イラク戦争での劣化ウラン弾の使用に反対する世論を拡大し運動を強めるために、4月2日「劣化ウラン戦争反対!小泉政権はイラク攻撃を支持するな!有事法制反対!4・2緊急院内行動」として、衆議院議長への署名提出と院内集会を行いました。アメリカがイラク戦争で劣化ウラン弾を使用していることを明らかにしたことをうけて緊急に提起したもので、イラク戦争開始後に劣化ウラン弾反対を正面に掲げて院内で行われる集会としては初めてのものです。 当日は午後1時から議員に働きかけ、社民党議員に署名提出の依頼を行うとともに、民主党議員、公明党議員には劣化ウラン弾反対とイラク戦争支持反対の立場をとるよう要請行動を行いました。3400名分の署名を提出し、これまでの提出署名の総数は16631名分となりました。この行動には20名を越える人たちが参加しました。 午後3時から開催した「院内集会」には、60名を超える参加者があり、50名定員の会場が熱気であふれました。 イラク戦争での開戦初日からの劣化ウラン弾使用状況と、バグダッド地上戦・市街戦が始まった場合の比較にならない危険性などを署名事務局から提起し、院内外で反対の声を広げるための論点を提起しました。この論点は、議論をふまえ、「質問主意書」として作成する予定です。そして美浜の会からは劣化ウランによる放射能汚染と深刻な被曝被害の実態の報告、劣化ウラン研究会からは湾岸戦争の後遺症などに関する現地の報告などがありました 会場には阿部とも子議員、山内恵子議員、福島瑞穂議員が駆けつけ、社民党議員・民主党議員の秘書が参加しました。阿部、山内両議員からは、昨年イラクを訪問した時の子どもたちの深刻な状況の報告など、福島議員からは、戦争に浮かれる小泉首相と国会の異様な雰囲気の批判と、有事法制を強行しようとする政府自民党の批判などの発言がありました。 意見交換と交流では、劣化ウラン弾に反対して活動している人、森住氏の写真集を議員全員に配布する活動をした人、テロ特措法違憲訴訟を進める人、日本の戦争責任を追及する人、教育反動と闘う人、沖縄と全国の反基地の運動を進める人、反原発運動を進める人など首都圏を中心に全国からの参加者の発言がありました。 今回の行動を新たな出発点として、劣化ウラン反対、イラク戦争支持反対、有事法制反対の闘いを院内外で進めていくことを確認しました。
2003年4月3日
[集会基調]
議事次第 (1)主催者あいさつと基調提案 (2)イラク戦争における劣化ウラン弾使用の事実 (3)劣化ウランによる放射能汚染と深刻な被曝被害 (4)イラク・バグダッドの被害状況 (5)有事法制強行成立の危険性 (6)意見交換、運動の交流と今後の取り組み アメリカは3月26日、イラク戦争における劣化ウラン弾の使用を認めました。イラク戦争は劣化ウラン戦争=放射能戦争であることが明らかになりました。直接の殺りくだけでなく、ガン、白血病、先天性障害などで長期にわたって深刻な被害を生みだすことになります。即刻この戦争を中止させなければなりません。この許し難い事実を内外に明らかにし、戦争を即刻中止すること、小泉首相の対イラク戦争=劣化ウラン戦争への支持を撤回させることを求める世論を作り出していくために、緊急院内集会を開催しました。 すでに私たちは、3月23日『アメリカの対イラク戦争・劣化ウラン戦と日本の加担・有事法制に反対する緊急署名』を提起しました。本日、旧署名2100名分、緊急署名1300名分合計3400名分を提出しました。私たちがこれまでに小泉首相に提出した署名は総計16631名分になりました。 本日の院内集会では、 @特にイラク戦争での劣化ウランの使用についての、非道性、違法性、不当性を明らかにし、戦争を即時中止させること、 Aイラク戦争=劣化ウラン戦争への小泉首相の支持を撤回させること、 Bむごたらしい戦争の真っ最中に、国民を戦争に総動員するための戦争法=有事3法案の強行成立の動きをストップさせること、 を確認し、国会論戦で、院外の大衆運動で、反戦平和の取り組みを強めていきたいと思います。 各地の運動を交流し、この院内集会を新たな出発点としてさらに闘いを広げていきましょう。 [1]イラク戦争=劣化ウラン戦争への支持を撤回させよう! アメリカの無法なイラク戦争は、開戦二週間目にして早くも数百人(4/1の時点でボディカウントMin478、Max586など)の犠牲者とおびただしい負傷者を生みだし、都市機能をマヒさせ、人々の命の糧である水や食糧、衛生手段を奪い被害を拡大しています。しかし、一方ではイラク軍とイラク民衆の抵抗の前に侵略者達は立ち往生しています。軍事的な手詰まりだけでなく戦争プロパガンダの破綻によって、バグダッド侵攻を遅らせざるをえなくなっています。