“フセイン拘束”後の反戦運動の課題
○イラク民衆の抵抗闘争と連帯し、イラク占領支配の建て直し=再編強化を阻止しよう!
○占領の再編強化に加担する自衛隊派兵に反対しよう!
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(1) サダム・フセイン氏が拘束されて10日が経ちました。“フセイン拘束”はブッシュ政権にとっての久々の大きな得点です。4月9日のフセイン政権崩壊以降最大の得点と言ってもいいかも知れません。
イラク情勢と中東情勢、世界情勢に一定の“逆流”が生じています。現にリビアが核兵器を含む大量破壊兵器開発の放棄を宣言しました。ブッシュ大統領の支持率は3〜7%、あるいは13%跳ね上がりました。米の求めに応じて仏・独・露がイラク債権の削減に応じ始めています。自衛隊が派兵を決定し、韓国も米英に次ぐ規模の派兵を決定しました。
米欧日の企業メディアの報道も、拘束を機に、米兵死傷、米兵の士気低下、レジスタンス、自爆攻撃、米占領行政の欠陥等々から、フセイン拘束劇や裁判のあり方に変わってきています。ブッシュ政権は、占領支配の危機的な現状から米国内の関心を逸らせることに一時的には成功しているかに見えます。
(2) ブッシュ政権は、拘束を機に、先の「ラマダン攻勢」でガタガタになった占領支配体制を建て直すため、抜本的な再編強化に乗り出しました。思惑通りに進んでいるわけではありませんが、米が相次いで打った手は以下の通りです。もちろんこれら占領体制の再編は、単独行動主義、先制攻撃戦略=ブッシュ・ドクトリンそのものを変更するものではなく、単なる“微調整”に過ぎません。
−−大規模な掃討作戦、軍事的巻き返し作戦の拡大強化。フセイン氏の隠れ家から押収した資料を元に抵抗運動関係者を芋づる式に殺害・逮捕する。
−−なりふり構わずイスラエル型、ベトナム型の見せしめ的な大量破壊・殺戮作戦を強化する。「再戦争」と呼ばれるほど激しい攻勢をかけ、ゲリラ勢力、レジスタンス勢力を壊滅させる。
−−兵士の士気低下を防ぐため、疲弊した米兵に順次一時休暇を取らせる。来年初めからはその規模を拡大する。これをメディアを通じて宣伝し、駐留兵士家族の不満や反対運動への参加を食い止める。
−−米駐留軍の兵員数を13万人から10万人へ削減し、日本、韓国を含めた「有志連合軍」で穴埋めする。日本や韓国への早期派兵圧力を強める。
−−イラク軍・イラク警察の再建。給与・待遇を改善し定着を図る。軍事・弾圧機関の「イラク化」推進。
−−占領行政への指揮監督権限をラムズフェルドと国防総省とネオコン主導からベーカー特使やブラックウィル大統領副補佐官など、大統領直轄に切り替える。
−−イラクの復興利権・石油利権は、米英の占領支配を支持する国々、すなわち「有志連合」だけに分配する。こうした利益誘導で「有志連合」の結束を固め、同時に仏・独・露を切り崩す。
−−ベーカー特使を前に出して、仏・独・露等との外交関係の再構築。再び国連を引き込み利用する。等々。
(3) 全ては来年の大統領選挙対策です。このままでは再選が危うい。深刻な危機感がブッシュ陣営を突き動かしているのです。目標は来年6月までに形の上だけ「政権委譲」を行い、実質的には米軍駐留に関する「地位協定」を結び、軍事基地を維持することです。傀儡政権の看板替え、占領支配の永続化が狙い目なのです。
(4) 私たち日本と世界の反戦運動は新しい課題に直面しています。“フセイン拘束”をきっかけに生じたイラク情勢の“逆流”との闘い、占領体制の建て直し=再編強化を阻止する闘いです。イラク民衆はますます反米・反占領のレジスタンス闘争を強化拡大しています。イラク民衆と連帯し、“逆流”を許さず、米英の占領支配の中止、米英軍の即刻の撤兵、傀儡ではない真のイラク民衆へ主権委譲を勝ち取るために全力を挙げましょう。
