有事関連7法案に反対する!
−−自衛隊派兵のどさくさ紛れに「戦争国家」作り−−
○それは戦争に国民、地方自治体を強制的に駆り出す
○それは米軍の好き放題の軍事行動にお墨付きを与える
○それは特定公共施設を軍隊、軍事行動に最優先に提供する
○それは海上輸送の武器の摘発を目論み緊張を高める
○それは米軍に武器や人員を好きなだけ提供する
○それらは「戦争できる国づくり」を目指す
(1)はじめに−−イラク派兵のどさくさ紛れに「戦争国家」作りの具体化を目論む。
2月1日、国民の大多数の反対を押し切ってイラクへの陸上自衛隊本体の派兵が始まりました。戦後初めて戦地へ軍隊が派兵される事態がついにやってきたのです。図に乗りつつある政府はイラク派兵を足がかりに、海外派兵「恒久法」の成立を目論んでいます。
今や自衛隊・防衛庁は、対ソ着上陸を念頭に置いた、いわば軍事力は示すものの抑止を前提とした「専守防衛」戦略から、対テロ・対ミサイルを口実に、アメリカの世界軍事戦略と一体となって、その戦力を一部代位・補完する「実際に戦う」ことへと軍事・軍事戦略の大転換を行おうとしているのです。そして自衛隊を「存在する軍隊」から「戦う軍隊」へ転換させようとしているのです。
しかし、こうした軍事戦略の転換にあたって最大のネックとなっていたものの一つは、日本では軍隊・軍事・軍事戦略に対する法的な側面からの制約でした。それは当然です。過去の日本の天皇制軍国主義とそれがもたらした惨禍に対する痛切な批判と反省の上に成立した日本国憲法は、何よりも国の交戦権を否定し、その保証のために軍隊そのものを放棄し、国際社会で日本が生き延びていく道を何よりも平和共存・平和外交の発展、国際協調に求めたのです。軍事による覇権ではなく平和主義を立国の精神とすることによって、国際社会の中で「名誉ある地位」を占めようと高らかに宣言したのです。軍隊または軍事的な要素は憲法・法律から一切排除され、さらに戦前・戦中それらが徹底的に排した基本的人権の尊重を、その最大の原理に据えたのですから、こと軍事・軍事的なものが憲法原理とは相容れぬものであり、それらが戦後ネガティブなもの、否定的なものとして取り扱われたのはいわば当然の成り行きでした。
ところが、森政権という異常に不人気な政権の後を継いでこれまた異常な人気下で登場した小泉政権は、戦後の「軍事タブー」を次から次に易々と突破していったのです。その事態は単に「時代の変化」であるとか、まともな反対勢力の不在といったことだけで説明できる事態ではありません。戦後50年間日本国憲法下で培われたはずの平和主義のタガなどすっかりはずれてしまったような暴走ぶりです。
その動きは昨年6月に戦後長い間タブーであった「有事法案」を、北朝鮮の「核開発・ミサイル問題」や「拉致問題」また「不審船問題」等を最大限利用しながら成立させた点にも現れました。戦争が起こる実際的な危険、有事三法が想定したような、どこかの国が大規模侵攻を日本に行うといったリアリティは皆無の下で、軍事・軍事的なもののばっこを法制面から保証することが始まったのです。武力攻撃事態法はじめ有事関連3法案は日本国憲法の平和主義にまず楔を打ち込むもの、いやそれどころか日本国憲法下で法的「クーデター」を目論むものだったのです。それらの法律は「公共の福祉」の名の下に、本来平和主義、基本的人権の尊重をその原理とする日本国憲法とは全く相容れない軍事・軍事的要素を持ち込み、「有事」はもちろん「平時」にその下準備をすることを強いるようなものをもたらしたのです。
しかし、有事関連3法案は「有事法」整備のいわば序の口であり、「有事」法の総論を示したものでした。「有事法」体系を完成するためにはまだまだ細則にまで至る法整備が必要です。今回出てきた7法案は、そうした「有事法」体系の完成に向けたものに他なりません。実際これが成立すると「有事法」はその完成に向けて大きな一歩を踏み出すことになります。
