シリーズ<マスコミが伝えないイラク戦争・占領の現実>その5 |
イラク自衛隊は「人道復興支援」などやっていない! |
◎イラク占領支配=対米軍事支援の純軍事的本質がむき出しに
◎派兵延長など言語道断。改めて自衛隊撤退を求める
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大野防衛庁長官は7月19日、陸上自衛隊の第6次部隊と交代する「第7次イラク復興支援群」に派遣命令を出した。7次部隊は第4師団(福岡県春日市)を中心に約500人で構成。派兵期間は3カ月間、7月末以降に順次派遣される予定だ。小泉政権はいつまで暴走を続けるつもりなのか。派兵作業を今すぐ中止すべきである。
すでに自衛隊派兵の虚構は2つとも完全に崩れている。第一に「非戦闘地域」の虚構、第二に「復興支援活動」の虚構。−−私たちは、改めて自衛隊の撤退を要求する。以下、マスコミが伝えないところで、現地自衛隊はどうなっているのか、なにをやっている(やっていない)のかについて、最新情報をお伝えしたい。
※今月末からイラクへ=陸自7次隊、九州中心に編成−防衛庁長官が派遣命令(時事通信)http://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20050719-00000086-jij-soci
ブッシュは、自らが国連や国際法を無視してやったイラク侵略の失敗のツケを今払わされている。兵力不足が表面化しているにもかかわらず、13万8千人以上の米兵をイラクに張り付けざるを得ず、これ以上兵力を削減できない彼らにとって、同盟国軍の撤退を妨害し残留を懇願すること、「有志連合軍」=多国籍軍の崩壊を食い止めることは死活問題になっている。派兵米兵を増員したり、予備役・州兵の動員を増やすことも極めて難しくなっている。新兵募集は危機的状況に陥っている。共和党内部からもイラク撤退論の声が上がり、イラク戦争についてのブッシュ政権への支持率が急落している。
これに追い打ちを掛けるように、首席大統領補佐官ローブのスキャンダルが再び浮上し解任の動きも出ている。ブッシュはすでに年金と社会保障制度改革問題で失敗して支持率を下げており、内政面、外交面の両方で急速にレームダック化している。
小泉は、このような末期症状にあるブッシュにどこまで忠誠を尽くそうというのか。自らも郵政民営化問題で瀬戸際にある。ブッシュが小泉を頼り、小泉がブッシュを頼ろうとしても、双方が末期症状を見せている下では、彼らは何の展望も見い出せなくなっている。半年前、1年前とは様変わりである。イラク戦争・占領の「泥沼化」は、この日米の2つの帝国主義同盟を着実に衰退と行き詰まりの淵に追い込んでいる。
2005年7月19日
アメリカの戦争拡大と日本の有事法制に反対する署名事務局
(1)初の路肩爆弾の被弾。遂に陸路でイラク・サマワに移動できなくなった自衛隊。
サマワの自衛隊が置かれている状況は派兵開始以来最悪の状況にある。本当にいつ自衛隊員に犠牲者が出てもおかしくない状況にある。6月23日には、ついに自衛隊の車列が路肩爆弾で狙われた。爆弾は自衛隊であると確認した上で爆発させられた。はっきり狙われたのだ。無装甲の高機動車の損害が軽微で済み、死傷者が出なかったのは、迫撃砲弾転用の火薬の威力が弱かったのが幸いしたからである。
更に、7月4日には自衛隊宿営地に迫撃砲弾が撃ち込まれた。1発が宿営地敷地内に着弾し(不発)、4発が宿営地の上を飛び越えて敷地外に着弾爆発した。この攻撃について「イラク・イスラム軍」が犯行声明を出し、武装した数人の男が攻撃を行う姿も地元住民に目撃されている。暗がりで発射して宿営地の上を飛び越えたということは、単に距離の目測を誤ったからである。宿営地を狙った攻撃であることは明らかだ。
これらの最近の一連の攻撃は、従来の政府が流してきた「地元の部族の仕事をよこせという脅し」とは全く異なる。このような事態を受けて、自衛隊はとうとう陸路での移動ができなくなった。7月7日にイラクに入ったイラク復興業務支援隊第4次隊の約80人は、陸路では攻撃を受けることを恐れて、イギリス軍のヘリに乗って空中から宿営地に入った。これは極めて異例な事態であり、自衛隊自身が「サマワは安全」「戦闘地域ではない」という従来の主張を覆したということである。
*サマワ 陸自車列わきで爆発 走行中破損、日本標的の可能性(産経新聞)
http://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20050624-00000000-san-int
*宿営地飛び越え着弾 サマワ爆発音で大野長官(共同通信)
http://news.www.infoseek.co.jp/topics/society/iraq_bill.html?d=05kyodo2005070501000573&cat=38
*英軍ヘリでサマワ入り=イラク4次隊80人−治安緊迫で陸自(時事通信)
