陸上自衛隊による組織ぐるみの改憲案提出を糾弾する! 自衛隊=“軍隊の政治化”は芽の内につみ取るべきだ!
◎陸自の組織的関与は明らか。大野防衛庁長官は辞任せよ。
◎小泉首相は事件を容認する「問題ない」発言を直ちに撤回せよ。
◎政府自民党は改憲作業を即刻中止せよ。
◎事件の全容解明。小泉政権の責任の徹底追及を。
◎政府自民党、防衛庁へFAX・メールで抗議しよう。


(1) 極めて危険で恐ろしい事件が起こりました。“自衛隊の政治化”、“軍隊の政治活動”につながる、すなわち「軍部の独走・暴走」と言われた戦前・戦中の過ちを再び繰り返しかねない重大事件です。陸上自衛隊の中枢、陸幕防衛部員である自衛隊幹部が、憲法改悪のための草案をまとめ、自民党の中谷元・憲法改正案起草委員長に提出していたことが発覚したのです。しかもそれは組織ぐるみの犯行です。現役自衛官、組織としての自衛隊の憲法違反行動としては「三矢研究」事件以来の重大事件であると言えます。事の本質から言えば、内閣が吹っ飛ぶくらいの重大事件なのです。しかし政府・自民党と自衛隊、マス・メディアは大急ぎで事の重大さを覆い隠し、もみ消そうとしています。とにかく声を上げましょう!
※陸自改憲案の波紋広がる 野党反発に政府が防戦(共同通信)
http://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20041206-00000158-kyodo-pol

 報道によれば内容は、安全保障分野での改憲の考え方やその実現で可能になる具体的施策を記した「憲法改正案」と、安全保障、司法、国民の権利義務に関して具体的な条文を記した「憲法草案」の2つに分かれていたと伝えられています。
 まず「草案」では、「国の防衛のために軍隊を設置する」と明記。さらに「集団的自衛権を行使することができる」としています。また首相が「緊急事態の際は国家緊急事態を布告」することや、「すべての国民は国防の義務を負う」などの条文が盛り込まれています。また、軍事裁判所を念頭に置いた「特別裁判所」の設置にも言及しています。
 次に「改正案」では、「集団的自衛権、並びに国連の集団的措置(集団安全保障)に基づく武力行使の容認」について「必要不可欠」と強調。これらを実現すれば「日本が攻撃された場合に米国等の防衛(日本以外を標的とするミサイルの迎撃を含む)」「有志連合軍に参加しての戦闘行動(アフガン、イラク等)」が可能になるとしています。
※「自民改憲素案 海外での武力行使容認 『自衛軍』設置を明記」(東京新聞)
http://www.tokyo-np.co.jp/00/sei/20041117/eve_____sei_____002.shtml
※「陸自幹部が改憲案作成 文民統制逸脱の恐れ」(東京新聞)
http://www.tokyo-np.co.jp/00/sei/20041205/mng_____sei_____003.shtml
※<陸自幹部>憲法改正案作成 中谷・改憲案起草委座長が要請(毎日新聞)
http://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20041205-00000070-mai-pol

 このように今回の憲法改悪「草案」は、日本を侵略国家に仕立て上げ、自衛隊を自由自在にグローバルに海外派兵し、「人道復興支援」というカモフラージュをも投げ捨て、実際に米軍と一緒に直接的な武力行使が出来るようにするための根本的な改悪です。すでに政府与党が強行した有事法制などの国家総動員体制や、テロ特措法、イラク特措法など自衛隊を侵略軍化するだけでは物足りないという訳です。一言すれば、戦前・戦中のような軍国主義日本の復活、姿形を変えた大日本帝国憲法の復活を目論むものなのです。
 現行憲法、とりわけその第9条は、朝鮮・中国などアジア太平洋の人々、そして日本の国民を殺戮と破壊のどん底に突き落としたかつての日本軍国主義の復活を阻止するために、内外の数え切れない多数の犠牲の上に策定された貴重な遺産です。従って、憲法第9条を破棄するということは、日本軍国主義を復活させること、日本が再び侵略戦争をすることを意味します。つまり軍国主義復活、戦争国家日本の復活に、軍隊である自衛隊が直接関与したのです。決して曖昧に終わらせてはなりません。