最大野党民主党は、国民世論を裏切って有事3法案の可決に賛成し、今では改憲を打ち出すところまで転落しています。ここに論ずる問題点は、次の国会審議でどこまで論争になるか、ほとんど期待は持てません。それでも私たちは、その7法案の危険性がどこにあるのか、それが憲法の諸原理と、従って平和や人権や、およそ「戦後民主主義」が大切にしたはずのものといかに正反対のものであるのかを明らかにしたいと思います。また武力攻撃事態法等すでに成立した法律との関連を明らかにしたいと思います。それは何よりもこれら法律が適用される事態、すなわち「有事」=戦争という事態を何としても阻止したい、有事法制の発動そのものを阻止したいからに他なりません。
いや、こうした法律を通過させていくこと、整備していくこと自身が戦争を身近なものとする、戦争を招くことになると考えるからです。イラクへの派兵は始まってしまいましたが、これ以上この日本という国を戦争の時代へと踏み込んでいかせないために、再び将来に悔いを残さないために、今からでも遅くない、できることをしていきたいと思います。
(2)軍隊、軍事行動をすべてのものに優先させる有事関連7法案。
政府が2日の各都道府県担当者への説明会で概要を説明したと新聞各社が伝える有事関連法案は7つから成っています。法案名はすべて仮称のようですが、「国民保護法案」「米軍行動円滑化法案」「特定公共施設利用法案」「非人道的行為処罰法案」、ここまでは内閣官房が提出予定、さらに「外国軍用品等海上輸送規制法案」「捕虜取り扱い法案」「自衛隊法改正案」、ここまでは防衛庁が提出予定のもののようです。さらに条約として「日本国の自衛隊とアメリカ合衆国軍隊との間における後方支援、物品又は役務の相互の提供に関する日本国政府とアメリカ合衆国政府との間に協定を改正する協定」、「1949年8月12日のジュネーブ諸条約の国際的な武力紛争の犠牲者の保護に関する追加議定書(議定書T)」、「1949年8月12日のジュネーブ諸条約の非国際的な武力紛争の犠牲者の保護に関する追加議定書(議定書U)」があるようです。政府はこれらすべてを2月下旬または来月上旬までに一括して国会に提出する予定だそうです。有事法完成にむけて一挙に速度を速めようというわけです。
これら法案は昨年11月『要旨』という形で示された「国民保護法案」を除いては、その内容は新聞各紙で示された程度でしか知ることはできませんが、それぞれ政府によれば次のような要旨のものとされています。
●国民保護法案――武力攻撃事態等において武力攻撃から国民の生命、身体及び財産を保護し、並びに武力攻撃の国民生活及び国民経済に及ぼす影響が最小限となるようにするための対処措置を的確かつ迅速に実施することができるよう、これらの事項に関し、国、地方公共団体等の責務、国民の協力、住民の避難に関する対処措置その他の必要な事項を定める。
●米軍行動円滑化法案――アメリカ合衆国の軍隊が実施する日本国とアメリカ合衆国との間の相互協力及び安全保障条約に従って我が国に対する武力攻撃を排除するために必要な行動が円滑かつ効果的に実施されるために我が国が行う措置等について定める。
●特定公共施設利用法案――武力攻撃事態等における特定公共施設等の利用に関し、その総合的な調整を図り、もって対処措置等の的確かつ迅速な実施を図るため、指針の策定その他の必要な事項を定める。
●非人道的行為処罰法案――国際的な武力紛争において適用される国際人道法の的確な実施の確保を図るため、ジュネーブ諸条約等に規定する重大な違法行為に対する罰則を整備する。
●外国軍用品等海上輸送規制法案――武力攻撃事態において、自衛隊の行動の円滑化に関する法制の整備の一環として、外国軍隊等の用に供する武器その他の物品及び外国軍隊等の構成員の海上輸送を規制するため、停船検査、回航措置等の必要な事項を定める。
●捕虜取り扱い法案――武力攻撃事態における捕虜等拘束、拘留その他の取り扱いに関し必要な事項を定める。
●自衛隊法改正案――米軍に対する物品および役務の提供に関し所定の規定を整備する。
●日本国の自衛隊とアメリカ合衆国軍隊との間における後方支援、物品又は役務の相互の提供に関する日本国政府とアメリカ合衆国政府との間に協定を改正する協定――自衛隊と米軍との間の物品及び役務の提供について定める現行の協定を武力攻撃事態等に適用できるよう所要の改正を行う。
