[速報]郭貴勲裁判第3回控訴審
 原告が裁判官を忌避!
 「あの人に判決を書かせたくない」




 2月5日、郭貴勲裁判第3回控訴審で、遂にとんでもないことが起こりました。「そうなるかも知れない」とは覚悟していたとはいえ、その言葉を聞いたとき、全身の血が怒り
で沸騰するのを感じました。

 「弁論を終結する」

 原告弁護士が制止するのも聞かず、一方的にその言葉を言い放ったのです。その言葉を言い終わるか終わらないかのうちに、原告弁護士はこう言いました。

 「裁判官3名を忌避します」
 「忌避? ……あっ、じゃあ、弁論終結後の忌避ということで」(裁判官3人は席を立つ)
 「待ってください、弁論終結前の忌避ですよ」(裁判官はその言葉を無視して、去る。原告弁護士は書記に)「今の言葉をちゃんと記録しといてください、弁論終結前の忌避です」

 この裁判の争点は「出国により被爆者たる地位を失うか否か」です。被告たる国・大阪府は控訴審になってからそれを誤魔化そうとしましたが、前々回、前回の追及で渋々争点の一致を認めました。そして原告裁判官が「争点に関して裁判所もそう設定しているか」と問うたところ、「原告と被告が争点に関して同じだと認識している」とだけ答え、裁判所自身の認識については何も答えず、その直後原告弁護人の制止も聞かずに一方的に「弁論終結」を言い渡したのです。
 もちろん弁論は尽くされていません。原告は4人の証人を申請しています。「在外被爆者に関する検討会」であのようなひどい結論が出され、こちらは402号通達を批判し尽くさなければならないと考えていました。被告も、裁判官の意向に気づくまでは、原告に対する反論の必要を口にしていました。

 裁判官の意向――それは原告・被告間で一致している争点を無視し、勝手に設定した争点で判決を書くことです。原告である国・大阪府を勝たせるには、それしかありません。しかしそんなことがあってよいものでしょうか。お互いが認めている争点とは別の論理で判決を書く……それも全く弁論を重ねてないうちに!
 お互いの言い分はよく聞くことが、最低限の民主主義というものです。この裁判官はこう言っているようなものです。
 「もういい、分かった、おまえらが何をいうかはもうええねん。わしは書きたいように判決を書く」
 全く常軌を逸しているとしか言いようがありません。
 この裁判官がやったことは、司法制度に対する信頼を壊すこと以外のなにものでもありません。遠い韓国から情熱を傾けてやってくる郭さんに、余りにも失礼な振る舞いです。日本国家はこれまで何度も在韓被爆者を踏みつけてきましたが、今回日本は民主主義国家であるという仮面も脱ぎ捨てたのです。

 民事裁判で裁判官の忌避は、ほとんど使われない「禁じ手」だそうです。なぜなら裁判官を忌避することは、裁判所を信用しないということになるからです。忌避を裁判所が認めてしまえば、司法への信頼の崩壊につながるからです。(何を今更!)
 今後高裁、そして多分最高裁へと忌避の可否が争われることになりますが、これが認められる可能性はゼロに等しいそうです。弁護士も「これまでも忌避が認められたことはないんじゃないか」ということでした。しかし永島弁護士は力強くこうおっしゃいました。
「あの人に判決を書かせたくはない」
 まともに弁論も行わせず、おそらく己の出世欲のためだけに、最初から国に勝たせる判決を書こうと決意しているような人間に、裁判官たる資格あろうはずもありません!


■  原告の在韓被爆者・郭貴勲さん。裁判官に対する怒りをぶちまけます。

 郭さんは、裁判後、開口一番こう言われました。
 「悪い奴がいるものだと思った」
 「これから仮に最高裁で3年かかって裁判に勝ったって、私が生きているかどうか。日本は在韓被爆者が死に絶えるのを待っている」(実際、郭さんの周囲でも、この間4人の被爆者が亡くなったそうです。)
 「日本はいつか歴史的に審判を受ける」

 悪い奴はどこにでもいます。しかしその悪い奴が裁判官として人を裁く地位にいて、その権力をほしいままにしている。忌避してもそれが認められることはないということは、「悪い裁判官による裁判を拒否する権利」はないということです。本来であれば三権のうち司法は最も公平でなければならず、民主主義を制度的に担保するものでなければならないはずです。そのような場に「悪い奴」がのさばり、公務員として裁かれることのない地位にいるのです。このようなことが許されてよいわけがありません。(しかもそんな「悪い奴」の方が出世できるシステムになっている。)

 裁判に参加された日本人被爆者はこうおっしゃいました。
 「この国は、どういう国なんだろうか。郭さんに申し訳ない」

 この裁判が高裁でどうなるのか、分かりません。しかし原告団の採った「裁判官忌避」という選択は、たったひとつ残された最後の手段だったと思います。
 現在、厚生労働省は、政令か省令で「手帳が国内でのみ有効」ということを定めようとしています。このこと自体が、これまで争点だった「402号通達の違法性」を裏付け、原告の主張の正しさを証明しています。これまでの402号通達では「国外に出たら失権」し「再入国の際は再申請」が必要だったのですから。厚労省のやっていることは、法律を変えて郭さんを被爆者援護法から閉め出すことがかなわないから、こそこそと自分の権限の枠内で何とかしていようとしているだけです。実に卑劣です。
 そして何よりも原告の正しさは、12月26日、長崎地裁での李康寧さんの勝訴でも裏付けられています。
 厚労省の非人道的な仕打ちに失望した在ブラジル被爆者の森田隆さんも、近々広島地裁に同様の裁判を提訴されます。
 「すべての在外被爆者に被爆者援護法の適用を!」というできあがった流れを、大阪高裁で止めたくはありません。高裁のこの状態で一支援者に何ができるのか分かりませんが、精一杯事態の推移を見守っていきたいと思います。(だい)
(以上)



アメリカの「報復戦争」と日本の参戦に反対する署名運動 事務局