これが「解放」か! これが「自由」か!
深刻かつ重大な人道的危機を生み出した米英のイラク侵略 |
■これが「解放」なのでしょうか。これが「自由」なのでしょうか。−−ブッシュとブレアの侵略戦争はイラクの民衆に深刻かつ重大な人道的危機をもたらしています。
以下に紹介するのは、デニス・ハリディ氏とのインタビューです。氏はかつて国連の対イラク経済制裁=「石油・食糧交換プログラム」の下で人道調整局のトップを勤めた人ですが、子どもたちが経済制裁の下でバタバタと倒れ死んでいく様を黙って見ておれなくなり、制裁を弾劾し抗議の辞職をした信念の人です。人道援助の道一筋という人物がイラクの現状をどう見ているのか。現状を理解する助けになると思い抄訳しました。
インタビューは、首都バグダッドの陥落の2日前ですが、現在も基本的には状況が変わっていません。米英は石油省や油田はがっちり軍事力で守り包囲していますが、全土で一気に広がっている略奪、暴動、放火、民族間衝突等々は放置しています。一部ではわざと略奪を煽ったり黙認しているとさえ言われています。「やはり治安は重要だ」「治安回復まで米英軍にぜひ残留して欲しい」という要望を出させる狙いがあるのかも知れません。
■ハリディ氏は飲料水問題、水問題から起こる疾病や伝染病の危険を強調しています。人道的危機には更に、医療の崩壊により促進されています。今なお続く米英の空爆、残党狩りと称する一般市民への弾圧や発砲事件の続発により死亡者や負傷者がどんどん増えているのに、全く対応できないのです。病院が破壊され略奪され停電により機能停止状態に追い込まれた現在、医療という基本的な社会的サービスが壊滅状況に陥っています。これも「解放」「自由」というのでしょうか。ラムズフェルドに言わせれば、「死ぬ自由」「病気になる自由」「負傷する自由」「略奪する自由」を得たのだから喜ばなくてはならないというのでしょうか。
■「戦争は終わった」「次は復興支援だ」という侵略者の“戦争プロパガンダ”を真正面から批判し続けねばなりません。徹底的に破壊し尽くしておいて、何が「復興」ですか。殺すだけ殺して何が「解放」ですか。冗談もほどほどにして欲しいものです。
特にイラクの人口構成は日本などと違い、14歳以下の子どもが全体の41%を占めています。水危機、医療崩壊は、子どもたちに真っ先に打撃を与えるのです。私たちが関心を失い目を離せば、この子どもらは見殺しにされてしまいます。
私たちの反戦平和の取り組みは、人道的危機を許さない闘いとして継続していく必要があります。
※「Iraqi People Facing Humanitarian
Crisis−An
Interview With Dennis Halliday」by
Dennis
Halliday and Scott Harris Between
the Lines
April 07, 2003 ZNet
http://www.zmag.org/content/showarticle.cfm?SectionID=36&ItemID=3408
2003年4月16日
アメリカの戦争拡大と日本の有事法制に反対する署名事務局
人道的危機に直面するイラク人民
−−デニス・ハリデイへのインタビュー(要約)
デニス・ハリデイ、スコット・ハリス
「行間社」(ビットゥウィーン・ザ・ライン)
2003年4月7日
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英米軍がバクダッドへの戦闘に向け、南部地域をコントロールするための戦闘中に、バスラのような大都市、それより小さな町の市民は水、食糧、薬品の極端な不足に直面している。しかし、アメリカ軍は自軍が援助配分をコントロールすると主張し、いくつかの国際的援助組織はアメリカの侵略と同一視されるのを望まず、参加に消極的である。占領地域の多くが不安定である事実は、ペンタゴン自身による物資配給を困難で混沌としたものにしている。
世界中の援助機関は、ブッシュが国連機関の監視下で人道主義的援助努力を行い、イラクで経験のある個人を使うよう要請してきた。戦後を見越し、安保理は最近「石油食糧交換プログラム」のコントロールを国連事務総長に移す投票をした。
「行間社」の質問でスコット・ハリスは、デニス・ハリデイ(1998年の経済制裁に抗議して辞職する前にはイラクの「石油食糧プログラム」を管理する国連前副議長)と語りあった。ハリデイはイラク人民が直面している人道主義的危機と、人民への即座の援助を提供すべき米英の法的責務を論議している。
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デニス・ハリデイ:国連憲章第7条の下の決議のない、国連の枠の外側の米英の露骨な侵略からなるこの戦争は、不必要だ。国連の二常任理事国が憲章、国際法に違反し、機関の大多数の支持なしに戦争を始めるのは異常な冒険だ。
もちろん戦争を止めさせ、人道主義的危機を終えさせることが大事である。ジュネーブ協定の下での責任を果たさず、水、食糧の必要、コントロール下のイラク人民の他の要求に見合うことを米英がしないので。
「行間社」:デニス・ハリデイ、戦闘一週間後イラク人民が現在直面している人道主義的危機のアセスメントを与えることができるか?
