米占領軍の軍事弾圧支援に自衛隊を出兵する正真正銘の侵略法「イラク新法」廃案の闘いに即刻取りかかろう!
「イラク特別措置法」閣議決定を糾弾する!
私たちは許さない。この法案を断固糾弾する。即時の廃案を要求する。−−6月13日政府は、イラクに自衛隊を派遣するための「イラク人道復興支援特別措置法」(以下イラク新法)案を閣議決定し、国会に提出した。米軍のイラク占領統治のために援軍、増援部隊として自衛隊を派遣することが目的である。イラク民衆を殺しに行くために軍隊を派兵するまさに侵略法そのものである。
戦後日本の軍国主義の全く新しい段階である。現地の当事国の同意もなく、戦闘状態にある国に、米軍の軍事支配・弾圧支援のために自衛隊を大量に派遣する。これは、これまで自衛隊に課せられてきた制約を一気に打ち破る極めて危険なものである。もはや「自衛隊」ではない。「専守防衛」でもない。論議や説明も抜きにした一足飛びの「集団自衛権行使」である。相手側の同意もなしにまるで自分の植民地のように軍隊を送り、反撃されれば「自衛権行使」を騒ぎ立てる。それは一貫したアメリカの侵略の論理であり、帝国主義の論理、植民地主義の論理そのものである。
■ 日本軍国主義の新段階−−何の攻撃を受けていない国に一方的に軍隊を送り込み、直接虐殺に加勢することなど戦後一度もなかったこと。
憲法の平和条項は、これまでも誕生の直ぐ後から解釈改憲と既成事実の積み重ねによって次々と破られ空洞化してきたが、ただ一つ、一線を越えることだけは阻止されてきた。つまり日本の軍隊が、戦前・戦中の天皇制軍隊のように海外に好き放題に軍事侵略したり、軍事支配したり、銃撃戦や現地住民を虐殺することは、頑として禁止されてきた。甚大な犠牲を強いられた中国・韓国・北朝鮮(朝鮮民主主義人民共和国)、アジア・太平洋の民衆が許さなかったし、日本の民衆と世論もそれを許さなかったのだ。だがそれが今、私たちの目の前で白昼堂々と打ち破られようとしているのである。いよいよ憲法第9条で否定された「交戦権」を行使する事態に一気に踏み込もうというのである。正真正銘の違憲行為だ。
小泉政権と与党は「専守防衛」に封じ込めてきた日本軍を、従って「自衛隊」という形に封印してきた日本軍を、世界中を侵略して回る米軍とともに、実際に戦闘と民衆殺りくを経験する侵略軍に変貌させようというのである。侵略と虐殺に耐えうる軍隊に作り替えようというのである。
■ 新法の前提条件は「大量破壊兵器保有」。まさにそこが米英で追及されているのではないのか。虚構とデマに基づく法律など絶対に許されない。
イラク新法には前提がある。イラクの「大量破壊兵器保有」である。しかし「大量破壊兵器」は使用もされなかったし、フセイン政権崩壊後2ヶ月以上経っても見つかっていない。というか大捜索をしても見つからなかったのだ。現にイラク侵略を扇動してきた国防副長官自身が「口実だった」と認めた。米英双方の政権内部で暴露合戦、責任のなすりつけ合いも始まっている。そこまで根拠薄弱だったのだ。でっち上げと情報操作であったことはもはや否定できない。イラク戦争の「正当性」が根底から揺らいでいるのである。一個の独立主権国家をデマ情報に基づいて先制攻撃し国土を破壊し尽くし人々を殺しまくったという前代未聞の戦争の責任が問われているのだ。
当然、その戦争を強硬に支持した小泉政権の責任も徹底して問われなければならない。イラク新法の法案の冒頭を見て欲しい。書き出しは「大量破壊兵器」の査察・破棄に関する一連の安保理決議である。そしてその新法のこの書き出しの信憑性がウソとでっち上げであることが明らかになってきたのだ。すなわち法案の要件自体が成立し得ないということ、その要件そのものに重大な疑義が出されているということだ。私たちは、この法律の廃案を要求する。否、上程すること自体が成り立ち得ないのである。
