2008年度防衛予算批判−−予算面から対米従属化が急速に進行
米軍基地再編とミサイル防衛関連が肥大化


[1]財政危機の責任は、公共事業のために国債を乱発した政府にある。人民に犠牲転嫁するな!

(1)政府は2008年度予算案において、「財政危機」によって予算歳出の裁量が狭められるもとでますますその対米協力最優先、人民予算切り捨ての反動的な性格をむき出しにしている。消費税増税のため布石を打ち始めた。人民生活の悪化と窮乏化が急速に進む中、人民が生活と生命を守り抜くためには、医療社会保障の切り捨て、生活・労働破壊、米軍再編と日米同盟強化・海外派兵をすすめる対米従属的軍国主義、道路・公共事業の暴走、原発・核燃料サイクル推進などの支配層の予算そのものと対決していくことなしには困難な状況にある。
 その中で当面の最大の焦点の一つとなっているのは暫定税率の廃止である。私たちは、道路特定財源として土建的くれてやりと公共事業につぎ込まれる暫定税率の廃止を要求する。民主党は自信を持って徹底して闘うべきである。
 2008年度予算政府案は、一般会計総額が約83兆円(対前年度比0.2%増)、一般歳出は47兆2800億円(同0.7%増)、国債発行は25兆3500億円(同0.3%減)、国債費は20兆1600億円(同4%減)となっている。国債が歳入の3割、歳出の1/4を占めるというのは明らかに異常である。過去の借金を借金で返済するサラ金財政が財政赤字を急膨張させる局面に入っているのだ。人民関連予算である社会保障費は21兆1400億円で、自然増の2200億円がカットされた。高齢者医療の切り捨てや生活保護母子加算の廃止が含まれている。社会保障費は年金7兆4400億円、医療8兆5600億円、介護19100億円、福祉等37100億円など貴重な人民生活関連予算である。そもそも人民の血税が社会保障に使われるのは当然だ。私たちは、「財政危機の原因は社会保障費の増大」「消費税増税は不可避」という、財政危機の責任を人民に転嫁し人民予算削減と収奪によって乗り切るための宣伝に反対する。今日の財政危機の根本原因は、とりわけバブル崩壊後に乱発された赤字国債と巨額の公共事業がある。政府は、借金や起債を地方に押しつけることまでやりながら、430兆円(1991年〜2000年)をさらに拡大した630兆円(1995年〜2007年)の「公共投資基本計画」を作成し、道路やハコモノ建設に血道を上げたのである。まず追及されるべきは、未曾有の財政破綻を生みだした政府・支配層の責任である。
[投稿]病院の赤字経営による地方財政破綻をもたらしたのは、国による大融資計画!?国の責任を、住民や公務員、地方自治体に押しつけるのは許せない!(署名事務局)
※公共投資基本計画(経済企画庁)
http://www5.cao.go.jp/j-j/doc/keikaku01-j-j.html

(2)2008年度防衛費政府案は、概算要求4兆8172億円から削減され、4兆7426億円(対前年度比0.8減)となった。政府は「平成7年度以来の13年ぶりの低い水準」などと宣伝しているが、当初は01年以来7年ぶりの増額予算を概算要求していたものが、守屋疑獄による防衛予算の利権構造が批判にさらされ、形式的にマイナスにすることを余儀なくされたにすぎない。だが、将来のツケ払いである後年度負担が1兆8330億円と1.9%増加し、借金をふくらませることで今年度のつじつまをあわせている。しかも、今年が兵器調達の谷間に位置し、主力戦闘機の更新が先送りされ、ミサイル防衛関係の兵器や米軍移転費が来年度以降に急膨張することが不可避となっていることを考えれば、4兆7426億円という要求水準は極めて高いと言わなければならない。
※08年度予算:増税論議避けられず…暮らしの先行きに懸念(毎日新聞)
http://mainichi.jp/select/today/news/20071225k0000m020069000c.html

 巨額の軍事予算のもとで、予算支出構造の大きな変化が起ころうとしている。米軍基地移転費とミサイル防衛(MD)予算が肥大化し、日本の防衛費が、アメリカの軍事戦略=グローバル安保を支えるための予算になるという傾向を強め、軍事戦略面、軍事技術面だけでなく、軍事予算支出面からも対米従属の方向へ大きく傾斜していっているのである。早くも「防衛費を概算要求枠から外すべき」「ミサイル防衛予算を軍事費とは別枠にすべき」などという主張が始まっている。現在、開発費や調査費の名目で米軍再編、MD推進の予算が支出されはじめているが、このままつきすすめば今後総額数兆円から十数兆円の負担が襲いかかってくるのは間違いなく、これら経費が従来の防衛予算枠と対立するのは避けられなくなっているからだ。いわば防衛予算の「聖域化」から、米軍再編費、ミサイル防衛の「聖域化」の要求である。
※米安全保障戦略会議第八回での西岡喬日本経済団体連合会副会長発言
http://122.1.222.135/forum9-koenkiroku-pdf/forum8-105-nishioka.pdf

