シリーズ<米軍のグローバル再編と反基地闘争>その2
「平澤米軍基地拡張移転反対闘争」新たな局面へ
―― 共同体維持のため、住民59世帯集団移転 ――
―― 平澤汎対委、基地反対闘争に新たな決意 ――


(1) 去る2月13日、韓国政府と基地拡張に反対し立ち退きを拒否してきた地元住民が、「立ち退きや住民への生計支援などで合意した」(「韓国連合ニュース(ウェブ日本語版07/02/13)」)ことが報じられた。
http://japanese.yna.co.kr/service/article_view.asp?News_id=612007021303600%20&FirstCd=01

この報道によれば、「政府が平澤市彭城(ポンソン)邑(ウプ)に2カ所の移住団地を造成し、住民は3月31日までに移ることなど24項目に合意した」と言う。また合意文書には、「移住する住民に各種の支援金を提供する」「貧困層の高齢者世帯に毎月20万ウォン(約2万6千円)ずつ10年間にわたり提供する支援金の給付年齢を、当初の70歳から65歳に調整する」「公共労働事業の期間を2008年から2014年に延長し、貧困層が年齢と関係なく参加できるようにする」「双方は同日の合意内容の履行に向け、国防部や平沢市、住民代表からなる実務協議会を立ち上げ2008年12月31日まで運営する」等が盛り込まれていると言う。
 
 韓国の保守的マスコミは、これによって「平澤基地問題」が解決したかのように報道しているが、事実は異なる。確かに闘いは強権的弾圧によって後退し、苦しく困難な段階にあることは間違いない。しかし、「平澤米軍基地拡張移転反対闘争」は、新たな局面に移行したのである。その新たな条件下で、「基地の全面撤去・米軍の韓国からの撤収」を視野に入れた新たな闘いが始まっている。
 この4年間の平澤の闘いは、韓国国内に留まらず、反米・反基地闘争を闘う世界の人民に、勇気と力を与えてきた。盧武鉉政権の軍隊を投入しての暴力鎮圧と卑劣極まりない恫喝政策により、住民たちは命にも等しい汗と情の染み込んだ自分の土地を去ることを余儀なくされたが、彼らと彼らを支援してきた「平澤汎対委」に結集した人々の闘いは不滅であり、今後の反米・反基地闘争に受け継がれていくだろう。

「平澤汎対委」は、2月15日、「住民移住決定に対する平澤汎国民対策委の立場」という声明文を発表し、盧武鉉政権を弾劾するとともに、闘争の現局面の評価と今後の闘争への決意を表明した。以下、その全文を翻訳して紹介する。私たちは、この声明で述べられた苦悩と不屈、そして闘争精神を正面から受け止め、今後も彼らの闘争に注目していきたい。


(2) 韓国政府は、上記移転合意文書の署名が乾きもしない2月21日、移転期限が3月31日となっているにも関わらず、基地拡張工事を大々的に再開した。このような移転住民の心を踏みにじる政府の行為に対し、「平澤汎対委」は、同日付けで糾弾声明を発表した。
「声明」は、住民無視の工事強行を糾弾するとともに、十分な対策を講じないままの性急な工事が及ぼす周辺住民の健康被害と環境汚染に対する憂慮を表明し、工事の即刻中断を要求した。
http://www.antigizi.or.kr/zboard/view.php?id=report&no=366

また、2月23日には、ワシントンで米韓国防長官会談が開かれたが、そこでは戦時統帥権返還問題と併せて在韓米軍基地再編問題が協議され、韓国側の膨大な費用負担等が議論されたという。しかし詳細は不明のままであり、不確定な部分も少なくないとの観測である。「平澤汎対委」は、このような状況を踏まえて、「基地再編の具体的な姿が明らかにされない中で、平澤基地の拡張工事が先行的に強行される」ことに強い疑念を表明する声明を同日付けで発表した。
「声明」は、6カ国協議の2・13合意に注意を促し、この状況の変化をも考慮して、平澤基地移転拡張計画そのものの再検討を、米韓両政府に強く要求している。
http://www.antigizi.or.kr/zboard/view.php?id=report&no=367