法案に当初あった「大量破壊兵器の処理」が閣議決定直前に削られた。安っぽい茶番劇である。一体誰がこんな「活動」を柱にしようと盛り込んだのであろうか。ありもしない大量破壊兵器を処理しに行く?こんなバカなことはない。これほどいい加減でデタラメな法案だということである。米英のイラク侵略は国際法違反であった。それだけではない。虚構とデマの上に強行された戦争であった。従ってその戦争の結果としての軍事占領も、国際法違反であり、虚構とデマに基づいた占領である。こんな軍事占領への協力法など策定すること自体が言語道断である。
■ 小泉首相の政治責任を追及する。「大量破壊兵器保有」を断定した根拠を明らかにせよ。
小泉首相は、国民世論の反対を押し切ってブッシュのイラク戦争への支持を表明した。その根拠は、イラクの大量破壊兵器保有、それだけである。ところが小泉首相は先の党首会談でその弱点を追及され、こう絶叫したという。(大量破壊兵器が見つからないことについて)「フセインは見つからなかったから、フセインはいなかったことになるのか」と。また福田官房長官は、「理由もクソもない」と平然と言い放った。
これが首相の政治生命をかけた決断に対する回答なのか。日本の世論と国民を「間違っている」とまで言い放ち、支持を強行したことに対する回答なのか。こんなふざけた答弁で、国民を煙に巻くというのか。しかもイラクでは数万人が殺害されたのである。広範なインフラと生産力が破壊されたのだ。今にも人道的危機が爆発しそうな状況なのである。茶化した答弁はこうした破壊行為・殺りく行為に対する政治家としての真っ当な姿勢なのか。政権のトップとして、首相として、官房長官として、戦争という重大な決定を行ったことにふさわしい態度なのか。そんな当たり前のことが出来ないのなら、首相の資格はない。
■ 「人道・復興援助」は隠れみの。本質は「米軍占領支援法」「米軍軍事弾圧支援法」。
イラク新法は、「人道復興支援」を目的としたものではない。「人道復興援助」は口実である。イラクに自衛隊を派遣するためだけの法律、「米軍占領支援法」「米軍軍事弾圧支援法」である。法案そのものを見て欲しい。そこには自衛隊が果たす役割しかでてこない。なぜなら、米軍は「人道復興支援」を目的としてイラクに展開していないし、民衆の支配・制圧と石油権益の確保のために展開しているだけだからである。自衛隊の派遣による米軍支援はイラク住民に対する血の弾圧殺戮への加担である。
法案上程に当たって政府内部で検討されたことは、如何にごまかして戦地に自衛隊を派遣するか、ただその一点だけである。「自爆テロは戦闘ではない」「戦闘ではなく単なる治安悪化だ」「非戦闘地域を選んで派遣する」等々、イラクの現実と乖離した情勢を言い連ね、虚構に虚構を重ね、その中で、米軍の武器・弾薬の輸送や、軽火器だけでなく大砲など重火器を携行さえもが主張され始めている。
■ イラクで大量殺りく、大規模な血の弾圧が始まる。イラク新法は米英の虐殺軍に加わること。
5月末から米英の軍事占領に対してイラク民衆の反占領闘争が、特にバグダッドとその周辺のスンニ派地域で急速に拡大し始めている。給料支給・雇用と生活を求める軍人たちのデモ、無差別に銃撃する米兵と警察署への抗議行動、人道的危機に対する救済を求める医師や医療従事者たちの抗議行動等々。またこれらとは別に小火器を使ったゲリラ闘争も活発化している。