(2) 憲法第9条を全面否定する上述のような案を自民党の改憲作業をすすめる機関に提出した行為は、言うまでもなく「政治が軍事を監督する文民統制違反」です。また公務員が絶対的に遵守すべき憲法尊重義務違反という重大な犯罪行為であり、「政治的行為の制限」を定めた自衛隊法61条に抵触し、防衛庁法第23条が定めた「幕僚幹部の所管事務」の逸脱にあたる違法行為です。
 なぜ日本ではこのように何重にも自衛隊に制約を課しているのか。なぜ公務員一般より自衛隊により憲法遵守、法律遵守の義務を課しているのか、なぜ厳しいシビリアン・コントロールの枠組みを作ってきたのか。それは旧日本軍が陸海空それぞれに政治活動をエスカレートさせ、右翼勢力や政治家らと結託して国政を牛耳ったことによって、日本を歯止めの利かない侵略戦争と軍国主義国家へ突き落としてしまったという反省があるからです。

 今回の幹部自衛官=陸自の組織ぐるみの改憲研究は、制服組復権の大きな流れの一部です。先に制服組は、防衛庁内局(背広組)に対して力関係の逆転を狙う意見書を提出し、防衛計画大綱改定をめぐっても強硬姿勢を前に出しました。非常に危険な動きです。そして更にこの制服組の発言権の増大は、小泉政権になってからの軍国主義化、自衛隊の海外派兵、対北朝鮮強硬姿勢、中国の原潜追尾、とりわけイラク派兵を通じて調子に乗った結果です。軍隊の行動が一旦歯止めが外れるとどんな大変な事態になるか。私たちはもう一度過去の忌まわしい侵略戦争と植民地支配の時代を思い起こすべきです。
※「自衛隊幹部が改憲案/「政治化」は国民の不信買う」 (河北日報) http://www.kahoku.co.jp/shasetsu/2004/12/20041207s01.htm

(3) 自民党、政府、メディアなどでは、事態を矮小化して伝えています。すなわち「当該自衛官」の個人的逸脱行為だと言うのです。しかし表に出たのがたとえ一人であったとしても、組織的にやったと考えるべきです。“カギ”になるのはこの2佐の組織上の部局と地位です。彼は陸上幕僚監部防衛部防衛課防衛班という自衛隊の制服組織にあっては「政治部」と言われる自衛隊内部の政治中枢に勤務しています。中谷・元防衛長官の友人がたまたま協力したもの、あるいは一自衛隊幹部の私的な研究ではありません。防衛政策全般、軍事戦略全般を扱う、自衛隊の中で最も政治的な部分、将来改憲に関わってくるとすれば直接関係してくる当該部局、自民党や極右勢力と決して直接結び付いてはいけない部局の幹部が改憲の草案を作成したということが大問題なのです。もちろん当該幹部と当該部局は、それが自衛隊=軍の側からの強烈な意見表明であり、クーデター的な政治的発言であることを、当然知っていたはずです。
※この該当幹部2佐の所属の「防衛課」というのがキーポイントである。いわば実力部隊自衛隊の中の政治部なのである。かつて盧溝橋事件当時の旧日本軍参謀本部の構成で言えば、この中で第1部(作戦課)に当たるのが防衛部防衛課である。部長は石原莞爾少将、作戦課長は武藤章大佐など、侵略戦争のシナリオを書き指揮した蒼々たる人物の名がある。http://www9.plala.or.jp/kikujiroh/ring/sanboh_honbu.html
※現在の防衛庁の組織・制度の概要 http://search.e-gov.go.jp/servlet/Organization?class=1050&objcd=100170&dispgrp=0110

