イラクでの人質の解放にあたって−−−−−−−
ファルージャ住民への大虐殺を許すな!
−−米軍はファルージャ、ナジャフの包囲・攻撃をやめ、イラクから撤退せよ。
−−政府・メディアの「自己責任」攻撃をはね返そう。改めて自衛隊撤退の取り組みを強めよう。

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(1) 今井さん、高遠さん、郡山さん、3人の人質が4月14日、無事解放された。4月17日には安田さん、渡辺さんの残る2人も解放された。本当に喜ばしいことである。彼ら全員が劣化ウラン弾反対の仲間、イラク反戦の仲間である。私たち反戦平和運動にとってこれからもっと必要になる人達であるが故に、特別な喜びを感じるものである。

(2) しかし早くも、政府与党、右翼・反動勢力の側は、企業メディアと一緒になって「自己責任だ」「救出費用を負担せよ」「税金泥棒」「自業自得」「わがまま」「自分勝手」「みんなに迷惑をかけたことを謝罪せよ」「渡航自粛の法的措置が必要だ」等々、ありとあらゆる罵詈雑言を浴びせ、一切の責任をこの5人に全面的に転嫁する攻撃を掛けている。特に右翼系新聞・雑誌、右翼系サイトはプライバシーを暴き、脅迫まがいのキャンペーンを張り、彼ら5人の人格をおとしめようとしている。まさにこれら卑劣な誹謗中傷は人権侵害である。

 この攻撃は、解放された5人への攻撃にとどまらない。これまでイラクで地道に活動をしてきたボランティアやNGO、ジャーナリストに対する攻撃であり、イラク戦争と自衛隊派兵に反対し人質の解放のために全力を尽くした反戦運動、市民運動、NGO活動全体に対する攻撃である。自衛隊撤退を求める運動は、まずこの「自己責任」攻撃と闘わねばならない。人質解放の闘いは、この卑劣で反動的・好戦的な「自己責任」キャンペーンに対する闘いとして継続しなければならない。

(3) この攻撃の本質は自衛隊撤退論を封じ込めることにある。しかしそれだけではない。もっと危険なイデオロギーが潜んでいる。「個人や家族は国家に逆らってはならない」「非常時に国策に異を唱えるとは何事か」。それは、国策に異を唱えた者に対するバッシングであり、国家に逆らう者への懲罰を求める“新種の国家主義イデオロギー”である。明らかに日本国民の人命を選別している。国策に従う者と国策を批判する者。自衛隊撤退を求めた人質や家族は「非国民」呼ばわりされ徹底的に攻撃され沈黙を余儀なくされている。逆に先に殺された外交官は「英雄」扱いである。

 しかし、いかなる理由、いかなる状況であろうと、政府が自国民を保護するのは当然の義務である。本当に危険なら「非戦闘地域」という虚構を投げ捨て、自衛隊がイラク特措法に基づいて撤退することで範を示すべきではないのか。また「渡航禁止」という憲法に反する行為が平然と語られている。「人道支援は自衛隊でしかできない」なる暴論が闊歩し始めている。まるで民間NGOが無能・無責任、邪魔であるかのような極論まである。しかし派兵によってNGOや自国民を危険な立場に追い込んだのは誰なのか。自衛隊が「人道支援」再開後にやったことは、日の丸のバッジと缶ジュースを配り、ラッパを吹かしただけである。政府・メディアが高らかに唱う、これが「自衛隊にしかできない人道復興支援」なのか。笑い事では済まされない。

 現地イラク人のため、真の人道のための、武器を持たない民間NGOの活動をけなすのは世界中で日本の政府与党とメディアだけである。命の危険を冒してイラク民衆を救済する民間NGO、命を賭してイラク侵略・占領の真実、米英軍の暴虐、自衛隊派兵のウソ・デタラメを明らかにしようと奮闘するフリー・ジャーナリストの活動は、誇るべきことである。本末転倒とはこのことだ。人質事件で責任を問われるべき、謝罪すべきは小泉政権であろう。

(4) 3人は現在、政府・公安に拉致されたかのような状況にある。事情聴取という形の犯人扱いをされている。政府・公安等から様々なデタラメ情報がリークされ人格攻撃が続いている。帰国時にも一切の公的発言が阻止され、記者会見を開くことも許されなかった。「残って活動する」は袋叩きにあった。これは紛れもなく言論の圧殺である。政府関係者は漏らしている。「ヒーローやヒロインになられたら困る」と。「今回の政府の対応を支持する」とするメディアの世論調査結果が相次いで出ている。まるで「世論は君たちを非難しているぞ」と脅迫するかのように。今までのところ、政府と「挙国一致」化した翼賛メディアの目論見は半ば成功したかに見える。

