沖縄少女性暴力事件糾弾!
米軍協力最優先・住民切り捨ての日本政府の責任を追及する!
基地撤去以外に根本的解決はない


 基地を押しつけてきた日本政府の責任

 またしても忌まわしい事件が起こった。沖縄海兵隊員が北谷町で女子中学生を家に連れこみ、車で追い回した挙げ句、性的暴行を加えたのである。95年の少女性暴力事件を思い起こさせる私たちはこの事件を徹底して糾弾する。
 まずもって許し難いのは日本政府の対応である。福田首相や石破防衛相、高村外相は全く無責任である。福田は「過去に何度も起きている」などとまるで人ごとだ。石破は「日米同盟の根幹にかかわる」と日米同盟に波及することを気にしている。高村はすぐさま、日米地位協定を見直すつもりでないことを明言した。彼らにとっての懸念は、被害少女や地域住民の命と生活ではない。事件によって米軍基地再編が滞ることなのだ。
 私たちは何よりも日本政府の責任を徹底して追及しなければならない。沖縄に基地を押しつけ、自衛隊を使ってまで辺野古の海上調査を強行し、「米軍再編推進法」を作って「アメとムチ」を強化しさらなる基地負担を迫り、全く住民を無権利状態におく地位協定を受け入れ、巨額の思いやり予算をくれてやり、さらにはテロ特措法で侵略戦争加担の自衛隊海外派兵を強行してきた−−これら対米協力と基地受け入れ最優先・住民切り捨て政策の延長線上に今回の事件はある。日本政府は自らの責任を認めるべきである。被害者に日本政府が謝罪すべきである。

 米軍基地と米軍の駐留のもとで「命の安心安全は保障されない」

 この事件は、岩国においてまさに新たな基地負担=空母艦載機を受け入れるのかどうかが問われた市長選の真っ最中2月10日に起こった。今回の事件について基地再編推進派は、「もう一日早ければと思うとぞっとする」「選挙中だったら結果は逆だった」などといっている。選挙が終わってからで良かったという口ぶりだ。冗談ではない。井原市政が続いたら「岩国は倒産します」「命の安心安全が保障されません」などとさんざん誹謗中傷を加えたのは誰か。米軍基地と米軍の駐留のもとでこそ「命の安心安全が保障されない」ことが今回の事件で証明されたのではないのか。
 今回の事件は、基地が置かれている犠牲の大きさを改めて明らかにした。全国の基地の町で起こっている事件・事故の氷山の一角である。ごく最近でも今年1月には普天間飛行場所属の米兵2人によるタクシー強盗事件、昨年1月沖縄市で陸軍兵が女性を殴り強盗、06年1月横須賀市で海軍兵が女性に強盗殺人、04年1月佐世保で海軍兵が女性に暴行致傷等々凶悪犯罪が頻発している。また04年8月には普天間基地に隣接する大学に米軍大型輸送ヘリが墜落・炎上する事故が起こっている。

 基地の縮小、撤去以外に根本的解決はない

 小泉構造改革で地域格差が拡大し、とりわけ沖縄での失業率は全国平均の倍、最若年層の失業率は20%に上る。不安定雇用と長時間労働、夜間労働、夫婦共稼ぎで食べていくのが精一杯という生活困窮層が増加の一途をたどっている。一方では広大な基地があり2万数千人もの米兵が混在している。事件はそのような沖縄の町で起こった。子どもたちを取り巻く状況も厳しくなっている。今回の事件を被害者の責任に帰するような論調は言語道断だ。沖縄の人たちは、米兵が日常の場である市街地の中心部で子どもに声をかけ事件になったことに大きな衝撃を受け、怒りをあらわにしている。
 今回の事件に対して政府は米兵の「外出制限の対象拡大」「教育の強化」「綱紀粛正」さらには「監視カメラの設置」などによってお茶を濁そうとしている。問題が地位協定見直しや基地の存在そのものに及ぶ事を何とか食い止めようとしているのだ。だが、そんなものは何の解決にもならない。
 沖縄に駐留する海兵隊は、ファルージャなどにも展開し強襲揚陸・掃討・制圧を専門とする「殴り込み部隊」である。事件は起こるべくして起こっているのだ。住民の命と生活を守るために政府がやるべきことは、地方を干上がらせて基地を押しつけるのではなく、基地の縮小と撤去、そして基地に依存しなくても生きていける生活基盤の整備である。

 沖縄教科書問題と米軍基地問題を結びつけ、新たな闘いへ

 沖縄ではこの事件に対して、抗議の渦が巻き起こっている。沖縄県、那覇市、沖縄市、北谷町、北中城村、浦添市、豊見城市等々で次々に決議があがっている。
 95年の少女暴行事件は島ぐるみ闘争と言われる全島をあげた反基地闘争を生みだし、普天間返還合意の大きな原動力となった。だがその普天間返還は実は沖縄の負担軽減ではなく新たな基地建設・強化であることが明らかになったことから、沖縄の人たちは実に十年以上に渡って移設先である辺野古基地建設を阻止してきた。今回の事件は再び沖縄の人たちの怒りに火をつけた。
 今回の事件は、沖縄「集団自決」軍強制を否定した教科書検定問題と、全く根は同じである。軍は住民に牙を剥くということだ。軍は住民を守らない。軍は住民を見下し、利用し、人権を踏みにじることも、時には命を奪うことさえ厭わない。そのことを、沖縄が身をもって知らされた極限の惨劇が「集団自決」である。この歴史の真実を教訓とするのではなく否定し、隠蔽し、正当化しようとしてきた日本政府の姿勢が、今回の事件の背景にある。
 昨年9月29日には11万6千人の全島的な「教科書検定意見撤回を求める県民大会」が行われた。闘いはまだ続いている。沖縄では、「集団自決」教科書問題と今回の事件を、戦争最優先・沖縄の切り捨て・負担押しつけという日本政府の一貫した姿勢として批判し、闘おうという動きが出、新たな県民大会も準備され始めた。本土においてもこれらの動きに連帯して闘争を構築していかなければならない。

2008年2月14日
アメリカの戦争拡大と日本の有事法制に反対する署名事務局