 守屋疑獄は、日本の財政危機の逼迫と防衛予算の頭打ち、自衛隊の“戦える軍隊への変貌”のための最新鋭の装備調達の要求、対米軍事加担最優先というジレンマ、トリレンマの中で、「より効率的な兵器調達」を進めるために、汚職構造・利権構造にメスを入れたものである。それはまた、巨額の米軍再編、MD予算に群がる利権争いを牽制するものでもあった。だが、巨額のライセンス生産と米軍再ビジネスという基本的な利権構造、根幹は温存されたままである。危機は深まって行かざるを得ない。
新テロ特措法再議決阻止!軍事疑獄の徹底糾明を!−−軍事費大幅削減、米軍再編反対、海外派兵・侵略戦争加担反対の闘いと結びつけよう−−(署名事務局)

本稿では、[1]で海外派兵と侵略型の兵器調達とミサイル防衛に傾斜する2008年度防衛予算を批判した上で、[2]で特に米軍基地対策経費の異常な大きさと拡大を批判する。
※平成20年度予算政府案(財務省)
http://www.mof.go.jp/seifuan20/yosan.htm
※平成20年度防衛関係予算のポイント(財務省)
http://www.mof.go.jp/seifuan20/yosan012-2.pdf
※我が国の防衛と予算(財務省)
http://www.mod.go.jp/j/library/archives/yosan/2008/yosanan.pdf

[2]軍事予算構造の変化。事実上の「聖域化」のもとで対米従属化の急速な進行

(1)日本の軍事費は2002年度の4兆9557億円をピークに頭打ちとなっているが、深刻な財政危機にありながら4兆7000億円から4兆9000億円の高水準を保ち続け、聖域化している。日本はここ数年すでに名目軍事費だけで、第2位から第4位に位置し、イギリスやフランスなどと方を並べている。しかも「防衛費」を少なく見せるためのさまざまな「隠された軍事費」がある。SACO関係費180億円と米軍再編関係経費191億円の別枠計上。内閣官房予算に含まれている情報収集衛星(軍事偵察衛星)関連経費637億円。総務省所管の基地交付金325億円。警察庁予算に含まれるテロ対策224億円。総務省消防庁の、テロ対策・国民保護訓練負担金など危機管理体制の強化費12億円等々。これに旧軍人恩給費7760億円を加えた国際基準での軍事費は5兆6755億円にも上る。からくりを駆使し何とか少なく見せかけて巨額を確保しているのである。米軍再編関係費を別枠にしたのは、防衛費の枠組みにとらわれない予算配分を可能にするために他ならない。
※ストックホルム平和研究所(SIPRI)の評価では、2002年に日本の軍事費は世界第二位(chart3参照)、2005年は4位。http://www.truthandpolitics.org/military-US-world.php#chart-1
2006年度「防衛」予算を批判する(署名事務局)

(2)防衛省昇格と海外派兵の本来任務化に伴い、「専守防衛」を大きく逸脱する、自衛隊の侵略軍化・日米軍事一体化の最新兵器調達のための予算が継続して計上されている。1000億円をかけた巨大護衛艦=ヘリ空母“ひゅうが”や1500億円の世界最大級イージス護衛艦“あたご”の導入に加え、今年度はF15戦闘機の20機改修など609億円、次期対潜哨戒機P−Xの4機導入1057億円、ステルス技術の向上研究費70億円、中央指揮システムの構築1792億円等々が予算要求されている。
 しかも守屋疑獄を逆手にとって、「発注システムや価格体系の見直し」などという名目で現在2009年までの「中期防」を2008年までで終了し、新たな兵器調達計画=次期中期防を策定しようとしているのである。現行の中期防は、次期主力戦闘機(FX)の導入をはじめ5年間に必要な予算を24兆2400億円程度と見込んでいるが、アメリカの対中国戦略や機密性の関係でF−22戦闘機の導入が難航していること、調達価格が一機200億円を超え非効率の象徴となったAH−64D(アパッチ戦闘ヘリ)が13機で調達断念になったことなどをふまえ、より効率的で最新鋭の兵器調達を行うための計画再編に踏み切ろうというのである。まさに焼け太りである。次期中期防の策定が始まれば、米軍との一体化、海外派兵型の兵器体系への転換が急速に進行させられることになる。
※スコープ 新中期防計画 前倒し論 防衛省イメージ 一新へ苦肉の策(東京新聞)
http://www.tokyo-np.co.jp/article/politics/scope/CK2008011402079376.html
※平成20年度消防庁予算概算要求の概要(消防庁)
http://www.fdma.go.jp/ugoki/h1910/191004-6_08.pdf

