なぜ日本政府は人質の人命を最優先しないのか!
−−時間がない。政府は今すぐ自衛隊撤退を視野に入れた意思表示をせよ!−−
(1) 日本のNGOら3人を人質に取った武装グループが指定した期限、4月11日午後9時まで、もう24時間を切った。本当に時間がない。
ジレンマと袋小路から出る唯一の道は、小泉首相が今すぐ政治決断を行い、武装グループに即刻意志表示することである。交渉も含めて自衛隊撤退とその検討を含めた何らかのメッセージを送ることである。
(2) ところが政府は4月8日アルジャジーラの放送を見て直ぐに「自衛隊を撤退する理由はない」「テロリストの思うつぼ」(福田官房長官)、「撤退は考えない」「テロリストの卑劣な脅しに負けてはいけない」と、解決の選択肢の中から交渉の可能性を最初の段階で閉ざしてしまった。
「テロリストとは交渉せず」「自衛隊撤退はしない」−−この態度が「人命救済」の道を閉ざしているのである。この態度を今直ぐ改め、撤退を視野に入れた意思表示をすべきである。
(3) 「入り口」で手を縛ったため、小泉政権は、具体的な救済策を何も取っていないのが現状である。「人命尊重」「人命救出」は口先だけに終わっている。まるで武装グループが3人を殺害するのを待っているかのような対応である。副大臣をヨルダンに行かせてただ時間つぶしをしているだけである。今日4月10日のNHKスペシャルも「最大の問題は犯人像だ」「次の一手はない」と言い、政府の無為無策を応援しているだけである。自衛隊が「人道復興支援」のためという宣伝をして理解を得るというが、今更こんなウソ・ごまかしが通用するわけがない。私たちは、政府の無為無策、メディアの無責任な対応に心底からの怒りを表明する。
(4) 私たちが信じがたいのは、小泉首相が家族にさえ会おうとしないことである。「これからも会わない」とも断言している。「非常にデリケートな問題だから」というのだが、一体これはどういうことか。しかも「家族達は政府から一切情報をもらっていない」とも報道されている。この態度に業を煮やし家族からは「この国は人命をどう考えているのか」と怒りと憤怒の声が出ている。全く当然のことである。家族の切実な声を聞かずに、家族を蚊帳の外において何が出来るというのか。
(5) 日本の市民、日本の国民を救出するのに、米政府に全面依存、全面依頼してどうするのか。事ここに至っても政府は、米政府の顔色を伺っている。ラムズフェルド国防長官は、日本政府の「テロに屈しない」「自衛隊を撤退させない」を「良い選択だ」と大歓迎した。
米政府・米占領軍への全面依存、全てを米国に任せるとはどういうことか。武装グループの所在を確認し、特殊部隊で軍事攻撃する、非常に危険な方針でしかない。それは「人命救出」でも「人命尊重」でも何でもない。米政府・米軍への全面依存は、人質もろとも殺す軍事作戦を強行することである。現に米軍は「犯人と交渉はしない」と明言している。
(6) しかも現在米軍が行っているのは、ファルージャやスンニ派地域での残虐な皆殺し作戦、掃討作戦である。モスクが攻撃され子供や女性や老人達が大勢殺された。ここ数日でファルージャだけで500人が虐殺され、数千人が負傷している。イラク全土で一体どのくらいの民衆が殺されているのか、予想も付かない。まさに大量虐殺が行われているのである。なぜ日本のメディアはこれを報道しないのか。遂に傀儡政権と言われている「統治評議会」も米軍に停戦を求めるまでに至った。
こんな米軍による凄惨な虐殺作戦の中で、米占領軍当局に全面依存するということは、人質を危険にさらすということ、武装グループもろともせん滅するということである。政府は今日来日したチェイニー副大統領との間で「米と連携して対応する方針」を表明する予定である。まさに挑発的な、人命救済とは正反対の方針である。日本政府は、人命救済を最優先にし、米とは独立した政治決断をすべきである。
(7) 日本政府は、自衛隊の撤退をイラク特措法に基づいて行えるはずである。今やイラク全土が「戦争状態」になったからである。同法の前提条件が崩れたはずだ。
(8) 今まさに日本は岐路に立っている。自民党の安倍幹事長は、何と「撤退させれば他の日本人に危機が及ぶ」と街頭で演説し、事実上3人を生け贄にせよと主張した。こんな政府の方針を転換させなければ、今後も「テロに屈するな」「テロリストとは交渉しない」という米国張りの「テロとの戦争」に自らを投げ込むことになるだろう。それは国民も戦地イラクに派兵されている自衛隊員も見殺しにするということである。小泉首相個人の保身のため、自民党と公明党の戦争政権の延命のための道具にされるということである。国民は次第にこの「勇ましい言葉」が実は国民の命を粗末にし奪うことになるのではないかと感じ始めている。
3人を見殺しにする「人道復興」とは何なのか。3人を見殺しにする「人命救出」「人命尊重」とは何なのか。今の小泉政権の「人命尊重」は結果的に時間が過ぎるのをただ待つだけで、見殺しにすることに過ぎない。もう一度繰り返す。時間切れの前に、撤退を視野に入れた意思表示を、米国の判断ではなく、日本政府の判断として表明すべきである。
(9) 多くの反戦・非戦の市民活動が連日、国会に押し掛け、政府に対して、「3人の命を守れ!」「自衛隊を撤退指せよ!」の声を集中している。インターネットでは、本当に数え切れない救済や撤退のメールが飛び交っている。緊急署名は10万名も集まったという。首相や外務省や防衛庁に要請メールや抗議FAX行動が行われている。あるいは政府への要請・抗議以外でもフリージャーナリストのアルジャジーラへの救命要請メール、国会議員、法律家等、様々な団体・グループの取り組み等々が広がっている。
私たちも、劣化ウラン被曝の衝撃的な暴露を持って再来日するドラコビッチ博士の記者会見や報告集会を、同時にこの3人の救出の取り組みの場として合わせてやっていきたい。全力を挙げて、3人の救済行動、自衛隊撤退行動に合流していく決意である。
2004年4月10日 午後11時
アメリカの戦争拡大と日本の有事法制に反対する署名事務局