「防衛省」法案衆院可決を糾弾する! 反動諸法案成立阻止のために、全力を挙げて闘おう!
(1)防衛庁の省昇格関連法案が11月30日の衆院本会議で、自民・公明の与党と野党民主党の賛成で可決された。共産党、社民党は反対した。今国会での成立の危険が極めて高まっている。
日本の自衛隊のあり方を根本的に変える重要法案がまともな議論は何一つされず、与党だけでなく最大野党である民主党も賛成にまわり圧倒的多数で可決されるという、翼賛的で異常な国会審議を私たちは徹底して弾劾する。
防衛庁が発足以来50年以上にわたって内閣府(総理府)の下部組織に留め置かれたのは、自衛隊の存在自身が憲法違反であり、再軍備と日本軍国主義の復活に対するアジア諸国と人民の強い不信と警戒があったからに他ならない。防衛庁長官を法案提出や予算要求などの権限をもつ「防衛相」に昇格させ、財務省や外務省同様、アメリカの国防総省などと肩を並べる「防衛省」に格上げすることは、自衛隊を帝国主義軍隊として国内外に認知させようという危険な企てである。
(2)その最大の目的の一つは、現在「付随的任務」とされている海外派兵などの任務を「本来任務」とし、本土防衛や災害出動と並ぶ重要な任務に位置づけることである。この法案に基づけば、PKOやインド洋での米艦船への給油活動、イラク戦争への自衛隊の派兵、「周辺事態」での米軍への支援などがことごとく自衛隊の本来任務となる。アメリカによる途上国侵略や国際紛争がある度に派兵することが「例外」ではなく当然、しなければならないものとなるのである。この法案は自衛隊を侵略軍へと変貌させる初めの一歩である。
安倍首相は、日米軍事同盟の強化とアメリカが世界中で行う侵略戦争への加担を政策の柱の一つに置いている。省昇格法案は、安倍首相が就任早々から打ち出している「集団的自衛権の解釈変更」、海外派兵「恒久法」の制定、日本版NSC(国家安全保障会議)など一連の侵略軍化の動きの一環である。その最終目標は武力不行使、交戦権禁止、軍隊不保持を謳う憲法9条の廃棄と憲法の全面改悪にある。現行憲法下で憲法9条の骨抜きを進め、改憲へと突き進もうというのである。
(3)この法案は、もう一つの直接的な軍事外交的危険を持っている。それは、防衛庁が省に昇格することによって、朝鮮民主主義人民共和国(北朝鮮)や中国に対して軍事的政治的恫喝と圧力を加えるという危険である。安倍首相は、10月はじめの北朝鮮による核実験実施表明に対して、即座に厳しい経済・金融制裁を強行し、周辺事態法の適用や特別法の整備等対北朝鮮戦争挑発の可能な限りのオプションを検討した。さらに国際的に対話路線が前に出る中でも、中川政調会長や麻生外相の「核武装」発言を容認し自らの代弁であるかのように垂れ流しつづけ、ついには久間防衛庁長官が、非核三原則について、緊急事態には「持ち込ませず」の厳密適用を除外し、核搭載の米艦船の寄港をみとめる発言にまで至ったのである。また安倍首相自身が、防衛目的に限るとしたミサイル防衛に関する「福田談話」を見直し、米本土や米軍基地を狙ったミサイルについても撃ち落とすことのできるという「集団自衛権」の部分解除の議論を提起している。いわば政権全体が軍事政策でたががはずれ、言いたい放題の暴走状態になり始めている。
防衛庁の省昇格は、北朝鮮に対するこれら一連の危険な動きを、安倍政権として、国家として承認し強化し遂行していくという決意を示す意味合いを持っている。
(4)防衛庁省昇格法案によって主任務にしようという海外派兵とは何なのか。それはイラク戦争と占領支配への加担=自衛隊の派兵そのものである。では、イラクはどうなっているのか。米と多国籍軍が何の証拠もなく侵略し、イラク国民から政権、国家機構、インフラを奪った。その結果、米軍と多国籍軍に対する武装闘争はますます激化し、国内は内戦の危機の瀬戸際に直面し、マリキ傀儡政権は完全に統治能力を喪失している。2003年のイラク侵略以降65万人ものイラク民衆が殺された。また、アメリカでは、米兵の戦死者が2800人を越え、厭戦機運を背景にして、ブッシュ大統領は中間選挙で大敗北を喫し、イラク政策の手直しを迫られている。これが小泉首相が熱烈に支持し陸上自衛隊を派兵したイラク戦争の現実なのである。これからもこの不正義で完全に行き詰まった戦争に加担し、同じ事を繰り返そうというのか。
(5)国会会期末まで半月を切り、安倍首相が政策課題として掲げた反動諸法案の成立を許すのか阻止することが出来るのか、政府与党と反対運動とは激しいせめぎ合いの中にある。 しかし民主党は、11月16日の教基法改悪法案の衆院強行採決と19日の沖縄知事選での与党候補勝利を境にそれまでの対決路線を急速に“軟化”させ始めた。対決の最中に最重要法案の賛成に転じるとは人民に対する全くの裏切りである。民主党は、状況を見誤っている。閣外協力をすすめる最大野党に成り下がって没落の道を進むのか、右翼安倍政権との徹底した対決によって自らの存在意味を明らかにするのか問われていくだろう。
安倍政権はいわゆる4点セット−−教育基本法改悪、共謀罪法案、国民投票法案、防衛省昇格法−−を今臨時国会の最大の争点として掲げた。ここに来て安倍の支持率は急速に下落しはじめ、世論は離反傾向を示し出している。今こそ運動の力を結集して反動諸法案を阻止すべき時である。一つも成立させてはならない。とりわけ教基法改悪法案反対を掲げ、11月12日の8000人の全国集会と連日の国会前座り込み、そして衆院本会議強行採決当日の5000人を越えるヒューマンチェーンなどを組織してきた反対運動は、12月5日にも教基法改悪反対の国会前1万人集会を呼びかけている。この闘いに合流しよう。反対の声をさらに強めよう。
2006年12月1日
アメリカの戦争拡大と日本の有事法制に反対する署名事務局