第2部 このままうやむやにしてはならない。小泉首相の開戦支持責任・派兵責任。何よりも国民を騙した責任を。
小泉首相は「大量破壊兵器がある」と国民をペテンにかけてイラク侵略を支持し自衛隊派兵まで強行した責任を取れ!
◎誰が大量破壊兵器の情報ねつ造、「報告書」改ざんを命じたのか。米英同様、日本でもウソ・でっち上げの真相究明を!
◎小泉首相はイラク国民、日本国民に謝罪し、ブッシュのイラク侵略・占領支持を撤回せよ!
◎増派などもってのほか。イラク特措法を廃止し自衛隊を即刻撤退させよ!

========= 目  次  =========
T.はじめに−−国民をペテンにかけ騙し続けた責任は重い。誰が情報のねつ造、「報告書」の改ざんを命じたのか。徹底した真相究明を!
(1)イラク大量破壊兵器の問題は米国の問題だけではない。日本の軍国主義復活のテコになった日本政治の決定的問題。
(2)「朝日新聞」がこっそり報道した“スキャンダル”−−小泉政権は「ない」を知りながら「イラク大量破壊兵器脅威論」をでっち上げた!情報ねつ造、「報告書」改ざんを命じた責任者を処罰すべき。
(3)対北朝鮮先制攻撃や米の先制攻撃戦争戦略=「対テロ戦争」にも直結。−−日本を“謀略国家”にしないためにもここで徹底追及が必要。

U.「大量破壊兵器なし」の“現実”を前に小泉首相の屁理屈・詭弁全てが破綻。窮地に立ち、“ウソの上塗り”と“弁解”しかなくなった首相。
(1)破綻その1:「俺が勘違いしたのもフセインが悪い」?−−無責任の極み。全部ひとのせいにする小泉首相。
(2)破綻その2:「俺は大量破壊兵器だけなんて言ってない」?−−「大量破壊兵器保有」から「国連決議違反」へのすり替え図る。見苦しいウソの上塗り。
(3)破綻その3:明らかに中心だった「大量破壊兵器」。煽るに煽った「脅威の切迫性」。−−呆れ返るウソの上塗り。
(4)破綻その4:「ないという現実」の前に「ある」を前提にした首相の詭弁・強弁は完全に破綻した。

V.誤った戦争報道の反省もせず未だにイラク侵略・占領を鼓舞・激励する堕落し腐敗しきった日本のマス・メディア。小泉政権の開戦責任、派兵責任を不問に付す。
(1)米のメディアより悪質な恐ろしい翼賛体質。自浄作用も反省もない日本のマス・メディア。
(2)今なおイラク侵略・占領、大量破壊と大量殺戮を鼓舞し激励する企業メディアの翼賛体制と“大本営発表”。“ジャーナリズムの死”を体現する読売・産経・日経。
(3)謀略・ねつ造でイラク侵略に突き進んだブッシュを「善意」で解釈しようとする毎日新聞。イラク侵略に反対しながら結局は「水に流そう」と主張する朝日新聞。

W.ブッシュはイラクでの一切の軍事行動を今すぐ止めよ! 占領支配をやめ即時無条件に撤退せよ! 自衛隊もイラクから今すぐ撤退せよ!
(1)『ドルファー最終報告』で幕引きにさせてはならない。米軍による大量殺戮・大量破壊の即刻中止。米英・多国籍軍の即時無条件撤退。
(2)イラク特措法の「前提」「目的」が間違っていたのである。イラク特措法を廃止し自衛隊を即刻無条件に撤退させよ。

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T.はじめに−−国民をペテンにかけ騙し続けた責任は重い。誰が情報のねつ造、「報告書」の改ざんを命じたのか。徹底した真相究明を!

(1)イラク大量破壊兵器の問題は米国の問題だけではない。日本の軍国主義復活のテコになった日本政治の決定的問題。
 小泉首相は、イラク開戦前からブッシュの太鼓持ちとして異様なほど忠誠ぶりを発揮してきた。開戦の前年の9月からイラク問題の舞台が国連に移ってからは、ブッシュにへつらい、「イラク大量破壊兵器」「イラクの脅威」を世界中に吹聴して回り、安保理決議1441の採択から翌年のブッシュの「最後通牒」に至るまで、ドラや太鼓を叩いて回った。
 とりわけ米英が開戦直前の2月〜3月にかけて新決議=「武力行使容認決議」採択を目指して熾烈な多数派工作をやった際には、日本のODA、経済援助をちらつかせて安保理非常任理事国の途上国を露骨に脅してまで反戦派・査察継続派を切り崩し、ブッシュ支持の応援団を買って出たのである。

 もちろん開戦と同時にいち早くブッシュを支持し、その後は憲法の平和条項を破り「イラク特措法」を強引に成立させ、戦後初めてイラクに海外派兵を強行した。自衛隊を正真正銘の軍隊=侵略軍に変容させ、日本軍国主義を新しい段階にエスカレートさせた。実はこの特措法の大前提はイラクが保有する大量破壊兵器の「武装解除」であった。
 日本の国民は、ブッシュのイラク侵略にもイラクへの自衛隊派兵にも大多数が反対だった。この国内世論を踏みにじり、憲法違反を犯してまで強行したブッシュ支持とイラク派兵の、小泉政権自らが掲げた唯一最大の「根拠」「大義」が、「イラクの大量破壊兵器保有」だったのである。「大量破壊兵器」が、小泉による日米同盟最優先の軍事外交政策の大転換の口実、テコにされたのだ。