(5) しかし強さの表れに見える「自己責任」攻撃も、実は弱さの表れである。なぜ政府がここまでヒステリックに人質を非難するのかにも通じる問題である。−−参議院選挙が迫っている。イラク情勢は急変し米英のイラク占領支配体制が根底から揺らぎ始めている。ここで自衛隊撤退論が一気に高まれば、小泉政権が窮地に立たされるからである。このままでは、自衛隊撤退運動と結び付いた人質救出運動に世論が傾きかねない。政府が人質救出に何一つしなかったことが露呈する。自衛隊撤退と対米協調優先に終始し人質を危険に陥れただけであることがばれてしまう。この窮地からの巻き返し策が「自己責任」攻撃なのである。解放された人質とその家族に罵詈雑言を浴びせ非難することで矛先をかわし、言論の自由を封殺し、政府批判を封じたのである。

(6) イラク情勢は急変した。いずれイラク情勢の危機的状況が、「自己責任」攻撃や自衛隊撤退論のタブーを根底から突き崩すであろう。イラク占領体制は瓦解の様相を呈している。スペインは遂に公約通り撤退を始めた。ホンジュラス、ドミニカもこれに続き、イタリアでも7割以上が撤退を求め始めた。侵略し占領している当の米英の世論すらが、イラク政策への批判を強めているのである。
 これに逆行するかのように日本の世論だけが、撤退拒否を支持し小泉政権の支持率が5割を越えているという。国民世論のこの異常と無責任は、しかし真実を報道せず翼賛化した大手メディアの腐敗と堕落の現れでもある。イラク情勢から外れた世論の感覚は、世論形成に決定的役割を果たすマス・メディアの翼賛化の現れでもある。人質事件と同時に「テロに屈するな」で「挙国一致」体制を築き、戦争の真実を更に報道しなくなった大手メディア。彼らに恥という言葉はないのであろうか。


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(1) 問題の核心は、米軍によるファルージャの包囲と無差別攻撃である。ベトナム戦争におけるソンミの大虐殺、パレスチナのジェニンでの大虐殺を上回る“ファルージャの大虐殺”にある。米軍は、わずか1週間でイラク人700人以上を虐殺し、1200人以上を負傷させた。大半は無防備の女性、子供、老人であった。米人権団体は即刻、実態調査を求めたが、米軍側は当然これを拒否した。死体の山は埋葬することも出来ず、積み上がったままと言われている。
 それもこれも、形だけの「政権委譲」でもしなければブッシュの再選が危うくなったからであり、そのため反米・反占領レジスタンスの拠点であるファルージャをせん滅させようとしたからである。

 銃や手製爆弾やRPG(ロケット・ランチャー)しか持たないファルージャ住民にとって、米軍との圧倒的な軍事力格差の下で、そして目の前で家族や住民が無差別に虐殺されていく下で、一体住民はどのようにしてこの残虐極まりない米軍に抵抗すればいいのか。圧倒的な軍事力で殺しまくる米軍の攻撃を阻止するために必死の方策に出て何が悪いのか。それが日本人を初め米英占領に加担する「有志連合」各国人の拘束、人質作戦だった。後がない住民のぎりぎりの自衛策であった。果たしてこれがテロリストか。断じて否である。
 福田官房長官は「いかなる理由があろうと人質を取るというのは許せない」と述べた。大手メディアも一斉に「テロに屈するな」を大合唱した。政府・メディアは米軍による700人もの婦女子の大虐殺は「許せる」のであろうか。それとも「虫けら同然のイラク人は死んでしまえ」と言っているのであろうか。多数の女性や子供を殺して何とも思わない米軍と、米占領軍とは関係ない人質を解放するレジスタンスと、一体どちらが人道的でどちらが非人道的か。どちらがテロリストでどちらがテロリストでないのか、明白である。

 イラク情勢、ファルージャ情勢については、大手メディアは何一つ真実を報道しようとしていない。ファルージャの大虐殺を、大虐殺として報道したメディアは皆無に等しかった。
 今回の事件を「自己責任」に解消することは、現に今米国がイラクで強行する史上まれに見る残虐な無差別大量殺戮から世論の目をそらすもの以外の何もでもない。20万人、30万人の小さな都市に対して加えられている軍事的封鎖を今すぐ解除させねばならない。すでに日本政府は「米軍増派支持」を打ち出した。これは、ファルージャの虐殺をストレートに支持することである。人質救出の運動は、これ以上のファルージャの大量虐殺を阻止する闘いとしても継続して行かねばならない。

