北朝鮮ミサイル発射問題と日本の反戦平和運動の諸課題====== |
日米両政府による金融・経済制裁強化に反対する |
−−政府・与党、マスコミ一体となった反北朝鮮キャンペーンを許すな−− |
はじめに−−北朝鮮ミサイル発射問題に際して、日本の反戦平和運動の諸課題を考える
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(1) 日本政府は、朝鮮民主主義人民共和国(以下、北朝鮮)に対する金融制裁を8月上旬にも発動するため、本格的な準備に入ったと伝えられています。米政府と共同して、対象となる団体や個人を特定し、外為法に基づく送金停止措置や北朝鮮関連資産の凍結などの金融制裁を強行しようというのです。さらに、臨時国会に向けて、政府・自民党は「金融制裁法案」を準備し、北朝鮮との金融取引を日常的に制限・停止するための法制定にまで乗り出そうとしています。
※北朝鮮ミサイル:日本「次の一手」、金融制裁法案焦点に 安保理にらみ検討活発化(毎日新聞)
http://www.mainichi-msn.co.jp/seiji/feature/archive/news/2006/07/20060713ddm005030076000c.html
すでに日本政府は、北朝鮮のミサイル発射後直ちに、万景峰号の半年間入港禁止、北朝鮮職員の入国禁止など9項目に及ぶ制裁を実施に移しました。さらに政府は、朝鮮総連関連施設の減免措置の中止を全国の自治体に要請し、これに応じる自治体が次々と出てきています。また舞鶴などの港湾では、全面的な貿易禁止といった経済制裁がなされていない段階で、民間業者が勝手に荷役拒否に踏み込み、事実上の貿易禁止措置に入り込もうとしています。政府と自治体、そして民間業者一体となった事実上の経済制裁がじわじわと進むという、異様な状況が生みだされているのです。
日本政府が、このような金融制裁を含む大規模な形で北朝鮮に対する経済制裁に実際に踏み切るのははじめてのことです。
※北朝鮮への金融制裁、8月上旬に発動へ(読売新聞)
http://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20060719-00000301-yom-pol
※<北朝鮮制裁措置>国際協調がカギ 有志連合で実施も(毎日新聞)
http://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20060718-00000141-mai-pol
現在日米両政府が行っていることは、北朝鮮に対する「戦争挑発」といっても過言ではありません。通常、国際政治において経済制裁とは、軍事制裁を視野に入れた開戦に向けた第一歩なのです。ところが日本の政府もマスコミも、経済制裁はちょっとした“お仕置き”のようにしか語っていません。本当に無責任極まりないことです。日本の民衆には何も知らせないまま、非常に危険な政策をエスカレートさせているのです。
(2) 北朝鮮がなぜミサイルを発射したのか、その政治的目的ははっきりしています。米国が昨年秋に発動した金融制裁です。様々な場で、北朝鮮の高官が金融制裁の解除を要求していることから明らかです。ところが日本では、政府与党はもとより、マスコミも野党も、この金融制裁の危険性についてほとんど不問に付しているのです。ブッシュの金融制裁を問題視せず、北朝鮮のミサイル発射だけを非難するのは許せないことです。
誰が脅威を煽っているのか。この問題を把握するには、この金融制裁にさかのぼらねば何も分からないのです。米政府の金融制裁発動は半年以上も前です。昨年9月の段階で、すでに対北朝鮮の封じ込めと包囲網の強化が始まっていたのです。今回の安倍主導の経済制裁は、この米政府の金融制裁に同調しさらに「有志連合方式」で制裁を強化・拡大しようというものです。
さらに、対北朝鮮挑発は金融制裁にとどまりません。あとで述べるように今年に入ってからは、北朝鮮に対する軍事的な挑発、すなわち大規模な軍事演習が立て続けに行われているのです。半年も前から周到に包囲網を狭め、カネの流れを封じ込め、挑発を繰り返し、相手の反発を誘い、待ってましたとばかりにさらなる強硬策を打ち出す。翼賛的なマスコミを最大限利用しながら、北朝鮮をつるし上げる。事はこのように進んできているのです。脅威を煽っているのは、北朝鮮ではなく日米両政府の方です。
ではブッシュ政権は、なぜ昨秋の金融制裁を皮切りに対北朝鮮政策を転換し、締め付けと孤立化の強硬策を前に出し始めたのか。その背景には、イラク戦争・占領の泥沼化で窮地に立ったブッシュが、結局は緊張を煽り、外交での強硬路線で失地回復を図ろうとしている事情があります。軍産複合体と石油メジャー、キリスト教原理主義に基盤を置くブッシュ大統領には、窮地を脱する方策も緊張激化策でしかないのです。そして、イラク戦争の泥沼化のもとで、イランや北朝鮮の脅威を煽る方向へ大きく舵を切り、イラク問題を覆い隠し、今年秋の中間選挙を乗り切ろうとしているのです。これは極めて危険な火遊びというべきです。そして、ブッシュ大統領に追随する日本政府もまた、総裁選と臨時国会対策として「拉致問題」をミサイル問題に結びつけて強硬姿勢をとる安倍官房長官を前にたてる形で、対北朝鮮強硬策を押し出しているのです。
およそ国家間の交渉においては、互いが対等な立場に立ち、要求と譲歩をしながら落としどころを探っていくというのが基本です。それが外交なのです。少なくとも昨年9月までは、6カ国協議の枠組みの中で、交渉はそのような形で進んで来ました。ところが、米政府は北朝鮮に対して金融制裁を発動し、核開発やミサイル実験の停止など北朝鮮の主権に関する問題での屈服を一方的に要求し始めたのです。
(3) 国連決議後、米政府は国連決議を盾に北朝鮮に対する「追加的措置」を検討する方針を表明しています。中国に対しては、対北朝鮮政策の「見直し」を迫り、制裁に同調するよう要求しています。その様な中で、中国の国有商業銀行・中国銀行がマカオ支店の北朝鮮口座を凍結したと伝えられています。これが、本当なのか、そしてそれが政治効果を狙ったものに留まるのか、北朝鮮に対して経済的打撃を与えるものになるのか。明らかに事態は危険な方へ向かっています。
※<中国銀行>マカオ支店の北朝鮮口座を凍結 米韓が確認(毎日新聞)
http://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20060725-00000086-mai-int
米国が、いったい北朝鮮に対する強硬政策をどこまで突き進もうとしているのか、私たちには分かりません。しかし、ブッシュや安倍の火遊びが、彼らの目先の政治的思惑を越えてエスカレートし非常に危険な方向に発展する重大な中身を持っていることは確かです。いま必要なことは、北朝鮮だけに一方的な要求、一方的な屈服を強いることではありません。米日両政府が、いますぐ金融・経済制裁を中止し、その上で米朝間、日朝間、そして6カ国協議を無条件に始めることであり、もう一度一から、本当の意味での朝鮮半島を含む東アジアの平和と安定について、対話と交渉を開始することです。
(4) 北朝鮮がミサイルを発射してから3週間が過ぎました。その後の経緯を踏まえて私たちはこの事態をどう把握し、反戦平和運動の課題をどう提起すればいいのかをじっくり考えてみたいと思います。−−北朝鮮は何のためにミサイル発射をしたのか。国連非難決議はどのような意味を持つのか。誰が脅威と不安定状態を作りだしたのか。日米両政府は今回のミサイル発射問題を利用して何をしようとしているのか。朝鮮半島を含む東アジアの平和と平和共存を実現してゆくにはどうすればいいのか。日本の反戦平和運動の課題は何か。等々。