●1949年8月12日のジュネーブ諸条約の国際的な武力紛争の犠牲者の保護に関する追加議定書(議定書T)――国際的な武力紛争における犠牲者の保護に関して、ジュネーブ諸条約を補完、拡充する規定を定める。
●1949年8月12日のジュネーブ諸条約の非国際的な武力紛争の犠牲者の保護に関する追加議定書(議定書U)――非国際的な武力紛争における犠牲者の保護に関して、ジュネーブ諸条約を補完、拡充する規定を定める。
軍隊や軍事の血なまぐささ、きな臭さを知っている人間なら、上のようなしかつめらしい法律用語の背後に隠された法案の本当の狙い、本質を見ざるを得ません。それらは軍隊、軍事があらゆる事柄に優先され、好き勝手に振舞うことを保証することによって、結果として戦争を準備し、基本的人権を踏みにじり、人民生活を圧迫、抑圧することを保証しています。
私たちはこの際、軍隊や軍事というものがおよそ理性や合理で律しきれるものでないことに気付いておくべきです。もちろん戦争法や有事法というのはそのためにあるのだという人もいるでしょうが、歴史上で理性や法によって律することのできた戦争や軍隊など、かつてなかったこともわきまえておくべきです。軍隊や戦争はそれ独自の論理でどんどん肥大し、拡大し、破滅に至って始めて動きを止めるものであることを十分に知っておくべきです。そういう意味で小泉や石破の論理や決定はいかにも軽すぎるし、彼らは軍隊や軍事の本当の恐ろしさを知らなさすぎるというべきです。
さて法案を分かりやすい言葉で言い換えるとこういうことです。
1.国民保護法案――「国民」の「保護」など名ばかり。米軍や自衛隊がその行動(早い話が戦闘行動)を何の制約もなく行えるために、地方自治体や指定公共機関や住民をどのように巻き込み、どのように利用し、どのように排除するかを決定する法律です。
地方自治体に物を聞かせるためには、憲法に保証された「地方自治の本旨」や、国と地方自治体との対等平等など言っていられません。政府(首相)――都道府県知事――市町村長――住民という上意下達システムを整備せねばなりません。また住民に物を聞かせるためには、基本的人権の保障などできません。罰則を伴ってでも言うことを聞かせるということです。さらに「平時」からその準備をさせる必要があります。これらすべてを規定する法律です。運用如何では、国家権力の乱用、ある種の独裁をも可能にするものなのです。
もう一つ注意すべきはこの法律が「武力攻撃事態」だけでなく、それらに準ずる「大規模テロ等が発生した事態」においても適用されるということです。「武力攻撃事態」がそもそも何であるのか論議になったように「大規模テロ」とはどういう事態を指すかについても規定がありません。すべて政府(首相)の胸先三寸です。大規模な反政府デモでも「大規模テロ」に認定を受けかねません。きわめて危険な法律と言わざるを得ません。
2.米軍行動円滑化法案――先に書いたことだけでなく、この法案についてもう少し詳しく書いた新聞記事によって批判して見ましょう。いずれにしてもまず確認しておかねばならないのは、昨年の有事法の制定論議の時以来、米軍当局はそもそも自軍に日本の国内法の適用などできないと一貫して主張しています。要するに日本の法律で米軍の行動に制約など加えられるものかとうそぶいているのです。そんな米軍にその「行動」の「円滑化」・便宜を最大限図ってやろうというのですから、最初からとんでもない法律には違いありません。
まず、この法案によって▽政府は国民に対し、米軍の行動に関する情報提供を適切に行う。→何のことはない、政府は「適切」と判断する限りにおいてのみ、国民に情報提供を行うのであって、国民の本当に知りたいこと、あるいは行動のすべてを知らせるわけではありません。要するに政府は米軍の行動について国民に対し「情報操作」をするよと公言しているのです。