 従ってイラクの大量破壊兵器問題は米国の問題だけではない。日本の問題である。自発的対米従属同盟推進のテコ、戦後史を画する軍事外交政策の転換、新しい軍国主義復活のテコになったのである。首相は謝りさえしないが、謝って済む問題でもない。誤った判断そのものを取り消すべきだし、日米同盟最優先の軍事外交政策全体を見直すべきだし、国民をペテンにかけ続けている小泉首相の辞任、小泉内閣の総辞職に値する、そういう決定的に重要な問題なのである。
 にもかかわらず臨時国会での野党第一党民主党の質問は全く迫力を欠いている。まるで「謝れば済む」ような攻め方しかやっていない。曰く「少なくとも事実認識は間違っていたと認めるべきではないか」云々。(10月18日衆院予算委での前原議員の質問)
 マス・メディアも、これを機に自衛隊撤退を要求する論陣をどこも張っていない。タガが外れたのであろうか。窮地に陥っているはずの小泉首相が追い詰められない状況がある。


(2)「朝日新聞」がこっそり報道した“スキャンダル”−−小泉政権は「ない」を知りながら「イラク大量破壊兵器脅威論」をでっち上げた!情報ねつ造、「報告書」改ざんを命じた責任者を処罰すべき。
 朝日新聞はとんでもないスクープを放った。ただし一般記事に埋もれさせる形で。それは、同紙2004年9月25日の連載「インテリジェンス情報力 自衛隊50年D 大量破壊兵器 『米支持』ありきの報告書」である。記事は、ブッシュ政権やブレア政権と同様、小泉首相や政府閣僚が、大量破壊兵器に関する情報をねつ造したことを暴露した。要旨は以下の通りである。
−−9.11の後、 外務省が在外公館に「イラクに大量破壊兵器があるかどうか、確認せよ」という訓令を出した。
−−これに防衛駐在官らも加わり、米国防総省の国防情報局(DIA)や英情報本部(DIS)と接触した。
−−そして、開戦の数ヶ月前になって「防衛庁情報本部の分析部」に、「イラクが大量破壊兵器を保有している可能性を報告せよ」という指示が下った。
−−米軍からのイラク情報、欧米や中東の防衛駐在官が収集した情報、報道資料、インターネットで集めた海外の論文等々を参考に防衛庁情報本部が作成した「報告書」は当初、「保有していると言われているが、明確な証拠はない」と結論づけた
−−しかし「防衛庁情報本部の上層部」が「米国がイラクの大量破壊兵器保有の疑惑をアピールしているときに、この結論は何だ」と激怒し、「報告書」を検討する会議で、幹部の一人は自らペンを取って「保有する可能性は否定できない」という趣旨に書き改めた。
−−一方、小泉首相の関心は、大量破壊兵器の有無にさほど向けられていなかった。彼の関心は、イラク開戦時の「緊急声明」であり、そのために「事務的なことはいい。米国の行動を支持すると言える材料をできる限り持ってきてくれ。あとは自分で考える」と指示した。
−−その結果、首相のもとには、イラン・イラク戦争や、クルド人に対するイラクの化学兵器の使用、大量破壊兵器の威力を示すデータが届けられた。

 最初に結論ありきの情報収集だった。明白な情報操作、情報ねつ造の一大スキャンダルである。なぜ朝日は一面トップで正々堂々とすっぱ抜き、小泉首相の開戦責任を追及しなかったのか。大量破壊兵器に関する政府の情報操作は米国でも英国でもスキャンダルになった。他社はなぜ報道すらしないのか。責任追及をしないのか。「防衛庁情報本部の上層部」とはいったい誰なのか。検討会議で「報告書」の改ざんをやった「幹部」とは一体誰なのか。これが事実ならば、「12年間、国連の決議を無視し、大量破壊兵器の破棄をしてこなかった」「毒ガスなどの化学兵器、炭疽菌などの生物兵器が独裁者やテロリストによって使われたら一大事」もすべて、「最初から結論ありき」で、イラク戦争支持のために行った“でっち上げ”ということになる。この記事によれば、少なくとも情報操作の首謀者の一人は「米国の情報を支持すると言える材料を出来る限り持ってこい」と命じた小泉首相自身である。
※政府防衛庁はイラク大量破壊兵器に関する情報を収集したというが、なぜUNSCOMやUNMOVICという国連の公式の調査を無視したのか。それはUNSCOMの現場責任者スコット・リッター氏や、UNSCOM委員長だったエケウス氏らが、その存在を疑問視していたからである。『イラク戦争:スコット・リッターの証言−ブッシュ政権が隠したい真実』(星川淳訳、合同出版)には、UNSCOMでのスコット・リッター氏の活動と評価が書かれている。(署名事務局の紹介記事


(3)対北朝鮮先制攻撃や米の先制攻撃戦争戦略=「対テロ戦争」にも直結。−−日本を“謀略国家”にしないためにもここで徹底追及が必要。
 米英では、一国の政治指導者、そのトップがウソ・でっち上げで戦争を始めたこと、そのために自国兵士が犠牲になっていることが政治問題になっている。だからドルファー調査団やケイ調査団などが大量破壊兵器の捜索を行わざるを得なくなったのである。だから情報機関の情報の質を巡って調査委員会が設置されたのである。
 上記報道の通りであれば、日本でも外務省、防衛駐在官、防衛庁情報本部、首相らが関与して、イラク大量破壊兵器に関する調査・検討を行ったことになる。そして「あるという明確な証拠はない」との「当初報告書」を「ある」にねつ造したことになる。野党とメディアはなぜ黙っているのか。早急に真相究明と責任者の処罰をやるべきである。