2007年3月7日
アメリカの戦争拡大と日本の有事法制に反対する署名事務局






住民移住決定に対する平澤(ピョンテク)汎国民対策委の立場


昨年5月、政府は、住民及び平澤汎対委が使用していた大秋分校を強制的に撤去した。

大秋里の平和洞山に立てられている「米軍基地拡張反対」の旗

 自分の生存権を守り、戦争基地建設を防ぐために、過去4年間頑強に闘ってきた米軍基地拡張反対彭城(パンソン)対策委員会(以下住民対策委)が、政府の強圧により、3月末までに移住することにした。過去2年間、住民対策委と共に基地拡張を防ぐために闘ってきた平澤米軍基地拡張阻止汎国民対策委員会(以下平澤汎国民対策委)は、今回の決定に対し、次の通り私たちの立場を明らかにする。

1.住民を追い出すために、最後の瞬間まで、強圧を動員した盧武鉉政府とその背後である米国を強く糾弾する!

過去4年間、政府は、平澤米軍基地拡張のために、住民に対する無視と弾圧、分裂と陰湿な攻撃で一貫してきた。政府にとって、住民は、ご主人である米国の要求を迅速に聞き入れるのを妨害する頭が痛い障害物であっただけだ。米国が要求した戦争基地を作るために、政府は、最後の瞬間まで住民を徹底的に踏みにじった。政府は、移住するが、ただ共同体維持のため移住団地が作られた後に移住するという住民の最小限の要求さえすっかり無視してしまっただけでなく、これについて住民たちが真ともに議論する時間さえ許さないで、正月連休前に合意しなければ強制撤去に突入して、政府が約束したことまで保障できないといった最後通告を飛ばし、住民の屈服を強要した。
 われわれは、基地拡張強行により、到底話せない心的・物的苦痛を被ってきた住民に対する最小限の人道的度量さえ見いだせない政府の反民主的で反倫理的な蛮行を強く糾弾する。われわれは、政府が、基地拡張を強行しつつ、住民と平澤の守り手たちに加えたあらゆる悪行、すなわち大秋(テチュ)分校を惨めに破壊し、これに抵抗する守り手たちを盾と棍棒で打ちすえ、血溜まりを作ったこと、その肥沃な土地に殺伐たる鉄条網を打ち込み、軍事施設もない所を軍事施設保護区域に指定したこと、無力な老人の腕をへし折って道端に投げ飛ばしたこと、「ばあさん、土の臭いをかぎたいか?」と暴言・暴行を浴びせたことなど、到底想像できない歴史に残る極悪非道を決して忘れないだろう。
 これらすべてのこが、米国の海外駐留米軍再配置計画(GPR)と駐韓米軍のアジア・太平洋侵略軍化(戦略的柔軟性)に基づいたものだ。従ってわれわれは、韓半島の平和を脅かし、住民の生存権を踏みにじった米国の侵略的振る舞いを強く糾弾する。われわれは、盧武鉉政府が、これらの諸々の事態に対して責任を痛感し、住民をはじめとする国民の前に頭を下げて謝罪することを厳重に要求する。
 われわれは、住民に対する欺瞞と脅迫を繰り返した政府のこれまでの振舞いから見る時、今回の合意さえきっちりと守るかどうかについての疑いを消すことができない。
 われわれは、政府が、強圧によって結んだ合意だけでも忠実に履行し、再び住民に損傷を与えないことを強く要求する。

2.われわれは、住民が強制移住に至るようになった事態に対する責任を痛感しながら、情が浸み込んだ村から追い出される住民に、心より慰労の言葉を申し上げる!