日本政府は、7月15日の国連安保理による「北朝鮮のミサイル発射を非難する決議」を「根拠」に金融制裁をさらに強化しようとしています。国連決議は、北朝鮮だけにミサイル、核開発の中止を要求し、加盟国に北朝鮮へのミサイル関係の物資、技術供与と北朝鮮からの調達防止を要求するという異常なものでした。しかし他方では、この国連決議は、日本が強硬に主張した「国連憲章第7章の下に行動する」という経済制裁や軍事行動をも含む項目は中国・ロシアの強い反対によって削除されています。経済制裁も「義務」ではなく、「要求」にとどまっています。
ところが、この決議以降も日米両政府が自ら対北朝鮮制裁と軍事的強硬路線をエスカレートさせ、中国にも政策転換を迫ることによって、この決議を「非難決議」から事実上の「制裁決議」に変えていく危険性が生まれてきているのです。
日本政府は、ブッシュ外交の言われるがまま、北朝鮮に対する突進役のような非常に危険な役割を演じています。この決議から現実の制裁へと向かわせるのかどうか、その危険を押しとどめ日本政府に戦争挑発と制裁ではなく、対話と交渉に向かわせていくかどうかは運動の力にかかっています。私たち反戦平和運動の責任は重大です。
2006年7月29日
アメリカの戦争拡大と日本の有事法制に反対する署名事務局
[1]国連安保理決議(1695)の危険性と二面的性格−−「国連憲章第7章」に基づく制裁要求と、対話・交渉という異質なものの妥協の産物
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(1) 7月15日、国連安保理は北朝鮮のミサイル発射を非難する決議(安保理決議1695)を全会一致で採択しました。@「国際平和と安全の維持のために特別な責任の下に行動する」とし、A北朝鮮の弾道ミサイル発射を非難、B北朝鮮に弾道ミサイル計画の活動停止と発射凍結の復活を要求、C加盟国に北朝鮮へのミサイル、大量破壊兵器関連物資、技術の移転防止を要求、D加盟国に北朝鮮からのミサイル関連物資、技術の調達防止、ミサイルと大量破壊兵器開発に関連した金融資産の移転阻止を要求、E6カ国協議への即時無条件復帰、核兵器と核計画の放棄を強く要請しています。
※北朝鮮決議を採択(東京新聞)http://www.tokyo-np.co.jp/00/kok/20060717/mng_____kok_____005.shtml
私たちはこの決議に反対です。第一に、北朝鮮を一方的に非難する決議は、「国際社会」の名の下に、北朝鮮を政治的外交的に非難し孤立させるだけであり、他方この状況を作り出している日米の側を全く免罪するという危険な意味を持っているからです。そして第二に、日米両政府が、この決議を盾に、対北朝鮮制裁の強化と封じ込めをエスカレートさせようと画策しているからです。従って、朝鮮半島と東アジアの平和と安定を根底からぶち壊すものだからです。
しかし、私たちはこの決議が、一方では国連憲章第7章に基づく厳しい制裁という日米の主張と、他方ではあくまでも交渉と対話によって局面を打開するという中ロの主張がぶつかり合い妥協したものであることを見ておかなければなりません。米政府が、北朝鮮強硬策を振りかざして国連安保理を牛耳るというような力関係には至っていないことを示しているからです。
(2) 日米両国が最初に国連安保理に共同提案した制裁決議案は、事態が「国連憲章7章問題」であると宣言する極めて好戦的な内容が中心でした。
これは国際条約や国際法を直接侵害したり、他国を侵略したりしたわけではない国に対するものとしては破格に強硬な決議案でした。弾道ミサイルに関して、その開発や実験を禁止したり制限する条約や国際協定はありません。現に9日に弾道ミサイルの発射を行ったインドに対しては何の非難も行われていません。北朝鮮だけを狙い打ちにして「活動停止と実験凍結」を押しつける一方的な決議案だったのです。
特に「第7章の下に行動する」という規定は、国連加盟諸国にミサイルに関わる物資の禁輸から全面経済封鎖への協力義務だけでなく、北朝鮮に対する軍事行動への支持を義務付けかねない文言であり、北朝鮮が従わなければ戦争にまでエスカレートする可能性があるものです。「第7章の下に行動する」という規定の下に米国はイラクのフセイン大統領に対する制裁と武力行使へと進み、全面的な戦争を仕掛けたことを忘れるわけにはいきません。
※日米両国が最初に国連安保理に共同提案した制裁決議案は、@事態が国連憲章7章問題であると宣言し、A北朝鮮を「国際平和と安全への脅威」と認定、B北朝鮮にミサイルの発射、さらには開発、輸出等の中止を義務付ける、C国連加盟諸国に「北朝鮮のミサイル・大量破壊兵器開発への資金、物資、技術の移転、ミサイルと大量破壊兵器に関する物資と技術の調達を阻止すること」を義務付ける。D6カ国協議への無条件復帰、というものであった。
決議は、北朝鮮にミサイル開発の中止を義務付け、加盟国にミサイル関連資金、物資、技術の提供、ミサイルの調達阻止を義務付けているが、北朝鮮への資金は何に使われるのか分からないという拡大解釈で金融封鎖や全面的な経済制裁への拡大の危険性を含んでいた。事実上の全面経済制裁によって北朝鮮の一方的な屈服を迫るものであった。
日米の決議案は非常に一方的で意図的な強硬姿勢に満ちていた。米国に譲歩を求め、6カ国協議に戻りたがっている北朝鮮を一方的に平和の敵、脅威と宣告し、経済封鎖で痛めつけること、交渉で政治的に解決するのではなく、日米の側から国連を使って軍事的・政治的包囲網を作り、絞め殺すやり口−−これが日米共同提案であった。
(3) 中国、ロシア両国は当初の日米共同提案に対して反対し、拒否権発動を明言しました。日米が提出した「第7章の下に」を「第7章第39条に基づき」とトーンダウンし、各国に対する「義務」の記述を「要求」へと緩和した修正案に対してさえ拒否権を表明しました。第7章に基づけば武力行使になりかねないと判断したからです。そして、中国は武大偉外務次官と回良玉国務院副総理の二人を平壌に派遣し、「6カ国協議への復帰とミサイル実験の凍結」の線で説得に全力をあげました。しかし、北朝鮮側がこれを拒否したため、やむなく更に「第7章」の記述を削除した再々修正案の「非難決議」に賛成したのです。
日米両政府が終始一貫、軍事力行使にまでつながる「国連憲章第7章(平和に対する脅威、平和の破壊)」と制裁に最後まで固執し、力づくで追いつめ北朝鮮を屈服させようとする、場合によっては北朝鮮の現政権を転覆させようとする立場で押し通したのに対して、中国とロシアは、この地域の安定と平和の維持を優先する立場で、北朝鮮への対応が極めて難しい中でも何とか対話に戻そう、行きづまりに追い込まないようにしようと抵抗したのです。このような二つの立場のぶつかり合いと「妥協」としてこの決議は生まれたのです。
このような経過から、文書は拘束力のない「議長声明」ではなく、「国連決議」という形で出されました。しかし、決議案は、「国連憲章第7章」が削除され、経済制裁を加盟国に義務付ける記述も「要求」にトーンダウンされました。
※ただ、事態は単純ではない。「議長声明」の取り下げが、中国銀行の北朝鮮口座凍結、脱北者の米国直行許可とどう関連しているのか。その他一連の中国の対日米「譲歩」が一時的なものなのか、政策転換の現れなのか、現時点では分からない。しかし、7月29日にイラン制裁警告決議が中ロの譲歩を取り付けて5常任理事国と独が合意したことは問題である。イスラエルがレバノンに対する皆殺し戦争をやっている時に、わざわざイラン制裁を決議するなど、ブッシュの思うつぼであろう。
ところが日米両政府は「決議」は拘束力を持つと主張し始めました。その意味で、日米と中ロの対立の妥協の産物としての決議は、米日がさらなる経済制裁と圧力、武力行使への第一歩と考える余地を残しました。すでに米日両国が決議に基づくものとして対北朝鮮の経済制裁の一層の拡大を仕掛けようとしている下では、この決議は極めて危険かつ犯罪的な意味をもっています。