次に、▽政府は米軍の行動などが地方公共団体の対処措置に影響を及ぼす恐れがある時は、地方公共団体との連絡調整を行う。→「連絡調整」とは名ばかり。要するに地方公共団体の対処措置が米軍行動に邪魔になりそうな時は、地方公共団体に対して米軍に成り代わって、政府が無理からでも言うことを聞かすということです。何と言っても米軍の行動が最優先なのですから。
さらに▽政府は米軍から道路工事など特定の行為の実施について連絡を受けた時は、関係機関に通知する。→米軍様が道路工事などをなさるから関係するものは邪魔にならぬよう、また最大限の便宜をはかるようにせよと、申し伝えるということです。
▽ 国は米軍の特定の行為で生じた損失を自衛隊法の規定の例により補償する。→独立国の法律とは思えません。別の国の軍隊の行為で生じた損失を自衛隊がそれになりかわり補償するというのです。もっともそれも規定がなければ補償もしてもらえません。米軍はやりたい放題し放題です。
▽ 自衛隊は米軍に対し、物品及び役務を提供できる→これが集団自衛権に踏み込むことであることは言わずもがなです。要するにこの法律は米軍と自衛隊が肩を並べて共通の敵と闘うことを想定しているに他なりません。
以上見たようにこの法律は米軍のために政府や自衛隊が最大限走り回り、国民や地方自治体に対してはその盾の役割を果たすことを決める法律なのです。およそ主権国家の法律であるとは思えないものです。
3.特定公共施設利用法案――この法律は、まず▽港湾施設・飛行場施設の利用で、武力攻撃事態対策本部長(首相)は利用に関する指針を定め、特定の者に優先利用させるよう施設管理者に要請できる、というものです。港湾施設・飛行場施設がまず「平時」から首相(武力攻撃対策本部長)の作る利用指針の下に置かれるということです。本来民間の手により発着・往来自由の場に首相の手が入ってよいものなのでしょうか。その上で「有事」には特定の者に優先利用させろというのです。特定の者が、米軍・自衛隊およびその関係者、政府関係者であることは言うまでもありません。中でも米軍・自衛隊はその好き放題な利用が保証されるということです。民間でどんなに緊急な事案があっても、例えば救急患者が発生してどうしてもそこを利用しなければならないと言った時でも、恐らく軍事が優先されることでしょう。小泉や石破や現在の日本政府にとっては、一人の人間の命よりも、「公共の福祉」論による「全体の利益」や、米軍との同盟の方が重要でしょうから。
次に、▽優先利用できない場合は、首相権限で、国土交通省を指揮し措置できる。例えば「非核港湾宣言」等で核搭載の米軍寄港お断り等と地方自治体が言った所で、首相が国土交通省を指揮して無理からでも寄港させてやるということです。こうした強権的な発想にはあきれかえるしかありませんが、これが軍事・軍事に関わることの実態というべきです。
4.非人道的行為処罰法案――この法案は良い法案であるかのように見えますが、実際は全く逆です。「国際的な武力紛争」に関わらない国には無縁な法律、戦後平和憲法を掲げてきた日本には本来無縁な法律だったのです。ところが日本が侵略戦争をするために、「ジュネーブ条約などに規定する重大な違反行為に対する罰則を整備」しておくことが必要になったのです。そもそも戦争自体が非人道的行為そのものであり、実際アメリカが9/11以降、アフガニスタン・イラクにおいて、その人民、ことに子ども・女性・老人等社会的弱者に対して行ったことのどこに人道のかけらがあるんだ、と言わねばなりません。
それを国際法では「武力紛争法」というのですが、1970年代以後は「国際人道法」という名称が使用されるようになったそうです。市販で比較的簡単に入手できる「国際法」のテキストによれば、「この用語は多義的であり、最狭義では武力紛争犠牲者の保護を目的とするジュネーブ諸条約の規則(ジュネーブ法と呼ばれる)のみをさす」(『国際法』【第4版】松井芳郎他著 有斐閣Sシリーズ 有斐閣 p.299)とされています。「しかし、1977年の2つの追加議定書は、戦闘の手段と方法の規制(これは従来ハーグ法の問題とされてきた)についても定めている。」「そのため国際人道法とは『条約または慣習により確立された国際規則であって、国際的または非国際的武力紛争から生じる人道的諸問題の解決を特に目的とし、かつ、紛争当事国が選択する戦闘の方法および手段を用いる権利を制限しまたは紛争によって影響を受けもしくは受けるかもしれない人と財産を保護するもの』であるという定義がより適切とされる」(同上 p.299)そうです。「また広義では、武力紛争の状況に関連してジェノサイドや人道に対する罪を禁止する規則を含める立場や、中立法規をも含めた武力紛争法全体を呼ぶ立場、あるいは平和時における人権保護の規則まで含める立場もある」ということです。