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(1) ブッシュ政権は拘束したサダム・フセインを利用して、イラク侵略と占領を正当化する自己に都合の良い戦争犯罪法廷を開こうと目論んでいます。しかしブッシュ政権にはフセイン元大統領を裁く権利も資格もありません。イラクが米国に侵略したでしょうか。否です。脅威を与えたでしょうか。否です。米国が一体何の罪状で裁くのか、そこからして疑問です。
(2) ブッシュ大統領は「イラク人の関与」を主張しました。それは親米派「亡命者」、統治評議会の「傀儡政権」関係者です。統治評議会のチャラビ氏が米国防総省の国際法研究所と協力して準備を進めていると言われています。しかし彼ら米の傀儡にまともな裁きをする権利も資格もありません。傀儡ではない真のイラク民衆を代表する民主政権、人民政権だけが裁く権利を持つのです。
(3) そもそもブッシュ政権が「公正な裁判」を開けるわけがないのです。米は「生け捕り」にすることで徹底的に利用しようと企んだのでしょうが、下手をすればやぶ蛇になる危険をはらんでいます。なぜならフセイン体制をレーガンや父ブッシュら歴代米政権が全面支援してきたからです。米はフセイン独裁政権の「共犯者」だったのです。フセインは知りすぎています。何をしゃべるか分かりません。利用するだけ利用して最後は「イラク人」に処刑させるか、自らが「軍事裁判」「秘密裁判」で闇に葬り去ろうとするでしょう。現にブッシュは厳罰=処刑を匂わせました。
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(1) 裁かれるべきはブッシュと米国自身です。ブッシュとブレア、米国と英国、彼らに加担した日本を含む「有志連合」諸国の戦争犯罪を裁かなければなりません。なぜなら今回のイラク戦争について言えば、国際法・国連憲章に違反し国際世論に反して侵略戦争を始めたのは彼ら侵略者の側だからです。劣化ウラン弾やクラスター爆弾などの非人道兵器・大量破壊兵器を実際に使用し、多数の非戦闘要員、何の罪もない子供たち、母親たち、老人たちを殺し負傷させ、国家を壊滅させ生産と労働と生活をどん底に転落させたのは彼ら侵略者だからです。
(2) 私たちが腹立たしいのは、“フセイン拘束”によって、米英のイラク侵略がまるで合法的で正当なもの、歓迎すべきものという宣伝が幅を利かせようとしていることです。しかし米英のイラク侵略戦争の無法性、不当性は何も変わりません。
そればかりか、私たちは、“フセイン拘束”そのものが紛れもない主権侵害であり国際法・国連憲章に違反するものだと考えます。イラク戦争が国際法違反なら、イラク占領も国際法違反であり、従ってその元首を殺害・拘束することも国際法違反なのです。
無法な侵略で打倒される前と後で主権国家の元首に対する国際法適用に違いが出てくるのでしょうか。イラク侵略の無法性を主張した者は、どこまでも“フセイン拘束”の無法性を主張しなければならない。私たちはそう考えます。
(3) 米英のイラク侵略は「解放戦争」ではありません。米英が国連と世界に向かって公式に示した開戦根拠は「フセインの打倒」「イラクの解放」ではなく、「大量破壊兵器」=「イラクの脅威」だけです。
その「大量破壊兵器」問題は一体どうなったのか。いくら捜しても見つからず、米英が出した「証拠」が相次いでデタラメであることが判明しました。イギリスでは自殺者が出るほど政界を揺るがせ、アメリカでも、大量破壊兵器捜査を指揮した米のデビッド・ケイCIA特別顧問が、「開発の“意図”を持っていたが、物証は得られなかった」との事実上の敗北宣言を出し、つい最近辞任の意向を表明しました。ウソとでっち上げで侵略戦争を引き起こしたことが明らかになったのです。
もう一度イラク戦争の原点、出発点に立ち返ることが必要です。“フセイン拘束”を前にして私たちは今、改めてイラク侵略反対の態度が問われているのです。あくまでも、米英のイラク侵略の無法性、不当性を徹底的に追及し続けなければなりません。
