[署名事務局声明]
朝鮮民主主義人民共和国の「核実験実施」声明について
アメリカは今すぐ金融制裁を解除し、北朝鮮との直接対話に応じよ!
日本政府は、対北朝鮮経済制裁・強硬外交をやめよ!


T

(1)朝鮮民主主義人民共和国(以下、北朝鮮)は、10月3日に声明を出し、アメリカが昨年秋から行っている金融制裁の解除と二国間交渉を要求し、それが実現しない場合は核実験を行うことを表明した。声明は、実験の方法、規模、実施時期については言及していない。

(2)私たちの立場は、「いかなる国の、いかなる核兵器、いかなる核実験にも反対」である。もちろん北朝鮮の核実験にも反対である。核兵器だけでなく、核の「平和利用」=原子力発電と核燃料サイクルにも反対である。終局の目標は核廃絶、核の全面廃棄である。

(3)私たちは、核拡散とそれがもたらす朝鮮半島と東アジアの政治的・軍事的不安定化、緊張激化に反対である。今日の世界における核拡散の元凶はアメリカ帝国主義にある。自らは8月末に臨界前・未臨界核実験を強行している。他国には核開発・保有を禁止しながら自らは核独占体制を保持し先制攻撃的な核戦略を振りかざして世界を脅迫することは理不尽極まりないことである。私たちはブッシュ政権に核軍縮の義務を果たすよう要求する。それこそが核拡散防止の真の第一歩である。


U

(1)国連安保理は10月6日、今回の北朝鮮の声明に対して、「深刻な懸念」を示す『議長声明』を全会一致で採択した。私たちは、この『議長声明』の採択に強い怒りを感じる。今すべきことは、北朝鮮を一方的に非難し「核実験をした場合の措置」(!!)を検討すること、全面制裁を展望して、さらに北朝鮮を挑発し、政治的・軍事的緊張を煽り立てることではない。
 今回の議長声明には、アメリカが要求した、制裁や軍事行動の根拠となる「国連憲章第7章」は盛り込まれなかった。議長国の日本が先導する形で早期の合意を最優先させ、ロシアや中国も合意できる「緩い線」を追求した結果である。しかし、『声明』は報道陣向けの声明ではなく、公式の『議長声明』で出された。さらに、実験が強行されれば「安保理が国連憲章の下での責任に基づいて行動する」という文言が盛り込まれている。強制措置を可能にする「国連憲章7章」は、安保理の次の段階で行おうと目論んでいるのだ。
 米日両国が国連安保理を利用して画策するこれら全てのことは、事態を悪化させるだけである。私たちは、国連安保理の場を利用した、金融・経済制裁のエスカレーションに反対する。

(2)事態悪化の元凶はブッシュ政権の北朝鮮に対する軍事外交政策にある。ブッシュ政権が、その成立と同時に、前クリントン政権時代の米朝対話路線を全面的に破棄し、北朝鮮をイラク、イランとともに「悪の枢軸」と決め付け、そのイラクに現に侵略戦争を仕掛けたことにある。軍事力による体制崩壊の恫喝をしたのである。そして米政府は、昨年9月から金融制裁と対北朝鮮封じ込め政策を強化し始めた。今回の核実験実施声明に至る直接のきっかけは、この新しい対北朝鮮政策、金融制裁である。
 本当に北朝鮮に核実験を思いとどまらせるためには、米国が現在行っている金融・経済制裁を解除し、封じ込め政策を中止し、無条件の対話・直接交渉をする他ない。アメリカの決断が迫られているのである。

(3)しかしブッシュ政権は、北朝鮮による核実験声明のあとすぐさま、一切の妥協をしないことを表明し、対話にも応じないことを明らかにした。それだけでなく、アメリカはすでに「核実験が行われた場合」を想定し、対北朝鮮全面制裁の方針を明らかにした。マカオの金融制裁を他のすべての北朝鮮関係の金融機関へ拡大適用すること、米国人の北朝鮮への渡航・活動を事実上全面的に禁止すること、北朝鮮へのすべての船舶貨物の立ち入り検査など海上封鎖につながる強行的な措置等々も含まれる危険性がある。米国は、全面的な金融制裁、全面的な経済制裁にまで突き進み、北朝鮮を徹底的に締め上げる方針である。このような強硬策がいかなる事態を招くか、ブッシュ政権は冷静に考えるべきである。


V

(1)私たちは、安倍政権を厳しく糾弾する。安倍首相は、問題の平和的解決に奔走するのではなく、逆に、ブッシュ政権と一体となって政治的・軍事的危機を煽り立て、今回の事態を利用して、軍国主義化、反動化をエスカレートさせようとしているだけである。
 安倍首相はまず政局に利用している。彼は、日本軍国主義による侵略戦争や植民地支配に関する「歴史認識」問題などについて、国会冒頭から次々と修正を迫られ、「あいまい戦術」と逃げの姿勢に追い込まれている。彼は、7月のミサイル発射への対応によって首相の座を確実にしたように、今回も対北朝鮮制裁強化を前に押しだし、それをテコにして当面の臨時国会と政局の主導権を握り、これから本番を迎える、教基法改悪法、共謀罪法、国民投票法、防衛庁「省」昇格法など、“4大悪法”を強行しようとしている。すでに政府は外為法に基づく北朝鮮への金融制裁を発動し、今臨時国会では、より包括的な金融制裁法案の採決を目論んでいる。私たちは、日本政府の、反北朝鮮キャンペーンを利用した軍国主義化、反動化と闘わなければならない。

(2)次に、日米軍事同盟強化、米軍再編と日米軍事一体化、ミサイル防衛など、北朝鮮攻撃と朝鮮半島を睨んだ、軍事力強化を加速しようとしていることである。私たちは、安倍首相が掲げる「主張する外交」を放棄するよう要求する。「主張する外交」なるものは、経済制裁と日米同盟を背景にした軍事的挑発によって、北朝鮮に外交的屈服を迫るという極めて危険な外交政策である。安倍首相が打ち出している「集団自衛権の解釈変更」は、米軍と日本の自衛隊が一体となって武力攻撃することを可能にする事実上の解釈改憲であり、「主張する外交」と不可分のものとして、北朝鮮に対して著しい脅威を与える。
 私たちは、日本政府に対して、一切の北朝鮮敵視・挑発政策、制裁強化政策を止め、対話と交渉に基づく平和外交に政策転換するよう要求する。


2006年10月7日
アメリカの戦争拡大と日本の有事法制に反対する署名事務局