 第1部第X章で述べたように、先制攻撃戦争に陰謀や謀略は付き物である。なぜなら攻撃されてもいないのに相手を先に攻撃するのだから、絶えず「大義」「正当性」が問題になる。そこで相手を叩くために陰謀や謀略が必要になるのである。イラクの場合、大量破壊兵器だった。
 ところが日本の場合、遠いイラクのこととのんびり構えているわけには行かない。北朝鮮(朝鮮民主主義人民共和国)問題である。政府防衛庁や自民党防衛族はしきりに北朝鮮に対する先制攻撃を主張している。先に成立した有事法でも先制攻撃に対応する「予測事態」に対処できるというとんでもない条項が盛り込まれた。すでにテロ特措法、イラク特措法で米軍の世界戦略に組み込まれている自衛隊は「海外派兵恒久法」で、更に危険なグローバル派兵の先兵にされようとしている。米の基本戦略は先制攻撃戦争=「対テロ戦争」である。次の「防衛大綱」にはこの米の基本戦略がそのまま組み込まれるという。
 このまま日本が対米追随を続ければ本当に北朝鮮に先制攻撃戦争を仕掛けるということになりかねない。先制攻撃国家、侵略国家、謀略国家になりかねない。ここで踏ん張ってイラク大量破壊兵器ねつ造問題のケジメを付けなければ大変なことになるだろう。



U.「大量破壊兵器なし」の“現実”を前に小泉首相の屁理屈・詭弁全てが破綻。窮地に立ち、“ウソの上塗り”と“弁解”しかなくなった首相。

(1)破綻その1:「俺が勘違いしたのもフセインが悪い」?−−無責任の極み。全部ひとのせいにする小泉首相。
 2004年10月14日、小泉首相は『ドルファー最終報告』が明らかになってからの衆院本会議の国会答弁において何と言ったか。野党が「今もイラクに大量破壊兵器があると考えているのか」と追及したのに対し次のように答えた。「イラクが過去に大量破壊兵器を使用した事実や、国連査察団の指摘している数々の未解決の問題などを鑑みれば、大量破壊兵器があると想定するに足る理由があったと考えている。」
 つまり、俺が間違ったのは、フセインが“前科者”(過去に大量破壊兵器を使った)だったからだし、国連査察団を迷わし犯罪者のようなフリをしたからだ。俺のせいじゃない。お前のせいだ。だから間違いを認めないし誤りもしない。小泉首相はこう言ったのである。無責任の典型だ。無責任な者は己の責任を全部人のせいにする。こんな人物が未だに日本の運命を握り、軍事外交政策を決する首相の立場にいるから恐ろしい。

 私たちは、小泉首相が開戦当時、なぜあると思ってしまったのか、勘違いしてしまったのかの弁解を聞いているのではない。なかったという事実を認定するかどうかを聞いているのである。大量破壊兵器がなかったことを公式に最終的に確定した『ドルファー最終報告』をまずもって認めるのかどうかを問いただしているのである。これが最低条件である。

この弁解によれば、小泉首相が「ある」と判断した「根拠」が2つ示されている。
−−「イラクが過去に大量破壊兵器を使用した事実」。
 しかしイラクが使用したと言われているのは1988年以前、イラン・イラク戦争においてのものである。これは15年も経った2003年3月に大量破壊兵器があると判断する理由にならないし、15年も経った2003年3月に戦争をしかける理由にもならない。
−−「国連査察団の指摘している数々の未解決の問題」。
 これは「アルミ管」や「移動式トレーラー」「タジ化学工場」などを指すと思われる。しかしこれこそ、『ドルファー最終報告』でウソが発覚した疑惑であり、今回ねつ造が暴露された「証拠」なのである。
 このように、15年以上も前の過去の出来事とでっち上げの証拠を根拠を「あると想定するに足る理由」だと言い張り「仕方がなかった」では話にならない。『ドルファー最終報告』によって「ないことが確定」した現時点で、小泉首相はまずその事実を受け入れるべきである。


(2)破綻その2:「俺は大量破壊兵器だけなんて言ってない」?−−「大量破壊兵器保有」から「国連決議違反」へのすり替え図る。見苦しいウソの上塗り。
 何と驚くことに、挙げ句の果ては「俺は大量破壊兵器だけなんて言っていない」と問題をすり替えようとする小泉首相。10月18日、「前提は国連決議だ。大量破壊兵器だけが開戦支持の理由ではない。」と答え、まるで「大量破壊兵器の保有」じゃなく「国連決議違反」が、さも中心であるかのようなウソをついたのである。その前10月14日の国会答弁では、「対イラク戦争武力行使を支持したのは、イラクが12年にわたり累次の国連安保理決議に違反し続けたこと、また国際社会が与えた平和的解決の機会を生かそうとしなかった、という認識によるものだ。わたしの判断は適切だった。」と語っている。『ドルファー最終報告』が出された直後の10月7日にも「国連決議にのっとって支持した」「イラクが国連決議に従えば戦争は起こっていなかった」と述べている。
※首相は最近「2003年3月20日の内閣総理大臣談話」を強調しているようだ。なぜなら「談話」本文には、「我が国は、これまで一貫して、イラクの大量破壊兵器の問題については、国際協調の下に平和的解決を目指し、独自の外交努力を続けてまいりました。しかしながら、イラクは、12年間にわたり、17本に及ぶ国連安保理決議に違反し続けてきました。イラクは、国際社会が与えた平和的解決の機会を一切活かそうとせず、最後の最後まで国際社会の真摯な努力に応えようとしませんでした。」として、国連決議違反が「支持根拠」であるかのようになっているからだ。しかし小細工はその<質疑応答>でばれているではないか。首相は、記者の質問に答えて大量破壊兵器脅威論をぶっているのだ。「内閣総理大臣談話 平成15年3月20日閣議決定」http://www.kantei.go.jp/jp/koizumispeech/2003/03/18interview.html

 小泉首相よ。もうこれ以上ウソをついてはならない。こんな子供騙しがいつまで通用すると考えているのか。首相は「大量破壊兵器保有」だけじゃなく「国連決議違反」も開戦支持理由だと強弁する。しかし首相によれば「国連決議違反」とは大量破壊兵器を隠し持っているのにそれを差し出さないことである。つまり「大量破壊兵器保有」と「国連決議違反」、この2つの理由はあれかこれかではなく、同じもの、一つのものなのである。「あるのに出さない」ことが「国連決議違反」。だが、『ドルファー最終報告』は「ない」と最終的に断定した。「ないもの」は「出せない」。イラクは「国連決議違反」のしようもないではないか。