この法案については、寡聞にして未だ条文を知らないので、具体的な形での批判をすることはできませんが、少なくともどのような規定が置かれるかあるいはどのような規定を順守することが盛り込まれるかは、1949年ジュネーブ文民条約第一追加議定書等から想像をつけることはできます。少し長くなりますが、この第一議定書の「戦闘の手段と方法の規制」に関わる「戦闘方法の規制」の主な条項を確認したいと思います。なぜなら「日本有事」の際、自衛隊と行動を共にするであろう米軍が、この条項を、9/11以降アフガニスタン・イラクで遂行している戦闘においておよそ遵守しているように思えないからです。ということは、自衛隊が米軍と一体となって非人道行為を行い、戦争犯罪を犯す危険性があるからです。
曰く「まず文民と文民たる住民は、軍事行動から生じる危険に対して一般的保護を享有する。文民・文民たる住民および民用物は、攻撃及び復仇の対象としてはならない(51条1.2.6,52条の1)」→アフガニスタンでまたイラクで一般住民は、米軍によってタリバンやアルカイダまたイラク兵とどれほど区別され保護されたというのでしょう。住民や民用物がクラスター爆弾やバンカー・バスター、特殊気化爆弾やあげくは劣化ウラン/ウラン弾の攻撃の対象になっていなければ、私たちはあれほど傷つき、血を流す、そして放射能の後遺症に苦しむ、見るも無惨な女、子ども、老人たちの姿を見ることはなかったでしょう。それとも米軍は彼らが全て敵兵だとでもいうのでしょうか。あるいは敵兵と同じ場所に住む住民は同罪とでも言うのでしょうか。
曰く「攻撃は軍事目標に限定しなければならず(52条の2)」「軍事目標と文民または民用物とに区別なく打撃を与える無差別攻撃は禁止される(51条4.5)」→私たちは米軍から「精密誘導兵器」による「軍事目標」のみへのスマートな爆撃という宣伝を、しかも画像入りでいやというほど聞かされました。その割には何という「誤爆」の多さ。もはや意図的に精密に「誤爆」しているとしか考えられない位です。そのたびに多くの人々が傷つき、殺されているのです。(人影に爆弾が正確に吸い込まれるように落ちていく様に歓声をあげる軍人と記者団。もはや人間の感性を持ち合わせているとは思えません。)
曰く「また攻撃にさいしては、目標が軍事目標であることを確認し、かつ文民・文民たる住民および民用物に対する付随的損害の発生をできるだけ避けるための予防措置がとられなければならない(57条)」→「精密誘導兵器」が確実に機能すればまさにこの条項が実現されると米軍は言い張るでしょう。しかし、軍事目標でない所にもミサイルが撃ち込まれ、多くの犠牲者が出ているのが現実です。もうこれ位でいいでしょう。要するに米軍はジュネーブ文民条約第一議定書などこれっぽっちも守っていないのです。その米軍と自衛隊は共同の行動を取ると言うのですからその遵守ぶりは推して知るべしです。
5.「捕虜取り扱い法案」−−この法案は、「武力攻撃事態における捕虜の拘束、抑留、その他の取り扱いに関し必要な事項」を定めるものですが、捕虜に関する条約はやはりジュネーブ捕虜条約として定められたものがあります。これは戦争をして捕虜を取ると言うことなのです。
しかし、ここでも確認したいことは、米軍の、ことにアフガニスタンでの「アルカイダ」構成員と思える捕虜たちに対する扱いは、この条約を蔑ろにするか、わざと敵対している風に見える点です。