(4) “フセイン拘束”の美談、イラク人の歓喜・解放感・祝砲を繰り返すメディアの一面的な報道の下、イラク現地で一体何が行われているのか。−−5月の「戦闘終結宣言」以降はじめて精密誘導兵器で空爆が開始されました。米軍攻撃の報復として「疑わしい」出撃拠点を広範囲に徹底的に空爆するというものです。第4歩兵師団、第1機甲師団を中心とした重武装兵が民家急襲を繰り広げています。戦争時に繰り広げられた惨劇、民間人の殺戮が日常茶飯事となっています。
辺り一帯の家屋をなぎ倒し更地にする。抵抗運動の活動が激しい村を鉄条網で完全に包囲する。包囲した地域住民に認識証を持たせる。特殊部隊を中心とした暗殺犯を編成し、抵抗運動の中心人物を抹殺する。等々。−−米軍はイスラエルから学んだ「都市ゲリラ」攻略法のみならず、占領支配を維持するための残忍なイスラエル型の弾圧・統治手法をイラクで実行に移しているのです。文字通りそれは血生臭いイラク民衆への殺戮や弾圧、占領軍の恐怖政治、失業と生活苦であり、およそ「解放」「民主化」の対極にあるものです。
そもそも3月以降の開戦後の犠牲者は、一般市民と軍人を合わせて数万人に及ぶのです。劣化ウラン戦争で被曝し汚染された人と土地と環境は取り返しがつきません。今後未来永劫にイラク民衆はガンや白血病など放射線障害に苦しみ続けることでしょう。一体、これのどこが「解放」、どこが「民主化」なのでしょうか。
(5) “フセイン拘束”は「解放」でも「自由」でもありません。もしブッシュが「フセイン独裁からの解放」「イラク民衆の自由」を得意げに主張するなら、今すぐ米英軍は占領を中止し撤兵すべきです。米英が主張するイラク独裁政治の張本人を捕らえたのです。イラク民衆を、自らのもう一つの独裁政治、恐怖政治、占領政治から今すぐ自由にし解放すべきです。名実ともにイラク民衆をブッシュからも解放すべきなのです。
国連に主導させない。政権委譲は早められない。早めると混乱する。政権委譲しても米軍は駐留させ軍事基地を置く。石油は離さない。復興利権は俺のもの。等々等々。傲慢、横暴の数々。−−どれもこれもイラクの植民地支配を永続化しようとしている証です。
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(1) 米英がイラク民衆に犯した「平和に対する罪」、「人道に対する罪」がなぜ不問に付されるのか。今回のイラク侵略でも、かつての湾岸戦争でも、米英は戦争犯罪を犯しました。しかしもう一つ別の犯罪があります。米英はこの10年以上にわたって更に深刻な被害をイラク民衆に与え苦しめてきたのです。
ブッシュやブレアは口をつぐんでいるのですが、1990年代を通じて続けた経済制裁の悲劇です。大量破壊兵器の開発・製造阻止を錦の御旗に、石油輸出を禁止し(許可して以降も米英が厳重に管理制限した)、産油国であるのに収入の道を閉ざし、生活物資・生産関連物資を輸入制限し、人為的な国家破産を強要したのです。飢餓と餓死、栄養失調、失業と生活苦、工業生産や農業の崩壊等々、民衆が生きていけないほど過酷な仕打ちをしました。国連人道調整局責任者が相次いで辞任し、国連制裁反対の運動を始めるほど事態は深刻だったのです。少なくとも50万人の子供たちが飢えで殺されたと言います。辞任したその責任者は当時のイラクの現状を文字通り“ジェノサイド”だと断言しました。
(2) 連合軍暫定当局(CPA)のブレマー文民行政官は拘束時の記者会見で開口一番、「皆さん、我々はやつを捕まえた。」(
"Ladies and gentlemen, we got
him")と言いました。しかし彼はこう言うべきだったのです。「皆さん、我々がやつを作った。」(
"Ladies and gentlemen, we made
him")と。
一般にフセインの独裁性と侵略性については、1980年代のイラン・イラク戦争下での虐殺事件、例えば1988年のクルド人への生物化学兵器使用が指弾されています。そもそもなぜサダム・フセインがそこまで独裁的な権力を乱用することが可能になったのか、なぜ近隣諸国に脅威を与えることになったのか。