 首相は当然、この2つを別物のように言うのはごまかしだということを知っている。彼自身、これまで何度も「大量破壊兵器保有」と「国連決議違反」を同時に、同じ趣旨で語っていたからだ。証拠はいくらでもある。
−−「イラクは12年間、国連の決議を無視し、大量破壊兵器の破棄をしてこなかったのです。」(2003年3月20日メールマガジン)http://www.kantei.go.jp/jp/m-magazine/backnumber/2003/0320.html
−−「問題の核心は、イラクが自ら保有する大量破壊兵器、生物兵器、化学兵器を廃棄しようとしないこと、国連の査察に無条件、無制限に協力しようとしないところにあります。(2003年3月27日メールマガジン)http://www.kantei.go.jp/jp/m-magazine/backnumber/2003/0327.html 等々。

 そもそもイラクの国連決議違反など一切なかった。「国連決議違反」は首相のでっち上げである。イラクが国連決議1441を受け入れてから米英が開戦に踏み切るまでの事実経過を具体的にたどれば一目瞭然だ。首相は一体何をさして「国連決議違反」を言い張るのか。具体的に「違反」の具体的中身を答えるべきである。
−−そもそも違反どころか屈辱を堪え忍んで遵守したのである。イラクは2002年11月13日、本来なら開戦を控えてイラク側の政府の動向、軍の動向を知られたくないにも関わらず、国家主権の侵害である理不尽な「強制査察」を盛り込んだ安保理決議1441を受け入れ、誠実に対応したのである。
−−2002年12月8日には、大量破壊兵器を保有していない証拠=「自主申告書」を国連に提出した。ここでイラク政府は「大量破壊兵器を持っていない」と申告した上で、12,000nに及ぶ膨大な証拠資料を取り揃え提出した。しかも嫌がらせのような超短期間で。
−−2003年1月9日、2月28日、3月7日の、UNMOVICとIAEAの評価報告・中間報告において、UNMOVICとIAEA自身がイラク側の査察への全面協力を肯定的に評価している。査察の実務でもイラクは誠実に対応し決議違反はなかった。
−−2003年2〜3月。米英(スペインと日本もこれに入る)は、安保理決議1441違反の「重大な結果を招く」の部分を理由に、開戦に突っ込もうとしたが、安保理多数派に拒絶され、1441違反を諦め、「新決議」採択に方針転換した。しかしこれも安保理多数を獲得できず、断念したのである。すなわち米英は国連決議違反を開戦根拠にすることを断念し、米英単独開戦に突入したのである。
※米英は安保理決議1441に従って査察が進むのを恐れていた。なぜか?開戦できなくなるからだ。最終段階でブリックスUNMOVIC委員長は「もう少し時間があれば」と答えたという。これは米英にとっては余計なことなのだ。「大量破壊兵器はない」という結論が出るからだ。それまでも国連査察を妨害し横やりを入れてきたのは米英の方である。かつてのUNSCOM国連査察における白を黒と言いくるめる「国連査察イラク非協力」は、NHK・BS「イラク・査察の真実」制作:ファイブ・リバース・プロダクション(アメリカ 2001年)に見事にフォローされている。このドキュメンタリーは、米の介入で国連査察が陰謀集団に変わっていった経緯を当時の関係者の証言で綴ったものである。(署名事務局の紹介記事

 アナン国連事務総長自身が今年9月半ば、イラク戦争は「われわれの見地からも、国連憲章上からも違法だ」とした上で、「2度目の決議案が必要だった」と、2003年11月国連決議1441が開戦の理由にならないことを明確にし、イラク戦争を始めるためには別の決議が必要だったと言っている。この「別の決議」こそ、米英が最後まで採択を追求し、最後的に断念せざるを得なかった武力行使決議なのである。査察継続=開戦反対派が多数派を形成し、安保理で2/3の多数をとることが出来ないと判断し、米英は採択を断念したのである。開戦の直前には、決議1441について、「査察プロセスの放棄も武力行使も正当化するものは何もない」とフランス、ロシア、ドイツが共同宣言を発表した。エルバラダイIAEA事務総長やブリックスUNMOVIC委員長は、「査察継続」を求める見解を相次いで表明した。従って「国連決議にのっとって支持した」はウソである。
※ここでアナン事務総長は正論を言っているのである。国際法上、「大量破壊兵器の保有」だけではイラク開戦の「大義」「根拠」にはならない。従って米英や日本の主張にはそもそも無理がある。本来的に国連憲章と国際法に則れば、イラク開戦を正当化できるのは、イラクが2003年3月20日の時点において、米英の「自衛権発動」を正当化するような米英に対する侵略行為、あるいは軍事的脅迫行為を働いた場合のみである。言うまでもなくそんな状況はこれっぽっちもなかった。むしろイラク周辺に大軍を展開し侵略をせんとしていたのは米英の方だった。
※川口外相(当時)は今年9月、アナン事務総長の国連決議1441の解釈に対して「国連決議の有義的解釈は安保理が行う」とし、アナン氏の「違法」論を否定した。しかし、安保理常任理事国の中で、決議1441を根拠に開戦を正当化したのは米と英だけだったという事実をどう説明するのか。それとも、日本にとっては安保理=米英だというのであろうか。「川口外相:イラク戦争は正当だったとの考え強調」(毎日新聞) http://www.mainichi-msn.co.jp/seiji/kokkai/news/20040917k0000e010052000c.html


(3)破綻その3:明らかに中心だった「大量破壊兵器」。煽るに煽った「脅威の切迫性」。−−呆れ返るウソの上塗り。
 首相は要するに、“問題の核心”は「大量破壊兵器保有」ではなく「国連決議違反」だと言いたいのだ。「国連決議違反」のデタラメについてはすでに述べた。ここでは、首相がどれだけ大量破壊兵器の脅威を煽っていたか、しかも今にもイラクが襲ってきそうな「切迫性」を、米英と一緒になって扇動していたのである。彼自身の発言を聞いてみよう。

