■80名以上の市民が参加し、共謀罪反対の意志を強める 共謀罪法案の衆院法務委員会可決・本会議提出が差し迫る中、署名事務局は弁護士永嶋靖久さんを講師に招き、憲法改悪・教育基本法改悪に反対する連続講座第3回「共謀罪が危ない!! 差し迫る国会成立の危機」を開催しました。会場には共謀罪法案に危機感をもつ市民ら80名以上が参加し、熱心に講演を聴き、質疑応答し、法案反対への意志を一層強めました。 講座の最初に、3月26日にサンデープロジェクトで放送された「ビラ入れ逮捕と公安警察」を上映しました。この放送は、活動家を執拗に尾行しビラ配りだけで逮捕をでっち上げるという恐るべき公安警察の活動を暴露したものです。そこでは、公安警察の狙い目は左翼活動家だ、どんな罪名でもよいから徹底的に調べ上げて逮捕することが目的だ、と公安警察OBらに実態を赤裸々に語らせています。この番組企画は、当初の予定では共謀罪の危険性を含めて3回にわたって放送することになっていましたが、テレビ朝日は何の説明もないまま、いまだ2回目以降を放送していません。政府当局の圧力に屈したとすれば極めて重大な問題です。 署名事務局からの挨拶では、共謀罪法案は、連日の抗議行動などによって5月連休前の強行採決は免れたが、いつ採決されてもおかしくない情勢にあること、4月28日は「教育の憲法」といわれる教育基本法の改悪法案が閣議決定され厳しい状況にあることなど、政治的な緊張の中で一層の反対運動が必要であることが強調されました。 ■現行刑法の基本原理を根本的に転換 しかも共謀罪の対象犯罪が“自動的に”どんどん拡大する危険 永嶋弁護士の講演では、共謀罪法案は、「組織的犯罪処罰法」に、「第6条の2」として「組織的な犯罪の共謀」を加えるというものであるが、極めて大きな危険性をもっていること、それ故に、2度も廃案になりながら、執拗に提出が繰り返されてきたことなどが説明されました。 この法案は、既遂の犯罪処罰を基本原則とし未遂は不可罰とされている現行刑法の基本原理を根本的に変えるものです。 特に注目すべきは、この法案が対象犯罪を「長期4年以上の法定刑」と定めているため、法定刑引き上げの法律改正があると対象犯罪がどんどん増えていくことです。現に03年上程当時557であった対象犯罪が現在では619にも増えています。いわば自動的に共謀罪の網の目がどんどん広げられていくのです。永嶋さんはこれを、政府関係者の言葉を借りて、「小さく生んで大きく育てる」だ、と語りました。もちろん、「量刑4年」を修正したところで、共謀罪の危険な性格をなんらかえるものではないことは言うまでもありません。永嶋さんは、犯罪対象を300程度に減らしまた「国際的な犯罪に限る」などとした民主党の修正案についても、基本的に共謀罪の枠組みを認めていることでは同じ土俵にのっていると批判し、なによりもアムネスティ・インターナショナルやグリーンピースなどが「越境犯罪組織」と見なされてしまうとする懸念などを指摘しました。 ■2人以上は夫婦でも“団体”!? “団体”に入っているだけで「共謀」したと見なされる 2人以上は仮に夫婦であっても「団体」として見なされ、話し合っただけで共謀罪に問われます。永嶋さんは、「購入したCDをコピーして友人に売る相談」(一般の人)、「要求に応じるまで社長を缶詰にして交渉する相談」(労働組合)、「根拠が薄いのに暴露記事を書く相談」(マスコミ)など様々な場面での「共謀罪」成立の要件を具体的に説明しました。特に労働組合などの例では、その場に居合わせ「よっしゃ」と言っただけで共謀したと見なされ「共謀罪」の適用を受ける可能性があります。そもそも共謀の定義が極めてあいまいであり、法務相自身が「酒席で意気投合した程度では共謀罪は成立しない」というような言い訳をわざわざしなければならないような代物なのです。(「組織的な犯罪の共謀罪」に対する御懸念についてhttp://www.moj.go.jp/) その中で永嶋さんが指摘したのは、自身が担当した最近の裁判で、居住目的のマンションを事務所として使用していた党派活動家が、「詐欺罪」で有罪になった事例です。引っ越しを手伝ったメンバーや、あとから転がり込んできたメンバーが、いっさいの具体的証拠無しに、「活動拠点の確保や同室の利用に密接な利害関係を有する」との理由だけで「明示黙示の共謀を同時ないし順次に遂げていったことは推認できる」として有罪とされたのです。