だから、38度線を挟んで直接向かい合う韓国政府がこの決議の危険性を一番強く感じており、今回の国連決議を制裁のための根拠とされることに強い危機感を表明しているのです。
※国連制裁自体が目的になるべきでない、千本部長(YONHAP
NEWS)
http://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20060720-00000032-yonh-kr
[2]北朝鮮をミサイル発射へと追いやったのは、経済的・軍事的に締め上げ、挑発を繰り返してきた米国とそれに追随する日本
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(1) 北朝鮮のミサイル発射は少なくとも2つの政治的目的を持っています。第一に、北朝鮮経済を締め付ける米国の金融制裁を解除させること、そのために米との直接交渉と6カ国協議への復帰を求めること。第二に、米国を中心とする北朝鮮への軍事的包囲網、軍事的恫喝の強化に対する対抗措置です。丁寧に、この半年、1年間の事実経過、まともな一部のマスコミの調査報道を見れば明らかです。
誰が追い詰める側であり、誰が追い詰められる側なのか。誰が脅威を作り出し、誰がそれに利用されているのか。事実関係を抜きに政府与党や一部マスコミの翼賛報道に惑わされてはなりません。ミサイル発射事件以降、扇動的な発言や報道がまかり通っていますが、それらに特徴的なのは、全てミサイル発射から始まっていることです。なぜ北朝鮮がミサイルを発射したのかを明らかにするには、少なくとも半年前の米政府による金融制裁にさかのぼらなければなりません。
(2) 北朝鮮にとって、昨年9月のマカオの銀行(バンコ・デルタ・アジア)に対する米国の金融制裁は極めて大きな打撃となったと言われています。米国は北朝鮮が偽札や麻薬取引のマネーロンダリングを行っているとしてこの銀行の口座を凍結し、米銀との取引を禁止しました。さらに北朝鮮と取引をする銀行には米銀が取引を打ち切ることをちらつかせ、事実上北朝鮮に対する無差別の金融制裁を発動しているのです。その結果、北朝鮮との取引を各国の銀行が自粛し決済業務が麻痺し、北朝鮮の貿易活動そのものが成り立たなくなってきているのです。米国はこの金融制裁を「9・11以降の対テロ戦争」の一環として位置づけて、意図的に仕掛けているのです。
※北朝鮮、米制裁で核協議拒否 マカオの資産“凍結” 日本に助け求める(東京新聞)
http://www.tokyo-np.co.jp/feature/niccho/051119T1545.shtml
北朝鮮は、このマカオ事件以降、金融制裁の解除を求め何度も話し合いを要求してきました。しかし、ブッシュ政権はこれをかたくなに拒絶し突き放してきたのです。ごく一部の事例だけでも以下のものがあります。
−−今年4月、東京で「アジア協調対話」の会合に出席するヒル国務次官補と朝鮮代表の2者会談を日本側がセットしようとした。北朝鮮の代表は会合に期待したが、米国が2者会談を拒否し実現せず。
−−6月1日には北朝鮮がヒル国務次官補の訪朝を正式に要請、2国間協議を呼びかける。しかし、米政府は拒否。この後、北朝鮮はテポドンの発射準備を進める。
−−6月21日にも北朝鮮国連代表が米国との交渉を表明したが、これもまた米政府が無視。
−−7月5日、ことごとく交渉の道を封じられたあげくに北朝鮮がミサイルを発射。
以上の一連の行動は明らかに北朝鮮の側が追い込まれていることを示しています。ミサイル発射はその結果であり、話し合いの呼びかけを拒否されたので、ミサイルを見せて譲歩を迫った、それでも反応しないので発射するしかなかったということです。逆に言えば、2国間協議に応じて話し合いをしていればミサイル発射はなかったとも言えます。米朝交渉が暗礁に乗り上げていることがミサイル発射を生み出したのです。
そもそもブッシュ政権は成立以来、北朝鮮を交渉相手としてはまともに扱って来ませんでした。「対話はするが交渉はしない」「妥協も譲歩もしない」。これがブッシュ政権の一貫した姿勢です。米国はクリントン政権末期に北朝鮮との「平和的共存」を検討しましたが、ブッシュ政権になってからは一貫して「悪の枢軸」「テロ国家」と決めつけ、譲歩させるか政権を転覆させるかの対象としか考えて来なかったのです。共存を前提に話し合いと経済協力を模索する中国・韓国と全く異なるのです。北朝鮮の側の必死の対応を見れば、金融制裁は北朝鮮経済をとことんまで追い詰めていることが分かります。
(3) しかも、北朝鮮に対する圧力と締め付けは、金融制裁だけではありません。実は、今年に入って、北朝鮮を「仮想敵」とした大規模な軍事演習が立て続けに行われてきたのです。北朝鮮が「悪の枢軸」とブッシュ大統領によって名指しされ、現にイラクが直接侵略を受けフセイン政権が崩壊させられたことを考えれば、北朝鮮と目と鼻の先で行われる軍事演習が、いつ現実の侵略に転化するかも分からない、とてつもない脅威を与えることを理解しなければなりません。
※北朝鮮の労働新聞は7月27日、米国の航空母艦エンタープライズ号の釜山寄航について、朝鮮半島での新たな戦争挑発だと非難したのも当然である。
「労働新聞「朝鮮半島で戦争が目前に近づいている」」(朝鮮日報)
http://japanese.chosun.com/site/data/html_dir/2006/07/28/20060728000019.html
@今年3月25日〜31日、米韓合同指揮所訓練(RSOI)が大規模に展開され、北朝鮮を想定した米韓合同上陸演習が行われる。この演習には原子力空母リンカーンがはじめて参加。
※RSOI、フォールイーグル 作戦計画「5027」を適用 南の市民団体 「戦争危機高める対北演習」と非難(朝鮮新報)http://www1.korea-np.co.jp/sinboj/j-2006/04/0604j0401-00001.htm
A米国・オーストラリア・日本・ニュージーランド・シンガポールなど6カ国が、今年4月6日から、太平洋で合同軍事演習を行う。これは、「北朝鮮のミサイル・麻薬取引などを遮断するため」という極めてリアルな事態を想定、米が主導する「大量破壊兵器(WMD)の拡散防止構想(PSI)」に基づく訓練であり、大量破壊兵器を積載した想定の船舶を空中・海上から阻止する訓練はもちろん、オーストラリア北部では地上訓練も行った。
※豪州・日本など6カ国、来月合同軍事演習へ(中央日報)
http://japanese.joins.com/article/article.php?aid=74098&servcode=200§code=200
Bまた、米はハワイ沖で6月23日に、イージス艦の海上配備型迎撃ミサイル(SM3)による迎撃実験を行い、成功させた。しかもこの訓練には、日本のイージス護衛艦「きりしま」が参加。日本のイージス護衛艦が迎撃実験に参加するのは初めて。この訓練では、米海軍のイージス艦がSM3で模擬弾道ミサイルを迎撃し、「きりしま」は模擬弾道ミサイルの航跡を追尾、支援した。
※海自イージス艦が初参加 ハワイ沖の米MD迎撃実験(共同通信)
http://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20060509-00000135-kyodo-soci
Cさらに、6月19日〜26日には、グアム近海で空母キティホーク、ロナルド・レーガン、エイブラハム・リンカーンの3隻を中心とする艦艇30隻と、空軍のB-2爆撃機など航空機280機、海兵隊や沿岸警備隊なども含めた将兵22000人が参加して、空海合同演習“ヴァリアント・シールド2006”を行った。
※Valiant Shield 2006 | Official US
Military
Unclassified Exercise (An Official
U.S.
