ナパーム弾・クラスター爆弾
アメリカは非人道兵器の使用を直ちに中止せよ!


 アメリカが使用している非人道兵器は劣化ウラン弾だけではない。すでに、ナパーム弾を使用した疑いが強い。また、クラスター爆弾の使用を米軍当局者は認めている。さらに今後、アフガニスタンでも大量に使用された燃料気化爆弾も使用される可能性が大きい。すでにアメリカは、イラク戦争に先立って、イラクを「衝撃と畏怖」せしめることを目的に、史上最大の精密誘導型の気化爆弾MOABの投下実験をおこなっている。
 これらの悪魔的な兵器の使用が戦争犯罪であることは明らかである。ハーグ条約第22条は、不必要な苦痛を与える兵器は禁止するとの原則を謳っている。またジュネーブ条約は、無差別攻撃を禁止している。国連人権小委員会は、1996年8月、「核・化学・生物兵器・気化爆弾・ナパーム弾・クラスター爆弾・劣化ウラン兵器の製造・使用の禁止を求める決議」を賛成15、反対1(もちろん反対はアメリカのみ)で採択している。
 国際的に使用が禁じられているような非人道兵器の使用は、「大量破壊兵器の廃棄」というアメリカの掲げる戦争目的のいかがわしさを物語っている。この戦争の不正義性と、侵略性を象徴的に示している。


■米英側にとっての戦況の悪化がますます非人道兵器の使用を加速する危険。
 イラクの人々がアメリカを解放者として迎え、アメリカ軍の強大さの前にフセイン政権とイラク軍は震え上がり自壊する。ブッシュ政権が当初描いていた、このような幻想の戦略は破綻し、長期化は避けられない状況となった。アメリカはアフガニスタンでも、これらの非人道兵器を大量使用した。イラクでも、戦況が思惑通りに進まず、追い込まれる下、なりふりかまわなくなった米軍が非人道兵器の使用をエスカレートさせる危険性は高い。
 ナパーム弾は、広範囲を焼き尽くし、無差別に多くの人命を奪う。生き残ったとしても、高度の火傷のため深刻な後遺症が残る。クラスター爆弾は、子爆弾をまき散らし広範囲の人間を無差別に殺傷する。更に時限爆弾となって触れた人間をことごとく殺傷するため、戦闘終了後も土地を使用不能にし、民間人を殺傷し続ける。
 これら非人道兵器の使用は絶対に許されない。非人道兵器の使用を直ちに中止せよ。劣化ウラン弾、クラスター爆弾、燃料気化爆弾(MOAB)、ナパーム弾を使うなという批判の声をアメリカに突きつけよう。


■米軍はイラク南部サフワンの攻撃でナパーム弾を使用した

ナパーム弾によるケロイド
 22日付けのシドニー・モーニング・ヘラルド紙(電子版)は、イラク南部サフワンでの攻撃に従軍している記者からのルポを掲載している。同ルポは「死体がいたるとことにころがっている」という米軍将校の言葉を紹介し、南部での悲惨な現状を伝えている。さらに米軍将校の話として、海軍機がナパーム弾を投下していることを明らかにした(しかしワシントンの海軍スポークスマンはナパーム弾の使用については否定している)。また同じ内容を、CNNも伝えている。

 ナパーム弾は、朝鮮戦争時に開発された高性能の焼夷弾である。ベトナム戦争では、ゲリラ兵を村ごと焼き払うために大量に使用された。ナパームとはその名(Napalm)の通り、ナフサ、パーム油、燐、ガソリン、アルミニウムなどの可燃剤をゲル化させたものを充填した爆弾である。現在では、ベンゼン、ガソリンおよびポリスチレンを混合したものが焼夷剤となっている。(1988年以降、アメリカ軍はナパーム弾の廃棄を進めているとしている)。
 1991年の湾岸戦争でもイラク兵を塹壕ごと焼き払うために750ポンド(340kg)のナパーム弾(MK77)が使用された。これが投下されると、広範な地域が一瞬にして炎の海となる。さらに化学剤を使っているため消火することが非常に困難で、炎に呑み込まれた人間や建造物、車輌等は徹底的に燃やし尽くされてしまう。皮膚にほんの少しの焼夷剤の飛沫が付着しただけでも、水等によってこれを消火することはできず、重篤な火傷を残す。焼死を免れた場合でも、高度や火傷によるケロイド等、深刻な後遺症が残ってしまう。このような惨たらしい兵器をアメリが軍が使った疑いは濃い。断固抗議する。

※ Dead bodies are everywhere - The Sydney Morning Herald March 22 2003
  http://www.smh.com.au/articles/2003/03/21/1047749944836.html
※Savidge: Protecting Iraq's oil supply - CNN March 22, 2003
  http://edition.cnn.com/2003/WORLD/meast/03/21/otsc.irq.savidge/
※国防総省によるナパーム使用否定 - Pentagon denies report on napalm
  http://www.theage.com.au/articles/2003/03/23/1048354475977.html
※アメリカ軍が配備しているナパーム弾−FAS
  http://www.fas.org/man/dod-101/sys/dumb/mk77.htm