(4) ところが小泉首相はこの問題に関し、驚くべき発言を行いました。曰く、「シビリアンコントロール(文民統制)とは関係ないだろう。(憲法改正は)国会で決めるのですから。まだ、党で議論している最中ですから、どういう考えがいいか専門家の意見を聞くことは悪いことではない」(6日、首相官邸で記者団に)と。
 許せない発言です。これでは首相が率先して憲法尊重義務違反を犯しているも同然です。政権の長、与党の総裁がこのような体たらくでは、自衛官出身の元防衛庁長官で自民党幹部の中谷元氏が自衛官と結託して改憲を企てる、いわば一種のクーデターを起こしても何ら不思議でないという、恐るべき事態が到来しているのです。私たちは小泉首相になってから憲法や法律が系統的に意図的に無視され、ないがしろにされ、空洞化されていることに危機感を覚えます。こんなデタラメを続ければ、本当に大変なことになります。
 小泉首相の責任は重大です。首相はまず違憲・違法行為を正当化し・容認する自分の発言を撤回すべきです。大野防衛庁長官の辞任、作成を依頼した中谷・元防衛庁長官、関与した幹部自衛官と組織的に関与した自衛隊のトップの責任を厳しく追及し処分すべきです。
※陸自幹部改憲案、文民統制と関係ない=小泉首相(時事通信)
http://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20041206-00000773-jij-pol
※専門家の意見聴取悪くない 陸自改憲案、問題視せず(共同通信)
http://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20041206-00000073-kyodo-pol

(5) そして何よりも、かかる違憲・違法事件を起こしてまでも、憲法の平和条項を破棄しようとする政府・自民党の改憲作業全体を即刻中止すべきです。事件発覚後自民党の動きはにわかに慌ただしくなりました。自民党憲法調査会がまとめた憲法改正草案大綱の素案は事実上撤回される方向です。党執行部は、素案をもとに議論を進める場として設けた憲法改正案起草委員会に代わり、新機関で議論をやり直すとしています。大綱の取りまとめは来年5月以降にずれ込むとも伝えられています。事件を大慌てでもみ消し、うやむやに終わらせるためです。決して彼らの思惑通りにさせてはなりません。
 また自民党による大慌てのもみ消し工作は、この事件が自衛隊派遣延長問題に波及することを恐れたからでもあります。政府与党は明日にも派遣延長を閣議決定するつもりです。それに新「防衛大綱」、「次期防」の決定が続きます。これ以上の日本軍国主義のエスカレーションを何としても阻止しなければなりません。
 だからこそ私たちは今一度立ち止まり、現役自衛官、陸自が組織ぐるみで出した憲法改悪草案を糾弾し、小泉政権の責任を追及しなければならないのです。自衛隊のイラク派遣延長反対、新「防衛大綱」「次期防」閣議決定阻止と結び付けて、事件の全容解明と責任追及の声を上げましょう。日本軍国主義が奔流となる前に、その個々の動きに、あきらめず、ねばり強く一つ一つ反対の声を上げていきましょう。

2004年12月8日
アメリカの戦争拡大と日本の有事法制に反対する署名事務局


■抗議方法■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■

★「許すな!憲法改悪・市民連絡会」高田健さんが「抗議声明」への賛同をつのっておられます。すでに私たち署名事務局は賛同しました。個人・団体を問わずできるだけ多くの賛同をお願いします。第一次締め切りは12月6日午後3時(6日午後6時に防衛庁に届けます)、第二次締め切りは12月末日です。連絡先はFAX03−3221−2558 メールはkenpou@vc-net.ne.jp です。