−−2003年3月20日の小泉総理大臣記者会見:「もしも、今後、危険な大量破壊兵器が、危険な独裁者の手に渡ったら、どのような危険な目に遭うか、それはアメリカ国民だけではありません。日本も人ごとではありません。危険な兵器を危険な独裁者に渡したら、我々は大きな危険に直面するということをすべての人々が今感じていると思います。これをどのように防ぐか、これは全世界の関心事であります。/私はそういうことから、今回、最後まで平和的努力を続けなければならないと思いつつも、現在、残念ながらそれに至らなかった。武力の圧力をかけないとイラクは協力してこなかった。しかも、かけ続けても十分な協力をしなかった。/今回ブッシュ大統領いわく、これはイラクの武装解除を求めるものであり、・・・」「武装解除が目的であります。」 http://www.kantei.go.jp/jp/koizumispeech/2003/03/20kaiken.html
−−同3月20日メールマガジン:「大量破壊兵器、あるいは毒ガスなどの化学兵器、炭疽菌などの生物兵器が独裁者やテロリストによって使われたら、何万人あるいは何十万人という生命が脅かされます。フセイン政権がこれらの兵器を廃棄する意思がないことが明らかになった以上、これを放置するわけにはいきません。このアメリカの決断を支持する以外に解決の途はないと思います。これが、支持の理由です。」http://www.kantei.go.jp/jp/m-magazine/backnumber/2003/0320.html
−−同3月18日の首相インタビュー:「大量破壊兵器、或いは毒ガス等の化学兵器、或いは炭素菌等の生物兵器、これがもし独裁者とかテロリストの手に渡った場合、何十人何百人の規模で生命が失われるということではない、何千人何万人、或いは何十万人という生命が脅かされるということを考えますと、これは人ごとではないなと、極めて危険なフセイン政権に武装解除の意思がないということが断定された以上、私(総理)は、アメリカの武力行使を支持するのが妥当ではないかと思っております。http://www.kantei.go.jp/jp/koizumispeech/2003/03/18interview.html
−−同3月27日小泉内閣メールマガジン:「この問題の核心は、イラクが自ら保有する大量破壊兵器、生物兵器、化学兵器を廃棄しようとしないこと、国連の査察に無条件、無制限に協力しようとしないところにあります。/もしも危険な大量破壊兵器が危険な独裁者の手に渡ったら、どのような危険な目にあうか。それはアメリカ国民だけではありません、日本も他人事(ひとごと)ではありません。危険な兵器を危険な独裁者に渡したら、私たちは大きな危険に直面するということをすべての人がいま感じていると思います。これをどのように防ぐか、これは全世界の関心事です。http://www.kantei.go.jp/jp/m-magazine/backnumber/2003/0327.html


(4)破綻その4:「ないという現実」の前に「ある」を前提にした首相の詭弁・強弁は完全に破綻した。
 “あるもの”の存在の有無をめぐっての議論には「事実のレベル」の問題と「論理レベル」の問題がある。屁理屈や詭弁は、この2つのレベルの違いを意図的に利用して人を騙しごまかすものである。「あるもの」(例えば大量破壊兵器)がないのに、有無がはっきりしない段階では、「ある」と言い続けても、誰もそれを“論理では論破できない”からだ。しかしあくまでもこの議論は、「あるかないか分からない」からこそ成り立ちうる。有無をめぐっては、最後的には「現実」「事実」が決定打となる。従って「ない現実」が判明した時点でこの議論は一変する。問題は「論理のレベル」ではなくなったのだ。「ない」にも関わらず「ある」を前提にしたあれこれの屁理屈や詭弁は、現実の前に破綻する。

−−代表的な詭弁は、「フセインがみつからないからといって、フセインが存在しないと言うことになるのか」(2003年6月11日の国会答弁)である。
 ここで首相は大量破壊兵器は「大量破壊兵器が見つからないからといって、大量破壊兵器が存在しないと言うことになるのか」、つまり「フセインと同様、大量破壊兵器は存在する」「ある」と断言しているのである。−−この強弁は破綻した。元々存在したフセインは見つかったが、元々「存在しない大量破壊兵器」はいくら探しても「存在しない」し見つからないのである。小泉首相の詭弁は元々「存在するもの」に限って成り立つ推論なのである。

−−2004年1月、今回の『ドルファー最終報告』とほぼ同じ内容の『ケイ報告』が出されたとき、小泉首相は「ないとは断言できない」(1月29日)と言い続けた。当時の福田官房長官は「どういう根拠で言っているのか、(証言が)権威のあるものなのかどうか。」「ないという保証はない。あるという可能性が高い」と開き直った。何の根拠も一切示さず、米政府の大量破壊兵器調査団ケイ団長の貴重な言説を頭から否定したのだ。
−−2004年3月19日にも、記者団に対して小泉首相は「今でも私はあると思っていますよ」と語っている。
−−2004年7月10日、当時の川口外相は、「兵器そのものや隠匿の証拠が、最終的に発見されないことは想定しがたい」とし大量破壊兵器の存在を肯定している。等々。

 首相や政府閣僚の屁理屈や詭弁は「あるかないか分からなかった」から、米政府調査団の報告が中間報告だったからこそ通用し得た。米政府は最終的に「ない」を確定し捜索も断念した。大量破壊兵器の「不存在」は事実となったのである。



