改めて戦争責任を追及する[シリーズその1]
安倍政権下で進む戦争責任・戦後責任の反動的巻き返しに反対する
−−過去の侵略戦争・植民地支配・戦争犯罪隠蔽策動は、安倍の改憲=「戦争ができる国」路線と一体−−


【1】憲法改悪を突き進む安倍政権が、戦争責任・戦後責任放棄策動を活発化

 この間、安倍政権下で、戦前・戦中の日本の侵略と植民地支配、戦争犯罪の真実を隠蔽し、「清算」しようとする策動、戦後責任・賠償責任を放棄しようとする動きが活発化しています。例を挙げるだけでも、安倍自身の靖国神社への「真榊」奉納問題、日本軍「従軍慰安婦」に関する一連の発言、そして中国人戦後賠償訴訟に対する最高裁の相次ぐ棄却、そして戦中の沖縄「集団自決」への日本軍関与の否定等教科書検定の動き等々。
 直近では、5月7日、安倍晋三首相が靖国神社の春季例大祭に「内閣総理大臣」名で「真榊」を供えていたことが明らかになりました。首相がこうした行為に出たのはブレーンのアドバイスを受けてのものだったとも報じられています。靖国問題に詳しい保守系学者が「実際に靖国神社の参拝を決める前に出きることがある。例大祭に真榊を奉納する手もある」と助言し、首相は同神社に春季例大祭で真榊を奉納することを申し出たというのです。
 春の参拝を見送る一方で奉納を選んだのは、自身の年内訪中や来年の中国の胡錦涛国家主席の来日と、「足場」である参拝支持派への配慮の「兼ね合い」に他なりません。
 それにしても何と姑息で汚い手を使うものでしょう。安倍は4月20日には、例大祭中に参拝するかどうかについては「外交問題、政治問題になっている以上、行く、行かないということは言うべきではない」と記者団に述べていますが、「国のために戦った方々のご冥福をお祈りし、尊崇の念を表する思いは持ち続けていたい」という自己の「信念」は依然持ち続けているのです。
※以下の記事を参照のこと。
「首相の『真榊料』奉納、野党批判で靖国問題再燃の気配」読売新聞
http://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20070508-00000114-yom-pol
「<靖国神社>首相の例大祭供物問題 論争再燃必至」毎日新聞
http://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20070508-00000170-mai-pol
「首相、靖国に『真榊料』春の例大祭私費から5万円」東京新聞
http://www.tokyo-np.co.jp/article/politics/news/CK2007050802014385.html

 靖国への「真榊」奉納発覚に先立つ4月27日には、安倍は日米首脳会談で「従軍慰安婦」問題について「心から申し訳ない」と述べ、ブッシュ大統領が謝罪を「受け入れ」ました。これは日本軍性奴隷に関して「強制動員した証拠はない」とか「米議会が決議しても謝罪しない」との自らの発言が、米議会で物議を醸し、油を注ぎ、収拾がつけられなくなった安倍と、ブッシュが演じた茶番劇でした。翌日安倍は記者会見で、その舌の根も乾かぬ内に、謝罪したわけではないとうそぶいています。
 この安倍の訪米・謝罪と歩調を合わせたかのように、同日、戦時中の「慰安婦」・強制連行に関して中国人が損害賠償を求めた訴訟の上告審で最高裁は計5件について、いずれも原告側を敗訴させました。このうち西松建設強制連行をめぐる訴訟で最高裁は「72年の日中共同声明によって賠償請求権は放棄された」との初判断を示しました。これは歴史的不当判決というべきものです。なぜならこれによって、日本政府・日本企業が戦争中に中国人に与えた損害を一切免責すると同時に、中国を含めて日本と平和条約を締結した全ての国家の国民による同種の損害賠償請求に関する訴訟を一切不可能なものとしたからです。
 さらにこれらに先立つ3月30日、文部科学省は、来春から使用される高校教科書(主に2、3年生用)の検定結果を発表しました。今回の検定で目立ったのは次の諸点に関わる記述でした。@沖縄戦における「集団自決」への日本軍の関与の否定ないし矮小化A南京虐殺の犠牲者数B自衛隊のイラク派兵、国旗・国歌法、領土問題、原発や温暖化などの環境問題、ジェンダー等について、日本政府の見解を徹底させることまたは正当化させること。