この条約では、「捕虜はつねに人道的に待遇され、不法な加害行為から保護され」ます。また「捕虜に対する復仇は禁止され」ます。「捕虜の抑留や労働などの待遇に関する事項については、同条約第3編の規定が適用され」ます。「とくに抑留国が捕虜に対して司法上・懲戒上の措置を取る場合、その手続きと処罰は条約の規定(82〜108条)に反しないことを必要とする。捕虜となる前に武力紛争法に違反する行為を行った者は、その違反により捕虜資格を失うわけではない(第一追加議定書44条の2)。その違反のために有罪判決を受けた捕虜も、捕虜条約の利益を引き続き享有する(捕虜条約85条)。捕虜は実際の敵対行為が終了した後、遅滞なく解放され送還されなければならない(同118条1)」等さまざまな取り決めがあるのですが、これがキューバのグアンタナモ米軍基地の「鶏小屋」に収容されている「捕虜」に果たして全面的に適用されているとでも言うのでしょうか。そもそも「捕虜」とされた過程、アフガニスタンからグアンタナモに移送される過程、グアンタナモでの取り扱い、それらすべてにわたって上の条文が厳密に適用されているとはとても思えません。というより米軍が「アルカイダ」構成員を「捕虜」として遇しているのかさえ疑わしいものです。同胞を何千人も殺した輩の仲間など人間でもないといった扱いです。こうした米軍とやはり自衛隊は行動を共にするのですから、条約の遵守などどこまでできるか怪しいものです。
6.外国軍用品等海上輸送規制法案――現在、朝鮮半島有事など周辺事態を念頭に置いた船舶検査法なるものがあります。これは国連安保理の決議などに基づく「経済制裁」への「協力」を目的としています。検査を行う際、旗国の同意などが必要で、停船させるための警告射撃や積み荷の押収はできないことになっています。ただこの法律そのものが相手国(念頭に置かれているのは朝鮮民主主義人民共和国)にとっては十分「戦争挑発的」なものであり、運用次第では「開戦」になりかねない危うさを持つものですが、この法案はこれよりさらに強制力が強いものです。
すなわちこの法案は、日本有事の際に、日本を攻撃した国(日本を攻撃することが予想される国、の方が現実的な所でしょう)に対する武器・弾薬などの軍事物資や兵員の輸送を阻止するのが目的とされています。
海自が日本の領海や公海上で、不審な船舶に停船を命じ警告射撃できるほか、船舶の所属する旗国の同意なしで、書類や積み荷などの検査を実施できます。武器などの輸送が確認された場合、目的地の変更を求めたり、日本の港に寄港させ、物資も一時的に押収したりすることも可能にします。
日本有事を政府が一方的に認定・宣言してこの法律が発動された場合、きわめて危険な事態を即招くといってもよい法律です。不審船と言っても外国艦船への停船命令、射撃、しかも臨検、積み荷の押収(領海のみならず公海上でも?)等はそれ自体「宣戦布告」にも等しい行為です。キューバ危機の際、ソ連艦船を臨検するために待ちかまえていた米国艦船の例を引くまでもありません。それは戦争を挑発する行為なのです。日本は外国船への横暴な振る舞いを自由にすることによって、戦争への道を一歩引き寄せたことになるのです。
7.自衛隊法改正案――これは、日米物品役務相互提供協定(ACSA)の改定に伴い、米軍への物品役務の提供に関し、所要の規定を整備する、要するに米軍に武器・弾薬も提供できるように自衛隊法を改正するということです。要するに集団自衛権の行使そのものを行うための自衛隊法の整備です。
以上見たように関連7法案は、自衛隊と米軍がいかに国内外で気ままに振る舞えるようにするか、軍事行動を最優先のものにするか、軍隊にその最大限の便宜をはかるための法案であることがおわかりいただけたと思います。
(3)有事法案体系の完成に向かう有事関連7法案。
ここでは、昨年6月に成立した「武力攻撃事態法」等、有事関連3法案と、7法案の関連を見ておきたいと思います。「武力攻撃事態法」の第3章は「武力攻撃事態等への対処に関する法制の整備」にあてられ、今後の(事態対処法制の整備に関する基本方針)(事態対処法制の整備)(事態対処法制の整備)(事態対処法制の計画的整備)(国民保護法制整備本部)ということで、今後事態対処法制の整備に進むことを宣言していました。従って今回の有事関連7法案についてもそれぞれが(事態対処法制の整備)にあげられた項目に基づいて作られています。
