「イラク大量破壊兵器」のウソを小泉首相に問いただそう!
イラクの「大量破壊兵器保有」「イラク脅威切迫」を断定した根拠を追及し、国民をだましたことに対して謝罪を求め、イラク戦争支持を撤回するよう要求する。

 「大量破壊兵器はどこへいったのか。」−−米英で今まさに、大量破壊兵器問題が大問題になっています。バグダッド陥落以降2ヶ月以上も経っているのに、しかも米英政府が開戦の根拠とした2月5日の「パウエル報告」の「決定的な証拠」に基づいて大捜索を行ったのに、その痕跡すらなかったために、ウソがばれてしまったのです。内部告発や政権内の暴露合戦が噴出し議会とマス・メディアで真相究明の動きが広がっています。ウォーターゲート事件を上回る一大スキャンダルと言ってもいいでしょう。

 ところが米英とは大違い。日本では国会やメディアで真相究明の動きはまだまだ弱いのが現状です。小泉首相は厳しい非難を受けず、涼しい顔をしています。野党の体たらく、メディアの翼賛姿勢などを背景に、首相はふざけた“こんにゃく問答”と言い逃れで済まされているのです。
 こんな現状に我慢できません。私たちは、公開質問状の形で広く皆さんに訴え、これをきっかけに多くの市民の皆さんの協力を得て、大量破壊兵器問題で、小泉首相の政治姿勢追及に一石を投じたいと思い立った次第です。

今回の先制攻撃戦争は、大量破壊兵器の有無に関わらず、それだけで米英の侵略行為であり国際法違反です。しかし大量破壊兵器の保有がウソであったということは、イラクが脅威でなかったということです。イラクが脅威でなかったということは、米英の戦争には正当性がなかったばかりか、米英の為政者たちは陰謀と謀略に基づいて、世界を丸ごとだまして侵略戦争を強行したということなのです。従って大量破壊兵器の保有とイラクの脅威論を唯一の根拠に支持した小泉首相もまた、陰謀と謀略の国際的政治スキャンダルの共犯者なのです。

 大量破壊兵器問題は、イラクに関するすべての問題の前提であり核心です。イラク戦争も、戦後処理も、今国会で論戦中のイラク特措法もすべての法的正当性が崩れる大問題です。米英に追従し、ウソとねつ造をもって一個の主権国家を叩きつぶし、数万人もの人々を殺戮した戦争を支持した首相の政治的道義的責任は重大です。
 ブッシュ大統領やブレア首相と同様、小泉首相にとっても、この大量破壊兵器問題は本来弱点なのです。これを徹底して追及することによって、イラク戦争の正当性を前提としたイラク特措法の「大義」そのものを突き崩し、廃案を勝ち取りましょう。

 この問題はさらに、イラク同様、「核兵器開発」「日本へのミサイル発射」等々の誇大な「北朝鮮脅威論」を扇動することによって、北朝鮮(朝鮮民主主義人民共和国)に対する封じ込め政策=経済制裁と戦争挑発を押し進めているブッシュ政権とこれに追随する小泉政権の戦争政策への牽制にもなります。

 私たちはこの公開質問状を首相官邸に送付しました。市民一人一人が全国各地から声を上げていくことが大事です。全国から大量破壊兵器問題での質問や批判を小泉首相に集中しましょう。ファックスやメール、手紙、ハガキ、電話などあらゆる手段で声を上げましょう。

2003年6月28日
アメリカの戦争拡大と日本の有事法制に反対する署名事務局


公開質問状

内閣総理大臣小泉純一郎様

 以下の質問についてお答えください。

質問:2003年3月20日にアメリカのイラク戦争を支持するにあたって、(1)「イラクによる大量破壊兵器の保有」を断定した根拠は何ですか。(2)またどのような「イラクの脅威」が日本に差し迫っていたのですか。

1. あなたは、「イラクの大量破壊兵器」の保有を断定し「国際社会に対するイラクの脅威を取り除く」ためとして、アメリカが3月20日に始めた対イラク戦争を支持しました。