【2】「戦争ができる国」造りのために戦前・戦中の天皇制軍国主義日本の戦争責任を隠蔽

 こうした策動は、一体何と軌を一にしているか。そして何のために行われているのか。それは、まさに安倍政権が、日米一体となった軍拡・軍国主義化路線、改憲路線、彼らが言うところの「戦後レジームからの脱却」=「戦争ができる国」を確立するにあたって、何としても否定し忘れ去りたいものは、日本の戦前・戦中の戦争責任と数々の戦争犯罪、戦後責任・賠償責任なのです。これらについて中国・韓国はじめアジア諸国の人民から日本は依然として指弾を受けざるを得ない立場です。これらを隠蔽しあるいは開き直ることなしには日本は軍拡路線に歩み出すことはできないのです。そのための政府・支配層あげての隠蔽、開き直り策動が、この間の一連の動きといって間違いありません。
 3月以降、政権発足時とうってかわり安倍は強硬路線に転じました。歯止めがかからなかった支持率低下、閣僚の相次ぐスキャンダルと政府・与党内の不協和音等々、混迷する政局と求心力低下を、改憲・軍国主義を中心とした自らの右翼的・反動的信条を前面に押し出すことで一挙に打開しようとしているのです。最近の世論調査では実際支持率が若干回復しました。もはや強硬姿勢をとり続けること、エスカレートさせることでしか政権は持たないようになっています。しかし、人民大衆にとってこれほど危険なことはありません。
 米と一体となった安倍の軍拡・改憲路線は以下のような形ですでに進行しています。
−−何よりも憲法改悪前提の国民投票法案を強行したこと。さらにイラク特措法延長法案の衆院での強行。米軍再編法案の強行可決。教育関連3法案の特別委員会設置決議。これら一連の軍国主義的反動諸法案の今国会での一挙成立の目論見。
−−新法だけでなく、地対空誘導団PAC3の空自入間基地への前倒し配備と全国展開。これと連動した、現場指揮官がMDシステム迎撃基準を決めるという閣議決定。米、豪、印との「防衛交流」=軍事連携の強化等、実態面での軍事大国化の急加速。
−−これと並行して集団的自衛権行使研究のための有識者会議の設置。日本版NSC「安全保障会議設置法改正案」の今国会提出。



【3】憲法改悪阻止の闘いを、戦争犯罪・戦争責任・戦後責任を追及する闘いと結合しよう

 安倍は右翼的軍国主義的政治信条を前面に押し出し、来る参院選挙戦さえ乗り切ろうとしています。しかし、改憲・軍国主義、反動的教育改革、新自由主義的「構造改革」の強行路線を強めれば強めるほど、諸矛盾は激化し、政権の脆弱性は顕在化せざるを得ません。
 ことに、先のアジア・太平洋戦争で甚大な被害を受けたアジア諸国の人民大衆との対立・摩擦は必ず拡大するでしょう。かつての被害者達により必ず持ち出されるのは日本の軍国主義的帝国主義的過去であり、戦後一貫して個人賠償責任を放棄してきた姿勢です。従って日本の政府・支配層はこれを躍起になって隠蔽し、正当化し、あげくの果てには居直ろうとするのです。
 私たちはこうした過去の隠蔽が、安倍政権による「戦争ができる国」づくりと侵略戦争への人民の動員と一体のものであることを大衆的に暴露することが必要であると考えます。そのために、今後その隠蔽の一つ一つを具体的に暴露し宣伝していきます。
過 去の侵略戦争と植民地支配に対する反省は日本国憲法の出発点でもあります。首相による靖国神社参拝に反対する闘い、日本軍「慰安婦」をはじめ日本の侵略戦争・植民地支配の被害者、犠牲者とその遺族に対する謝罪と補償を求める闘いは日本国憲法をよりどころとし、改憲反対闘争と直結しています。
 日本の戦争責任、戦後責任を問う運動にも今ほど憲法改悪反対闘争との結合を目的意識的に追求し、合流していくことが求められる時はありません。日本人民大衆、アジア諸国人民大衆の過去と現実の生活の中に根を下ろした地道な闘いこそが、来るべき参議院議員選で安倍政権を敗北に追い込み、憲法改悪策動に歯止めをかける最大の原動力となることでしょう。

2007年5月15日
アメリカの戦争拡大と日本の有事法制に反対する署名事務局