど半年、しかも大統領選を終えた直後という大変タイミングがいい時にお話を伺えたことを幸いに思います。
事件はワールドカップ開催という時期に起こりました。マスコミも、誰も見向きもしなかった時に、事件翌日一人で現場を訪れ、家族に会い、周辺の人にインタビューをし、インターネットニュースで第一報を流したのが李さんでした。事件当初、凄惨な事件であったにもかかわらず、韓国政府もマスコミも意図的にもみ消そうとしました。そのような中でこの事件が広く韓国民に知られ大きな運動につながったのは、遺族と、李さんのように初期から事件にかかわったごく少数の人が、粘り強く米軍を追及し抗議し情報を流し続けたからです。汎国民対策委員会の方も「初動がよかった」と高く評価されています。
私たちは、海外での大きな運動を目の当たりにしたとき、ともすれば運動の高揚にだけ目が行き、憧れや落胆に陥りがちです。経過を知らなければ、何か自然発生的に運動が高揚したように思いがちです。しかし、今の韓国の運動は、本当に、まねのできない気の遠くなるような苦しく長い地道な活動によって導き出さされたものなのです。そのことが李さんの講演でよくわかりました。
(3) ワールドカップの歓声にかき消されそうになりながらも、必死に抗議の声をあげ続けた6月から半年が経ちました。状況は事件当初と全く違います。事件の真相解明、ブッシュ大統領の直接公開謝罪、SOFAの抜本的改定は、国民全ての要求事項になりました。
李さんは運動の変化を冷静に客観的にとらえています。そして、今、自分たちが取り組んでいることは、米軍が駐屯する全ての地域、国にとっても重要な問題であることを意識され、だからこそ、どんなに困難であっても要求を実現させるために努力すると力強く言われます。地位協定(SOFA)の改定の核心である公務中の事件・事故の裁判権委譲問題は、アメリカと地位協定や相互軍事補給協定などを結んでいる80カ国共通の問題です。米・日・韓政府が、地位協定を改定しない理由は「世界のどのSOFAにも前例がない」ということのみです。ならば、米軍が駐屯する地域・国が一丸となって地位協定を問題にすることが必要です。
11月2日、沖縄では海兵隊少佐による女性暴行未遂事件が起こりました。事件が公になったのは12月3日。県警が逮捕状をとった時です。それから日米合同委員会で身柄引き渡しを要求しましたが、アメリカは拒否しました。日本に身柄が引き渡されたのは逮捕状が出てからなんと17日後のことでした。この間少佐は基地内で通常業務に就いていました。犯罪者を犯罪者として拘束できない。このようなことが日本でも繰り返し起こっています。韓国の現在の運動と連帯して、地位協定の不条理、不平等性を訴え、米軍犯罪を徹底して追及することが必要だと思います。
(4) 李さんのお話を通して、駐韓米軍犯罪根絶運動本部の活動の一端を知ることができました。事件が報道されたり、運動本部に通報があったりしたら、即座に現場にかけつけ、徹底した調査を行うとのことです。時には検死にも立ち会うそうです。被害者に寄り添い、数ヶ月から数年間一つの事件を追い続けます。
犯罪を犯した米兵の追跡調査も行います。被害者のことも、加害者のことも忘れないためです。米軍と韓国政府によって事件がうやむやにならないようにあらゆる努力をしています。日常的に米軍問題について訴える工夫もされています。
毎週司令部前で行う金曜集会は400回に達しました。ここに来れば米軍問題について語れる、共に考えられるという場を提供し続けています。
今回はいくつかの条件が重なり反基地闘争が爆発的に広がっていますが、ここに至るまでには、たくさんの悔しい思い、悲しい思いがあったことを知りました。いくつもの事件事故がありその追及があり、多くの人に知られないまま埋もれてしまった被害者が多くいるとのことでした。泣き寝入りを強いられた被害者やその家族のためにも、今、SOFA改定と米軍犯罪根絶のために一生懸命運動されているのだと思います。
これだけ徹底して米軍犯罪を追及する運動団体は、残念ながら今の日本にはありません。沖縄の女性団体や、被害者の会が努力はされていますが、支援が少ない中で一つの事件を追及するだけで精一杯です。日本で、駐韓米軍犯罪根絶運動本部のような組織をつくることは課題です。
