新テロ特措法案衆院強行採決に断固抗議する!
「大連立」騒ぎを利用した福田政権の巻き返しに反撃を加えよう!
  憲法改悪、派兵恒久法を許すな!


(1)福田自公政権による新テロ特措法強行採決糾弾!

 政府与党は11月13日、衆院本会議で新テロ特措法の採決を強行した。衆院での数の力を背景にした暴挙に私たちは断固抗議する。与党はすでに35日間の国会会期延長を行い、インド洋での給油再開に何とかこぎつけようとしている。たしかに防戦一方であった福田政権が、「大連立」騒ぎを契機として、巻き返しに転じたのは間違いない。衆院再議決に対する与党内の慎重姿勢は後退した。
 しかし再議決の余地は広がったとはいえ新テロ特措法成立のメドは立っていない。福田政権の危機は続いている。防衛省贈収賄疑惑やイラク転用問題は新事実が次々に発覚し国会論戦の焦点になるのは不可避である。民主党は、新テロ特措法反対を再び鮮明にし、参院で自ら提出したイラク特措法廃止法案の審議を最優先する姿勢を取り始めた。参院での審議と法案の取り扱い、国会再延長や衆院再議決、首相問責決議等々を巡って激しいせめぎ合いは続くのは間違いない。
 福田は、世論を見極めながらなどと話しているが、給油再開の是非についても、政党支持率についても大きく変わっていない。内閣支持率は発足当初より大きく減っている。参院選で示された民意、小泉・安部と続く新自由主義的構造改革で生み出された諸矛盾に対する反発は、そう簡単に解消されるものではない。解散総選挙に強く打って出られる状況ではない。防衛省疑惑を徹底して追及し、ブッシュの侵略戦争への加担をやめさせること、新テロ特措法を葬り去ることに全力を挙げよう。福田政権に対する批判と闘争を強めよう。
※「大連立」騒動直後におこなわれた各種世論調査をみれば、当然ばらつきはあるものの、ストレートに自民党の支持率上昇につながっていない。産経や読売でも福田内閣の支持率が急落している。給油活動の継続については賛成、反対が拮抗している。大連立を支持する声は極端に少ない。
http://www.yomiuri.co.jp/politics/news/20071112it12.htm?from=navr
(読売新聞)

http://sankei.jp.msn.com/politics/policy/071112/plc0711121148000-n1.htm(産経新聞)
http://www.asahi.com/politics/update/1105/TKY200711040129.html(朝日新聞)

(2)「大連立」騒ぎは、改憲、派兵恒久法、消費税増税を狙う自民党・支配層による巻き返し

 私たちはまずもって「大連立」騒動で明らかになった自民党と支配層によるなりふり構わぬ謀略と工作、情報操作、心理的圧力、恫喝等々の卑劣なやり方での議会支配、政治支配を批判する。今回の動きは、自民党・支配層が自らの政策を貫徹するために、現在の政治的な膠着状態を打開しようとして企てた政変劇である。直近ではインド洋での給油の再開を、より戦略的には「憲法改悪」「派兵恒久法」「消費税増税」の3点セットをやり遂げることが「大連立」の直接の目的なのである。「大連立」のようなドラスチックな政変を実現しなければ今の危機を打開することができないまでに政権は弱体化し、自民党支配は危機に陥った。
 世論や参院選で示された民意を全く無視した密室の党首会談「大連立」は、渡辺恒雄や中曽根康弘ら老齢の保守改憲勢力がシナリオを書き、あらゆる手練手管を使って、小沢を引きづり込もうとしたことが暴露されている。だがその背後には、支配層全体の意向があることは間違いない。彼らはマスコミなどを使って「国政停滞」「法律が一本も通らない」「国会の機能麻痺」「国際社会からの孤立」「政権担当能力」などとプロパガンダを行い、ねじれ国会が国民生活にとっての危機であるかのように煽り立てた。少なくともこれは小沢を動揺させ民主党を萎縮させる効果をもたらした。しかし彼らの言う危機とは、反動・反人民的諸政策が遂行できないという意味での危機、支配層にとっての危機に他ならない。
※渡辺読売会長と森元首相が仲介 小沢氏に「大連立を」(朝日新聞)
http://www.asahi.com/politics/update/1108/TKY200711070387.html



