太平洋戦争開戦62年。再び過ちを繰り返してはならない
自衛隊派兵「基本計画」の閣議決定に反対する!
○反対・慎重が8〜9割。高まる派兵反対の世論
○小泉首相は世論に耳を傾け派兵を断念せよ |
日本は今、歴史の岐路に立っています。62年前の12月8日、当時の天皇制支配層、近衛および東條政権と軍閥は太平洋戦争に突入し、近隣諸国と自国に多大な犠牲を強いました。日本が再び侵略国家への道を転がり落ちていくのか、それともそれにストップをかけるのか。過去の過ちを繰り返すのか繰り返させないのか。そのカギは私たち一般の民衆が握っているのです。
かつても今も侵略戦争へ引きずり込もうとする者たちはいつも、ウソとごまかしと世論誘導を使うのです。そして今、小泉政権のイラク政策の犠牲ともいうべき二人の外交官の死と葬儀は、まさに小泉首相たちによって、イラクへの自衛隊派遣の露払いともいうべき役割を演じさせられようとしています。
二人には戦前・戦中の「英霊」、特攻隊員、「肉弾三勇士」のような扱いを受けさせてはなりません。しかし、小泉首相たちは、「外交官二人の死を無駄にしない」、「テロの脅しに屈しない」、「逃げ出すのはテロリストの思うつぼ」といった決まり文句を呪文のごとく繰り返し、自衛隊派遣の意向を断念しようとしていません。「二人の遺志」なるものを勝手に作り上げ自衛隊派遣の正当化に利用しようとしているのです。
しかし、世論は自衛隊派遣をすんなりと受け入れる方向に決して動いているわけではありません。否、むしろここへきて小泉首相と正反対の方向に動いているのです。外交官の死と葬儀の翼賛的報道にも関わらず、反対論・慎重論がマス・メディアをにぎわせています。すなわち、「<イラク派遣>反対・慎重派が8割超」「9割が反対」「派遣に反対声明」「慎重56%、反対33%」「知事『(派遣には)冷静な判断必要』」「自衛隊派遣慎重に」「派遣に反対しデモ」「追悼のピース・キャンドル」「首相にイラク派遣中止要請」「中止求めデモ行進」。等々。
小泉政権はこれらの声に真面目に耳を傾けるべきです。私たちは基本計画の閣議決定に反対です。アメリカ占領軍のイラク人民虐殺によって一層泥沼化しているイラクの軍事占領に決して手を貸すことがあってはなりません。
(1)実に8割から9割の人々がイラク派遣に反対。特に若年層の反対が強まる。
毎日新聞が、11月29、30両日に実施した全国世論調査(電話)によると、イラクへの自衛隊派遣について派遣反対・慎重派が8割にも達しました。早期派遣派は9%に過ぎませんでした。
また自衛隊がイラクに派遣された場合、テロの標的になると思うかと尋ねた所、実に79%が「なると思う」と答えました。「死傷者が出かねないことへの懸念が派遣反対・慎重論につながった」と記事は分析しています。
またどの政党支持層においても反対が賛成を上回っており、また若年層ほど反対論が強まる傾向が出ました。
※自衛隊イラク派遣 反対・慎重派8割 内閣支持率減、42%(毎日新聞)
http://www.mainichi.co.jp/eye/feature/nybomb/afterwar/art/031201M124_0101001E10DA.html
注目したいのは上の調査は回答者がイラクでの日本人外交官殺害が明らかになる前に解答を寄せた結果であるということです。
事件が明るみに出た1日以降の同社の意見コーナーにはメールやファクスが相次ぎ、その中で自衛隊派遣に関する意見の実に9割が反対で占められたと伝えられています。
「テロの脅しには屈しないとの首相や外相らの発言を聞いていると、勇ましい掛け声で国民を戦争に駆り立てていった指導者らを思い出す」(東京都 無職 60歳)「米英の力ずくの姿勢に協力すれば、民衆のレジスタンスの標的になるのもやむを得ない。復興をまじめに考えるなら米英、日本は大義なき戦争を真剣に謝ることが肝要」(千葉県 会社員 48歳)「(自衛)隊員の家族は、行ってほしくないのが本音。自衛隊には、米国のいいなりは嫌だと思っている人もいるはず」(千葉 主婦 59歳)といった声が紹介されています。