(5) 今回の講演会の最大の収穫は、新たなつながりができたことかもしれません。
韓国の反基地闘争・反米闘争を担っていらっしゃる運動本部の事務局長である李さんと出会えたこと、李さんをサポートしながら日本との架け橋になってくださっている複数の方々と出会えたこと。これらの方々全員で共に講演会という一つの場をつくれたことを大変うれしく思っています。
講演会に向けて、沖韓連帯の方、在日の方々とも知り合えました。沖縄の方、沖縄出身者の方にもご協力いただきました。
新たな出会いを大切にしながら、韓国との連帯運動を考えていきたいと思います。
(6) 運動は一直線では進みません。いつも前進ばかりではありません。とうとう警察が弾圧に乗り出しました。12月31日の大規模蝋燭集会の参加者が家路に着くころの1月1日午前6時、光化門広場前で続行している“追慕座り込み”に警察2個中隊が出向き、参加者たちを強制的に解散させました。そして9人を連行しました。2日、警察庁長官は「1ヶ月間追悼行事を見守ってきた結果、単純な追悼行事の範囲を逸脱して不法デモの様相を見せている」「これからは反米集会を厳しく処断する」と今後強行鎮圧していくことを宣言し、3日からソウル世宗路交差点や外国大使館(アメリカ大使館)から100m以内の場所での集会を禁止し、「違法行為の首謀者と関連者」を処罰すると通知しました。
警察発表に呼応するように、インターネット上でも蝋燭集会の性格と方法を巡って論争が起きました。汎国民対策委員会主導の蝋燭集会は、「反米を主張しすぎ」「米軍撤収をいいすぎ」ているとし、独自の「反戦・平和」蝋燭集会を開こうという呼びかけがでてきました。汎国民対策委員会に反対するものではなく、ただ単に考えの違いだということですが、蝋燭集会が二分されることには違いありません。朝鮮日報、中央日報など、これまで蝋燭集会に冷淡だったマスコミは、こぞって『蝋燭集会に変化のきざし』『今後鎮圧』などと書き立てています。
警察の弾圧方針が出された後の1月3日は、12月から毎日行われていた京畿道の蝋燭デモや集会が初めて1件も実施されませんでした。4日は、汎国民対策委員会の蝋燭集会とインターネットで呼びかけられた蝋燭集会とが別々に行われました。参加者は共に激減してしまいました。
運動が長期にわたり、とにかく多くの人が参加していることから、今、運動をどのような方向に導いていくかという論議が起こるのは当然です。まして、警察が強権的に弾圧しようとしているのですから、逮捕者を出さず自分たちの主張をどのように貫いていくか、様々な判断が問われる時だと思います。そういう時を狙って、韓国政府、警察は、運動の分断し、反米闘争を沈静化しようと画策しています。任期わずかな金大中大統領の仕事は反米闘争を押さえ込むことなのでしょう。運動にとって困難な時が訪れようとしているのかもしれません。
しかし、汎国民対策委員会など反基地・反米闘争を担っている人々は、挫けてはいません。汎国民対策委員会は、強制排除があった1日に即糾弾声明をだし、翌日から“追慕座り込み”を続行、また、強制解散糾弾の一人デモをはじめました。毎月1回“自主平和大会”を開くことを決めています。
民主弁護士会は、ソウル行政法院に対して、れき殺事件捜査記録公開訴訟を起こします。れき殺事件の真相を明らかにすること、SOFAの問題を浮き彫りにし改定の方法を模索することを目的としています。
連日多数が集まって蝋燭集会等をすることは少なくなるかもしれません。これからは、事件の真相解明とSOFAの具体的な批判、新大統領への要請行動など地道な活動に重点が移るのかもしれません。韓国の人々は、5万、10万人が結集した、1ヶ月連続した行動をしたという成果と自信をもとに、新たな運動を切り開いていくことでしょう。