アメリカでは、9月15日、10月27日と立て続けに大規模な反戦集会・デモが行われた。写真は10月27日の行動 http://answer.pephost.org/より

 彼らが進めたい政策とは、対外的には対米追随とブッシュの戦争政策への加担、軍国主義化と海外派兵の恒常化であり、国内的には消費税増税と企業減税、医療・福祉切り捨て、大衆収奪である。しかし、これらの政策の行き詰まりは明かである。イラク・アフガンの泥沼化は目を覆うばかりだ。イラクでは今年の米兵死者数が開戦以来最大となった。すでに100万人のイラク市民が殺されている。首都を中心とした大規模掃討作戦と「自爆テロ」、シリア国境での難民と国内避難民と大量発生、北部クルド地域での石油を巡るトルコとの軍事衝突など、全土での不安定化が進行している。アフガニスタンでは「大規模テロ」が続発し、2001年の開戦以来の犠牲と被害が出、「アフガンのイラク化」が進行している。総じて、ブッシュの戦争は「ベトナム化」している。アメリカでは厭戦感とともに撤退を求める声が日増しに強まっている。
※Thousands March to Capitol to Protest Iraq War(ワシントンポスト)
http://www.washingtonpost.com/wp-dyn/content/article/2007/09/16/AR2007091600602.html
※2007 Toll Nears Highest for US in Iraq(AP)
http://ap.google.com/article/ALeqM5gkx-3oYeFwuWKCusr2jrojs98w8wD8SN23400

 日本国内では人々の生活の破壊と貧困化が進行し、非正規・不安定雇用・貧困層、医療・介護と社会保障の徹底した切り捨てなど、矛盾が一挙に噴出している。
 「国政停滞」や「国会の機能麻痺」は、このような泥沼の政策の中断、反転を意味する。現にテロ特措法を失効させ、ブッシュの侵略戦争からの離脱と自衛艦の撤退をもたらした。おしなべてねじれ国会の「国政停滞」で困るのは、支配層である。私たち国民ではない。

(3)イラク・アフガン人民の大量殺りくと破壊への加担を中断させたテロ特措法の失効の意義

 11月1日テロ特措法は期限切れになり、失効した。インド洋からの自衛隊の撤退が実現した。9.11以降だけでなく、90年代初めのPKO法などによる自衛隊海外派兵の開始以来、自衛隊を世論と運動の力で撤収に追い込んだのははじめてのことである。自衛隊の対米侵略戦争加担、海外派兵の一角が崩れた意味は決定的である。私たちは、給油活動という形でのイラク・アフガン人民の大量殺戮と破壊への加担をストップさせた意義をまず確認しなければならない。
 支配層は、ここでも「対米関係を損なう」「中東は死活の地域」等々と主張し早期再開を要求しているが、これこそが彼らの本音である。中東を支配し石油資源を略奪するするためのアメリカの侵略戦争に自衛隊を派兵することでブッシュの帝国主義戦略の一端を担い、日米の軍事的政治的緊密化をはかるという軍事外交戦略が損なわれることを恐れているのである。
 だが、対米加担一辺倒、日米同盟一辺倒の政策を強行した結果が、守屋の贈収賄であり、イラク戦争転用疑惑であり、隠蔽工作であり、一連の防衛省疑惑であった。守屋自身の逮捕が時間の問題となっている。次期CXエンジンの受注だけでなく、チャフフレアディスペンサーの見積もり改ざん不正請求など、防衛利権をテコとした事務次官と新興軍事専門商社との癒着にとどまらず、制服組から背広組までを巻き込む広大な構造癒着が次々と明らかになっている。
 それだけではない。空母キティホークへの給油量「80万ガロン」の隠蔽工作については、元防衛課長の証言によって、守屋事務次官、石破防衛庁長官までが関与していたことが明らかになった。米石油会社シェブロンからの給油燃料調達に関わる、日本の軍事商社との随意契約疑惑、元防衛庁長官もからむ普天間移設をめぐる利権等々、防衛省疑惑が次々と発覚してきている。
 守屋は事務次官として対米加担最優先政策を強行してきた張本人であり、日本の軍事外交政策の根幹に絡んでいる。小泉、安倍政権と続いた防衛庁・省での守屋君臨における汚職、不正行為、隠蔽工作の全貌を明らかにすることは、ブッシュの無法な侵略戦争への加担の犯罪性と矛盾を明らかにするになるだろう。
※給油量問題「石破、守屋氏に相談」=元海幕課長が証言(時事通信)
http://www.jiji.com/jc/c?g=pol_30&k=2007110900472

