[署名事務局声明]
教育基本法改悪強行採決糾弾! 憲法改悪に反対し、教育反動を阻止する新たな闘いを構築しよう!
12月15日午後、参議院本会議において教育基本法改悪法案が強行採決され、与党自民・公明両党の賛成によって成立した。国会前で連日繰り広げられたハンスト座り込みや数千人規模の反対行動に敵対し、慎重対応を求める圧倒的な世論の声を無視し、タウンミーティングのヤラセ質問と世論誘導・民意ねつ造問題で完全に開き直り、「議会制民主主義」さえ蹂躙した安倍反動内閣の許し難い暴挙である。私たちは満身の怒りを持って糾弾する。
成立した改悪教育基本法は、戦前の教育勅語と天皇のための軍国主義教育への反省から生まれた「教育の憲法」の理念を覆し、国民に「国を愛する態度」を強制し、「道徳心」「公共精神の尊重」など20もの徳目を押しつける極めて国家主義的・反動的な内容を持っている。しかも、学校教育だけでなく、生涯教育、家庭教育、地域連携等々の名の下に、国民生活の隅々まで教育にかこつけて国家の介入を行おうというのである。同時に、義務教育段階から「できる子ども」と「できない子ども」をふるい分け、「能力のない」と決めつけた子どもを排除する差別・選別教育に道を開くものである。それは教育格差を拡大し、新自由主義的構造改革による社会格差の拡大、貧困層・低所得者層・「ワーキングプア」の増大、特に若者の間での非正規雇用など劣悪な労働条件の増大等々と結びつき、負の連鎖をもたらさずにはおかない。
その目的は、教育を、国家に役に立つ国民をつくる手段にすることにある。国家に役に立つ国民とはなにか。それは、戦争のために命を投げ出す国民、不平も言わず企業のために働く国民、国の政策には文句を言わない従順な国民に他ならない。これが「愛国心」「道徳心」「公共の精神」の中身である。教育を主権者である国民から取りあげ国家のものに変え、国民の思想改造をねらっているのである。私たちはこのような危険な法律を絶対に受け入れることはできない。
教基法改悪によって、政府は教育への国家介入のフリーハンドを得たわけではない。何よりもこのような教育基本法改悪は日本国憲法に違反している。その中身は、日本国憲法の第19条「思想良心の自由」、第13条「個人の尊重と公共の福祉」、第26条「教育を受ける権利」等々日本国憲法の精神に真っ向から対立する。9.21「日の丸・君が代」強制反対予防訴訟の全面勝訴判決は、教職員に対する「日の丸・君が代」強制が、思想・良心の自由を定めた憲法19条に違反していることを明確にしている。政府が強行する教育基本法改悪の具体化は、現場での激しい抵抗を受け、矛盾を生み出すだろう。
教育反動に反対する闘いは新たな段階にはいる。改悪基本法をテコとした現場への攻撃との闘いの構築が差し迫った課題となる。学習指導要領の一層の改悪と教員免許制導入との闘い、「教員評価システム」と教員統制との闘い、愛国心教育と「愛国心通知票」との闘い、教育振興基本計画との闘い、教職員だけでなく子どもたちや保護者にまで及ぶ「日の丸・君が代」強制との闘い等々。これらは、例外なく私たち一人一人に問われることになる。確かに、抵抗と闘いは困難になるだろう。しかしその様な闘いの一つ一つを通じて、改悪教基法の問題点、悪質さを人々の目に明らかなもにし、闘争の力でこれらを骨抜きにしていかなければならない。
私たちは、安倍右翼反動政権そのものとの闘いを強めなければならない。安倍首相は、教育基本法の改悪を「戦争できる国造り」への第一歩と位置づけている。それは15日に同時成立した、自衛隊の海外派兵を本来任務とする防衛庁省昇格法と一体のものである。これは、「シビリアンコントロール」をなし崩し的に破壊し、海外派兵を自衛隊の「本来任務」とし、全世界でのアメリカの侵略戦争への加担を図る危険な法律である。安倍首相は、さらに自らの政治公約である憲法改悪へと駒を進めようとするだろう。
しかし、安倍政権は決して盤石ではない。教育基本法改悪反対の闘争は、先の通常国会での成立を半年以上引き伸ばしただけでなく、12月初めからマスコミの意図的な「成立予想」や政党の思惑をも超えて成立をずるずると引き延ばした。政府や与党は改悪の必要性を示せないばかりか、彼らが改悪の根拠としたタウンミーティングの「世論」が政府によるやらせだったと判明し、弁明ともみ消しに追われた。安倍首相は自らの右翼的信条に従って教基法改悪に固執し、参院選挙の利害から「復党問題」にしがみつくことで支持率を急落させ、党内での指導力、求心力をますます低下させた。教育基本法改悪は数の力で強行したが、それと引き替えに自らの力の弱体を曝した。
「教育基本法の改悪をとめよう!全国連絡会」に結集した教基法改悪反対運動は、かつてない規模の自主的な市民、教職員の闘いを生み出し、全国各地でユニークで広範な行動を繰り広げ、国会会期最終日の土壇場まで審議をもつれ込ませ、安倍政権を敗北の瀬戸際にまで追い詰めた。この闘いは今後もさらに安倍右翼反動政権との対決を強め、「戦争できる国造り」「国家のために死ねる国民造り」に徹底抗戦し、教育反動と憲法改悪の危険との新たな闘いへと前進するだろう。私たちはこうした大衆運動、人民運動の力に信頼を寄せ、闘いを一層強化していきたい。
2006年12月16日
アメリカの戦争拡大と日本の有事法制に反対する署名事務局