(7) 拉致問題以降エスカレートした異常な反北朝鮮キャンペーン、民族排外主義の拡大とどう闘うのか。ブッシュ政権による対北朝鮮「封じ込め」政策とどう闘うのか。米日韓の同盟関係とその軋み、朝鮮半島をめぐる情勢をどう捉えるのか。日本の運動と韓国の運動との具体的な連帯のあり方はどうあるべきか。つまるところ沖縄の中に封じ込められてきた米軍基地問題を「本土」がどう受け止め、その閉塞状況からどう脱却を図っていくのか。とりわけ秒読み段階に入った米の対イラク攻撃に反対する闘いと北朝鮮に対する戦争挑発政策に反対する闘いを、どう並行させて闘うのか。等々。−−集会を準備する過程で、また集会当日の様々なご意見やご質問の中で、残された課題は山積みとなりました。焦らず、しかし着実にこれらの諸課題に一つ一つ取り組んでいこうと思います。
(8) 最後になりましたが、集会の場で、李さんに国際署名577筆、会場カンパ6万15円(運動本部あて)、メッセージ布を直接お渡ししました。
この集会の報告については、李韶熙さんの講演録を中心に、「集会報告集」としてパンフレットにまとめる予定です。集会に参加できなかった更に多くの皆さんにも、韓国の運動に触れて頂こうと思うからです。
集会に参加された皆さん、署名やカンパに協力いただいた皆さん。集会の成功は、私たちの運動を理解いただき、支えてくださっている多くの方々のおかげです。改めてこれまでのご協力に感謝するとともに、新年を迎え新たな気持ちで、韓国の運動との連帯、更には対イラク戦争阻止のために奮闘する決意です。
2003年1月8日
アメリカの戦争拡大と日本の有事法制に反対する署名事務局
この日も街頭で対イラク戦争反対のビラまきを行った。
2002年 燃え上がる反米・反基地闘争:韓国からの報告
韓国と日本の運動の連帯を強めよう
駐韓米軍犯罪根絶運動本部事務局長
李韶熙さんをお迎えするにあたって
2002年12月28日
アメリカの戦争拡大と日本の有事法制に反対する署名事務局
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1.大統領選−−反基地・反米闘争の大きな成果。
12月19日、新千年民主党の盧武鉉(ノ・ムヒョン)候補が熾烈な接戦を制して当選しました。私たちは、韓国大統領選の結果を心より歓迎します。盧候補の勝利はその差57万票という数字では言い表されない非常に重要な意義があると思います。
何よりも今回の大統領選は、韓国の反基地・反米闘争の成果であり、平和を願う全ての韓国民衆の成果です。6月13日に起こった2人の少女ひき殺し事件に抗議し、ブッシュ大統領の謝罪と韓米地位協定SOFAの抜本的改定などを求めてきた人々の熱意あふれる運動が、ついには大統領選をも突き動かしたのです。反米世論の荒波は、SOFA改定やブッシュが推し進める北朝鮮封じ込め政策の是非を大統領選の中心的争点に押し出しました。そしてSOFA改定は国民的な合意となり、「太陽政策」の破棄=北朝鮮強硬政策に対してはNO!という答えを突き付けました。
反米運動の高揚は、民主労働党の前進という形でも明らかになりました。権永吉(クォン・ヨンギル)候補は100万票近くを勝ち取り進歩勢力を大いに元気付けました。
ハンナラ党・李会昌(イ・フェチャン)候補に総結集した韓国の財界や保守反動層、復古主義的な軍国主義勢力は敗北しました。「暗い過去を復活させるな!」−−多くの韓国民衆、特に若者たちが怒濤のように動き、最後の最後に鄭(チョン)代表の裏切りで窮地に立った盧候補をぎりぎりのところで当選させました。若者たちがインターネットのパワーを見せつけたのです。
盧候補の勝利は、南北分断を固定化し、南北対話と自主的・平和的統一の流れを逆行させようとする勢力に手痛い打撃を与えました。米は、対米追随と対北朝鮮強硬政策を掲げるハンナラ党候補を露骨にバックアップし、大統領選に公然・非公然に介入していたのです。韓国民衆は、「北朝鮮脅威論」を煽り続けた韓米の保守反動勢力を跳ね返しました。
盧候補の勝利はブッシュ政権の敗北でもあります。米は出鼻を挫かれた形になりました。対イラク戦争を目前に控えての米の敗北は、韓国の民衆だけではなく、全世界の平和を願う民衆にとっても大きな意味を持っています。イラクを片づけ、次は朝鮮半島を緊張させ東アジアに戦争政策を持ち込もうとしていたからです。もし親米・親ブッシュのハンナラ党が勝利していたらどうなるか。こう考えるだけでも今回の勝利の意義は明らかでしょう。