(4)福田政権のへ批判と闘争を強化し、新テロ特措法を廃案に追い込もう

 「大連立」騒ぎは、本質的にネオリベラリズムで親米政党である民主党が、「政局第一主義」による「徹底抗戦」から転換した時にいかなる事態をもたらすかを見せつけた。「派兵恒久法」と「憲法改悪」は政策目標としては両党に違いがないことが明らかになった。民主党は体制内野党として絶えず動揺を繰り返し、一つ間違えば一挙に大政翼賛政治に転化する事態が再び生み出される危険がある。「大連立論」「政権交代可能な二大政党制」が危険であるだけでなく、「政策協議」も危険である。
※大連立:党首会談の全容判明 恒久法が政権論議の糸口に(毎日新聞)
http://mainichi.jp/select/seiji/news/20071104k0000m010112000c.html
 その危険は、民主党が13日にまとめた新テロ特措法に対する対案の要綱に現れている。アフガン本土への武装陸上自衛隊の派遣を前提にし、しかもその武器使用基準は、現行のイラク特措法をも緩和し、治安弾圧活動を可能とする内容となっている。さらに、海上阻止行動(OEF−MIO)の検討さえ明記し、今回の党首会談の最大の論点であった派兵恒久法の整備の必要を強調している。このような、形を変えた海外派兵法である限り、国連主義、民生支援に基づく復興支援活動などの限定も、限定にはならないだろう。
※民主、恒久法の整備を明記 補給支援特措法で対案(朝日新聞) 
http://www.asahi.com/politics/update/1113/TKY200711130310.html
 それは、福田政権に対してより右から議論をふっかけるものであるとともに、福田と小沢が今回の「大連立」騒動で摺り合わせたという派兵恒久法に関する「幻の合意」とどこが違うのか、今回の民主党対案は、まるで自民党に対する容認シグナル、「大連立」騒動の再燃シグナルであるかのようだ。両党が政策協議に入った場合の危険は計り知れない。一気に海上自衛隊のインド洋派兵、アフガンへの地上部隊派兵が現実味を帯びる。民主党の対案路線の危険は、昨年の教基法改悪反対闘争において実証済みである。
 もちろん短期的に見れば、「大連立」合意の瀬戸際まで行きながら民主党がぎりぎりのところで踏みとどまったのは確かである。小沢が一旦合意したことを党を挙げて拒否したこと、「大連立」を葬ったことの意義は大きい。現時点で、ねじれ国会という状況は継続し、民主党は新テロ特措法反対の姿勢を維持している。選挙民の力、世論の力、運動の力が民主党が党として容易に与党の側へなだれ込むことを阻んでいる。一層人民大衆と反戦平和運動の厳しい批判と監視を強める必要がある。福田政権と対決する運動を強化し、その力で新テロ特措法を廃案に追いこもう。イラク特措法を廃案にし、イラクからの航空自衛隊の撤退を勝ち取ろう。

2007年11月13日
アメリカの戦争拡大と日本の有事法制に反対する署名事務局