いずれにしても7法案は先の3法案と相まって日本の有事法体系の完成に向かうものであることだけは間違いのない所です。
有事法体系の中では、「有事」の際に国民をいかに避難させるか、救援や医療をどうするのか、誰がそれを指揮するのか・・・といった問題が、諸外国では「民間防衛」の問題として検討・整備されています。しかし、政府が提出した有事三法には「民間防衛」に関する詳細な規定が存在せず、政府は当初二年を目標に「国民の保護のための法制」を取りまとめるとしてこれを先送りする方針を取っていました。これが国会論戦で野党やマスコミはじめ多方面から「国民の保護」を蔑ろにしていると批判の声の的となったのです。そこで2003年6月に成立した有事三法中で「国民の保護のための法制」を「迅速かつ集中的に」推進するための国民保護法制整備本部を内閣に設置することが盛り込まれ、さらに衆・参両院の武力攻撃事態特別委員会において「国民の保護のための法制の整備は、武力攻撃事態特別委員会において「国民の保護のための法制の整備は、武力攻撃事態対処法施行の日から一年以内を目標として実施すること」という附帯決議がなされることとなったのです。これを受けて今国会で成立させようとしているのが、国民保護法案ということになるのです。
昨年成立した「武力攻撃事態法」の二条七号には、武力攻撃事態等を終結させるための措置として「アメリカ合衆国の軍隊が実施する日米安保条約に従って武力攻撃を排除するために必要な行動が円滑かつ効果的に行われるために実施する物品、施設または役務の提供その他の措置」とあります。これが米軍行動円滑化と言われるものです。端的に米軍支援とも言われます。
米軍行動円滑化には法的根拠が必要ですが、第三章「武力攻撃事態等への対処に関する法制の整備」がその付与について規定しています。事態対処法の整備に当たって、「アメリカ合衆国の軍隊が実施する日米安保条約に従って武力攻撃を排除するために必要な行動が円滑かつ効果的に実施されるための措置」が適切かつ効果的に実施されるようにするものとしています(二二条三号)。これが今回の米軍行動円滑化法案なのです。
「特定公共施設の利用」に関しては特に項目があげられているわけではありませんが、「武力攻撃を排除するために必要な自衛隊が実施する行動が円滑かつ効果的に実施されるため」また「アメリカ合衆国の軍隊が実施する日米安保条約に従って武力攻撃を排除するために必要な行動」に必要であると判断して入れられたものでしょう。それが特定公共施設利用法案といわれるものです。これで軍隊が必要とする特定公共施設はこれだと指定できるというわけです。
非人道的処罰法案は、武力攻撃事態法の21条の2に「事態対処法制は、国際的な武力紛争において適用される国際人道法の的確な実施が確保されたものでなければならない」を受けて制定しようとしているものです。
この法案と捕虜取り扱い法案はイラク派兵を受けて成立が急がれることとなったのでしょう。
外国軍用品等海上輸送規制法案については、強いていえば武力攻撃事態法の第22条の二、自衛隊の実施する行動が円滑かつ効果的であるため実施される措置のハが示す船舶の航行に関する措置か、その他の武力攻撃事態等を終結させるための措置、なのかもしれませんが、武力攻撃事態法では軍用品の海上輸送規制の項目が特に挙げられているわけではありません。ことに北朝鮮に対する日本の独自経済制裁をはかる「改正外為法」の成立とあわせて、北朝鮮船舶に対する牽制・挑発を狙うものとして急速に法案化が浮上したものとも考えられます。先述したように運用次第ではきわめて危険性の高い法となります。
捕虜取り扱い法案は武力攻撃事態法第22条二のイ、「捕虜の取扱いに関する措置」の立法措置です。
最後に今回の自衛隊改正案は、米軍に武器・弾薬を含む物品および役務の提供を法的に可能とするようにするものです。