Military Unclassified Website for Exercise
Valiant Shield 2006)http://www.pacom.mil/exercises/vs2006/index.shtml
Dそして、6月25日から7月29日まで、米日韓など環太平洋の8ヶ国が参加するリムパック2006が強行された。この演習は、朝鮮戦争の開始・停戦日(1950年6月25日
- 1953年7月27日停戦)にあわせた演習期間をとるという極めて挑発的なもので、規模において、ベトナム戦争以来最大といわれる総計2万余の兵力を動員し、米第3艦隊をはじめ50余隻の艦船、百数十機の飛行機が参加、1ヵ月強にわたる期間で、中国や北朝鮮などの潜水艦を想定した対潜哨戒や模擬戦闘を繰り広げている。この演習に派遣されていた海自のイージス護衛艦「きりしま」は、北朝鮮によるミサイル実験に備えて6月末に急遽帰国した。7日には、海自護衛艦「ありあけ」がミサイル発射訓練を行っている。
※海自護衛艦がミサイル訓練 ハワイ沖リムパック(東奥日報)
http://www.toonippo.co.jp/news_kyo/news/20060708010038791.asp
Eさらに北朝鮮に対する軍事的挑発は続く。米空軍所属のB−1、B−2、B−52爆撃機が7月24日からオーストラリアで、北朝鮮、イランなどの核、ミサイル施設攻撃を想定した爆撃訓練を実施。米国の核戦力を統括する戦略軍(司令部ネブラスカ州)傘下の統合司令部は、「ならず者国家」などへの新たな反撃態勢「グローバル・ストライク」構築のため、年末までに、核と通常戦力を一体運用した攻撃を実施できる作戦遂行能力を整えようとしていることが明らかになった。
※北朝鮮に追加制裁検討も 米、中国に政策転換迫る
(共同通信)
http://news.goo.ne.jp/news/kyodo/kokusai/20060721/20060721a3020.html?fr=rk
※新攻撃態勢、年内整備へ 米、北朝鮮封じ込め強化
http://www.toonippo.co.jp/news_kyo/news/20060719010034521.asp(東奥日報)
※北・イラン核施設攻撃想定…米空軍、豪州で爆撃訓練
http://japanese.joins.com/article/article.php?aid=78190&servcode=500§code=500
まさに切れ目がない軍事演習、軍事的恫喝だと分かるでしょう。以上のように、実に半年近くにわたって、北朝鮮は日米韓を中心とする大規模な軍事演習の脅威にさらされ続けていたのです。北朝鮮の祖国平和統一委員会は6月23日、特にリムパック2006の軍事挑発的性格を批判し、「重大な結果」を招くと警告し、無条件の中止を要求していました。7月11日には、北朝鮮の外務次官は、ミサイル発射がリムパックに対抗したものであることを表明しています。
※リムパック演習を非難 祖平統代弁人が談話(朝鮮新報)
http://www1.korea-np.co.jp/sinboj/j-2006/04/0604j0627-00002.htm
※北朝鮮ミサイル:外務次官「リムパックに対抗して発射」(毎日新聞)
http://www.mainichi-msn.co.jp/kokusai/asia/northk/news/20060712ddm007030079000c.html
マスコミでは、連日の新聞トップで北朝鮮のミサイル発射を報じ、朝や昼のワイドショー、ゴールデンタイムのニュースでもそれを大々的に取り上げていました。しかし、米による一連の軍事演習やリムパック2006のこと、そしてミサイル発射がそれに対抗したものであるという北朝鮮の談話などは、全く報じていません。米日の軍事力の大々的な誇示は平和と安全のためで、北朝鮮の側のわずか7発のミサイル発射は平和と安全への重大な脅威と言うのでしょうか。日本のマスコミは、ただ政府与党の「大本営発表」のメガホンになっているだけです。極めて危険な状況だと言えるでしょう。
(4) 麻生外相は5月19日、衆院外務委員会で、北朝鮮のミサイル発射について、「一連の動きをかなり前から知っている」と述べ、一方で「液体燃料の注入は開始されていない」など経過を詳しく把握していることを明らかにしています。その上で麻生氏は、ミサイル発射の準備が明確になった場合について「(2002年の)日朝平壌宣言の不履行になる」と指摘しました。
※テポドン2号発射準備か 麻生氏「動き知っている」(共同通信)
http://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20060519-00000125-kyodo-pol
5月の段階で「かなり前から知っている」のであれば、なぜ早く手を打たないのか、すなわち、リムパック2006を始め一連の軍事演習を中止するようにアメリカに要請しなかったのか、少なくとも日本の自衛隊の不参加の決定を下さなかったのか、なぜ、「きりしま」を軍事演習に参加させた上で、「急遽帰国させた」のか。
政府は、北朝鮮のミサイル発射を思いとどまらせるような外交努力は全く何もしませんでした。やったことは、制裁の準備とマスコミを使って北朝鮮の脅威を煽ることだけでした。北朝鮮の「瀬戸際外交」だけが問題なのではなく、意図的に「瀬戸際外交」に追い込むために、北朝鮮を締め上げ、軍事的にも包囲・挑発を繰り返してきた米政府とそれに追随する日本政府こそ、私たちは批判と非難の対象にしなければならないのです。
[3]北朝鮮のミサイル発射にも反対。軍事力を誇示するやり方は米日両政府の強硬策を利するだけ
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(1) 私たちは、北朝鮮のミサイル発射に反対です。なぜなら、今回のような軍事的手法は米・日政府を利するだけだからです。
第一に、すでに述べたように、ブッシュ政権と小泉=安倍政権が、意図的に対北朝鮮を金融的に封じ込め、軍事的に挑発し追い詰めようと狙い澄ましている現状では、今回のミサイル発射が朝鮮半島と北東アジアの平和と安定に寄与しないばかりか、まんまとその挑発に乗ることになるからです。それは朝鮮半島と東アジアの平和と安定を掘り崩すことを狙う米日両政府の思うつぼです。ブッシュと安倍をはじめ好戦勢力は、待ってたとばかりに軍拡と緊張激化を加速するでしょう。北朝鮮の人民にとっても、周辺諸国人民にとっても何の利益ももたらしません。
第二に、北朝鮮のミサイルモラトリアムは米朝交渉、6カ国協議、日朝交渉を前進させるために北朝鮮が相手国に対する公約として取った措置です。公約の破棄はこれら交渉そのものを白紙に戻しかねないものです。
第三に、北朝鮮のこの間の行動から見てとれることは、北朝鮮が6カ国協議の破産ではなく、そこに戻るために米との直接交渉や対話を求めているということです。今回のミサイル発射はそのための手段とも言われています。しかし、6カ国協議への復帰という政治的目的を達成するために、軍事的手段を用いるというやり方は、逆効果になったことだけは確かです。6カ国協議議長国中国を苦しい立場に追い込み、「太陽政策」をとる韓国政府を追い込むことになりました。6カ国協議の場で、強硬路線を突っ走る米日両政府を追い詰めるために、中ロや韓国と連携するのではなく、逆に中ロや韓国を窮地に陥れる。米日政府にとってこれほど都合の良いことはありません。