 大量破壊兵器をイラクが保有していたという根拠を具体的に示してください。また、日本に対してどのような脅威が差し迫っていたのかを具体的に示してください。

 私たちが問いただしているのは、今見つかっていない理由ではありません。だから「いずれ見つかるでしょ」という逃げ口上は通用しません。3月20日の段階で「大量破壊兵器の保有」「イラクの脅威」を断定した根拠です。その断定に基づいてイラク戦争支持を決めた根拠です。日本の軍事外交政策の根幹に関わる問題です。政府内で真剣かつ厳密に検討されたと思います。その検討・審議内容を全面開示するだけでいいのです。今すぐ答えられるはずです。


2. 「疑わしきは国際社会が皆認めていた。」−−このようにあなたはまるで国連や国際社会の多数がイラク戦争を承認したかのように説明していますが、それはウソです。「イラクに責任がある」とイラクに責任転嫁をしていますが、これもウソです。もうこれ以上ウソとデマで政治をしないで下さい。

 「イラクに大量破壊兵器保有の確実な証拠はない」「イラクはこれまでになく協力的だ」−−これが国際社会の大勢だったのです。昨年10月に採択された大量破壊兵器廃棄へのイラクの協力を求めた国連決議1441によれば、イラクが「重大な違反」をしたかどうかは新たな安保理決議によって認定されることになっていましたが、国連安保理は国連決議1441違反を決議しませんでした。事実、フランスやロシアは武力攻撃を求める新たな決議に反対していましたし、中国は態度を留保しました。常任理事国で新決議を主張したのは米と英たった2カ国にすぎません。さらに、国連査察の公式機関であるUNMOVICもIAEAも査察の継続を主張し続けました。だから米英は新たな決議を断念したのです。

 米英日のイラク主戦論は孤立していた。それが事実だったのです。すなわち、国連の常任理事国の過半数がイラク攻撃に反対し、安保理の大半がイラク攻撃に反対し、査察公式機関が査察の継続を主張し、全世界の数千万人もの市民がデモや集会で戦争反対を訴え、日本での世論調査でも約7割の人々が戦争に反対していました。にもかかわらず、アメリカは3月20日にイラクに対する武力攻撃に踏み切り、あなたはすぐさま戦争を支持したのです。「世論が間違うこともある」とまで言い切ったのです。どう責任を取るのですか。


3. あなたは自分の下した戦争支持の重大さを感じておられるのですか。甚だ疑問です。あなたが支持した戦争の結果はどうであったのか。一個の独立主権国家が何の理由もなく壊滅させられました。数万人の無実の一般市民と攻撃される謂われのない兵士が殺され、おびただしい数の子どもたちが傷つき親を亡くしました。社会的インフラと国土が破壊され、今人道的危機が激化しています。劣化ウラン弾で放射能汚染が都市部に広がっています。そんなことをしておいて「人道」や「復興」を口にする資格があなたたちにはないはずです。

 多くのイラク民衆は米英の占領に反対し抗議行動やゲリラ戦を拡大しています。イラクの民衆ははっきりと米英の占領の中止と軍隊の撤退を要求しているのです。

 あなたにはこのような悲惨で一片の正当性もない戦争を支持した政治的道義的責任があります。本来なら何よりもまずイラクの民衆に対して、米英の侵略戦争に加担した根拠をきちんと説明すべきです。にもかかわらず「大量破壊兵器」について「そのうち見つかるでしょ」「フセインも見つかっていない」「ないとも断定できないでしょ」など、言い逃れや“こんにゃく問答”でごまかし逃げ回っています。あなたはそれ相応の政治生命をかけて戦争支持という重大な判断をしたのではないのですか。重大決定を行った最高責任者として逃げ回り続けるのは卑怯です。首相として真摯に、かつ真面目に答えるべきではないですか。

 回答は7月4日までに文書でお願いします。

2003年6月28日
アメリカの戦争拡大と日本の有事法制に反対する署名事務局
〒580-0023 大阪府松原市南新町 3-3-28
阪南中央病院労働組合気付 TEL/FAX 072-331-1919
担当 吉田正弘