この章の最初に述べたように武力攻撃事態法に示された「事態対処法制の整備」によれば今回の法案に止まらずまだまだ法案の整備が必要であるということです。今回の整備はまだ「事態対処法制」整備の第二段階に過ぎないということです。
(4)実質的な改憲法案としての有事関連法案。
すでに見たように有事法体系はその完成に向けて着々と動きだしています。私たちが以前から警告していたように、要するに武力攻撃事態法が成立するやいなや、国会を初めとしてあらゆる国家機関、地方機関が有事法体系の完成に向けて動きを開始しているということです。あらゆる行政機関、立法機関が軍事、軍事行動の話題で埋め尽くされていくということです。もっと言えばあらゆる機関がその体系の中に巻き込まれているのだということです。これが有事法の最も恐ろしい一面です。平時から有事の備えを開始させられるということなのです。
こうした動きはいずれ社会の隅々にまで行き渡っていきます。軍隊が市民権を得、軍事・軍事的なるものが社会生活の一端として定着していくことになるのです。実はこうした現実自体が日本国憲法とその下に成立してきた国民生活そのものを否定している事態なのではないでしょうか。このことに私たちはどれほど自覚的でしょう。いや自覚的にならなければなりません。
日本国憲法とその下に成立する社会生活とは、平和主義・基本的人権の尊重、国民主権という原理で表されるように、考えてみれば日本の戦前・戦中に支配的であった、軍事・軍事的なるもの一切を拒絶、拒否した所から始まったのではないでしょうか。軍隊や戦争の対極に日本国憲法とその理念は構築されたのです。そこでは軍隊・軍事・軍国的な要素一切が排除されているのです。
もう明らかでしょう。有事法というのはその体系そのものが日本国憲法とは相容れぬものなのです。有事法とは徹頭徹尾戦争のための、戦争を準備する、戦争のための法体系なのです。その法の一部に憲法の一理念である基本的人権の尊重を取り入れたところで、それが平和のための法に変わるといったようなものではありません。まったく矛盾するものなのです。
有事法体系を完成しようとする勢力にとってはもはや日本国憲法そのものが桎梏でしかありません。有事法の理念を追及すればするほど憲法との乖離は大きくなっていきます。従って小泉首相を初めとして自民党政権が「改憲」を叫ぶのはいわば当然と言えば当然です。しかし危険なのは諸野党が「護憲」を堅持してこれに対決するどころか、「論憲」をも踏み外して「創憲」「加憲」等あらゆる言葉を繰り出して結局「改憲」の流れに加速を与えていることです。有事法が完成に向かおうというこの時、危険きわまる動きという他ありません。
今ほど日本国憲法の平和主義・基本的人権の尊重、国民主権というその基本理念に立ち返りこれを堅持し、有事法=戦争法成立が奔流となろうとするその流れに強くさおさすことが必要となっている時はありません。戦地への自衛隊の出兵というかつて想像も出来なかった事態が現実のものとなっている今、日本国憲法が掲げた平和主義に根ざす立国という戦後日本の出発点に立ち戻って日本の政治・外交を考え直す機会がこれほど必要とされている時代もないのではないでしょうか。
(5)改憲阻止、軍国主義化・反動化阻止に向け闘いの再構築を!
有事法=戦争法の行き着く先は、日本国憲法の改悪、破棄です。何よりもそれを阻止せねばなりません。そのためには日本国憲法の諸原理で戦争法=有事法の問題点を徹底的に追及せねばなりません。戦後日本は平和主義をその政治・外交・社会生活のその基本に据えたのですから、何よりそれらから軍事・軍事的なるものを極力排除すべきです。軍国主義・反動化の一切の現れに反対していかねばなりません。イラクに自衛隊が派兵されればそれで終わりではありません。イラク派兵の大義を常に問い、どんな機会にでも撤兵を求めるべきです。
改憲阻止、政治・外交・教育・文化等社会生活の中に現れる一切の軍事・軍事的なもの、軍国主義化・反動化の現れと対決することを掲げ、有事法体系の完成の流れに歯止めを掲げていきたいと考えます。
2004年2月16日
アメリカの戦争拡大と日本の有事法制に反対する署名事務局