バグダッドで地上戦が始めるまでに数週間がかかるといいます。今こそバグダッドの大虐殺が起こる前に戦争をやめさせ、兵を撤退させるために奮闘する時です。小泉首相が「有志同盟」から離脱し、戦争反対を表明することになれば、ブッシュ政権にとって大きな打撃となるでしょう。イラクの焦土化、民衆の大量殺りくを前提とした「戦後復興」、そして自衛隊派遣などもってのほかです。小泉首相や川口外相は「戦争を速やかにしてほしいですね」というのではなく、「正視できない」というのではなく、アメリカとイギリスに向かって「いますぐ戦争をやめろ」と言うことが必要なのです。 劣化ウラン弾が対戦車砲だけでなく、アフガニスタンで大量使用したと言われる硬化目標貫通型爆弾などが使用されれば、それによって生み出される被害は湾岸戦争の比ではありません。これには比べものにならない大量の劣化ウランが使われています。この兵器は、イラクの地上戦を想定したものです。この点からもバグダッドに対する地上戦が始まる前に戦争を止めなければなりません。小泉首相は、「被爆国」の首相として、ヒロシマ、ナガサキの悲劇を世界に伝え、悲惨な戦争に真っ先に反対すべきです。「新たな核戦争」=劣化ウラン弾が使用されている戦争に反対すべきです。平和憲法、非核三原則をもとに、「核兵器」が使われ被害がでることに率先して反対すべきなのです。 [2]小泉首相と日本政府の劣化ウラン戦争への支持に反対する論点 −劣化ウラン戦争反対!小泉政権は劣化ウラン弾の使用=核戦争を支持するな! 3月26日、アメリカのブリックス准将は、イラク攻撃で劣化ウラン弾を使用したことを認めました。バスラ、ナジャフなど南部の諸都市近郊ですでに劣化ウラン弾が使用されていることを意味します。バスラは150万人が住むイラク第2の都市であり、かつての湾岸戦争で使用された劣化ウラン弾の被害を集中的に被った都市です。一度だけではなく、二度までも。ウランの半減期は45億年です。断じて許すわけにはいきません。 小泉首相は、いち早くアメリカのイラク攻撃を支持しました。劣化ウラン弾の使用について記者から質問されると、「できるだけ被害少なくね」「戦争をすみやかにしてほしいですね」などとはぐらかしています。「すみやかにする」とは米英が戦争を中止しない限り、早く地上戦をやれ、劣化ウラン弾を大量使用せよということです。まったくふざけた発言です。福田官房長官は、「過度の傷害、または無用の苦痛を与える兵器については使用しないのは国際法上の基本的考え方だ」としたうえで、「一般論ですけどね、劣化ウランの健康被害については、いろんな議論がありますが確定的な結論は出ていない」と因果関係を否定するような態度をとり、劣化ウランの使用の是非については明らかにしませんでした。このことは、劣化ウラン使用を黙認していることと同じです。 私達は、劣化ウラン戦争に絶対反対です。被爆国日本の政府が、放射能を撒き散らし取り返しのつかない被ばくの惨劇をもたらす、アメリカのイラク攻撃を支持するなど断じて許せません。劣化ウラン戦争反対の声を、国会内外で大きなものとし、日本政府のイラク攻撃支持を撤回させましょう。 私達は以下の点から、劣化ウラン弾使用に反対します。 1.日本政府は、劣化ウラン弾を新たな形の核兵器であると認めよ。劣化ウラン弾を使った対イラク戦争を核戦争と認めよ。 劣化ウラン弾とは放射能をばらまく兵器であり、その被害は人体に対しても、環境に対しても、核兵器による被曝被害・放射能汚染と同じものである。その点で、劣化ウラン弾とは新たな形の核兵器であり、その使用は新たな核戦争である。 しかし日本政府は、これまで一貫して、劣化ウラン弾を核兵器として認めてこなかった。これを認めれば、嘉手納など在日米軍基地に保管されている劣化ウラン弾が非核三原則に違反することとなるからだ。 日本政府は劣化ウラン弾を新たな形の核兵器であることを認め、対イラク戦争を核戦争と認めよ。在日米軍基地の劣化ウラン弾の撤去を要求せよ。 2.広島・長崎の被ばくの苦しみを経験し、その上に立って非核三原則を国是とする日本が、劣化ウラン弾という新たな核兵器を使ったアメリカの戦争を支持するなどもってのほかである。 3.劣化ウラン弾は96年国連人権小委員会で非人道兵器・大量破壊兵器と決議されている。アメリカが唯一決議に反対し、日本は「棄権」した。なぜ棄権したのかその理由を答えよ。日本は劣化ウラン弾を非人道兵器と認めないのか。 劣化ウラン弾の使用は、ハーグ条約およびジュネーブ条約に違反している。1996年国連人権小委員会では、クラスター爆弾や気化爆弾、生物兵器と並んで、劣化ウラン弾を大量破壊兵器・無差別殺傷兵器とする決議が採択されている。