V.誤った戦争報道の反省もせず未だにイラク侵略・占領を鼓舞・激励する堕落し腐敗しきった日本のマス・メディア。小泉政権の開戦責任、派兵責任を不問に付す。

(1)米のメディアより悪質な恐ろしい翼賛体質。自浄作用も反省もない日本のマス・メディア。
 なぜ日本のマスメディアから、本気になって小泉追及の声が挙がらないのか。それは自らも五十歩百歩だからである。イラク戦争に反対であった朝日新聞さえが2002年12月21日付の社説で「イラク政府は恐れよ」と居丈高に恫喝したことがあった。これに対してフォト・ジャーナリストの広河隆一氏は「朝日は恐れよ」と切り返した。まさに襲いかかろうとするブッシュをいさめるのではなく、逆にイラクの政府と民衆にブッシュと一緒に襲いかかったからである。

 朝日がそんな状態だから他は推して知るべしであった。イラク政府が大量破壊兵器など保有していない証拠として提出した「自主申告書」を「重大な違反」と門前払いしたパウエル国務長官の発言を全てのマスコミが大きく取り上げ、イラク非難で足並みをそろえた。当時私たちは、開戦を扇動するような垂れ流し報道は“ジャーナリズムの死”とは言えまいか、そういう観点から、対イラク戦争準備と世論操作の先兵になった日本のマス・メディアを批判した。

 すでに述べたように、1990年代に行われた国連査察の事実経過と米英の査察妨害を少しでもきちんと調査しておれば、イラクの大量破壊兵器保有は極めて疑わしいことは容易に分かったはずだ。だから冒頭に取り上げた朝日新聞のスクープ記事にある防衛庁情報本部の最初の「報告書」ですら「明確な根拠はない」とまとめたのである。日本のメディアは「調査報道」すらやる意志を失ったのか。それとも客観的事実や真実を追求するのはもはやマス・メディアの仕事ではないというのであろうか。
※「日本のマス・メディアと対イラク戦争−−ブッシュ政権に同調し対イラク戦争を煽り始めた日本のマス・メディア」(署名事務局)

 翼賛報道一色になったあの米国でさえ、ニューヨークタイムズ(2004年5月26日)やワシントンポスト(8月12日)などの有力紙が多くの紙面を割いて「報道検証」と反省を行った。もちろんそれ自体限界があることは言うまでもない。しかし日本では本格的な検証と反省は皆無なのである。なぜ検証しないのか。なぜ反省しないのか。米国以上に堕落と腐敗が甚だしい日本のジャーナリズムの現状を映し出しているのではないだろうか。朝日新聞は2004年9月、1面を使ってニューヨークタイムスやワシントンポストなどが掲載した「報道検証」の記事を掲載したが、他人事ではないだろう。米国紙の検証を掲載するのであれば、自らの報道、そして日本のマスコミがとった態度を検証しなければならない。
※朝日新聞は開戦直前の昨年2月18日には「イラクの戦争に反対する」なる社説で日本の新聞では唯一イラク侵略に反対、昨年12月10日の社説では「日本の道を誤らせるな」と、自衛隊のイラク派兵に反対した。しかし社説とバランスをとるかのように紙面では紛らわしい記事を満載したのである。社説で反対したから検証しないでは済まないはずである。

 以下に、『ドルファー最終報告』直後に主要新聞が出した社説を中心に検討してみたい。自分に甘い態度しかとれないが故に、小泉と政府与党に厳しい態度をとれない状況がよく分かる。朝日から産経に至るまで、「最終報告」に対するスタンスは違っているが、当面は米英中心の復興支援に全力を挙げる、「対テロ戦争」支持では一致しているのである。


(2)今なおイラク侵略・占領、大量破壊と大量殺戮を鼓舞し激励する企業メディアの翼賛体制と“大本営発表”。“ジャーナリズムの死”を体現する読売・産経・日経。
 読売新聞や産経新聞は、もはやジャーナリズムの名に値しない。政府広報紙、防衛庁・自衛隊の宣伝紙でしかない。しかしそれがジャーナリズムの顔をしているのだから始末に負えない。
 開戦直前の読売は「『増大する脅威』こそ大義だった」(2月14日)で小泉と一緒にイラク脅威論を扇動した。「イラク戦争 小泉首相の『米支持』決断は正しい」「イラク戦争 正しかった米英の歴史的決断 日米同盟の意義を再確認せよ」等々、大はしゃぎだった。
 産経はもっと上手をいった。戦争に大義など必要ない。「正邪ではなく国益で語れ」(2月23日)と主張し、日米同盟=国益だ、米国のためならどこまでもやれ、と叫びまくった。「イラク問題 独裁者を利する反戦主義」「イラク戦争 12年戦争終焉の始まり 日本は米支援で全力つくせ」「イラク戦争 速やかに降伏を決断せよ」等々、こちらも社説で勇ましい進軍ラッパを吹き続けた。

 両紙は、その後のイラク占領の泥沼化も何のその。自衛隊イラク派兵も断固支持、イラクだけではなく世界中に自衛隊派兵をするよう主張し、歯止めがかからなくなっている。平和憲法の廃棄、日本の軍国主義復活、武器輸出三原則の撤廃と軍需産業の復活、対米従属の徹底と属国化、米のグローバルな軍事介入体制への自衛隊の編入、ミサイル防衛と対北朝鮮戦争、対中国対決、有事体制と国家総動員体制、国民の基本的人権の制限と国家への服従義務の拡大、靖国参拝、天皇の元首化と天皇制の強化等々、戦前の大日本帝国の夢よもう一度とばかりに、日本を侵略国家に仕立てることを基本的目標にする。