つまり、同じ団体に入っているだけで、「共謀」の証拠がなくても、利害関係が一緒だから共謀したに違いないと言うのです。最近ではこのような判例がまかり通るようになったといいます。これでは「よっしゃ」も「目配せ」もすべて共謀の証拠となるだけでなく、同じ団体に所属しているだけで、一網打尽に全メンバーが「共謀罪」の適用をうける危険性さえあるのです。 与党修正案は、適用対象を暴力団など「犯罪の実行が目的である団体」に限定するようなカムフラージュを出してきていますが、「そんな悪いことを相談するような団体は『犯罪の実行が目的である団体』にちがいないとされ」、共謀罪があらゆる団体に適用されるのはさけられないと語りました。 ■“民主主義の枯葉剤”−−共謀罪が作り出す暗い社会。密告、スパイ、盗聴、自首が奨励される 共謀罪は、警察の捜査をも根本的に変えます。これまでの捜査は、悪いことをしたこと(既遂)の証拠集めであったが、これからは、悪いことを相談したこと(共謀)の証拠集めになります。スパイ・盗聴・密告などが奨励されます。捜査のレベルが全く違うものになります。 永嶋さんは言います、このような法律が成立したら、共謀罪で捕まらないためには、悪いことをしそうな人には近づかない、一緒に歩かないということになる。そして、「黙示の共謀」というものが成立するので、万が一「共謀」するような場面に出くわしてしまったら、減刑または免除されるために真っ先に自首するしかない、密告するしかないと、現実に市民の中で起こりうる危険性を指摘しました。 およそ信じがたい、まるで冗談のような話なのですが、しかしそれが国家権力によって推し進められようとしている「共謀罪が成立した後の社会」なのです。共謀罪新設は、世の中を「自由に議論することが犯罪とされる社会」に変えるものであり、まさにこの法律は「民主主義への枯れ葉剤」だと語りました。 最後に、元警察官僚の平沢勝栄氏の「つまるところ共謀罪の問題は、捜査当局を信用するかどうかということだ」という言葉を引用し、これこそが共謀罪の危険性の本質をついていると語りました。すなわち、いかなる法律であろうと、法律を運用する人によって結果が変わってはなりません、法律そのものではなく、捜査当局の信用にゆだねなければならないとしたら、それは悪法なのです。 ■会場からの熱心な質問と意見 「絶対に廃案にできる!」 講演後の質疑応答では、「9.11以降に動き出したと思っていたが、2000年11月から始まっているのはどう考えたらいいか」「共謀罪はこれほど危険なのになぜ反対運動は盛り上がらないのか」などの質問や意見が多数出されました。前者の質問に対しては、「国連越境的組織犯罪条約」が採択されたのは2000年11月であり、このとき想定していたのはマフィア対策であった、一般に国際犯罪はマフィアとテロの2つの流れがあるが、なぜか日本だけがマフィアとテロが一体のものとされ、いつの間にか共謀罪が対テロ対策にすり替わってしまっている、と日本の異常さを強調しました。 最後に永嶋さんは、共謀罪については自分自身が当初その危険性について十分に認識しておらず取り組みが遅れたこと、しかし、急速に運動が盛り上がってきていることを指摘し、全く悲観していないと語りました。そして、破防法が成立しながらも実際には運動の力でその適用を許していないし、盗聴法も十分に機能していないなど、大きな反対運動のあった法律は仮に成立したとしても「死に体」にできると運動の見通しを楽観的に語りました。そして、絶対に廃案にしなければならないしできると考えている、と力強く結びました。 連続講座の最後に[連続講座アピール]「『話しただけ』で罪になる新たな治安弾圧立法『共謀罪』の導入・新設を阻止しよう!」を満場の拍手で採択しました。
2006年5月10日 アメリカの戦争拡大と日本の有事法制に反対する署名事務局