また、2002年の国連人権小委員会でも、劣化ウランを含む兵器の使用は、過剰な殺傷能力を発揮し、不必要な苦痛を与えるものであり、反人道的兵器とされている。 アメリカはイラクの大量破壊兵器を破壊することを表向きの「大義名分」としている。小泉政権は繰り返し「大量破壊兵器」を支持表明の根拠にしている。劣化ウランの使用こそが、大量破壊兵器の使用である。「大量破壊兵器」廃棄のために「大量破壊兵器」の使用を支持するのか。 国連で非人道兵器として認定されている劣化ウラン弾の使用など断じて許されるものではない。日本政府は、国連のこの決定を踏みにじるアメリカの劣化ウラン戦争への支持を撤回すべきである。 また、この国連決議を尊重するのは当然のことである。日本政府は、劣化ウランを非人道兵器・大量破壊兵器として認めるのか否か、明らかにすべきである。 さらに、この96年決議は、賛成15、反対1、棄権8で採択された。唯一反対したのはアメリカであり、日本は棄権にまわった。被爆国日本の代表が「棄権」にまわるなどとうてい許されるものではない。なぜ「棄権」投票を行ったのか、その根拠を明らかにすべきである。 4.日本でもアメリカでも危険な劣化ウランの環境への故意の放出は違法行為である。自国内で危険なもの、違法なものをイラクの人々の上にばらまくなどもってのほか。 日本国内はもちろんのことアメリカにおいても劣化ウランは、核原料物質として、許可を得た事業者による厳重な管理の下におかれなければならないものである。当然のこととして、日本国内で劣化ウランをばらまくなどという行為は、犯罪行為に等しく、原子炉等規制法によって禁じられている。その劣化ウランが、イラク戦争では公然と兵器としてばらまかれている。自国内で危険で不法なものをイラクで使ってもいいというのはダブルスタンダードではないのか。まったく不条理なことである。 劣化ウランという放射性廃棄物、放射性物質を他国領土へ不法投棄することは許されるのか。それをイラクの民衆や子どもたちの上にばらまくことは絶対阻止すべきである。 5.イラク攻撃に使われている劣化ウラン弾に日本の電力会社の劣化ウランが使用されている強い疑惑がある。このままでは、戦争支持だけではなく、日本が劣化ウラン戦争の加害者になる。「平和利用に限る」原子力基本法、武器輸出三原則に違反する。事実関係と見解を明らかにせよ。 【詳細は別紙資料参照】 6.日本政府は、劣化ウラン弾による被害を認めよ。 1991年の湾岸戦争でもアメリカは大量の劣化ウラン弾を使用した。日本政府はこの湾岸戦争を支持し、90億ドル以上の戦費負担まで行った。現在、湾岸戦争で使用された劣化ウラン弾によって、イラクの子ども達の間にガン・白血病・先天性障害が多発している。日本政府は、この被害を劣化ウラン弾に起因するものと認めるべきであり、態度を明確にすべきである。 7.アフガニスタン戦争でアメリカが劣化ウラン弾を使用した疑惑を調査し明らかにせよ。 2001年のアフガニスタン攻撃でアメリカが大量に使用した硬化目標攻撃用爆弾が劣化ウラン製であるという疑惑が深まっている。日本政府はアメリカに対し、アフガニスタンでの劣化ウラン弾使用の実態を明らかにするよう要求すべきである。 8.日本政府は日米安保条約違反のキティーホークの引き揚げを要求せよ。 横須賀を母港とする空母キティーホークは、イラク攻撃の中心軸となっている。これは、日米安保条約の「極東条項」違反である。さらに、キティーホーク艦載機から硬化目標攻撃用爆弾が投下されている疑惑がある。もしそうだとすれば、日本が新たな核兵器・非人道兵器の使用に直接加担したことになる。日本政府は、即刻、キティーホークの引き揚げを要求すべきである。 [3]日本全体を戦争に総動員する有事法制強行成立にストップを! むごたらしい戦争の真っ最中に、国民を戦争に総動員するための戦争法=有事3法案の強硬成立を目指すというのはどういうことを意味するのでしょうか。有事法制は世論の批判を浴び2度の国会で継続審議を余儀なくされたはずです。石破防衛庁長官が、アメリカによる北朝鮮(朝鮮民主主義人民共和国)への先制攻撃の可能性に言及し、日本の敵基地攻撃能力の保有の検討を表明しました。横須賀を母港とする空母キティホークから対イラク攻撃が行われています。そして、小泉首相は、イラク戦争支持の理由に「北朝鮮」をあげています。日本の有事法制は「備えあれば憂いなし」という将来に向けた一般的な防衛体制づくりではなく、イラクの次に北朝鮮を標的にすることを想定したリアルな戦争動員態勢づくりです。いわば、アメリカがイラクを片づけ、対北朝鮮侵略、軍事的恫喝に入る前に成立させておこうというのです。憲法違反の有事法制を絶対に許してはなりません。 |