[署名事務局声明]
安倍政権の右翼的巻き返しと教基法改悪強行の危険
参院での廃案を目指し、闘いを一層強めよう!


安倍政権を支える右派勢力の一時的巻き返しと強行突破の危険

 安倍政権による右翼的巻き返しによって臨時国会での教基法改悪強行の危険が高まっている。自民・公明両党は11月16日、衆院本会議で教育基本法「改正」案を単独強行採決した。安倍が日本会議を中心とした右派勢力をまとめ上げ、強行採決による影響を危惧する党内の声を封じ込めた結果である。安倍は、自分に近い日本会議の平沼赳夫の処遇を含め、郵政造反議員の復党問題で手打ちを行うことで右派勢力を結束させて党に圧力をかけ、「あいまい戦術」によって脆弱化していた安倍政権の基盤を一時的に立て直したのだ。
 当面の最大の政治的焦点となっていた11月19日の沖縄知事選では、新基地反対を掲げる糸数氏が県内移設を容認する与党候補に僅差で敗れた。与党側が基地問題を争点からずらし沖縄の深刻な経済・雇用危機につけ込む形で振興策を宣伝した結果である。
 安倍政権は、教育基本法の改悪をあらゆるものに対して優先する最重要課題として、12月15日の会期末までに何が何でも通すつもりである。与党両党は早くも17日に、全野党欠席の下で強引に参議院本会議を開催し、教育基本法「改正」案の趣旨説明と質疑を開始した。
 教育基本法改悪の危険はかつてなく高まっている。反対運動は再び攻勢を強めなければならない。


教育現場の矛盾は何も解決されていない

 深刻ないじめを原因として子どもたちが次々と自ら命を断っている。それは、学校・教育現場で起きている異常事態に対する命を懸けた告発である。安倍政権は子どもたちの悲痛な叫びに耳を傾けその解決の道を探るのでなく、それを切り捨て、この現実と無関係に「教育改革」を語り、何事も起こっていないかのように教基法の改悪に突き進もうとしている。私たちはこれを絶対に許せない。彼らには教育を語る資格はない。
 なぜこのような悲劇が続発しているのか。進学校を中心に未履修が横行する背景は何なのか。教職員に精神疾患や過労死、自殺がなぜ広がっているのか。これらは学校教育の受験偏重主義、教職員に対する締め付けと統制、学校間競争の押しつけと学校への市場主義導入、点数管理の異常な強化など、子どもたちや教職員に対して政府と文科省が押しつけてきた極度のストレスの結果が噴出したものに他ならない。しかし、真剣に問われ検討されなければならないこれら教育現場で起こっている諸問題が、政府・文部科学省の無責任体制の中で、完全に無視されている。安倍首相は一度たりとも、この問題に対して、真剣な対応を示したことはない。
 政府が「教育改革の国民的合意を得た」根拠としていた教育改革に関するタウンミーティングをめぐって、やらせ質問や会場からの一般市民の排除と官製動員、さらには買収工作までが明らかになった。政府・文部科学省は、責任を教育委員会に転嫁し、問題を教育委員会の見直し問題に解消しようとしている。彼らに「公共心」や「徳目」を説く資格はない。教基法改悪の前提は完全に崩れている。振り出しに戻すべきである。


教基法改悪の狙い−−子どもたちと教職員を国家・財界の言いなりにさせる

 教育基本法改悪法案は、戦争のために命を捧げることもいとわない国民、不満も述べずにグローバル資本のために実直に働く国民、公共心や奉仕の心を持ち国策のためにはどんな犠牲も甘受する国民、要するに国家とグローバル資本に従順な国民を作り上げることを目指しているとんでもない悪法である。教基法改悪は、学校を序列化し、子どもたちを選別と切り捨ての深刻な競争の中にたたき込み、教員たちを「教職員評価・育成システム」と成果主義賃金で格差付けし、「愛国心」教育や「公共心」教育で縛り上げるものである。教育を主権者である国民の手から取り上げ、財界の利潤追求のための「人材育成」「国家戦略の道具」に変えてしまうものである。
 とりわけ安倍の「教育再生」は、教職員の締め付けを最大の眼目とし、教職員運動に対する敵意をあからさまにしている。日教組つぶしを公言している。彼らは、「教え子を再び戦場に送るな」を原点にして教職員がすすめる平和教育、解放教育、在日教育、民主主義教育が憎くて仕方がない。校長や教育委員会の言うことを聞かず「日の丸・君が代」で起立・斉唱しない教職員を学校から葬り去りたいと考えている。「日教組を壊滅できるかどうか」(森嘉朗)、「(日教組の一部は)免許剥奪だろう」(中川昭一)の言葉がこれを表している。「ダメ教師」「問題教員」「不適格教員」を煽りながら、子どもたちのことを第一に考える教職員、政府の右翼的「教育改革」に抵抗する教職員に対して「評価・育成システム」で思想改造を迫り、それでも拒否する教職員には教員免許更新制導入によって免許剥奪攻撃を行おうとしている。
 こんな教基法を実際に現場に押し付ければいったいどうなるのか。安倍の右翼的・反動的教育政策、「教育再生」は間違いなく教育現場に取り返しのつかない混乱と異常事態をもたらすだろう。間違いなく公教育を崩壊の淵に押しやるだろう。私たちは、子どもたちの人格と尊厳をかけて闘う教職員を支援し、合流して、一緒に闘う決意である。


野党は結束して対決姿勢の堅持を!廃案に向け、反対運動をさらに強めよう!

 安倍政権は衆院を数の力と強行可決で乗り切った。しかし、それは同時に彼らが国民と野党を説得できなかったことの裏返しである。国会を包囲し、ますます強まり広がる反対運動と、野党抱き込み失敗に危機感を募らせ、近づく会期末に焦った結果に他ならない。
 今のところ教基法強行採決に対して野党は結束し対決姿勢を強めている。民主党も含めて全党が妥協ではなく対決を、対案ではなく廃案を対決軸の基本に据え参院でも徹底抗戦する構えである。野党の対決姿勢を貫かせているものは、全国のそして国会前で連日繰り広げられる反対運動の力である。
 世論調査で安倍政権の支持率は急落し、安倍の命綱であるブッシュ大統領は中間選挙で大敗北した。安倍が支持し協力し続けるイラク戦争は泥沼化し「対テロ戦争」は破綻している。安倍政権内では、右派勢力と現実路線との間で矛盾と対立をくすぶらせ続けるだろう。沖縄知事選の中で投じられた半数近くの「反基地」の民意は沖縄の新基地建設を容易には許さないだろう。
 私たちは教育基本法改悪を参院段階で阻止するために引き続き全力を挙げなれればならない。あらゆる力を結集すれば阻止はまだ可能である。闘いは新たな段階に入ろうとしている。教基法改悪に抗議するの声を今度は参院に向けて集中しよう。教基法改悪反対の闘いを安倍の反動諸政策全体−−共謀罪法案、防衛庁省昇格法案、沖縄基地再編、恒久法法案、国民投票法案等々に対する闘いと結びつけ一層強い闘いに発展させよう。教基法改悪法案を絶対に参院で廃案に追い込もう。

2006年11月20日
アメリカの戦争拡大と日本の有事法制に反対する署名事務局