(1)私たちは「共謀罪」に反対します。連休前の与党(自民・公明)による衆院法務委員会強行採決は、国会内外の急速な反対世論の盛り上がりによっていったん回避され、連休後へと持ち越されました。、しかし、来週中の委員会強行採決の動きに対しあらためて強く反対します。この法案を何としても葬り去りましょう。国会外で反対の声を上げ始めた多くの市民、危機感をつよめる法曹界や消費者団体などの様々な民主団体、国会内で現に抵抗を続けているすべての国会議員など、これらの力を今こそ一つにして、この法案を最後的に潰すまで徹底して反対し続けましょう。 (2)「共謀罪」導入・新設は単なる罪名の追加ではありません。憲法を頂点とする現行刑事法体系を根底から改悪するものです。619にものぼる「共謀罪」対象犯罪新設の意味するものは何でしょうか? それは刑法の治安弾圧的性格を一挙に強め、警察が思うがままの治安弾圧を行うことが可能となることに他なりません。行為の処罰から思想の処罰へ、「既遂」の処罰から「未遂のはるか以前の合意」の処罰へ、個人の処罰から団体の処罰へ。要は警察が目を付けたら「犯罪を実行しようとする団体」であり、一網打尽にするのにこれほど都合の良い法律はありません。 (3)「共謀罪」は、戦前の「治安維持法」を思い起こさせます。「治安維持法」は、共産党、共産主義者、労働運動、反戦・反天皇の運動と組織のみならず、普通の市民の「流言、飛語」に至るまで、徹底した弾圧の毒牙にかけました。政府・法務省は「共謀罪」が「組織的犯罪集団の犯罪合意」を取り締まるだけ、一般市民や市民団体は無関係とデマっています。しかし法案にはそんな規定はどこにも明記されていません。法案ではあくまで一般的抽象的な「団体」が「共謀罪」の適用対象です。「共謀罪」が現代の治安維持法にならない保証はどこにもありません。 「共謀罪」はあまりのひどさにすでに2回も廃案になっています。今回も、法務委員会で審議の開始と同時に与党が「修正案」を出さざるを得なかったのはそのためです。しかし、与党の「修正案」は「団体」や「共謀」について多少表現を変えたものの、どんな団体も対象にでき、広範な罪に「共謀罪」の導入を認めさる点で何ら変わっていません。「共謀罪」はどのような「修正」をしてもその本質を変えることなどできはしないのです。 (4)「共謀罪」の導入・新設によって、「治安対策」を主任務とする公安警察の力が一層強化され、警察の捜査ではスパイ・内偵・盗聴・密告が奨励され主な内容となります。警察の役割が、一般刑事事件に対する捜査から、治安弾圧、「思想処罰」の活動へと大きくシフトしていくのです。市民の中に、「盗聴網」「スパイ網」が張り巡らされ、「共謀」を立件するためには、目を付けた人物や団体に対する徹底した事前の「情報収集」が欠かせない前提となります。現に「共謀罪」後の問題として「盗聴法改正」が計画されているのです。 (5)「共謀罪」導入・新設は憲法改悪の先取りに他なりません。この法律は、憲法13条基本的人権の規定に反します。また第21条集会・結社の自由、第19条思想・良心の自由、第18条奴隷的拘束および苦役からの自由の規定に反する徹頭徹尾違憲の立法そのものです。「共謀罪」と機を一にして教育基本法改悪法案、国民投票法案、監獄法改悪法案、少年法改悪法案、入管法改悪法案など、憲法と人権を頭から蹂躙する悪法が続々と国会に上程され、審議されようとしています。私たちはこれらの危険な動きの一つ一つに反対していかなければなりません。 (6)「9.11」事件後のアメリカの「対テロ戦争」への突入が、国連を通じた先進帝国主義諸国を中心とする「テロ集団取り締まり」体制構築への衝動力となっています。アメリカでは「共謀罪」が「対テロ」の治安弾圧法として活用されています。しかし、元々「マフィア等取り締まり」を念頭に置いた「越境組織犯罪防止条約」を使って「共謀罪」を導入し、対テロ、治安弾圧体制を強化しようという日本政府の動きは異常というしかありません。 これらを抜きにして小泉政権・法務省が「共謀罪」導入・新設を「国際公約」であるかのように言うのは人民大衆を愚弄するものです。世界中の途上国から石油を始め天然資源を奪い、労働を搾取し、自国の製品を高値で売りつけ、抵抗する者や反対運動は情け容赦なく弾圧し、言うことを聞かない国はイラクのようにデマで侵略戦争を仕掛け、大量の民衆を虐殺する−これがアメリカのグローバリゼーションであり「対テロ戦争」の実体に他なりません。「共謀罪」で「国際犯罪集団に対処」するとはアメリカの「対テロ戦争」=途上国の反米・反帝、民族解放、徹底した民主主義のための闘争への弾圧に手を貸すことであり、到底認めることができません。 (7)自民・公明両党は連休明け直後にも「共謀罪」の衆議院可決を目論んでいます。しかし、メディアも含めて「共謀罪」の危険性の認識と反対の声は急速に強まっています。たとえ衆議院で強行されても参議院での審議があり、そこではまだ「共謀罪」以外に外登法改正や代用監獄法など審議を要する法案があります。社民党、共産党は廃案を要求しています。民主党は条約と「共謀罪」の枠組みは認めていますが、適用厳格制限の修正案を対置し、与党案の採択強行には徹底抗戦の構えです。国会内での徹底追及と国会外での反対の世論が結びつけば、法案を再び廃案にしたり、強行可決に持ち込ませないことも不可能ではありません。「共謀罪」の危険性を周りの人々に伝え、反対の声を広めること、反対運動などを強めること、国会議員などへ可能な働きかけをすること−−可能なあらゆることを通じて、「共謀罪」阻止のために闘いましょう。 2006年5月7日