■米軍はカルバラでの攻撃でクラスター爆弾を使用した

キティホーク上のクラスター爆弾(ロイター)
 毎日新聞によれば、キティホークの海軍当局者は25日、カルバラでのクラスター爆弾使用をはじめて認めた。また23日付けのロイターは、イラク情報省の話として、バスラで77人の市民が殺され、そのほとんどがクラスター爆弾によって殺されたと伝えている。
 湾岸戦争以降、ユーゴ・コソボ、アフガンに続いて、四度目の使用である。クラスター爆弾=非人道兵器の使用に断固として抗議する。
 ディスペンサー爆弾、集束爆弾とも呼ばれるクラスター爆弾は、地表近くで炸裂し、その胴体部分に詰め込まれているたくさんの子爆弾を、広範囲にまき散らす。対装甲車両・対人殺傷を目的とするクラスター爆弾の場合、子爆弾は散布後直ちに爆発、無数の金属片を飛散させ、周囲の車両をずたずたに引き裂き、人間を肉片に変える。精密誘導兵器が、ピンポイントの破壊をその目的とするのとは対照的に、広域を面として制圧するために、無差別の破壊・殺害を行うことがクラスター爆弾の特徴である。対空設備などごく限られたターゲットはトマホークや精密誘導爆弾によって破壊するが、軍事キャンプや基地、戦闘車輌等を広域に破壊するためには、クラスター爆弾が使われる。

代表的なクラスター爆弾 CBU-87
 小爆弾のタイプは、対装甲車両から、対人殺傷用、あるいは対人・対戦車地雷まで用途に合わせて多様な組み合わせが存在する。対装甲・対人用の場合は、散布直後に爆発するが、子爆弾が地雷の場合は、広い地域を一瞬にして地雷原に変えてしまう。より悪質である。また、復旧作業を困難にするため、通常爆弾に地雷や時限爆弾を混ぜることも行われている。
 湾岸戦争やアフガニスタン戦争で多用されたCBU-87(および改良型のCBU-103)は多目的用途の子爆弾を202個内蔵しており、1発の爆弾で、およそ400m×200mの範囲内の対象物をことごとく破壊する。また、CBU-89というクラスター爆弾(湾岸・アフガンで使われた)は、対戦車地雷と対人地雷をばらまくタイプの爆弾である。この爆弾1発でおよそ13万平米が地雷原と化す。

まき散らされる子爆弾
 通常爆弾であっても、すべてが爆発するわけではなく、沼地や砂地に落下したものなど、全子爆弾の5%〜12%が不発弾として残り、これらの眠り爆弾は、ちょっとした衝撃などで爆発する(あまりにも不発弾率が高いので、遅延殺傷・地雷的効果を狙って故意に不発化されているのではないかとも言われている)。
 湾岸では3000万個の子爆弾がばらまかれた。不発率を5%とすると、150万個の不発弾が残存していることになる。この不発弾によって湾岸戦争後、1600人が死亡し、2500人が負傷した。コソボ紛争では、千発以上のクラスター爆弾が使われ、2〜3万個の不発弾が残っているとされている。コソボでも戦後500人が死傷し、さらに被害が拡大している。国際赤十字は、子爆弾によって、コソボで多くの人々が戦後も犠牲になり続けているという悲惨な実態を告発している。アフガニスタンへの戦争でも、湾岸やコソボでの場合とまったく同じく、ピンポイント爆撃に続いて、広域・無差別なクラスター爆弾による破壊と殺傷が行われた。空爆開始から1ヶ月間で350発が投下されたと言われており、同じペースで投下されたとすると、1000発以上が使用されたと考えられる。1発のクラスター爆弾は約200個の子爆弾をばらまく。そのうち約5%(最低限の見積もり)が不発弾であるとすると、少なくとも1万発の子爆弾がアフガニスタンの各所にまき散らされたことになる。地雷化した子爆弾による被害がすでに出始めており、今後この不発弾=「死の遺産」は、アフガニスタンの人々を殺傷し続けるであろう。
 クラスター爆弾はまず第一に、無差別の破壊と殺害を目的とし、すさまじい殺傷効果を広範囲に及ぼす兵器である。第二に戦闘終了後も長期に渡って、国土を荒廃させ、何の罪もない民間人を殺傷し続ける兵器である。明らかな非人道兵器である。

地雷と化して人々を苦しめる子爆弾
 国際赤十字は昨年度、クラスター爆弾の使用禁止を国際社会に要求した。対人地雷・非人道兵器反対に取り組む諸団体も、湾岸やユーゴでのアメリカによるクラスター爆弾使用に対して抗議の声を上げてきた。アメリカ独りだけが反対に回った1996年の国連人権委員会の決議において、核兵器、劣化ウラン、生物化学兵器等と並んでクラスター爆弾は、非人道兵器として使用禁止の対象に挙げられている。
 しかしアメリカはコソボ攻撃に対する報告書の中で、クラスター爆弾を「広域目標に対する有効な兵器」と位置づけ、その使用をやめないばかりか、今回のイラク戦争でも使用を開始している。アメリカは、その後遺症の深刻さを知りながら、イラク兵士をバラバラに引き裂き、戦闘終結後もイラク人民を苦しめ続ける兵器をまき散らそうとしているのである。推定150万個もの「眠り爆弾」をすでにばらまかれたイラクの地に再び「地雷」を降らそうとしているのである。絶対に許してはならない。

※<イラク戦争>米空母艦載機が集束爆弾を投下 バグダッド南部−毎日 3月26日13時
  http://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20030326-00001061-mai-int
 http://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20030326-00003061-mai-int
※Iraqi Minister Says 77 Civilians Killed in Basra−Sun Mar 23, 4:13
  http://story.news.yahoo.com/news?tmpl=story&u=/nm/20030323/ts_nm/iraq_basra_dc_12


2003年3月27日
アメリカの戦争拡大と日本の有事法制に反対する署名事務局