(3)「対テロ戦争への加担」のための「テロ対策」への重点的配分が行われている。「侵入したゲリラや特殊部隊の捕獲・撃破」などへの対応365億円、「核・生物・化学兵器による攻撃」への対処469億円、「大規模テロ」への対応650億円の1498億円が「重点施策推進予算額」として計上された。また、2008年度からあらたに「対テロ戦争」用のネットワーク、テロ関係の情報収集のための研究開発など1180億円が予算要求される。
 「対テロ戦争」との関係では、社会全体が戦争国家化するためのコスト研究・批判の重要性が高まる。たとえば「有事」を想定した国民保護訓練が都道府県市町村で具体化されている。国民保護訓練の経費負担は消防庁で約1億円である。一例では鳥取県では、2007年国民保護実働訓練が行われているが、これに3200万円が投じられている。これが全国各地で同じようになされるならば何十億円もの地方予算が使われることになる。都道府県から市町村まで、有事のための新たな部署をつくり人員が配置され予算が計上されている。全く不生産的で非現実的な項目に血税が投入されるのだ。生活保護申請者を窓口で追い返し、医療難民を病院から閉め出し、若者をホームレスやネットカフェ難民にたたき込みながら、住民を不審者として監視する「対テロ」システムに巨費が投じられているのである。 監視カメラや空港対策など、見かけの防衛費には含まれない、日本が戦争国家化するためのコスト、「対テロ戦争」に加担するための“社会的コスト”は甚大である。
※鳥取県防災局
http://www.pref.tottori.lg.jp/secure/200513/www.pref.tottori.lg.jp_secure_89014_01_kengyomu_bousai.pdf

(4)弾道ミサイル攻撃(BMD)への対応に今回も1338億円(契約ベース)が予算要求された。レーダー等の整備、システム能力の検証などBMDシステムの運用基盤の充実・強化(987億円)、イージス艦の改修(上層での迎撃)・PAC−3ミサイルの取得(下層での迎撃)など迎撃システムの整備の継続(150億円)、 将来の弾道ミサイル脅威への対処能力確保のための日米共同研究開発(202億円)である。
 04年より本格的に予算化されて以降ミサイル防衛にはすでに8000億円近くが計上され、2010年に総額1兆円に達するのは間違いない。だがそれも全体の一部である。日本がミサイル防衛導入に必要になる予算は最大で総額50億ドル(6兆円)という試算が米国防省のシンクタンクであるランド研究所から2001年に公表されている。これは、現時点で11兆円に達しているアメリカのBMD開発予算をシステムの売却などによって日本に肩代わりさせ、また現在日米で共同開発中の新世代ミサイル開発費の大半を日本が負担するのを見越しているきわめてリアルな数字である。
※Japan-U.S. Cooperation on Ballistic Missile Defense(Congressional Research Service)
http://fpc.state.gov/documents/organization/9186.pdf

 ミサイル防衛については、昨年末から今年初めにかけて実験や配備が相次いだ。12月18日SM3配備の海自イージス艦“こんごう”による発射・迎撃実験の強行、海自佐世保基地への実戦配備。PAC3は、昨年3月の入間(埼玉)、同11月の習志野(千葉)そして今年1月には横須賀(神奈川)に配備されている。2010年度までに計11基地にPAC3を配備することが目論まれている。また、今年1月には「首都圏防衛」のためのPAC3の基地外発射候補地調査として新宿御苑での通信テストなどが行われている。7月洞爺湖サミットでは「テロ対策」の名の下に、PAC3をAWACSなどとともに配備することを計画している。いったいどこに向け何をPAC3で撃ち落とそうというのだろう。それはひとえに朝鮮民主主義人民共和国(北朝鮮)の脅威を煽りMD予算を付け続けるためのパフォーマンスに他ならない。
※PAC3発射装置などが武山基地に搬入/横須賀(カナコロ)
http://www.kanaloco.jp/localnews/entry/entryxiiijan0801573/