(2)小泉政権の不支持率が支持率を上回る。
また共同通信社の全国緊急電話世論調査によると、慎重56%、反対33%と外交官殺害前より10%近く数値がはね上がっています。また小泉内閣の支持率は、43.8%、不支持率は44.4%で今年3月の調査以来9ヶ月ぶりに不支持が支持を上回ったとしています。「イラク問題への対応をめぐる政府の迷走ぶりが最近の支持率下向傾向に拍車を掛けた」と記事は分析しています。
※「慎重56%、反対も33% イラクへの自衛隊派遣 外交官殺害事件で世論調査」(共同通信)
http://news.kyodo.co.jp/kyodonews/2003/iraq3/news/1204-101.html
小泉首相はこれら世論に真摯に耳を傾けるべきです。それでも、力ずくでもねじ伏せ、自衛隊派遣を強行しようというのでしょうか。恐るべき国民不在政治・民主政治への冒涜という他ありません。
(3)派遣反対・慎重姿勢を求める地方首長、議会。
現在開催中の地方議会では、各首長、議会によって、政府に対し自衛隊派遣への慎重姿勢が相次いで求められています。沖縄県議会では、稲嶺県知事はイラクへの自衛隊派遣について「慎重かつ十分な検討を強く望む」とし、十分な論議が尽くされていないとの立場を示しました。また京都の山田知事も3日の府議会代表質問で「自衛隊派遣には客観的な情報収集と冷静な判断が必要だ」「できるだけ客観的な状況判断を積み重ね、冷静に対処していくべきだ」と答えています。
福岡県筑紫野市議会は5日、政府に対して自衛隊のイラク派遣を慎重に検討するよう求める意見書案を可決しました。発議したのは元自衛官の秋岡議員で「今の現地の状況では、攻撃を受ける可能性が高い。戦闘地域か非戦闘地域か分からない場所で任務を遂行する後輩を思うと心配だ」と述べています。
意見書は、日本人外交官殺害事件に触れ「自衛隊のイラク派遣を強行することがあってはならない」と強調。「国民の求めるイラク支援は、戦うためでも治安維持でもなく、復興・人道支援という非軍事活動であることはいうまでもない」と指摘して、隊員の安全を第一に考え、派遣時期や地域などを慎重に検討するよう求めています。
小泉首相や石破防衛庁長官は、小泉政権に必ずしも批判的でなかったこうした地方自治体の長や議会の声まで無視しようというのでしょうか。我々の言うことだけ聞け、後は従えという姿勢で、今後も「国民保護法制」等での協力を強いるというのでしょうか。強権政治という他ありません。
(4)急速に盛り上がりを見せる草の根の派兵反対の声。今年春の時のようにもう一度声を上げよう。
欧米、ことにロンドンで、ブッシュ訪問時何十万もの人々が「イラク戦争反対」「イラクからの米英撤退」を叫び、ブッシュ像を引き倒すといった行動がこの日本で眼前に起こっているわけではありません。
しかし、あのイラク戦争開始前後に多くの市民が連日反対の声をあげたように、イラクへの自衛隊派遣反対の声は全国各地で着実な声になりつつあります。宮城で、石川・富山で、宇治で、大津で、そして大分で、自衛隊駐屯地が有るところでもないところでも、多種多様な運動形態で、意見投票で、反対声明で、デモで、ピース・キャンドルで、中止要請書で以下のような声をあげています。
「イラクへの自衛隊の派遣反対」「派遣の決意を強調した小泉に『強い怒り』」「派遣は国際協調でなく侵略協調」「派遣は平和国家の敗北だ」「政府のイラク派兵方針が、未来ある二人の命を奪った」「アメリカはイラクから撤退せよ」「イラク占領をやめよ」「戦争反対」「憲法9条を守れ」等々。
政府は明日12月9日にも自衛隊派兵の「基本計画」を決定しようとしています。決定後小泉首相は記者会見で国民に「説明する」と言いますが、そんなものは説明でも何でもありません。結果の押し付けです。逃げ回るのは自信のなさの表れに他なりません。