要するに、対北朝鮮「融和」政策を前面に打ち出す中国やロシアや韓国の立場に妨害されて、6カ国協議で行き詰まっていた米日政府は、まさに今回の北朝鮮のミサイル発射を千載一遇のチャンスと捉えて、一気に攻勢に打って出ようとしているのです。少なくとも現時点では、対北朝鮮政策の主導権は、中ロ韓から、米日に移ったかに見えます。単純な軍事的対抗一本槍では、衰えたとは言え国際政治でまだ大きな影響力を持つ米国の姑息で巧妙な軍事外交政策に太刀打ちできないのです。
(2) 私たちは、北朝鮮による“ミサイル発射の脅威”は意図的に誇張され虚構に満ちたプロパガンダであると考えます。第一に、北朝鮮によるミサイル発射はいかなる条約や国際法にも違反していないということです。ミサイル実験を禁止する条約などありません。現に北朝鮮は、今回のミサイル発射を「通常の軍事訓練と主張しています。
※北朝鮮、ミサイル発射「通常の軍事訓練」(朝日新聞)
http://news.goo.ne.jp/news/asahi/kokusai/20060706/K2006070604330.html
第二に、多くの冷静な軍事評論家は、テポドン発射だけで戦争に至ることはないし、そのような意図も能力も北朝鮮は持ち合わせていないことを明らかにしています。日本に対しては、発射方向を見れば一目瞭然です。石破元防衛庁長官でさえ、日本政府の対応を「過剰反応をしたと思う。日本に向かってミサイルを発射したのではない。」とその軍事的脅威を否定しています。
同じことは米国でも言えます。当の米政府高官が、「北朝鮮のミサイル発射は『挑発的行為』だが米領土への脅威ではない」と否定しています。
※「北ミサイル」…石破前防衛庁長官が話す日本の本音(中央日報)
http://japanese.joins.com/article/article.php?aid=77843&servcode=500§code=500
※北朝鮮のミサイル発射は「挑発的行為」だが米領土への脅威ではない=米大統領補佐官(ロイター)
http://news.goo.ne.jp/news/reuters/kokusai/20060705/JAPAN-219841.html
(3) しかし、私たち日本の反戦平和運動にとってより根本的に重要なことは、自国政府の軍国主義化・反動化との闘いで前進しない間は、偉そうなことは言えないということです。つまり、小泉政権になってからの日本の軍国主義化・反動化のエスカレーションがあまりにもひどいために、逆に北朝鮮をして、軍事的対応をせざるを得ない状況に日本自身が追い込んでいるということです。それはまた、日本の反戦平和運動の弱さを現しているのです。その意味で、北朝鮮批判は、自己批判抜きにはできないと考えます。
まず第一に、日本軍国主義こそが、日米軍事同盟の新しいエスカレーションこそが、危機と脅威の根元であるということ、私たちが住むこの日本の政府と日米同盟の新しい強化こそが、北朝鮮に対して重大な脅威を与えている根元であるということです。すでに述べた頻発する軍事演習だけでなく、日本列島で急速に進む米軍再編・基地移転の動きがあります。「2+2」は言うまでもなく、米日の軍事戦略は一体化され、軍事力そのものも、基地そのものも、全ての領域で、日米の軍事力が一体化を強めているのです。日米政府は、日本全体を、北朝鮮や中国を含むアジアの「不安定の弧」を想定した戦争の司令塔、出撃基地に変えようとしているのです。
第二に、日本の政治反動のエスカレーションです。日本が、過去の侵略戦争−−朝鮮に対する植民地支配と中国・アジアに対する侵略戦争を美化し正当化するための「靖国参拝」を執拗に企てているということです。小泉首相の参拝強行はその最大の焦点です。さらに、北朝鮮を「仮想敵」とした有事体制づくり、国民保護法体制づくりがあります。それだけではありません。秋の臨時国会では、「防衛省」格上げ法案と自衛隊の海外派兵本体任務化、海外派兵「恒久法」準備があり、教育基本法改悪が最大の目玉になり、憲法9条改悪とそのための国民投票法案の強行が企図されています。韓国や北朝鮮、中国やアジア・太平洋の人々にとって、憲法を改悪することは、明らかに「戦争ができる国」に国家の枠組み自体を根本から変えるということなのです。
[4]軍事大国化と「力の外交」−−「次期総裁候補」安倍氏の異常に危険で戦争挑発的な強硬路線
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(1) 北朝鮮のミサイル発射から国連決議に至る過程の中で、日本政府が取った態度は異様そのものでした。日本政府はこの50年来ではじめて安保理の中で強い自己主張をし、これまでかつてなかった「力の外交」をしました。その狙い目は、北朝鮮に対する最強硬論を振りかざし、何としても「第7章」に基づく国連決議を採択させ、全面的な経済制裁に持ち込むことでした。それを通じて国連内で日本の政治的役割拡大を演出しました。米国と綿密に打ち合わせた上で制裁要求の最先頭に立ったのです。
この過程で終始主導的な役割を果たしたのは、言うまでもなく安倍官房長官です。安倍氏はたとえミサイルが日本列島を飛び越さなくても制裁すると、初めから決めていました。
結局、安倍氏の最強硬路線は安保理決議では後退を余儀なくされました。「絶対下がらない」と言っておきながら押し通せず、米も引き下がらざるを得ないのをみて後退したのです。日本政府は最強硬論を振りかざし「制裁に持ち込むぞ」と脅しただけで、米国と同様、自分自身では何もしませんでした。結局、北朝鮮に対する働きかけはすべて中国に委ねざるを得なかったのです。さらには先制攻撃論の本音をぼろぼろ露呈して、北朝鮮どころか韓国と中国の憤りと当然の警戒、不信を招いたのです。この問題でも中国や韓国と日本との外交協力関係は全く機能しなくなっています。米国なしには何も通用しない、米国頼みだけのデタラメな外交でした。
(2) ところが日本政府は、「強硬に出たから結果が出た」と、非難決議がまるで自分の成果であるかのように演出しています。
安倍氏は9月の自民党総裁選挙で勝つために、ライバルをけ落とし権力を獲得するために北朝鮮のミサイル発射という事態を最大限に利用したのです。安倍氏はハドリー米大統領補佐官と毎日のように電話で綿密に打ち合わせをしながら北朝鮮のミサイル発射を待ちかまえ、ここぞとばかりに意図的に反北朝鮮を煽り、反北朝鮮一色の「北朝鮮政局」を作り出すことで、自分に有利な状況を作ったのです。小泉首相が「郵政政局」を作りだしライバルを黙らせたのと同じやり口です。安倍氏が追求したのは、ライバルである福田氏の出る余地をなくすこと、小泉首相が公式参拝を行った場合にわき起こる靖国批判から世論をそらせることです。このやり口は野党もマスコミも同調することで、今のところ安倍氏の思い通りに進んでいるのです。