 ミサイル防衛の予算が際限ないというのは、ミサイル防衛は完成され得ないシステムであるという一語に尽きる。人工衛星からレーザービームで大陸間弾道弾を撃ち落とすというレーガン政権のSDI構想に始まり、父ブッシュとクリントン時代を通じ、四半世紀にわたって延々とミサイル防衛構想が研究されてきたが、その総額は12兆円に登り、現大統領ブッシュの11兆円とあわせると23兆円を費やしている。それでもごく初期の研究開発段階にとどまっている。膨大なシステムが必要なミサイル防衛に対して、相手国がそれをすり抜けるための手段を考え出すことは容易であるという見方が一般的であり、実際に相手国がミサイルを発射し、そのミサイルを迎撃ミサイルで撃ち落とすという実戦の場面以外で完成を表明することは出来ないのである。日米両政府は、実験の成功や配備の具体的進展を見せつけることで有効性があるかのように振る舞っているのである。
 日本の政府・支配層・財界は、軍需独占体の生き残りの利害から、武器輸出三原則の緩和をおこない、日米共同開発した次世代MDが生産され日本以外の地域にも配備されること、事実上の武器輸出に道を開くことを狙っている。
新「防衛大綱」「中期防」閣議決定批判:シリーズその4−−ミサイル防衛(MD)を突破口に、武器輸出三原則のなし崩し的緩和・撤廃へ(署名事務局)

[3]基地対策費の急膨張と日本の突出した対米「貢献度」

(1)日本の防衛予算に占める「基地対策経費等」は異常に大きい。グアム移転費1兆2000億円、辺野古への普天間基地代替施設建設1兆円はその大きさを表している。
 日本政府は、3月末で期限切れとなる在日米軍駐留経費の日本側負担(思いやり予算)を3年間延長する特別協定を米と締結した。日本側は、世論配慮から光熱水費(07年度253億円)の段階的全廃を求めたが、イラク戦争の戦費増などを理由に米軍によってあっさりはねつけられた。これによって、来年度予算に「思いやり予算」2083億円が計上されることになった。
※「思いやり予算」微減で日米合意 09年度から光熱水料4億円(中日新聞)
http://www.chunichi.co.jp/article/politics/news/CK2007121302071701.html

 だが米軍基地関係費は「思いやり予算」だけではない。基地対策経費は総額で4544億円(思いやり予算2083億円(特別協定分1426億円、地位協定分667億円)、基地周辺対策経費1174億円、施設の借料1287億円)に上る。そしてこれとは別に、厚木から岩国への移駐58億円(契約ベースは93億円)、嘉手納の移転22億円(同49億円)、普天間移転費48億円(同89億円)など「地元の負担軽減に資する措置」191億円(同370億円)、SACO関係経費180億円が加わる。さらに、これとは別に、キャンプ座間への陸自中央即応集団司令部の移設費用15億円、横田飛行場への空自総司令部の移設費用136億円など「地元の負担軽減に資する措置を除く」再編関連措置が加わる(契約ベース)。計5000億円にも登る。
 2008年度の防衛予算の総額は4兆7436億円、人件費・糧食費が2兆940億円、物件費2兆6486億円。その物件費のうち燃料費・教育費などを除いた主要装備品が6784億円であることを考えれば、基地関係費がいかに大きいか浮き彫りになる。実に主要装備品に迫る額が、米軍再編と基地対策のために費消されているのである。「おもいやり予算」はこの基地対策費の約4割を占めている。MDが初期投資1兆円などと言われているが、思いやり予算だけで2000年から2008年の9年間で2兆1500億円がつぎ込まれているのである。

