新年を迎え撃つ−−対イラク戦争阻止に向けて

(1) ブッシュ大統領は新年早々「準備はできた」と宣言しました。まだまだ不確定要素は残りますが、いよいよイラク攻撃は秒読み段階に入りました。世界と人類は、戦争と殺戮と破壊、そして“石油”しか眼中にないアメリカの支配と覇権への暴走を阻止できるのか否か、21世紀を戦争の世紀にするのか平和の世紀にするのか、環境破壊の世紀にするのか環境保護の世紀にするのか、その分水嶺となる決定的に重要な年を迎えました。
 確かにきな臭く陰鬱な新年、喜びや祝いを素直に出せない新年です。これほど無法で反人道的な戦争を、ここまではっきりと予測しながら、阻止の展望と確かな手応えをつかめないまま新年を迎えるのはかつてないことです。

 しかし情勢を詳しく見ると、非常に奇妙な事態になっています。かすかながらブッシュ政権に行き詰まりの兆候が見え始めているのです。一方では行け行けドンドンで湾岸への大規模な軍の集結を加速化しながら、他方では開戦の口実が見当たらず焦り始めているのです。開戦への大きな一歩でありながら、「自動開戦」ではない−−国連安保理決議1441の複雑な成立事情が効き始めているのかも知れません。
 英デーリー・テレグラフ紙は、英国は米国に対し、イラクへの攻撃時期を数カ月遅らせるよう要請していると報じました。国連監視検証査察委員会(UNMOVIC)のブリクス委員長も、国連安保理への中間報告で、イラクが大量破壊兵器を保有している証拠がまだ見つかっていないことを明らかにする見込みといいます。いずれにしても、ブッシュが国連を巻き込むパウエル路線を採用する限り、今のままではイラク攻撃は難しいという様相も見せ始めているのです。もちろん「パウエル路線」の発動も、「単独開戦」も否定できません。

(2) とにかく反撃を続けることです。悲しみや無力感に浸っている暇はありません。私たちは、怒りと腹立たしさ、何よりも反戦平和への闘志をもってこの忌まわしい新しい年を迎え撃ちたいと思います。ブッシュ政権とその世界覇権の体制は完全無欠ではない。脆さに満ちている。そういう認識を持つことです。
 問題は、一つ一つの小さな力をかき集め、ひるむことなく撃ち続けることです。これから始まるかも知れないイラクへの一方的破壊と虐殺への身構え、反戦平和の闘いへの備えとして1日1日を大事にして緊張して過ごしたいと思います。

(3) 地道な、それこそ気の遠くなるようなコツコツとした活動の積み重ねが一本の太い流れになる実例を、私たちは昨年後半を通じて、韓国の反米運動の中に見出しました。そしてその運動の中心の一つを担っておられる方をお招きし、12月28日という年末の忙しい時期にもかかわらず、大きな集会を成功させることができました。
 「韓国の反基地・反戦平和運動との連帯を目指して−−2002年燃え上がった反基地闘争、広がる反米闘争韓国からの報告」というもので、駐韓米軍犯罪根絶運動本部事務局長・李韶熙(イ・ソヒ)さんの講演会でした。

 朝鮮半島情勢と日本の軍国主義は、戦前からの歴史を見ても、現在においても密接不可分の関係にあります。年末の韓国大統領選挙で「太陽政策」の継続を訴えるリベラル候補が勝利したことは、拉致問題で対北朝鮮敵視政策、民族排外主義をエスカレートさせてきた日本の軍国主義・反動勢力にとっては出鼻を挫かれた「大事件」だったのです。その意味で私たちは韓国の反米運動に「助けられた」のです。

 ブッシュ政権が、北朝鮮を「悪の枢軸」と呼んで「仮想敵」に位置付け、「封じ込め」政策を強行する中では、韓国の運動と大多数の民衆が追求する南北対話と自主的平和的統一の流れは朝鮮半島の安定と平和だけではなく、東アジアの平和、更には世界平和につながっています。今度は私たち日本の運動が頑張る番です。日韓の運動の連帯のあり方を、これもまた地道な取り組みの中から実現していきたいと思います。

(4) 闘いの矛先はブッシュとアメリカだけではありません。小泉政権と与党に対する「イラク参戦新法」との闘いでもあります。政府与党は、一昨年の「テロ対策特措法」をも超え出るような、国際法、日本国憲法、現行法の全てを根底から覆すような「包括参戦法」を強行しようとしています。

 消費税の大増税が政治日程に上ってきました。来年度予算は、企業減税と大衆増税を盛り込んだ予算をめぐる争いになるでしょう。否、そうしなければなりません。それは、与野党の間で、また与党の間で、支配層全体の間で、長期に渡る経済危機とデフレーションの犠牲をどれだけ、どのような形で人民大衆へ転嫁させるのかをめぐるものになるでしょう。

(5) ブッシュは6700億ドルの大規模な景気対策を打ち出しました。これも対イラク攻撃の衝撃を和らげるためです。しかしアメリカも企業減税と金持ち減税が柱です。10年間という期間を考えれば、これでは役に立たないとの声が早くも出ています。
 ブッシュのイラク攻撃は、アメリカの循環的構造的危機の新たな深刻化を告げる序章になるでしょう。

(6) そしてそのアメリカの危機は、グローバルな危機の引き金となり、とりわけ、今や世界経済の「弱い環」となった日本の循環的構造的危機の激化、先鋭化の引き金になるかも知れません。もしそうなればいわゆる「竹中路線」=不良債権処理の加速化と東京株式市場の急落と大混乱が3月危機を呼び起こし、すでに動き始めている国内政局の激変と金融・財政・経済政策全般をめぐる路線論争の再燃につながるかも知れないのです。

 アメリカだけではなく、日本でも、戦争と軍拡の問題は今後ますます経済と財政の問題に直結して行くのは不可避です。ブッシュ政権は、イラク攻撃とイラク占領費の負担を必ず日本に押し付けてくるはずです。すでに国家財政も地方財政も破綻し消費税大増税が目論まれている中で、また日本の軍拡がエスカレートし軍事費が硬直化する中で、国民の税金を一体何に使うのか、究極的には「戦争のために使うのか平和のために使うのか」という二者択一の選択が人々の前に突き付けられるでしょう。

2003年1月9日
アメリカの戦争拡大と日本の有事法制に反対する署名事務局