(2) メディアが報道しないもう一つの真実がある。それは4月上旬のイラク全土で同時多発的に起こった人民蜂起、武装蜂起である。ファルージャ、ラマディ、バグダッド、ナシリア、カルバラ、クート、クーファ、アマラ、バスラ、モスル等々において、スンニ派の大多数とシーア派の強硬派サドル師支持者が連携して一斉蜂起したのである。シーア派の群衆が、バグダッドから、包囲されたファルージャへ食糧などを持って行進する事態にまで発展した。1920年代の反英武装蜂起を彷彿とさせるとまで言われている。初めから計画されたものかどうかは分からない。しかしそれは紛れもなく反米・反帝・反占領の人民蜂起であった。米軍も日本政府もメディアも、これらを一握りの「過激派」の跳ね上がりとしか捉えていない。

 スペイン軍は撤退を始めた。それは米軍によるナジャフへの軍事突入の切迫を察知したからに他ならない。もしそうなればナジャフの治安維持を担当するスペイン軍は住民虐殺の矢面に立たされるだろう。ホンジュラスもドミニカもこれに続いた。米により作られたイラク軍・警察は自国民と戦うことを拒否した。イラクの軍事占領体制はガタガタになり、治安維持軍の編成は大きく弱体化し再編を余儀なくされている。

 現在の米軍の残虐性は、イラク民衆全体から一斉の反撃を受け始めた米軍が、軍事力で占領支配、植民地支配を維持できなくなった断末魔の狂気である。私たちは、立ち上がったイラク民衆の反米・反帝・反占領の民族解放闘争を断固支持する。そして自衛隊の撤退を実現することによって、この死をも恐れぬ誇り高いイラクの人民民衆への具体的な連帯を勝ち取らねばならない。


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(1) 何が解放の原動力となったのか。日本政府ではない。まるで瞬発力を持って急激に巻き起こり広がった自衛隊撤退要求の反戦運動の力であり、数多くの市民運動やNGOの運動の力である。政府・メディアの「自己責任」攻撃の中で、この原動力はかき消された感があるが、この攻撃をはね返す闘いを再構築している。

 しかし何よりも、彼ら人質になった全員がイラクの民衆のために働き闘ってきたことである。彼らを理解し支えた家族の力も忘れることはできない。家族は苦しい立場の中で矢面に立たされ政府与党や右翼勢力からの誹謗中傷や攻撃を一身に受けながらも、様々なやり方で人命救出と自衛隊撤退を訴えた。政府与党と右翼勢力は、人質−家族−運動の連携を恐れたのである。

 わずか数日で15万名を超える署名が集まった。劣化ウラン反対のネットワーク、NGOやフォト・ジャーナリストの友人たちが家族と一緒に動いた。アルジャジーラへの働きかけ、イラクのテレビへの働きかけ、現地でのビラまき、世界社会フォーラムのNGOを通じた聖職者への働きかけ、アラブ世界やヨーロッパを含め世界中からイラク現地へ殺到したサイバー・アクション、そして連日首相官邸や国会へ押し掛けた反戦市民運動等々。私たちも微力ながらこの運動に参加した。UMRCドラコビッチ博士の再来日の取り組みを人質救出運動と結び付けて行った。−−国際的な反戦運動とNGOのネットワークが彼らを救ったのである。

 しかも従来型の反政府の反戦運動だけではなく、直接現地イラクやアラブ世界の民衆とメディアに働きかける新しい型の反戦運動が、直接的に、解放の仲介者となった聖職者につながったことが決定的役割を果たした。

(2) 小泉政権は何もしなかっただけではない。4月8日、人質になったと同時に「自衛隊撤退をする理由はない」と明言し、最初の段階で人質の命を危険に陥れた。それだけではない。その後も「テロリスト」発言、航空自衛隊の増派、チェイニー副大統領との握手と「緊密な連携」、外相のTV出演での自衛隊賛美等々、最初から最後まで人質を危険にさらし解放を遅らせ続けた。−−政府は人質を見殺しにしようとしたのである。