安倍氏はすでに次の制裁拡大の準備を開始し始めました。政府は国連安保理決議の第4項に基づきミサイル関連へ資金が流れないようにと称して制裁拡大を準備しています。しかし、この制裁はそんな規模に止まりません。米からブラックリストを入手し、北朝鮮関連の企業や個人をねらい打ちにするとともに、ミサイルや核とは何の関係もない日本から北朝鮮への送金や貿易代金を「ミサイルや核開発に流れない保障はない」と決めつけて事実上全面的な送金停止や北朝鮮関連資産の凍結などの金融制裁の発動を目指しているのです。あるいは改正外為法に基づき、北朝鮮への送金をすべて許可制にすることでその口座を追跡し、日米の金融当局の管理下に押さえ込んで資金が流れないようにしてしまおうとしているのです。
日本政府は、独自の金融制裁を拡大し、現在米が行っている金融制裁と結合することで北朝鮮に打撃を与えようと日米による制裁、「有志連合」による制裁を目指しています。
(3) 北朝鮮のミサイル発射を最大限に利用した点ではブッシュ政権もかわりありません。イラクでの泥沼、何の見通しもない下で、ブッシュの支持率は下がり続け最低レベルの30%台に落ちています。5月には3割を切りました。このままでは11月の中間選挙で共和党が敗北し、政治的な責任を問われかねない状況にブッシュは立たされています。国民の目をイラクの失敗からそらさせる事はブッシュ大統領にとって最優先の課題です。ブッシュもまた権力維持のために北朝鮮の脅威を最大限に宣伝し誇張し利用しているのです。国外の危機を煽り、国内の結束を呼びかけるやり口で大統領と共和党の支持を高めようという見え透いたやり口です。
※ 米大統領支持率30%割れ 政権運営の「危険水域」(共同通信)
http://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20060513-00000128-kyodo-int
[5]ミサイル危機をきっかけに加速するミサイル防衛(MD)、「先制攻撃論」。自治体では「危機管理体制」強化に利用
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(1) 政府の動きの中で最も重大かつ危険なのがMD(ミサイル防衛)と軍事的対抗論の台頭です。まさに待ちかまえていたかのように、米日両政府と米日両軍は、今回のミサイル発射を利用して、まさに本番さながらの予行演習を行いました。日米両軍の探知レーダーが総動員され、アラスカで実験中の米本土防衛用ミサイルまで戦時モードに入りました。日本海には日米2隻づつ4隻のイージス巡洋艦が配備され、ミサイル追跡用のXバンドレーダーが青森県車力(米軍)と千葉(自衛隊)で運用されました。何よりも進んだのは日米のリアルタイムの情報交換の体制です。MDは迎撃システムという意味では「防衛用」です。しかし、このシステムが完成すれば相手の攻撃力を無力化できます。その結果は何の制約もなく相手国を攻撃できる、一層攻撃的な兵器なのです。しかも、もし米国が主張するようにテポドン2が米本土に脅威を与えるミサイルであれば、その迎撃に今回のように全面的に協力することは憲法で禁じられた集団自衛権の行使に他なりません。国民に何一つ知らせることなく日本はここまで米国の軍事力に自衛隊を一体化させているのです。
※日本のミサイル対処、残る課題(朝日新聞)
http://www.asahi.com/special/nuclear/TKY200607060151.html
※ミサイル防衛:日米が協定文書 年内に情報共有へ指針(毎日新聞)
http://www.mainichi-msn.co.jp/today/news/20060720k0000m010155000c.html
(2) また、今回のミサイル発射をテコに、自治体では「危機管理体制」を強化する動きが加速しています。政府とともに、有事法制のもとでの「国民保護体制」の構築を先導してきた自治体などが、危機管理会議を開き、「対応の不備」を指摘し、国民保護体制の整備の口実にしようとしています。
すでに、昨年11月、福井県では、事実上「北朝鮮工作員による原発攻撃」を想定した有事実働訓練が行われ、今年8月からは北海道、茨城、島根などへ順次拡大、全国化しようとしています。防衛庁・自衛隊を中心とした国民保護=有事体制の構築が進められようとしているのです。
※北朝鮮ミサイル:発射受け、危機管理体制を確認 県が委員会開催 /鳥取(毎日新聞)
http://www.mainichi-msn.co.jp/chihou/tottori/archive/news/2006/07/08/20060708ddlk31010329000c.html
※関係機関の連絡強化 北朝鮮ミサイル発射で県が危機管理会議 徳島(徳島新聞)
http://www.topics.or.jp/News/news2006070510.html
※自治体の「有事」 対応課題 北朝鮮ミサイル発射 府県判断分かれる(京都新聞)
http://www.kyoto-np.co.jp/article.php?mid=P2006070900023&genre=A2&area=K00
※北朝鮮ミサイル:県、対応マニュアル作成 職員緊急招集など初動体制を強化 /島根(毎日新聞)
http://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20060720-00000222-mailo-l32
(3) さらに危険なことは、小泉政権内部の名うての右翼政治家達が攻撃兵器を保有すべきだと一斉にわめき始めたことです。いわゆる日本のマスコミで言うところの「適地攻撃論」です。アジアは言うまでもなく、欧米でも、このような曖昧な言い方ではなく「先制攻撃論」として批判の対象となっています。
しかし、日本が攻撃兵器を持たない、持てないというのは憲法の歯止めです。同時に過去に日本が侵略したアジア諸国に対して再び侵略しないと言う公約でもあります。また、「攻撃兵器を持たなければ自衛できない」という主張は、日本が米国の核兵器と軍事力を後ろ盾に圧倒的な軍事力で北朝鮮に対峙していることを隠して、自分自身もまた強力な攻撃力を持ちたいという厚かましい露骨極まりない軍事大国路線に他なりません。
安倍官房長官ら現政権の中心人物達は、今回の事態を利用して、日本を攻撃する徴候が有れば先制攻撃しても自衛の範囲という屁理屈を付けて攻撃兵器の保有に踏み出そうと策動しています。日本は現在装備を導入しつつある空中給油機、衛星誘導爆弾の購入、さらにはF2攻撃機の組み合わせによってこれまでをはるかに凌駕する距離に攻撃をかけることが可能になります。すでにこれだけで北朝鮮のかなりの部分を攻撃範囲に入れることができます。彼らはその上に、1000キロ以上(ノドンクラス)の射程をもつ戦術型巡航ミサイルの米軍からの購入、空母の建造などの選択肢を実現したいと思っているのです。
このような動きに対してかつて日本の侵略と植民地支配の被害を受けたアジア諸国から批判が出るのは当然です。韓国大統領府は「相次いだ『先制攻撃』などの発言は、韓半島はもとより北東アジアの平和の障害となる重大で脅威的な発言」「日本の侵略的な体質が表れたもの」で憂慮の念を禁じえないとの見解を表明しています。ミサイル発射を利用して日本が強硬姿勢を強め、軍事力増強路線にでるほど、周辺諸国の反発は強まらずにはおきません。
※「先制でない」と反論 安倍氏、敵基地攻撃能力で(共同通信)