2.大統領選を突き動かした反米闘争。若い息吹と新時代の予感。
11月20日米兵の無罪判決直後から急速に反米感情が高まりました。6月の事件当初は関心を持っていなかった人々も運動に参加するようになりました。「殺人者が自国の法律で裁けない」「普通の国と思っていたのに自分の国には主権がなかった」「未だに占領下なのか」と、米兵無罪判決は韓国と駐韓米軍、韓国とアメリカの関係を国民の前にさらけ出すことになりました。
「政治には無関心」と言われていた若者たちや一般市民が地殻変動を起こすかのように運動に参加し始めました。マスコミで「世代間の闘い」と呼ばれるほどです。彼ら彼女らは「運動に参加するのは特別なことではない、自然なこと」と言います。多くの人々が自発的に行動し、反米闘争は日に日に大きくなり、全国に広がりました。一市民がインターネットで提起した蝋燭行進・蝋燭集会が爆発的に広がり連日行われています。運動は、公開質問書を突きつけ、候補者たちを揺さぶって、SOFA改定を大統領候補者たちに約束させました。候補者たちは、アメリカに対して、北朝鮮に対してどのような姿勢をとるか明確にしなければならなくなったのです。
反米闘争を担っている若い世代が、大統領選にも大きな影響を与えました。投票まであと8時間という時に、国民統合21の鄭(チョン)代表が盧候補支持を撤回。その後一晩中インターネット上で情報が駆けめぐり、「反ハンナラで結束しよう」と呼びかけや議論が行われました。そしてインターネットをみた若者たちが19日午後大挙して投票に行きました。盧候補の当選はこの若者たちの支持に負うところが大きいのです。韓国を軍事独裁政権に戻さないという若者たちの熱い闘いが韓国の政治と社会を変えつつあります。
3.大統領選は通過点にすぎない。日々大きくなる反米運動。
新たな大統領を自らの力で誕生させたことで、さらに運動に弾みがつきました。反基地・反米闘争の勢いは衰えることを知らないかのようです。
「過去最大の反米集会」だった12・14汎国民10万人集会以降も、光化門での蝋燭集会・ハンストは毎日続いています。31日にもさらに韓国史上最大をめざして汎国民行動(韓国内100カ所、世界20カ所で予定)が準備されていて、それに向けて21日、24日、25日、28日に蝋燭集会、キャンドル行進、キャンドル人間の鎖等々が行われます。21日は、新大統領に対してSOFAの改定を早期に実施するよう公開要求書を集会の場で採択し、早々に新盧大統領に対しての要求を打ち出しています。
韓国の反米闘争にとって大統領選は通過点にしかすぎません。SOFA改定も、ブッシュの誠意ある直接謝罪も、米兵の処罰も、何一つ解決されていないからです。それならば層の厚い幅の広いエネルギーあふれる大衆運動で、自らの要求を克ち取ろうと、途絶えることなく次々と行動が提起されています。連続した行動とその成功、盧大統領の誕生によって、運動を担う人々はさらに自信をつけ、日々邁進しています。
4.対イラク戦争と対北朝鮮封じ込め−−敵は同じブッシュ政権。
6/13事件と対イラク戦争−−一見すると別々に見えるこの2つの事柄は、実は同じものの2つの異なった現れに過ぎません。
韓国で起こった6/13の女子中学生轢殺事件も、韓国内で頻発する米軍による事件・事故も、また沖縄をはじめ在日米軍基地周辺で多発する米軍による事件・事故も、これら全体が、東アジア全体で激化している米軍の軍事演習を背景にしているのです。そして今まさに遠く離れた中東の地に大規模な兵力を集結させ襲いかかろうとしているイラク侵攻と密接不可分に関係しているのです。根は同じブッシュ政権であり、その戦争政策です。軍産複合体と石油メジャーから成るブッシュ政権の「戦争マシーン」が全世界で轟音を響かせているのです。
米によるイラク攻撃が始まれば、韓国、沖縄・「本土」を問わず、米軍基地のある全てのところで、非常態勢に入るでしょう。昨年の9・11が紛れもなく示したように、米軍基地周辺は一触即発の緊張状態になります。いわば「有事体制」と言ってもいいでしょう。在韓米軍、在沖米軍、在日米軍は一斉に運動する私たちに向かって事を構えるでしょう。韓国政府と日本政府が運動への弾圧を強めることは必至です。