 野党第一党は「今回の事件と絡めて自衛隊撤退は要求しない」と述べ、「挙国一致」に加わった。「テロ非難」を前に出した野党もあった。

 小泉政権は人質の解放を受けて、まるで自分の功績であるかのように「自衛隊撤退を拒否し毅然とした態度を取ったことが人質を解放させた」「各方面への色んな働きかけが功を奏した」とデマ宣伝を行っている。これは真実とは全く正反対のことである。
 「アメリカに全面依存して問題を解決する」とはどういう事か。米国の解決法は特殊部隊突入による人質拘束者の抹殺しかない。その過程で人質がどうなろうと犯人さえ殺せば成功なのである。日本政府の対米依存こそ、人質の命を奪う最も危険な選択であった。さらに新たな強硬論が出されている。「自衛隊が人質救出に出動せよ」「警察の特殊部隊を送り込め」等々。憲法も法律も主権も人権も全く無視して、一体どこまで軍国主義化・反動化をエスカレートさせるつもりなのか。

(3) 「テロに屈するな」の大合唱をした大手メディアも、「政府の努力」を讃え、解放の原動力が反戦運動の力であったことを完全に無視した。よくもこんなウソ・デタラメを堂々と垂れ流せるものである。もし政府が解放の原動力になったと言うなら、その証拠を具体的に示すべきであろう。一例を挙げるだけで十分だ。解放を仲介した聖職者協会は鋭くこう批判した。「今回の解放は日本の国民への贈り物であって、決して日本政府への贈り物ではない。」「日本政府は何も接触しなかった。」「日本政府は謝辞の言葉もない。」と。圧巻はクベイシ師の語った次の言葉である。「私たちは日本人の命を小泉総理よりも大事にしています。」
 解放の努力を何もせず、ただ自衛隊撤退を拒否し続けただけの政府を礼賛するメディア報道。−−恐ろしい翼賛報道、真実をねじ曲げ、ウソを平気でつく体制ができつつあるのか。今や真実は大手メディアの外にある。反戦運動は、ありとあらゆる手を尽くして民衆に真実を伝える手だてを模索していかねばならない。


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(1) 日本人は解放された。しかし問題は何も解決していない。それどころかイラク情勢は益々緊張の度を強めている。日本の反戦運動の課題は山積している。
@ 何よりもまず第一に、米占領軍による皆殺し作戦を阻止することである。「停戦」や「緊張緩和」が言われているがウソである。「ブッシュ政権の国連主導への政策転換」もウソである。
 米軍は今なおファルージャを完全包囲し、虐殺を続け、増派による本格攻撃の準備を整えている。次にはナジャフが新たな攻撃対象として狙われている。このまま放置すれば次は「ナジャフの大虐殺」が起こるだろう。
 米軍に対して即時無条件の完全な停戦を要求しなければならない。私たちは4月15日、イラク現地の要請を受けて全世界の反戦運動と共に、「ファルージャの大虐殺を許すな」「包囲を解け」「米英軍は撤退せよ」を掲げて米大使館・領事館に抗議行動を行った。この取り組みを継続しなければならない。

A すでに述べたように、解放された人質は、帰国後も、政府と右翼勢力と大手メディアが一体となった形で、「自己責任論」「迷惑論」による攻撃、自己批判と謝罪を求める世論誘導を受けている。私たちは、この攻撃を断固排撃しなければならない。

B なぜ日本人が狙われたのか。なぜ人質になったのか。もう一度真剣に考えるべきである。言うまでもなくイラク戦争を支持し、米英占領軍に参加し加担しているからである。
 なぜ、これまで日本人を友人と感じ好感を持ってきたイラクと中東の民衆に不信と敵意を抱かせるようになったのか。事件の経緯と犯行声明を見れば明らかである。イラクの民衆は米軍の不当な占領とやりたい放題の暴虐に我慢ができないのだ。そしてそれに加担し自衛隊を派兵する日本政府に我慢がならないのだ。
 今回の事件の責任は5人ではなく、大多数の国民の意見を無視し、憲法を蹂躙してまで自衛隊の派兵を強行した小泉首相とその政権にある。私たちはあくまでも自国政府に対して自衛隊の撤退を求めて闘いを続行しなければならない。

(2) 今回の日本の人質解放運動、自衛隊撤退要求運動は、政府に依存せず、政府の妨害をはね除けることを通じて、全く予想もしなかった“新しい運動形態”を生み出した。イラク民衆、アラブの民衆との具体的な連帯である。
 私たちはこれまでにも増してイラク民衆の反米・反占領闘争との連帯を追求しなければならない。何としても自衛隊を撤退させ、米英の占領・植民地体制を根底から揺るがせることで、イラク民衆の武装レジスタンス闘争、反米・反帝の民族解放闘争への連帯を勝ち取らねばならない。

2004年4月20日
アメリカの戦争拡大と日本の有事法制に反対する署名事務局