(2)2007年度からはグアム移転のための予算が米軍再編関連経費として計上されている。「調査費」名目で2007年度3億円、2008年度4億円であるが、日本負担分7000億円の巨額支出に向けて動き始めたことを意味する。これは、日本の軍事予算構造が抜本的に変化したことを示す象徴的事件である。日米安保のための、在日米軍基地への対米予算支出から、アメリカのグローバル安保・海外基地建設のための予算支出である。
 他国の海外軍事基地建設に予算をつぎ込む法律は歴史的にも国際的にも例がない。その法律が2007年5月に成立した米軍再編推進法である。新しい対米加担の枠組みが設置された。現在、グアム移転費の内、軍事基地建設に3220億円、住宅と基地インフラに3780億円の支出が画策されている。軍事基地建設は防衛費から出されるが、住宅建設はなんとODAが流用される。国際協力銀行(JBIC)に「駐留軍再編促進金融勘定」なるものを新設し、米軍への融資をODA扱いをして、現地に設立された民間事業の共同事業体(SPE)通じて資金提供するという策を編み出したのである。JBICは特別会計の財政融資資金特別会計に組み込まれており、特別会計面からの米軍資金援助が始まるのである。2007年4月18日の国会答弁で、当時の尾身幸次財務相は、グアム基地建設への資金提供が、国際協力銀行の「目的とは合致しない」ことを認め、目的外使用を可能とするために米軍再編法で規定を変えたとし、しかも、融資金の回収を行うといいながら家賃や水光熱費、また回収期間なども全く決まっておらず、「50年に及ぶというような場合もある」と平然と語っているのである。また当時の渡辺喜美行革担当相は、海兵隊のプレゼンスによる抑止力を維持しながらグァム移転を実現するための「苦肉の策」だと語っている。7000億円もの金が返済されるどころか、グァムの基地整備費や水光熱費まで日本が負担させられ続ける危険性もある。彼らの言う「政策金融改革」とはこの程度のものである。自らの都合のいいように好き勝手に制度改革を行い、利権を残し、対米加担の方策を作り出していくのである。このようなODAの枠組みが常態化するならば、在日米軍が海外移転するたびに日本が費用を負担しなければならなくなる恐れもある。
※第166回国会 内閣委員会財務金融委員会連合審査会 第1号 平成19年4月18日
http://kokkai.ndl.go.jp/SENTAKU/syugiin/166/0179/16604180179001a.html

(3)異常さはそれだけではない。2004年に米国防総省が出した年次報告書最新版『共同防衛に対する同盟国の貢献度』は米軍駐留経費負担において日本が桁違いに大きいことを明らかにしている。2002年の統計で、日本は米軍駐留経費を年間44億ドル(5280億円)を負担しているが、NATO諸国全体で25億ドル(3000億円)であるのに比べ突出している。しかも直接現金をくれてやる直接支援が、NATO諸国はわずか3.1%であるのに対して日本は73.2%に上っている。NATO諸国では、税制上の優遇など圧倒的に間接支援による支援が多いのである。
※たとえば、ドイツはNATO諸国で最も経費負担総額が多く15.6億ドル(それでも日本の約1/3の1870億円)だが、その98%以上が間接支援である。イタリアも3.6億ドルと比較的負担が大きいが間接支援が99.2%に達する。これからだけでも、日本の異常さがうかびあがる。
 「おもいやり予算」だけを取り上げて「世界一気前のいい同盟国」と言われるが、それはごく一部にすぎない。米軍の駐留経費全体に占める日本の援助費の負担率も74.5%、つまり米軍駐留経費の3/4を日本が負担しているのあでる。これもたとえばドイツ32.6%、イタリア41%と比べても圧倒的である。
 アメリカが世界に張り巡らす軍事基地の維持のために、明らかになっているだけでも84億ドル(約1兆円)が受け入れ国によって負担されているが、その半分は日本なのである。
※2004 STATISTICAL COMPENDIUM on ALLIED CONTRIBUTIONS TO THE COMMON DEFENSE(米国防総省)
http://www.defenselink.mil/pubs/allied_contrib2004/allied2004.pdf
※米軍海外基地・施設の整備と費用負担(レファレンス 2007.1.鈴木滋)
http://www.ndl.go.jp/jp/data/publication/refer/200701_672/067206.pdf

(4)さらに米軍基地周辺の道路整備や、基地の町に対する重点的な公共投資への補助などは軍事費としては現れないが明らかに米軍駐留経費負担である。基地建設によって地場産業を破壊し、基地関連の仕事と「公共事業」なしではやっていけなくすること−−これが政府が行ってきたやり方であった。ここ数年で、SACO予算と米軍再編推進法による「再編交付金」、大型公共事業に対する国の補助率の引き上げの特例措置が追加され、基地受け入れをとにかく表明させること、そして一度を交付金をもらったが最後そこから抜け出せなくなるようなシステムが強化された。だが、交付金や補助率引き上げは、しょせん不必要なハコモノの建設を促すだけであり、補助金・交付金の足りない部分は地方債の起債による調達を余儀なくされ、自治体は借金漬けに陥っていくのである。「アメとムチ」というよりも「シャブ漬け」というほうが適している。
 岩国の選挙結果は、米軍再編を押しつけるためには手段を選ばない日本政府の横暴なやり方、交付金と公共投資に依存せざるをえない「基地の町」が抱える深刻な経済的・財政的窮状、しかしそれでもこれ以上の負担は受け入れられないという基地住民の切実な思いが複雑な形で反映されたものである。
 基地問題は今後ますます先鋭化する。この側面も含めた軍事予算のトータルな研究と暴露が必要である。

2008年2月15日
アメリカの戦争拡大と日本の有事法制に反対する署名事務局