憲法改悪・教育基本法改悪に反対する連続講座 参加者一同
4月中にも採決が! 危険きわまりない国会情勢 実はこの間、「共謀罪」は国会での審議再開が見送られたかのような報道が、ひっそりと行われ、今国会での審議再開は無いかもしれない、そのような思いさえ抱かせるマスコミの扱い方でした。ところが実際には、最悪の場合、何と4月7日に国会審議再開、その後委員会採決を野党欠席のまま強行する可能性もあると言われており、事態はきわめて切迫していることが明らかとなりました。 与党は、開店休業状態の民主党を抱き込むために、「対象を(暴力団などの)組織的犯罪集団に限ることを明記」「客観的な準備行為を要件に加える」といった、まやかしの「修正」で一気に強行しようとしています。 話し合っただけで逮捕! 思うがままの治安弾圧をもたらす「共謀罪」創設 「共謀罪」創設は、憲法を頂点とする刑事関連法の根本原則−−犯罪とは一定の法益を侵害する具体的な行為であり、行為に対して処罰を加える−−をかなぐり捨てるものです。具体的な実行を伴わなくとも、犯罪となるようなことを単に考えたり、言葉に出したりしただけで逮捕したり、裁判で処罰を加えたりできるようにする刑法の根本的改悪法案なのです。こんな法律が決まったら、市民生活はむちゃくちゃです。 「国会議員どもをぶん殴ってやろうか、くだらん法律ばかり作りやがって・・・」−このように仲間内で冗談をいったつもりでも、充分に警察による逮捕の口実となってしまいます。実際に殴らなくとも言葉にしただけで捕まってしまう、それが「共謀罪」の怖ろしい所です。常に警察に言動を監視され、「悪いことは何もしていない」のに捕まる、まさに「物言えば唇寒し」の、監視・スパイ・密告社会が到来する危険が間違いなく強まります。 憲法改悪の先取りとしての「共謀罪」 またこの法律は、どこから見ても憲法違反です。憲法の保障する「思想および良心の自由」(第19条)、「集会・結社・表現の自由、検閲の禁止、通信の秘密」(第21条)、「奴隷的拘束および苦役からの自由」(第18条)、等々。また何よりも「基本的人権−個人の尊重、生命・自由・幸福追求の権利」(第13条)に違反していることは明らかです。 憲法改悪、教育基本法改悪、これと並んで刑法の換骨奪胎、行為抜きの「思い」だけで犯罪とし、処罰する刑法への根本転換が行われれば、単に個々人の生活が激変させられるだけではありません。イラク反戦、反米軍基地・反自衛隊の運動、労働組合運動、反原発運動、環境保護運動、などなどありとあらゆる反体制や反権力や反政府の運動・団体はいつでも勝手気ままに警察権力の治安弾圧にさらされることは必至です。こんな法律を絶対成立させることなどできません。 実体がわかればみんな反対。ひとりでも多くの人々に真実を語ろう! 私たちは、この「共謀罪」法案の危険な本質を知る人は皆、必ず反対せざるを得ないと確信しています。ぜひこの講座に参加して、「共謀罪」への理解を共に深めましょう。そして私たちの周囲の人一人一人と話をして、「共謀罪」創設は絶対許さないという声を広げて行きましょう。皆さんの参加を心よりお待ちしています。 ※「共謀罪」採決が切迫している危険を考慮して、講師の了解を得た上、主催者の一存で急遽「共謀罪」についての講座に変更しました。ご理解ください。なお、「基本的人権と憲法改悪〜『公共の福祉』から『公益』へ」(弁護士 冠木克彦さん)は、第4回(6月4日)となります。よろしくお願いします。 弁護士 永嶋靖久さんのプロフィール 1955年生まれ。1984年より弁護士登録(大阪弁護士会)。1989年 枚方法律事務所開設。大阪労働者弁護団所属。在韓被爆者郭貴勲さん裁判で主任弁護人を勤める。最近では扇町公園住民登録事件などを担当。現在、共謀罪問題に精力的に取り組んでいる。
2006年4月2日
アメリカの戦争拡大と日本の有事法制に反対する署名事務局 <案内チラシダウンロード(pdf 42KB)> |