韓国の民衆と運動、日本の民衆と運動−−この2つはブッシュ政権の戦争政策を主敵とすることで、一番深いところでつながっているのです。
5.日本の民族排外主義の流れに抗して、北朝鮮敵視政策に反対しよう。
金正日政権は日本人拉致を認めました。これは明らかに国家による重大犯罪です。全ての詳細情報を明らかにし真相究明に協力すべきです。また被害者への謝罪と補償についても解決すべきだと思います。
しかし、さあこれからという時に、小泉政権は突如「平壌宣言」を破棄し、「一時帰国」という約束を破り、国交正常化交渉に向けた取り組みを中断させ、方針を急転換させました。日朝交渉は完全に行き詰まってしまったのです。直接の原因は「被害者本人の意思に関わらず、政府判断で(滞在)延長をした」という小泉政権の決定にあります。
小泉政権はなぜ方針を急転換させたのでしょうか。その背景を探ることで、実は誰が日朝間の対話、平和と緊張緩和に反対しているのかが浮き彫りになってくるのです。
先ず第一に、政府・与党の中の最も軍国主義的で反動的な勢力、「拉致議連」、右翼マスコミと右翼論壇です。彼らは「拉致」問題を千載一遇のチャンスとみて、ここぞとばかりに反北朝鮮キャンペーンを張り、日本国民全体を民族排外主義で染め上げ好戦的にさせようとしているのです。「軍事力で北朝鮮を叩き潰せ」といった論調も出ています。
第二に、ブッシュ政権による圧力です。米はクリントン政権時に交わされた「米朝枠組み合意」を一方的に破り、北朝鮮封じ込めと緊張激化政策を一段とエスカレートさせています。核開発疑惑をわざとリークし、日朝国交正常化交渉にくさびを打ち込んだのです。米側が原油供給を停止し朝鮮半島エネルギー開発機構KEDO枠組みを不履行に陥らせたことが、北朝鮮をして対抗措置に走らせているのです。どちらが「米朝枠組み合意」を先に破棄したのか明らかです。
小泉政権、「拉致議連」と自民党、右翼論壇と全てのマスコミが一体となった異常な反北朝鮮=民族排外主義キャンペーンは、在日朝鮮人・韓国人に対する根強い民族差別を呼び覚ましています。朝鮮初中高級学校生徒や日本の学校に学ぶ多くの在日の子どもたちへの差別と迫害が拡大しています。
今こそ私たちが声を挙げるときです。右翼反動勢力とブッシュ政権が主導する限り、「拉致」問題は一歩も前進しません。北朝鮮封じ込め、あるいは武力行使さえ辞さないというような日本の右翼反動や米政府の圧力をはねのけて、真の意味で両国間の善隣友好関係に立脚する国交正常化交渉を進めるよう要求しましょう。
日朝間の自由な行き来を実現することなしには、また日本政府が過去の植民地支配と侵略戦争の責任を認め、被害者個人に対する謝罪と国家補償を行うことなしには、対話は一歩も前進しません。
事の根底には、幾百万、幾千万もの朝鮮人民から土地と農地を奪い財産全部を奪い、挙げ句の果ては文化と教育と名前までをも奪った天皇制日本、自分の侵略戦争に兵士として徴用し強制連行により労働力として酷使し従軍慰安婦として性をも奪った天皇制日本の戦争犯罪があり、それを真正面から認め、心から謝罪し反省することなしには、本当の意味で、国交正常化に向けて前進することはできないでしょう。
6.韓国の運動のエネルギーが沖縄へ、日本へ。
韓国の反米闘争は、沖縄を勇気づけ、私たちを元気づけています。在日の人々の活発な活動にも大きな影響を与えています。
沖縄では「このまま黙っていてもいいの?」と沖縄の基地問題、韓国の運動、「北朝鮮問題」、イラク攻撃等々についてのシンポジウムや、12/14の抗議集会に参加した人たちによる報告会が準備されています。大阪や東京の沖縄出身のみなさんも何ができるか、何かしようと議論されています。米軍基地や地位協定という共通の課題を韓国の人々と共に取り組もうという動きが活発になってきているようです。
韓国の抗議行動について、日本では意図的とも言える“報道規制”が続きましたが、12/14の大規模集会は大きく取り上げられました。やっと、2人の少女の轢殺事件もそれに対する韓国内の抗議行動についても広く知られるようになりました。日本での本格的な連帯行動はこれからです。
