「台湾はまだ植民地なのか!?」−−植民地支配の傲慢をむき出しにした反動判決
−−靖国第二次訴訟(台湾訴訟)判決を傍聴して−−
2004年5月13日、大阪地裁で、台湾人124人を含む236人の原告による小泉首相の靖国参拝の違憲性を問う訴訟の判決がありました。裁判長は、ぼそぼそとした小声で、請求を棄却するという主文を言い渡しました。違憲判断を出した福岡地裁でも請求は棄却されましたから、判決理由の方では何らかの積極的な判断が示される可能性もありましたが、こんなことは一刻も早く終わらせたいとでもいうような投げやりな口調と表情からは、そうしたことは全く期待できそうにありませんでした。
案の定、判決理由は、これまでの裁判、この一連の靖国裁判だけでなく、これまでの政教分離を巡る裁判の中で最もひどい内容でした。「公用車の利用と秘書官の同行」は、警備や緊急連絡に必要だからとか、「内閣総理大臣」という肩書きを付けたことについては、「人が記帳及び献花についてその肩書きを明らかにすることによって、その社会的影響力の存在を示すことは、私的領域においても行われることであるから」とか屁理屈に近いような理由づけで、国の機関としての内閣総理大臣としての行為には当たらないとしました。初めは私的か公的かを曖昧にし、裁判での旗色が悪くなると私的だと言い繕う首相の無責任な態度にお墨付きを与えたようなものでした。判決が終わった後、傍聴席は怒号に包まれましたが、裁判長らはそそくさと退出していきました。
2月に判決があった大阪第一次訴訟に比べて、こちらの裁判は、よく言えば気さくな、悪く言えば軽々しい裁判長の物言いの中で進められてきました。第一次訴訟の方では、法廷内で原告の心を打つ訴えに傍聴席から思わず拍手があがると、裁判長がそれを神経質に制止したりしていました。それに比べると、この台湾訴訟の裁判長は少々のことは気にせず、いわゆる「ソフトな訴訟指揮」を進めてきました。しかし、それは結局のところ原告の訴えを小馬鹿にした態度であったことがはっきりとしました。
私はあまりの理不尽さにあきれ返り、今回の判決は、まったく論評するに値しない判決であるという感を強く抱きました。
原告の筆頭である台湾原住民の高金素梅(民族名チワス・アリ)さんは、この判決を聞いて「裁判長にとっては台湾はまだ植民地なのか」、「国の権力が法廷にまで及んでいると確信した」と怒りをあらわにしました。先に出された福岡地裁の判決とのあまりの落差は、高金さんの指摘するように、民族差別、植民地主義からくるものではないかと私も感じました。
これは控訴しかあり得ない。控訴して失うものは何もない。この判決を受けて弁護士はそう語りましたが、原告・支援者の誰もがその思いを同じくすることでしょう。
(2004/05/14 大阪Na)