フセインが米軍に拘束された。しかしブッシュのアメリカにサダムフセイン、その独裁と悪政を裁く資格も権利もない。なぜなら独裁者フセインを作り上げたのはレーガン、父ブッシュら歴代米政権なのだから。傀儡ではない真のイラク民衆の民主政権だけが彼を裁く権利を持つ。
否、むしろ今回のイラク戦争について言えば、国際法に違反し国際世論に反して侵略したのはブッシュ政権の側である。裁かれるべきは米国自身である。
写真は、フセインとアメリカの軍事同盟関係の象徴的なもの。親しげに握手するフセインとラムズフェルドだ(1983年)。イランのホメイニ革命に対抗し、サウジアラビアと石油利権、中東覇権を維持するために、レーガン政権はイラクを全面支援し同盟関係を結んだ。
ビデオ
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(www.globalresearch.ca より)
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実は米が全面支援したこの時期こそフセイン独裁政治の頂点だったのです。
−−米は中東支配の根幹であるイランのシャー王政が1979年に民衆のイスラム革命で打倒された結果、中東政策の根本的な建て直しを迫られた。
−−イランのイスラム革命が高揚した時期、その中東全体への波及、とりわけ世界最大の産油国、世界最大の石油輸出国サウジアラビアの反動的王政を危機から救済するためイラクを全面的にバックアップした。
−−イラン・イラク戦争では公然とイラクに戦闘計画を立案させ、軍事衛星情報を流し、軍事諜報員を送り、イラク側の劣勢を挽回させることに決定的な寄与をした。
−−最も破廉恥なのは、今あれほどブッシュ政権が糾弾するイラクの生物化学兵器に関して言えば、実は米政権がこの時期に、ボツリヌス菌・炭疽菌のサンプルを直接イラク側に供与したという事実である。昨年9月米議会でに提出された資料ですでに明らかになっている。
−−そして現在の国防長官ラムズフェルドがレーガン政権の特使として活躍したのもこの時である。1983年には製薬会社(!!)の社長である彼がフセイン大統領と会談しているのである。
−−それだけではない。1988年のクルド人虐殺事件が発覚したとき、米議会はわざわざ対イラク制裁決議を否決し、農業借款を再開する便宜を図った。
−−その前1984年には米政府はイラクをテロ支援国家リストから外しハイテク技術の輸出制限を緩和、大量破壊兵器開発向けのコンピュータ技術輸入に道を開いた。等々。
もう十分ではないでしょうか。まさにフセイン大統領の特殊な残忍性は、米国が作ったのです。ブッシュやラムズフェルドが、自分たちの汚い過去を揺すられることを恐れ、フセインを“口封じ”したいと考えるのは当然と言えるかも知れません。
(3) もちろんこうした米政権の猛烈なイラクテコ入れは、アフガニスタンをめぐる米ソの軍事的緊張の中で、当時ソ連と軍事協力関係にあったイラクにくさびを打ち込み、ソ連社会主義と対抗する狙いもありました。
フセイン政権とバース党そのものが多面的で複雑なものなのです。イスラエルの対パレスチナ政策、中東全域への対外膨張政策との関係、アラブの民族主義の前進と後退との関係等々、歴史的にも様々な顔、様々な側面を見せてきました。
しかし何と言ってもフセイン大統領の過去の治世と政治体制は、アメリカの中東政策、軍事外交政策、エネルギー政策抜きには評価できません。1958年、イラクの民衆が反英・反帝の民族革命に立ち上がり自国をイギリスの植民地支配から解放して以降、イラクの運命は、イギリスに代わってアメリカの中東政策、石油・エネルギー政策に翻弄されてきたのです。アメリカ帝国主義への批判抜きのフセイン政権批判は根本的な誤りです。