http://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20060712-00000173-kyodo-pol
※李秘書室長が日本批判、先制攻撃論は軍国主義の表れ
(YONHAP NEWS)
http://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20060721-00000026-yonh-kr
※「日本の先制攻撃論は状況悪化招く」盧武鉉大統領
(YONHAP NEWS)
http://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20060712-00000003-yonh-kr
※【中国】新華社:敵基地先制攻撃論を批判「日本は軽率だ」
(サーチナ・中国情報局)
http://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20060712-00000011-scn-cn
[6]米国の「一極支配」の衰退と没落のもとでの、巻き返し策としての対北朝鮮強硬政策、対イラン制裁政策。必ず新たな行き詰まりと破綻に直面するだろう
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(1) 確かに、イラク戦争・占領の泥沼化で、米国の軍事的・経済的覇権は揺らぎ始めています。しかし、もとより“米一極支配”の後退は自動的に進むわけではありません。それは深刻な対立と闘争を通じて、巻き返しと行き詰まりを繰り返しながらジグザグにしか進まないのです。
今回のブッシュ政権の対北朝鮮の強硬策も、アメリカ帝国主義の「一極支配」の行き詰まりと衰退のもとで、それを何とか巻き返し、軍事的外交的ヘゲモニーを回復することを狙い目とするものです。金融制裁の包囲網を狭めて北朝鮮を追い詰めミサイル発射に追い込み、中ロ韓が主要な役割を果たす6カ国協議での行き詰まりを打開し、ブッシュ政権が北朝鮮政策で主導権を取り戻すことが狙いなのです。
※「武力デモで米国の譲歩を期待するのは錯覚」ヒル次官補…北朝鮮形態変化’発言の背景は?(中央日報)http://japanese.joins.com/article/article.php?aid=78102&servcode=500§code=500
ヒル次官補「米国、北の政権交代ではなく形態変化を追求」(中央日報)http://japanese.joins.com/article/article.php?aid=78086&servcode=500§code=500
※「政権のキャラクター重視」、ライス長官が新外交路線に言及(東亜日報)http://japan.donga.com/srv/service.php3?bicode=060000&biid=2006072585148
しかし、米国の押し出している強硬姿勢にもかかわらず、その中に米国の限界もまた見てとることができます。まず第一に、米軍は大兵力をイラクに取られて軍事的手段で強行突破をできる状況にはとてもありません。軍事力による威嚇で戦争の直前まで行った1994年の核危機とは大きく状況が異なります。軍事力でどうすることもできないから、いわば「話し合うが交渉しない」という態度で時間を稼ぎ、相手が弱るのを待っているのです。
もう一つは中国、韓国という周辺の諸国を自分の思うとおりに従わせることができないことです。北朝鮮をとことん孤立させ、軍事力行使に踏み込むことは、とんでもない被害を受けるこれら諸国が絶対に反対し、全力で抵抗するのです。だから、今回の国連決議にも現れたように国連の枠組みでも戦争につながる「制裁」「第7章」では中国、ロシアの拒否権を押さえ込むことができないのです。実際に北朝鮮に対して軍事行動に踏み切るには、特に同盟国韓国の支持が大前提になりますが、現状では軍事制裁は不可能、軍事制裁に直接つながる経済制裁の本格発動は不可能だというのが常識的な見方でしょう。
ブッシュ政権はかつてない数の国際紛争に当事者として直面しています。とうてい自国だけでは対応できず、同盟国の協力がなければやっていけません。にもかかわらずそれぞれの問題で欧州諸国、ロシア、中国のスタンスは異なるために結束と協力を取り付けることはますます困難です。朝鮮半島という地域では中国の影響力への依存性が高まっており、中国の協力がなければ交渉をまともに進めることさえできないのです。半年前から現在に至る北朝鮮強攻策は、北朝鮮を「突出」させ、逆に中国にその後始末をさせる形で、リーダーシップを取り返す策略なのです。
(2) 北朝鮮の制裁問題は、イランの制裁問題と深く関わっています。ブッシュの巻き返し策は、北朝鮮とイランがワンセットで打ち出され、相互に関連づけられているのです。北朝鮮制裁で「国連憲章第7章」が問題にされた後、半月も経たない間に今度は、イラン制裁をめぐって「第7章制裁」が浮上していることからも明らかです。
ブッシュ政権の思惑を受けて、イラン制裁が大きく動き始めました。国連安保理常任理事国5カ国(米英仏中露)と独は7月28日、31日に予定されるイランの核問題に関する安保理決議採択の際、ウラン濃縮停止を決議で義務付けること、要求に従わない場合には経済制裁について定めた国連憲章第41条に基づいた対応を取ることを申し合わせました。
イスラエルがイランやシリアとの対決を念頭に置いてレバンノに侵略し、ヒズボラを壊滅すると称して、すでに600人以上の市民を殺し(実数はその2倍と言われている)、数万人の負傷者、南部を中心にした徹底的な破壊を繰り返している時に、イスラエル非難の議長声明すら出せない状況のもとで、なぜイラン制裁なのか。中国やロシアの譲歩に疑問を感じずにはおれません。まずは、イスラエルの暴走を止めること、米政府やイスラエルの妨害を廃して、停戦に持ち込むことこそが、中東問題の切迫した焦点であるはずです。イランと中東情勢の行方は全く不透明になってきました。
(3) 対北朝鮮政策でも、対イラン政策でも、ブッシュの巻き返し策は、必ずや失敗に終わるでしょう。“米一極支配”の衰退と没落の趨勢は変わらないでしょう。
−−安保理の採択した非難決議を北朝鮮政府は直ちに拒否しました。北朝鮮は、米国による金融制裁解除が話し合いの前提であると主張しています。米国は、自分は一歩も譲歩せず一方的な要求だけをしておいて、中国や韓国に対して「北朝鮮を説得せよ、でなければ制裁と軍事行動に出るぞ」という脅しで北朝鮮を説得させ譲歩させようとしているのです。これは、卑劣極まりない態度です。北朝鮮問題について、自らは交渉を行わず、対立を煽って軍事大国化と国民統合のための道具としてのみ利用し、交渉はもっぱら中国に押し付けようとしています。自ら交渉に乗り出せば、対立ばかり煽るわけにもいかなくなるからでしょう。
−−また、米国では「北朝鮮非拡散法案」が上院を通過しました。これは、ミサイルと核兵器関連部品、サービス、技術を北朝鮮に移転する外国人らを米政府の物品購入対象と輸出認可対象から除く内容を記しています。つまり、北朝鮮と取引する国内外企業をブラックリストに挙げ、これらが米国と取引できないようにするものです。この法律がどれほど広い領域に網をかぶせるかは、米国が韓国の金剛山観光や開城工業団地の代金までそれに含めようとしていることからも明らかです。日米両政府は、この金融制裁を「有志連合」の形で広げて包囲を強めようという魂胆です。