******以下転載***********

陸自幹部と自民党幹部が結託して改憲案の作成を推進したことに抗議し、関係者の罷免と防衛庁長官、小泉首相・総裁の辞任を求める共同声明

 12月5日のマスコミ報道によると、陸上自衛隊幹部が作成した改憲案が自民党の改憲作業をすすめる機関に提出され、その案はすべて自民党の発表した改憲草案大綱に取り入れられていたことが判明しました。現役自衛官(陸上幕僚監部防衛部防衛課防衛班所属二等陸佐)による憲法違反の行動としては、「三矢研究」とよばれた有事法制構想研究・作成事件以来、それに匹敵するほどの極めて重大な問題です。
 自民党憲法調査会(保岡興治会長)の憲法改正案起草委員会(中谷元座長)は11月17日、自衛軍の設置や集団的自衛権の行使および海外での武力行使、国家緊急事態規定、国民の国防の責務などを内容とする「憲法改正草案大綱原案(たたき台)」を公表し、明文改憲にむけて具体的にその一歩を進めました。しかし、天皇の元首規定や愛国心強要などまでも含んだ危険な改憲草案大綱は各界からの厳しい批判を浴びました。また自民党内からも参院自民党が「参院軽視」との批判を出したのをはじめ「策定経過が不透明」などの批判が続出、自民党執行部は4日、この大綱原案を白紙撤回する方針を決め、それに先立つ2日には起草委員会とは別にあらたな草案策定の組織「憲法改正国民運動推進本部」(本部長は小泉総裁か、武部幹事長を予定)を設置する方針だと報道されたばかりです。これら自民党内のあわただしい経過をみると、今回明らかになった事件は、すでに自民党執行部が知っていた可能性があると疑うに十分です。
 報道によれば、10月下旬に中谷座長に提出された陸自幹部の改憲草案は「憲法改正草案」とのタイトルがつけられ、@侵略戦争の否定、A集団安全保障、B軍隊の設置・権限、C国防軍の指揮監督、D国家緊急事態、E司法権、F特別裁判所、G国民の国防義務―の8項目について条文を列記。この草案とは別に、安全保障関連で「盛り込むべき事項」を記載した文書も作成したといわれます。こうした憲法改正作業に現職自衛官幹部が関与したことは、マスコミが指摘する「政治が軍事を監督するシビリアンコントロール(文民統制)違反」はもとより、自衛官の憲法尊重擁護義務違反事件として重大な問題です。
 自衛隊はその憲法上の是非はさておいても、軍事的暴力の行使が自衛隊法などで認められた特別の集団であり、その幹部の政治的発言はとりわけ重大な意味を持っており、課せられた憲法尊重擁護義務は特別に重いものです。改憲案作成作業が公務中であるとないとにかかわらず、このような活動は幹部自衛官にとって断じて許されるべきものではありません。ふりかえれば、現行憲法の平和主義の改定は1963年の三矢作戦計画(統合防衛図上研究実施計画)以来、防衛庁制服組の念願でした。いま、イラクのサマワに陸上自衛隊などが派遣され、多国籍軍に組み入れられたもとで、12月14日の派兵期限切れを前に派兵期間の延長が画策されているときに、こうした事件が暴露されたのは決して偶然ではありません。こともあろうに自衛官出身の元防衛庁長官で自民党幹部の中谷元氏らがこうした自衛官と結託して改憲を企てているということは、一種のクーデター的行為であり、到底容認すべからざるものです。おりしも、来年からの通常国会には与党から改憲のための国会法改定や改憲国民投票法案などの改憲手続き法が提出されようとしており、与党が改憲への動きを強めようとしku椏「い詭霎茲任后・・w)「戦争をしない国」から「戦争をする国」への転換と明文改憲の動きが強まってきている中、制服組と自民党幹部が結託して進めたこうした危険な動きは芽のうちにつみ取る必要があります。
 日本国憲法の平和主義の根幹を揺るがす今回の事件に対し、私たちは心からの怒りを込めて抗議し、関係諸機関と自民党執行部がただちにこの事件の真相を糾明し、公表することを要求します。あわせて日本国憲法第99条の憲法尊重擁護義務違反事件として、同二等陸佐をはじめとする防衛庁関係者の罷免、大野功統防衛庁長官の辞任を要求し、同時にこのような事件を二度と繰り返さないためにも小泉純一郎首相・自民党総裁の責任を問い、辞職を要求するものです。以上、市民団体・個人の連名を以て要求します。

2004年12月
許すな!憲法改悪・市民連絡会(以下連名)

 なお、自民党改憲草案大綱への批判はhttp://www4.vc-net.ne.jp/~kenpou/で「私と憲法」43号掲載の論文をお読みください。

高田健 許すな!憲法改悪・市民連絡会
TEL03−3221−4668 FAX03−3221−2558
東京都千代田区三崎町2−21ー6ー302 kenpou@vc-net.ne.jp

*******以上転載************


★FAX・メールで政府・自衛隊に抗議しましよう。

● 小泉首相
 〒100-0014 千代田区永田町2-3-1 内閣総理大臣官邸
  首相官邸 Fax: 03-3581-3883 Tel: 03-3581-0101/03-5253-2111
  WEBサイト投稿ページ: http://www.kantei.go.jp/jp/forms/goiken.html


● 大野防衛庁長官
 〒162-8801 東京都新宿区市谷本村町5-1 防衛庁
 Tel 03-3508-7525 FAX 03-3502-5174 Eメール info@jda.go.jp


●自由民主党
 〒100-8910 東京都千代田区永田町1-11-23
  TEL:03-3581-6211 (代)
  WEBサイト投稿ページ: http://www.jimin.jp/jimin/main/mono.html 「自民党に物申す」