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(1) イラク現地の情勢は、“フセイン拘束”によって何も変わっていません。米にとって好転するどころか逆に悪化さえしています。“逆流”はまだ部分的で一時的で限定的なものにとどまり“奔流”になっていないのです。イラク占領の建て直し=再編強化はまだ始まったばかりであり、軌道には乗っていません。イラク戦争の「泥沼化」、占領支配の破綻はまだ続いているのです。
何よりもイラク現地での民衆のレジスタンス闘争、ゲリラ戦争は、「ラマダン攻勢」以降、止むどころか、計画化・組織化を強め、同時多発的な襲撃、自爆攻撃を交えてますます激化、先鋭化しています。バグダッド中心部のCPA本部へのミサイル攻撃が頻発、ブレマー氏への暗殺未遂まで起こりました。襲撃対象は、占領統治協力者であるイラク人警察官、スペイン・日本・韓国・イタリアなど「有志連合」関係者にまで拡大、石油パイプライン・石油貯蔵庫への襲撃なども相次いでいます。
米兵の死者は増え続け「戦闘終結宣言」以降ついに200名に達しました。それ以外にも脱走者1700人、負傷者や医療的な緊急移送を受けた兵士少なくとも11,000人、劣化ウラン弾被害など湾岸戦争症候群に類似した症状の奇病等々、戦闘できなくなった兵士が驚くべき数に達しています。
(2) 小泉政権も、“フセイン拘束”で息を吹き返したかに見えます。先の国会閉会中審査で、「余裕」の答弁をしたと報じられました。しかし運動と世論は「閣議決定」以降急速に拡大しています。市民運動だけではなく、労働組合も動き始めています。全国の地方自治体の首長や議会も反対や慎重論の声を挙げています。“フセイン拘束”以降でも世論調査で反対論・慎重論は多数を占めています。私たちの実感では、昨年の有事法制の継続審議を勝ち取った情勢と似通ってきています。
自衛隊派兵を含む「有志連合」軍の派兵は、占領体制再建の柱の一つです。派兵を阻止することは、米英の占領体制の再編強化に重大な打撃を与えるでしょう。闘いはまだまだこれからです。来年1月、2月の陸自本体派兵までを射程に入れて派兵阻止の世論を盛り上げていきましょう。小泉政権の巻き返しと反転攻勢を許さない闘い、自衛隊派兵反対の闘いを強めましょう。
2003年12月24日
アメリカの戦争拡大と日本の有事法制に反対する署名事務局
[資料1]
ブッシュ政権は、大手メディアとともに、サダム・フセインの最近の拘束を偉大な勝利と触れ回っている。彼らは、この拘束を利用して占領をさらに正当化しようとくわだて、あらゆる批判や反対を黙らせようとするだろう。しかし、ひとつのことは疑問の余地なく明らかである。イラクの不法な占領は依然として続いているということである。
「テロとの戦争」におけるこの「新しい展開」は、この戦争が不道徳・不正義・非合法であるという事実を変えるものではない。それは、国際法違反、戦争を正当化するために用いられたウソ−−大量破壊兵器を発見するとかイラクの人々を「解放する」とかのような−−、あるいは何万ものイラクの人々の生命を奪ったこと、また数百人の米国人の生命が失われたこと、これらを変えるものではない。今回のことは、政府が望んだかもしれないようにはイラク人の抵抗を終わらせはしないだろう。軍の撤退と占領の終結のみがそれをもたらすだろう。
また、彼らがサダムを裁判にかけてついにイラクの人々のために正義を追求するということについて語るとき、彼らは、米国によってイラクの人々に為された犯罪についてのいかなる言及も、都合よく排除するだろう。独裁者が彼の人民に対して使用したまさにその兵器を、その独裁者に供給したのは、米国にほかならなかった。1990年以降50万人以上のイラクの子どもたちを殺した制裁を主導したのは、まさに米国にほかならなかった。いったい誰が米政府を戦争犯罪で裁判にかけるのだろうか?
サダム・フセインの拘束は、イラクの人々にとっての自由を意味しない。自決権と自治のみが彼らの解放を保証するだろう。この戦争と占領への抵抗は、これまでにもまして必要とされている!
占領を終わらせろ!
米軍はイラクから出ろ!
イラク人自身のためのイラク国家を!