 今回の『ドルファー最終報告』を受けて各紙はどういう反応を見せたのか。
−−読売新聞は10月8日の社説「大量破壊兵器 脅威は間違いなく存在していた」で、まず「大量破壊兵器は見つからなかった。だが、脅威は間違いなく存在していた。」と断言する。その脅威とは、開発の「意図」である。社説は「あと、二、三か月の査察継続で、大量破壊兵器はなかったと報告できた」と認めた上で、「だが、その結果、国連安全保障理事会が制裁を解除した場合、イラクは再び大量破壊兵器の開発に向かう可能性があった、というのが報告書の趣旨だ。」と自分に都合のいいところだけを取り出し「差し迫った脅威」が存在したと言い張る。しかしそれはおかしい。仮に社説の通りであったとしてもそこから出てくる結論は、武力行使ではなく制裁あるいは査察の継続である。読売の見苦しい弁明である。 
 読売の社説は次の言葉で終わる。「イラクの安定化には、治安回復と政治日程の円滑な実行が不可欠だ。米国はじめ国際社会には、そのために努力する責務がある。」
※読売新聞2004年10月8日社説。ついでに言えば、ブリックス氏は当時のUNMOVIC(国連監視検証査察委員会)の委員長であるが、なぜか読売は、ブリックス氏の遙か以前の肩書きを使用している。国連査察チームのトップというのを知らせたくなかったのかも知れない。 http://www.takao.sanpauro.nom.br/takao/special/special20041008y.htm

−−産経新聞は、主張「大量破壊兵器 独裁者の野望を阻止した」で、最終報告書全体の趣旨を完全にねじ曲げ、事実を歪曲して伝えていることで異質である。「わずかな量で大量殺戮(さつりく)が可能な化学兵器などを、砂漠地帯から発見することは至難の業なのだ。」とし、未だに「保有」の疑いをにじませ、「湾岸戦争ではじまった経済制裁が解除された時点で、フセイン政権が開発を再開させようとしていたと結論付けた」と91年の段階で保有も計画も一切無かった事実を無視し、今にも開発が再開されようとしていたかのように印象付けている。しかも、「大量破壊兵器の問題が、開戦理由の一つでしかない」として、反米国家としてのフセイン政権の打倒そのものが開戦の理由であることを包み隠そうともしていない。米に逆らうやつは滅ぼしてしまえ、という訳である。恐ろしい新聞だ。
 そして最後は同じく、「イラクと国際社会に最も必要なのは、戦後処理の態勢を立て直し、治安を回復することだ。その意味で、日本が来週、イラク復興支援国会合を開催することの意義は大きい。」米英を先頭に軍事力でイラクを制圧し、日本は復興利権・復興ビジネスで先頭を走れと主張しているのである。
※産経新聞204年10月9日社説 http://www.sankei.co.jp/news/041009/morning/editoria.htm

−−イラク戦争とブッシュを全面的に支持してきた日経新聞はどうか。財界が右傾化し、日本経団連が改憲、イラク派兵支持など政治的主張を鮮明にするとともに、ここ数年、日経新聞の右翼的・翼賛的発言は露骨なほどエスカレートしてきた。今ではほとんど読売・産経と同じ主張だ。ところが今回の『ドルファー最終報告』については、今までのところ社説では取り上げていない。ウソの上塗りか、それとも開き直りか。それとも出せないのか。いずれにしても都合が悪くなれば口をつぐむとは無責任極まりない。


(3)謀略・ねつ造でイラク侵略に突き進んだブッシュを「善意」で解釈しようとする毎日新聞。イラク侵略に反対しながら結局は「水に流そう」と主張する朝日新聞。
−−米日政府支持の立場と反戦・非戦の立場を動揺する毎日新聞はどうか。10月8日の社説「大量破壊兵器報告−−率直な反省があっていい」の中で、ブッシュの開戦理由の曖昧や小泉首相のブッシュ支持の根拠を批判したのちに、なんと結論は、「単独行動主義への率直な反省なしには、冷えた空気を暖めることはできず、『テロとの戦争』を立て直すこともできない。」で終わっているのだ。「テロとの戦争」を立て直すために、開戦理由をでっち上げた事を反省せよというのである。
 「今後解明すべき問題は、米政府が結果的に間違ったのか、それともイラクの脅威を意図的にあおる情報操作が存在したのかという点だろう」「なぜ最初から米英は査察に時間を与えなかったか。戦争によって、おそらく何万もの犠牲者が出たことを思えば、無念と言うしかない」と言う。しかし最初からイラク侵略ありきで謀略を企んだブッシュの暴走を「結果的に間違っていた場合もある」と善意に解釈して単なる“勘違い”に解消するなど信じがたいピンぼけである。ブッシュ政権とイラク戦争とは一体何であったのか、イラク大量破壊兵器の脅威とは何であったのか。毎日新聞こそ「率直な反省」をすべきではないか。
※毎日新聞2004年10月8日社説 http://www.mainichi-msn.co.jp/column/shasetsu/news/20041008k0000m070158000c.html

−−朝日新聞は、10月8日「大量破壊兵器――なかったからには」という社説を掲載した。社説では、大量破壊兵器問題に「決着がついた」とし、「イラク侵攻に踏み切った最も重要な根拠が見当違いだった」と開戦理由を批判する。そして、それでもなお開戦を正当化する論調をそれぞれ吟味し批判する。
・「イラクには大量破壊兵器開発に戻ろうとする「意図」はあった」として戦争を正当化する論は「予防戦争」論であり、国連憲章に反する。
・小泉首相は「身の潔白を証明しなかったフセイン大統領が悪い」 というが、安保理決議1441は自動的に武力行使を発動するものではない。
・ブッシュは「戦争はフセイン体制を倒し、イラクの民主化に道を開いたのだからいい」というが、イラクは泥沼化しており、正当化の理由にならない。等々。
 そして朝日新聞は断じる、「大量破壊兵器が実は当時存在していなかったのだから、戦争の正当性は全否定されたも同然である。」

 しかし問題はその先である。社説はそこで突然態度を翻し、「国際社会が今迫られているのは、戦争をめぐる亀裂を修復し、イラクの再建に結束することだ。」と“歩み寄り”“仲直り”を主張する。「大規模な米軍の駐留にもかかわらず、イラクは安定に向かうどころではない」という情勢認識には、「大規模な米軍の駐留があるから、イラクは安定に向かわない」という認識は全くない。米の占領支配と米軍の横暴こそがイラクを泥沼に突き落としているのである。だから、副題の「なかったからには」に当然続くべき「イラクから撤退すべきだ」の主張がスッポリ抜け落ち、“水に流そう”という主張になるのである。そこには撤退のテの字もでてこない。
※朝日新聞2004年10月8日社説 http://www.asahi.com/paper/editorial20041008.html



W.ブッシュはイラクでの一切の軍事行動を今すぐ止めよ! 占領支配をやめ即時無条件に撤退せよ! 自衛隊もイラクから今すぐ撤退せよ!