しかし、この金融制裁が完全な包囲網を作り効果を上げることは中国、ロシア、韓国などの協力なしには不可能ですし、これらの諸国が国連非難決議を事実上大きく越えた、北朝鮮を干上がらせるための制裁に協力するとは思えません。特に日本が北東アジアの情勢をリードすることはできないでしょう。すでに靖国参拝問題で日本外交は行き詰まり状態です。日本の後ろ盾は米国だけです。戦争と混乱を懸念するアジア諸国、中国や韓国が力づく一本槍の傲慢な日本のやり方に協力するはずがないからです。結局は、相手を認めて話し合いと交渉でやるしかないのです。
[7]“北朝鮮政局”にさせないことが肝要。臨時国会に向け、憲法改悪反対、教育基本法改悪反対とともに、北朝鮮制裁策動に反対して闘おう
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(1) 私たちは警鐘を乱打しないわけには行きません。日本政府は、北朝鮮のミサイル発射に乗じて「北朝鮮の脅威」を煽り立て、国際的制裁を主導する強硬姿勢で大騒ぎを演じ、日本国内に北朝鮮敵視一色の、民族排外主義的なムードを作り出そうとしています。そして秋の自民党総裁選から臨時国会に至る政局と絡ませながら、経済金融制裁のエスカレーションと対北朝鮮攻撃力の強化などのさらに露骨な北朝鮮敵視策へと踏み出そうとしているのです。先のペテルブルク・サミットでも、東南アジア諸国連合(ASEAN)地域フォーラム(ARF)でも、日本の政府とマスコミの報道は、北朝鮮制裁一色という異常ぶりでした。
朝鮮半島と北東アジアの平和と安定にとっても、憲法改悪が政治日程にのぼり始めた国内政治の今後の動向にとっても、これほど挑発的で危険きわまりないことはありません。日本の反戦平和運動は、政策的対決点となる憲法改悪、教育基本法改悪などの強行を食い止めるためにも、政府の北朝鮮制裁=封じ込めの強硬路線に反対する闘いを作り上げることが重要です。
政府が対北朝鮮強硬路線に転じる中、拉致問題から国連北朝鮮非難決議、経済制裁へと北朝鮮敵視で暴走する安倍官房長官が急速に支持をあつめています。福田氏の総裁選出馬断念を最後的にだめ押ししたのが、今回の北朝鮮のミサイル発射と安倍氏の北朝鮮強硬策の「成功」であったことは明らかです。9月の本番を迎えるまでもなく、自民党総裁選は、安倍の圧勝で事実上決着しました。幕が開く前に芝居は終わってしまったのです。
※<福田氏不出馬>「北朝鮮ミサイル」「靖国」…決断の決め手(毎日新聞)
http://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20060723-00000005-mai-pol
国内政局の焦点は、秋の臨時国会と来年の参院選に移っています。安倍は、秋の臨時国会そのものについても「北朝鮮政局」を演出する危険性があります。秋の総裁選から臨時国会にむけ、ポスト小泉と次期首相が、冒険主義的な「北朝鮮バッシング」を政策の基本とするような異常事態に直面しようとしています。北朝鮮の脅威を煽り、対立と緊張関係を引き延ばし対北強硬路線で党内と野党を黙らせ、世論を誘導し、自分がヘゲモニーを握ろうと画策しているのです。
このような危険性は、すでに7月15日の国連決議を巡るマスコミや野党の対応にもでています。決議に対して日本の与党だけでなく野党、マスコミもこぞってこれを支持しました。マスコミは、今回のミサイル発射をあたかも日本に対する侵略行為や武力による直接の威嚇でもあったかのようにセンセーショナルに扱い、侵略戦争に直結する国連による経済・軍事的制裁を要求する日本政府と安倍氏の異様な姿勢を全く問題にせず、政府の言うがままの宣伝だけを行いました。
※民主党は小泉政権との区別を意識して「アメリカに委ねすぎ」と言いつつ決議は「強いメッセージを発した」と支持した。共産党は「国際社会の総意が示された」と諸手を挙げて賛成し、社民党も「ミサイル発射を制限するルールがない」ことを指摘しつつ「全会一致で決議したことを歓迎する」としている。安倍氏のパフォーマンスを国会の全政党が支持する異常事態である。
(2) 秋の臨時国会は、先の通常国会で継続審議となった教育基本法改悪法案、共謀罪新設法案、国民投票法案を巡って決戦の場になろうとしています。そのような重要な時期に、「北朝鮮が今にも戦争を仕掛けてくる」「工作員が潜んでいる」ような危機感を国民の中に煽り、それを有事体制構築から海外派兵体制、憲法改悪へと利用する危険性が高いのです。
北朝鮮のミサイル発射をうけて、麻生外相が思わず「金正日に感謝しなければならない」と口を滑らせた事実がそれを示しています。日本国内では、再び「対敵地攻撃能力獲得」など北朝鮮に対する危険な先制攻撃論が台頭し、日本政府は、これを機にMD(ミサイル防衛)の装備導入の前倒し方針を明確にし始めました
※【ミサイル発射】麻生外相が金総書記に感謝したワケ(朝鮮日報)
http://japanese.chosun.com/site/data/html_dir/2006/07/10/20060710000001.html
日本の外交は小泉首相の靖国参拝だけで行き詰まっているのではありません。対北朝鮮外交でも、拉致問題を盾に完全に停止状態に陥っているのです。日朝関係で言えば平壌宣言で取り上げられた拉致事件の解決、植民地に対する謝罪と補償、ミサイルのモラトリアム−−これらは一体のものです。日本政府は拉致問題で北朝鮮が不誠実とすべての対話を切断しています。北朝鮮による拉致事件は断じて許されないことです。しかし、拉致が何にも優先する、拉致問題の解決なしには何も進まないという態度には反対です。戦前の強制連行一つだけをとっても、“拉致”被害を何十倍も上回る被害であり、日本政府がそれに何の解決も示さない以上、北朝鮮にとっては日本が一方的なサボタージュをしているとしか見えません。まずは侵略国と被侵略国の関係として捉え、戦争責任を全うする立場から交渉をする必要があります。ましてや両国がそれぞれ独立国家として対等、平等につきあうことはおろか、北朝鮮だけが一方的に「悪者」であるかのように対応する今のやり方は全くの誤りです。経済制裁=封じ込め路線を放棄し北朝鮮と真剣に交渉するよう、自国政府に強く迫っていく必要があります。
日本の反戦・平和運動は、反北朝鮮キャンペーンを批判し、危機を煽っているのが日米の側であることを宣伝し、歯止めをかけなければなりません。すでに「北朝鮮人権法」なるものが先の通常国会で成立しています。「拉致問題」「ミサイル問題」などを絡めて、「北朝鮮さえ持ち出せば何でもできる、誰でも黙らせる」というような危険性さえあります。私たちは、教育基本法改悪法案、共謀罪新設法案、国民投票法案の3悪法に反対する闘いを、このような“北朝鮮バッシング”のキャンペーンに反対する闘いと結びつけて、力強いものにしなければなりません。“北朝鮮バッシング”との対決抜きに、秋の臨時国会で3悪法と闘うことはできない。これが私たちの立場です。
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