7.朝鮮半島と日本、東アジア全体の平和のために−−韓国の運動と日本の運動との連帯を求めて。
今回、女子中学生轢殺事件の抗議行動・SOFA改定の運動等々の中心を担われている駐韓米軍犯罪根絶運動本部事務局長の李韶熙さんを、お迎えすることができたことを大変うれしく思います。この出会いは一体何を意味するのか。私たちは改めてその意義を整理してみたいと思います。そして今日のこの集会を新たな出発点として韓国の反基地・反米闘争と沖縄・日本の反基地・反米闘争の連帯をより一層強めたいと思います。
朝鮮半島の情勢は日本の情勢と直結している−−私たちは改めてこのことを痛感させられました。南北間で軍事的、政治的に緊張が激化すれば、それは日本の軍国主義・反動勢力が勢いを増し、日本国内の反動化もエスカレートします。この密接不可分の関係は、この10年だけを取ってみても、1993〜94年の核開発疑惑以降、「安保再定義」、日米ガイドライン、周辺事態法、そして有事法制という形で推進されてきました。
しかし私たちが今日ここで確認したいのは、「直結」と言っても、運動の「直結」です。盛り上がりに欠ける日本の運動に勇気と意欲を沸き立たせてくれたというだけではありません。韓国と日本の反戦平和勢力が連帯し、南北間の対話と緊張緩和を推し進めることができれば、朝鮮半島情勢も、日本の情勢も、更には東アジア情勢全体をも大きく変えることができるに違いない、そう思ったからです。韓国で盛り上がる反米運動と大統領選挙の結果は、私たちにそういう一つの方向性を指し示したのではないでしょうか。
戦争と平和の問題を狭い日本一国の問題として限定して捉える時代は過ぎ去ったと思います。少なくとも韓国と日本の運動が交流を積み重ねていけば、この問題意識は両国の反戦平和の市民運動の仲間の中に根付いて行くでしょう。
アメリカの軍事戦略と戦争体制、アメリカの東アジア戦略と米日韓の軍事同盟、東アジア規模のグローバルな軍事介入と軍事演習−−世界中に戦争を拡大するブッシュ政権の戦争政策こそが、韓国と日本の運動の基盤が同じだと気付かせた根源とも言えるでしょう。
反戦平和をめぐる個々の課題も、韓国の民衆と私たち日本の民衆の間で共通したものになりつつあります。地位協定の抜本的改定、新たな基地建設・新規接収を阻止すること、北朝鮮封じ込め政策に対抗すること、自国の軍隊による対米軍事加担・参戦を阻止すること、そして何よりも秒読み段階に入った対イラク戦争を阻止すること−−敵は一つ。ブッシュ政権とそれに同調する自国内の軍国主義・反動勢力です。
私たち全員がそう感じるように、韓国の運動と日本の運動はあまりにも著しいアンバランスです。韓国の運動の前進が韓米の対北朝鮮強硬政策を挫折させ、それによって日本の軍国主義・反動勢力の好戦的な思惑を挫いているのが現状です。日本の反戦平和運動の弱さを彼ら韓国の運動が助けてくれているのです。
もちろん盧候補が勝利したからと言って、これからも自動的に運動の前進が保証されているわけではありません。ここ数日のマスコミ報道には新大統領が、対米関係配慮を前に出している傾向が見受けられます。米政府筋の中には「李候補が当選したらますます反米闘争が高まっただろうが、盧大統領ならかえって反米左派への押さえが利くから扱いやすい」という論調もあるほどです。「辛勝」であることに変わりはありません。結局は、今後の運動の力とエネルギーこそが、これからますます明らかになる新大統領の限界や後退を乗り越えるバネになるでしょう。韓国の運動は絶対やり遂げるだろう、私たちはそう確信します。
問題は私たちの方です。日本の運動は、韓国の運動が与えてくれたチャンスをどう生かすか、それが問われているのだと思います。韓国と日本の民衆と運動の連帯をより一層強めましょう。韓日の反戦平和運動の連帯した力で、ブッシュの対イラク戦争を阻止し、朝鮮半島での戦争挑発政策を阻止できれば、朝鮮半島と東アジアだけではなく、世界平和に大きく貢献することになるでしょう。私たちは、韓国の運動からも大いに学び、韓国の運動に負けない運動をこの日本でも作っていきたいと思います。
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