(1)『ドルファー最終報告』で幕引きにさせてはならない。米軍による大量殺戮・大量破壊の即刻中止。米英・多国籍軍の即時無条件撤退。
 「大量破壊兵器はなかった」で一件落着ではない。『ドルファー最終報告』の提出で幕引きにさせてはならない。ここからでてくる結論は非常に明白で議論の余地はない。米英のイラク戦争は国連憲章と国際法に違反する侵略戦争であったという事実である。戦争責任の追及、謝罪と補償まで徹底させなければ、「謝れば済み」となりかねない。しかもブッシュはまだ公式に認めていないし謝ってもいない。それだけではなく、米大統領選挙直前になってパウエルやライスがわざわざ「なかった」をリークした狙いは、ブッシュ再選後の「みそぎ」を主張するためである。

 米軍は現在、英軍・多国籍軍の支援を得ながら、ラマダンと来年1月の「選挙」を前に「予防掃討作戦」を大規模に展開している。「サマラ」の制圧、ラマディのモスク攻撃等々に続き、ファルージャでも、停戦交渉の相手を拘束して激しい波状攻撃を加えるなど、軍事行動をエスカレートさせている。

 私たちはブッシュ政権に次のことを要求する。
−−大規模予防掃討作戦、殺りく行為と破壊行為を今すぐ中止すること。
−−米英軍、多国籍軍など一切の外国軍を撤退させること。
−−アブグレイブやグアンタナモの強制収容所を閉鎖し、ジュネーブ条約違反の拷問・虐待・虐殺を今すぐやめること。不当に拘束された人々を無条件に釈放すること。
−−無法・違法な侵略戦争をした戦争責任を明らかにすること、今回の侵略で犠牲になったイラクの全市民・全兵士に対して謝罪し補償すること。


(2)イラク特措法の「前提」「目的」が間違っていたのである。イラク特措法を廃止し自衛隊を即刻無条件に撤退させよ。
 イラク特措法の第一条(目的)によれば、発動に当たっての最大の前提条件(「イラク特別事態」と呼ぶ)は、イラクの大量破壊兵器保有とその差し迫った脅威であり、その査察と廃棄を迫った3本の安保理決議である。しかしその眼目の大量破壊兵器が「なかった」、実はすでに「廃棄されていた」、イラクは「国連決議を守った」ことが確定したからには、イラク特措法そのものが成り立たないはずだ。「目的」の「前提条件」に重大な疑義が生じたのである。政府与党はイラク特措法を廃止し、今すぐ自衛隊を撤退させるべきである。
※イラク特措法の目的は第一条に記されている。それによれば、678、687、1441の3つの国連安保理決議に基づいて武力行使したことを「イラク特別事態」と位置づけ、それを受けて国家再建を支援することを「目的」としている。678(1990/11)、687(1991/4)はいずれも湾岸戦争後の大量破壊兵器と査察に関する決議で、1441(2002/11)は今回の開戦に当たっての大量破壊兵器と査察に関する決議である。
 同法作成者は第1条から事実をねじ曲げていることが分かる。10年以上も前の国連決議を今回の特措法の前提にすることなどデタラメもデタラメ、論外である。残る1441も「自動開戦」「武力行使」を容認した決議ではない。安保理では、1441でダメだったからこそ新しい「武力行使容認決議」が追求されたのであり、それが安保理多数派の反対で挫折した経緯がある。でないとなぜ日本は「新決議」採択を模索したのか理屈が合わない。1441を根拠にイラク派兵することはできないのだ。ところが正々堂々とウソ・デタラメをイラク特措法の第1条冒頭に記したのである。「イラクにおける人道復興支援活動及び安全確保支援活動の実施に関する特別措置法」参照。http://www.kantei.go.jp/jp/houan/2003/iraq/030613iraq.html

 小泉首相は、大量破壊兵器が「ない」と確定し、「大義」も「根拠」もデタラメであったことが明らかになったのに、お構いなしに自衛隊の侵略活動をエスカレートさせようとしている。
−−政府は10月26日の閣議で、対アフガン侵略加担のテロ特措法の期限を11月1日から来年の5月1日まで半年間延長することを決定した。すでに期間延長は6回目に当たり、事実上「恒久法」化している。しかも海上自衛隊の任務を米英などの艦船への燃料補給だけではなく、新たに艦船搭載のヘリへの燃料補給や水補給に拡大する変更もなされた。
−−イラクも撤退どころか泥沼化と深入りへの道を突っ走ろうとしている。今臨時国会で自衛隊のイラク派兵期間を延長するとともに、現在のサマワ駐留自衛隊を倍以上の1000人規模に増派し、米英軍と同様、侵略軍・占領軍の性格をますます鮮明にしようとしているのである。

 私たちは小泉首相に要求する。
−−イラク国民と日本国民に謝罪しブッシュ支持、イラク開戦支持が誤りであったことを認め撤回すること。
−−イラク大量破壊兵器のでっち上げに関する徹底調査・真相究明をやること。情報操作・「報告書」改ざんを命じた責任者を処罰すること。
−−「選挙」強行が米英の大規模掃討作戦で住民の大量殺戮を拡大している。イラク1月総選挙のための予算拠出をやめること。
−−イラク特措法を廃止し自衛隊をイラクから撤収させること。

2004年10月26日
アメリカの戦争拡大と日本の有事法制に反対する署名事務局