デニス・ハリデイ:2月、3月にバクダッドにいた時、政府は基本的食糧供給の3ないし4ヶ月を配給していたが、家族の基本的要求にとどまっていた。起こったことはおそらく、より貧しい家族は新鮮な野菜等を買うために食糧を売っていたということである。バスラではまだこれらの供給を受け取っているけれど、現在食糧が不足しているのではなかろうか。2,3日前イラク貿易相がなおバスラの人々に食糧を送ろうとしていると述べていると理解している。
食糧以外の緊急の危機は水問題である。イラクは自然の飲料水のない国の一つである。処理、分配が必要であり、システム、インフラ、電力が必要である。戦闘中のシステム崩壊はことに子どもたちに壊滅的である。
イラク南部では5歳以下の子どもの25%かそれ以上の子どもがすでに栄養失調であると、ユニセフがまさに最近報じた。その年で栄養失調で汚水を飲めば、下痢を起こす。赤痢や他の深刻な病気、水中伝染病は絶対的殺人者である。その結果、バクダッド南部のウム・カスル、ナシリア、バスラ、ナジャフあるいはカルバラでは幾百万人が圧倒的な緊急の危機に直面していると考える。
「行間社」:自国内の占領地域で支配下に置かれるイラク市民の数が増えている時、米英のような侵略軍の責任について、国際法やジュネーブ協定がどう述べているか、要約できるか?
デニス・ハリデイ:ジュネーブ協定はきわめて特殊である。それは市民に対する人道主義的配慮への責任と、降伏した軍人への責任が、侵略した人々、戦闘員(今回は米英軍)にあることを確立している。水に関して記述することの困難さ、反撃、戦闘状態下で水と食糧を人々に運ぶ困難さがあるので、イラク南部の米軍に対してそれは挑戦を強いている。
しかし責任はある。義務は1年に及ぶという第4条からすれば、責任は戦闘自体を越えて進展する。アメリカが他の資金源を探すことはアメリカの予算とも、この関係での他の責任とも、関係ないことである。
「行間社」:米英が自己の義務を果たし、この戦争で水、食糧、薬の配給に優先権を与えるという兆候を見いだせるか?
デニス・ハリデイ:テレビ報道に関わらず、我々が見ているのはプロパガンダと言わねばならぬのが悲しい。ウム・カスルに入る船を確保したというので誇大に宣伝。通常のやり方でなく、略奪にさえ見えた。それでもトラックの背後から、食糧を求めてやってきてパックや水を持っていく活動的な若者へ配給だ。しかし、孤児、シングル・マザー、家族に食糧がわたる保証はない。
米英によって押しつけられた恐ろしい状態下で、乞うことを強いられるイラク人民には屈辱である。悲劇である。それを見ることは恐ろしく、イラクのアラブ人だけでなく、全社会にとって屈辱である。
「行間社」:デニス・ハリデイ、イラクへのアメリカの戦争に反発してテロリストが攻撃する明白な恐れがあるように思える。逆にブッシュ政権は、イラクでのこの戦争はアメリカをより安全なものにするものだと基本的には述べる。しかし、これがアメリカとその政策――ことに中東における、ことにイスラエルをめぐる、今度はイラクでのこの戦争――へのすでに絶望的にまでなった憎悪を煽るという人もいる。この戦争はアメリカをより安全な場所にするために実行したと、ブッシュ政権は最後に主張できると思うか?
デニス・ハリデイ:いいや、そうは思えない。私の見解では、9月11日の先制攻撃は一プロセスの始まりだったし、ブッシュがアフガニスタンで、イラクとアルカイダをくっつけてイラクで応えた暴力的なやり方は間違っている。これは多くの人々をテロリスト組織に、場合によってはアルカイダに送り込むやり方だ。不満、怒りと貧困、そして無視、さらにビン・ラディンのように考える人物ならアラブ社会を転覆させると言うところの干渉を持続させるやり方だ。
しかし、ブッシュ自身のものとも比較しうる、善と悪、黒と白という類の思考は、事を行うには救世主的な、きわめて単純なやり方である。それは危険であり、我々はキリスト教の存在、西欧思考、中東での彼らの文化とイスラム的価値の悪化を永続させることでテロリストの関わりの過程を助けている。我々にはそこで何ができるのか?中東において能力も場もない我々は、この場での植民地の過去から何も学ばなかったのか?
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