そもそも何のために派兵するのかがデタラメです。「大量破壊兵器」も「イラクの脅威」もウソであったことが今では明らかです。一体「大義名分」はどこへ行ったのでしょうか。ブッシュとの約束と言いますが、私たち国民はそんなことを約束した覚えはありません。石破防衛長官は「自衛隊派遣先は非戦闘地域になる」と言いますが、全く逆です。どこへ行っても派兵先が戦闘地域になるのです。「復興支援」と言いますがそれもウソ。サマワから何十キロも離れた砂漠に巨大な「砦」を作り、重武装をして申し訳程度に市街地に水を提供することが「人道」なんて呆れ返ります。彼らの言う「復興」「人道」とは派兵のアリバイ作り、派兵のカモフラージュに過ぎないのです。ブッシュに言われるままか、あるいは自民党や保守派の好戦・改憲勢力の悲願か、軍を海外に派兵すること自体に目的があるのは目に見えています。また、派兵の後、いつ「撤兵」するのか「出口戦略」は全くありません。当然です。ブッシュ政権自体に「出口戦略」がないのですから。等々。等々。−−小泉首相は、こんなウソとごまかしとデタラメで、戦後一度もやったことのない軍隊の侵略的な派兵を強引に推し進めようとしているのです。正真正銘の憲法違反、歴史的な暴挙です。
(5)太平洋戦争開戦62年。憲法を踏みにじるこの歴史的暴挙を許してはならない。「基本計画」決定から本当の闘いが始まる。
まさに今から62年前の12月8日、開戦時の首相は軍人である東條英機ですが、右往左往しながら開戦への道を転がり落ちて行ったのは、その直前に政権を投げ出した文民である近衛文麿でした。この無責任な近衛首相の下で、何の見通しもなく決断も覚悟もなく軍の言うがまま情勢に突き動かされるまま天皇制日本は対米英との戦争に突き進んでいったのです。1931年の満州侵略、37年の日中全面戦争の中で中国の人民大衆の抗日運動の高揚に手こずり中国戦線で行き詰まった挙げ句の賭けでした。戦局打開のため一か八かで、無謀な全面戦争に打って出たのです。そもそも朝鮮半島や中国大陸に侵略し植民地支配を拡大したことが根本的な誤りだったのですが、ズルズルと戦争回避の決断が出来ず、数千万人の朝鮮・中国やアジア・太平洋の民衆、330万人の自国民を犠牲にしてしまったのです。天皇制支配層と軍閥の頭の中には保身と延命しかありませんでした。
そして今、小泉首相の保身と延命のためにだけ再び歴史的な過ちを繰り返そうとしているのです。無責任とちゃらんぽらん、行き当たりばったり。かつては軍部に卑屈、今は米国に卑屈。−−近衛首相と小泉首相、この2人は恐ろしいほどそっくりです。小泉首相も、福田官房長官も、石破防衛庁長官も、川口外相も、確固とした外交戦略を持たないため、一体自分がどこへ行くのか。国民をどこへ連れて行くのか。正々堂々と国民の前に言えないのです。自衛隊派兵の「強気」姿勢を崩せないのもそのため。決して「強さ」の反映ではありません。自衛隊関係者の間では、「2桁の犠牲者は避けられない」とささやかれていると言います。もしそんなことになれば政権は吹っ飛ぶでしょう。
今日小泉首相は、9日の閣議決定を決め、与党側との調整を指示しました。しかし、「基本計画」決定からが本当の闘いです。私たちは米軍の軍事占領・治安維持への加担、肩代わりにしかならないイラクへの自衛隊派遣に絶対反対です。米軍のイラク人虐殺に加担し、イラク人のレジスタンスの標的にしかならない派遣に絶対反対です。世論は確実に小泉首相を追いつめつつあります。しかしその帰趨を決めるのは広範な市民・国民の運動の力に他ならないのです。今年春のイラク戦争反対の時のように、もう一度市民一人一人が声を上げましょう。
2003年12月8日
アメリカの戦争拡大と日本の有事法制に反対する署名事務局
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