過去2年間、勝利の喜びと弾圧に対する恐れ、敗北の挫折を共に体験してきながら、住民たちと"同志的連帯"を分けあってきた平澤汎国民対策委は、政府の強圧による住民の移住決定に対し、非常に残念に思いつつ、こういう状況に至るようになったことに対し、責任を痛感する。
 われわれは、命を懸けて開墾した沃土、手垢が染み込んだアンバン(居間)とコンノンバン(渡り部屋)、曲がりくねった路地を、戦争の基地として渡し、情の染み込んだ村から追い出される住民の惨めな心情を、どんな言葉によっても慰労できないという事実をよく知っている。それ故に、われわれは、住民の重々積み重なった恨(ハン)(注)を胸深く入れ、住民の苦痛の原因であったし住民が共に闘ってきた戦争の基地を防ぐことに、渾身の力を出すという点を申し上げようと思う。
 われわれは、基地問題と関連した住民たちの最後の希望である住民共同体維持と新大秋里建設が、住民たちが願う方向通りなされるように、住民対策委と積極的に協力するだろう。


3.平澤汎国民対策委は、住民の移住にもかかわらず、平澤米軍基地拡張反対闘争を持続していくだろう!

 平澤汎国民対策委は、住民たちの移住にもかかわらず、平澤米軍基地拡張反対闘争を継続していくだろう。われわれは、変化した条件に合うように、基地拡張を防ぐための闘争を展開するだろう。
 これに関連して、2004年国会の批准同意を経た協定内容とは異なり、米2師団再配置費用まで、われわれが防衛費分担金で支給するという事実が明らかになっている。これは、協定違反であり、国会と国民に対する欺瞞だ。このようになれば、政府の主張より約2倍にもなる10兆ウォン(約1兆3千億円)内外を、われわれが、平澤基地拡張費用として負担するようになる可能性が非常に高い。これと共に、施設総合計画(MP)が発表されれば、費用など各種問題が提起されるであろうし、返還米軍基地環境汚染復元費用負担問題も懸案として浮び上がるだろう。また基地拡張計画によって政府が買いとったK-55空軍基地周辺の64万坪が、空地で残される事実が明らかになりもした。敷地糾弾と関連しても、とてつもない水準の環境汚染と破壊、平澤周辺地域の道路交通混雑なども予想されており、基地移転時期の延長問題で、協定に対する韓米間再協議の可能性も検討されている。
 米8軍司令部・韓米連合軍司令部の解体または縮小が推進されており、米議会においてさえ、駐韓米軍の追加縮小問題が提起されている。特に6者会談が実質的な進展を遂げるようになれば、駐韓米軍の追加縮小は、予想より早い時期中に表面化する可能性がある。さらに韓半島の平和体制議論が本格化すれば、駐韓米軍の駐留自体が問題になるだろう。このようになれば、駐韓米軍基地縮小や閉鎖も議論されなければならない。
 上のような、重大でもあり、数多い状況変化にもかかわらず、韓米間合意という理由によって平澤米軍基地拡張が継続されるのは、有ってはならないことだ。われわれは、こういう状況を反映して、韓米当局が、平澤米軍基地拡張をまず打ち切り、全面再協議に乗り出すようにさせる闘争を、多方面で繰り広げるだろう。
 われわれは、これと共に、平澤米軍基地拡張の本質的問題である駐韓米軍のアジア・太平洋侵略軍化(戦略的柔軟性)と、韓米同盟の侵略同盟化の問題点を、国民大衆に広く知らしめ、これを阻止する闘争を積極的に繰り広げるだろう。
 われわれは、特に2007年の情勢を規定する6者会談の進展と大統領選挙局面の中で、平澤米軍基地拡張反対闘争を中心に、大衆的な自主平和運動を展開していくことによって、再協議を貫徹し抜き、自主平和運動の大衆的基盤を広げていく先頭に立つだろう。

2007.2.15
平澤米軍基地拡張阻止汎国民対策委員会

http://www.antigizi.or.kr/zboard/view.php?id=report&no=365

(注)恨(ハン)は、韓国・朝鮮文化において重要かつ独特な位置を占めている。日本語の「恨み」という意味も含まれるが、単なる「恨み」ではなく、「痛恨」や「悲哀」がともに入り混じった感情であり、「恨」を抱くと決して心の平安を得ることができず、「恨」解かずに死ぬと、死後も魂が安らがないと考えられている。

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