NIONナショナル・オフィス
www.notinourname.net
[資料2]
[資料3]
米軍によるサダム・フセイン、イラク大統領の拘束は、企業メディアやブッシュ政権によって、まるで偉大な勝利、新時代のスタート、そして米国のイラク侵略および占領を正当化するものであるかのように吹聴されている。
サダム・フセインの拘束と公開は帝国主義にとっての宣伝の勝利かもしれないが、しかしそれはイラクの状況と、とりわけ米国のイラク侵略と占領が、国際法および米国の法の両方に対する露骨かつ残忍な侵害であるという事実について、基本的に何も変更しない。
8か月の集中した捜索の後にサダム・フセインを拘束したことを歓迎する一方で、イラクの現在の共同独裁者であるL・ポール・ブレマーとリカード・サンチェス中将は、この展開がイラクのレジスタンスの終わりの始まりを示すだろうという、ブッシュ政権全体の願望を表明している。
しかし、不法で植民地主義的な戦争と占領に対するイラク人のレジスタンスの強まりは、――もっと精通しているイラクの企業メディア・ジャーナリストによってさえ――第一にどんな特定の個人への忠誠に基づくものでもなかった。むしろ、それは占領軍の増大する残忍さと同時に、イラクの主権と独立の否定に対する反応である。
ジェイ・ロックフェラー上院議員、上院情報委員会副議長のようなブッシュの戦争の支持者でさえ、次のような疑問を持ち出している:
「彼が拘束された場所と状況を考えると、サダムが反乱を指揮していなかったことは明確だ。・・・それは重要で、困ったことだ。なぜなら、それは、反米活動家たちがサダムのために戦っているのではない、彼らはアメリカと戦っているのだということを意味するからだ。」
イラクの占領があらゆる点で植民地主義的なプロジェクトであることに疑問の余地はない。米国が指定した「イラク統治評議会」は、CIAの協力者アフマッド・チャラビによって率いられているが、彼の家族は、英国が支配する政権が1958年に倒された時、イラクで最も裕福だった。イラクの財産はすべて競売に出されようとしている。
米国は植民地式のイラク警察、情報局、および準軍事的な暗殺隊を創設している。米国は、子供や祖父母を含む家族の人質を連行し拘留して、イラク人に「尋問」に応じることを強要している。米軍はイラクの多くの地域で全住民に対する、「イスラエル式」の集団懲罰や暴力を行使している。
「恐怖と暴力をたくさん用い、プロジェクトにたくさんのお金を使えば、我々はそれらの人々に対し確信させることができると思う。我々が彼らを支援するためにここにいるのだということを。」と、イラクにいる米軍の指揮官は述べた(ニューヨーク・タイムズ、2003年12月7日)。
彼は、多くのイラクの村の一つについて話してくれた。米国が鋭いカミソリ・ワイヤーで取り囲み、その地域全体を囚人に仕立て上げた、と。有刺鉄線の上の掲示は英語だけで、「このフェンスは、あなたの保護のためにここにある。
近づいたり、横切ったりするな。さもないと撃つぞ。」と書かれている。
米政府は、他国の政府を不安定にし、転覆させ、残忍な独裁政治に置き換えてきた長い歴史を持っている。米国によって目標とされた政府が民主的か非民主的かという性格が米国の行動の動機では決してなかったということを知るには、イラン、コンゴ、グアテマラ、チリを見るだけでいい。そこでは、米政府は最も残忍な独裁政治と軍事政権を支援した。
イラク侵略と占領の前に、前イラク政権を長期に渡って悪魔に仕立て上げてきたことは、アメリカによるより大きなグローバル・プロジェクトの一部である。それはワシントンとウォール・ストリートの指図から名目上でも独立を維持しようとするどんな政府をも軍事的に破壊するためだ。北朝鮮、イラン、シリア、ジンバブエ、キューバ、パレスチナ、その他の指導者が、ブッシュ政権によって破壊の目標に選ばれた。これは民族自決権を根本的に侵害するものである。イラクの人民だけが、誰を彼らの指導者にするかを決める権利を持っている。
人々は今後、注意深くパッケージにされた前イラク政府の「犯罪」のドキュメンタリーを見るとき、ブッシュ政権が何万もの無辜のイラク人の生命を奪い、イラクを混乱と無政府状態に陥れたことを、また過去何十年間もの間植民地支配と闘ったイラクの人民の主権の本質的な特徴を奪い去ったことを忘れてはならない。
占領は、イラク人、米国および他の「連合」軍の生命を毎日奪っている。ハリバートン、ベクテル、その他の米企業が巨利をむさぼっている間に、人々は、そこでもかしこでも、血と金に溺れたブッシュと彼の企業友達の略奪する酒宴のために代償を払っているのだ。政府の数字によれば、イラク占領の費用は1日あたり2億1000万ドルである。政府は、彼らが殺すイラク人の数をわざわざ数える必要はないと述べた。
私たちは、次のことを要求するために動員活動を継続し強化しよう:
「占領を止めよ、軍隊に直ちに帰還させよ!
雇用と医療と教育のために税金を使え、戦争と占領のために使うな!」
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