米軍は、逆上しなりふり構わず報復攻撃に出始めた。一般市民が居住する地域に戦闘機や武装ヘリまで動員した大規模な空爆、戦車による砲撃をしかけ、小火器だけしか持たない、あるいは無防備の民衆に向かって牙をむき始めたのだ。「フセイン支持者」の残党狩りというが、それは口実である。中には反フセインであった人々が現状に我慢できず立ち上がったケースも多数ある。いずれにしても米の占領に反対する民衆に徹底弾圧を始めたのだ。しかも直近の大規模軍事作戦は、住民の無差別の拘束と取り調べ、家屋の捜索と破壊等々の段階から無差別殺りくへ事態が更にエスカレートしている。
米軍は自国軍の「援軍」を待って大々的な攻撃を始めているが、日本など「有志同盟」同盟軍の「援軍」の到着を待って、更に軍事弾圧体制を強化する計画である。イラク新法は、このような虐殺、軍事弾圧体制強化をエスカレートさせる米軍に対する輸送、兵站、通信を支援することを意味するのだ。それはイラク民衆の弾圧・殺戮に直接加担することに他ならない。
■ 反米・反帝・反占領闘争は民族解放闘争であり「正義の戦争」。自衛隊=日本軍はこのイラク民衆の正当な抵抗を弾圧し殺しに行くこと。
拡大するゲリラ闘争は、戦闘地域と非戦闘地域の区別を益々なくし、イラク全土は今まさに「戦争状態」「戦闘状態」にあるのだ。「前線」と「後方」の区別をなくし、民衆の抵抗はむしろ弱点である兵站・輸送・通信を襲撃し破壊することに向かうだろう。日本が担おうとしている役割はまさにそこである。日本の自衛隊の派遣は、抵抗するイラク人民を銃撃し、弾圧し、殺戮するために行くのだ。
侵略軍・占領軍である米軍、その米軍と一体化した日本軍に対する反撃は、イラク民衆にとって反米・反帝の民族解放闘争であり、「正義の戦争」である。私たちはこのようなイラク民衆の正当な反撃の権利を踏みにじり、民衆を殺戮する行為を断じて許すことは出来ない。
■ 矛盾だらけ、弱点だらけの「イラク新法」。反戦平和の声を結集し廃案にしよう!
訳の分からない「大量破壊兵器処理活動」条項削除でようやく提出にこぎ着けたが、法案への異論や不満はくすぶっている。民主党は相変わらずへにゃへにゃ。「賛成しないが反対もしない」と、腰抜け状態である。
この悪法の成否を決めるのは、今後の世論と運動にかかっている。政府与党と与野党の間で躊躇と不満・不安が存在している今、直ちに声を上げることが決定的に重要だ。この新法は矛盾だらけ、弱点だらけである。
−−上述したように、何よりも法案の前提条件そのものに世界中から疑義が出されている。米英の議会やマスコミの追及次第で火の粉が回ってくる可能性がある。もちろん日本で追及することが重要だ。
−−「自衛隊派遣まずありき」があまりにも露骨すぎ、銃撃戦をやりに行く侵略法であることが見え見えであること。
−−ありもしない「前方」と「後方」との区分、ありもしない「戦闘地域」と「非戦闘地域」への区分。
−−「死を恐れては自衛隊の資格はない」と戦死を強要する官房長官の進軍ラッパ。
−−行けば相当の高い確率で銃撃戦が起こることの自衛隊内部での戸惑いと不協和音。
−−軽火器から重火器への携行武器のエスカレーション。
−−「専守防衛」や「自衛権」とは何の関係もないイラクでの「交戦」をやりに行くことの躊躇。
−−武器・弾薬の輸送、PKO5原則など、これまでの法的制約をことごとく踏みにじる暴走、言うまでもなく憲法の平和主義を根底から掘り崩す違憲行為、等々。
暴露と批判を広げていけば、世論も変わってくるはずだ。イラク民衆の殺りくに直接手を貸すのか否か、イラク民衆に対する加害者になるのか否か。私たち日本の反戦平和運動は、決定的に重大な局面にある。新法反対の運動を作り上げ、新法を廃案に追い込もう。イラク民衆を殺しに行く自衛隊=日本軍出兵を阻止しよう。
2003年6月14日
アメリカの戦争拡大と日本の有事法制に反対する署名事務局