http://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20050707-00000221-jij-int
自衛隊が駐留しその「安全」を依存するサマワの情勢自身が、失業と生活苦の長期化、一向に改善しないインフラ基盤、占領体制に対する不満の増大等々によって緊張感が高まり、急速に不安定化している。6月28日にはイラク当局に対して仕事を求める失業者のデモにイラク警察が発砲し一人が死亡、数人が負傷した。これに対する報復の迫撃砲攻撃が続いている。サマワでも占領に反対するサドル派の支持が広がっている。こうした現地サマワにおけるイラク当局と民衆との矛盾・対立の深まりは、同時に占領軍に加担する自衛隊との摩擦・対立を拡大することにもつながっている。自衛隊への攻撃の可能性が急速に高まっている。
*サマワで衝突、12人重軽傷 失業者と警官隊(共同通信)
http://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20050628-00000274-kyodo-int
*サマワで再び砲撃か サドル師派衝突で謝罪要求(共同通信)
http://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20050630-00000051-kyodo-int
(2)自衛隊の銃撃・発砲は「民間軍事請負会社」(PMF)が肩代わり。
「非戦闘地域」というフィクションが崩れ去っているだけではない。自衛隊とサマワ宿営地の警備、物資輸送の警備、サマワに常駐する外務省職員の護衛を「民間軍事会社」(PMF)に全面的に依存していることにも、それは現れている。すなわち、「戦闘地域」に投げ込まれながら、銃撃条件に厳しい制約が課されているという矛盾を切り抜けるため、民間の傭兵に肩代わりさせているのである。
サマワ宿営地の警備は、一説によればイスラエル資本のAIAという民間軍事会社が請負い、自衛隊の車列や物資輸送の警備はイギリスの「セキューリティフォース・インターナショナル」が請け負っている。更に外務省職員の警護には(バグダッドの大使館の警護も)イギリスのリスク・コントロール社が当たっている。宿営地と車列の警備は自衛隊が直接雇うのではなく、イラクの業者が「雇い」、業者に支払われるカネの中から払われている。しかし、実際には自衛隊が傭兵を雇っているのと何ら違いはない。これら民間軍事会社の要員は、「身の危険を感じれば」直ちに発砲するように訓練されている。自衛隊はこのような傭兵によって制約された自分の武力行使能力を補っているのだ。「非軍事的活動」のフィクションも完全に崩れているという他ない。
しかも、仮に自衛隊員が直接イラク民衆に発砲しなくても、この傭兵たちが発砲すれば、結局それは自衛隊の発砲と同様の責任を負うのであり、日本が公然とイラク民衆を攻撃したという新しい段階に引きずり込むことになるのである。侵略戦争への事後的な参戦、占領支配への加担という既成事実から、イラク民衆への銃撃、更には殺害・虐殺という戦争犯罪行為の深みにはまり込んでいくのである。
*綿井健陽のイラク現地報告 http://www.asiapressnetwork.com/depths/library/20041228_01_02.html
*第162回国会特別委員会での答弁
http://www.shugiin.go.jp/itdb_kaigiroku.nsf/html/kaigiroku/013316220050512005.htm
[2]「人道復興支援」などやっていない自衛隊−−純粋軍事的な存在が露呈。
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(1)今、自衛隊はイラクで何の仕事もしていない!
「非戦闘地域」というフィクションが路肩爆弾と迫撃砲弾で完全に吹き飛んだとが明らかになった。同時に、もう一つのフィクションも完全に崩れた。「イラク特措法」で設定された自衛隊の任務が、アリバイ的なものも、ほとんど無くなったからである。今、自衛隊はイラクで何の仕事もしていない!
「イラク特措法」とそれに基づく「基本計画」は、下記の通りである。
@「自衛隊の部隊などが行う人道復興支援」
a 給水
b 道路の復旧
c 学校など公共施設の復旧
d 病院の復旧と相談 などがあげられている。
Aこれとは別に外務省が職員を派遣して行う「イラク復興支援職員による支援」
−−このうち@のaは今年2月には完全に終了した。はじめから指摘されていたように自衛隊が供給したのは1日200トンあまりと少量で、一時しのぎにすぎず、結局本格的な浄水施設の整備・設置をODAで行ったために自衛隊の活動が不要になったのである。
−−bの道路の復旧なども、自衛隊ができる道路に砂利を敷く程度の復旧では何の役にも立たなかった。結局早い時期からイラク人業者を雇い、本格的な舗装まで工事をしてもらっている。自衛隊は「監督」と称してたまに現場を見に来るか、「完成式」に列席するだけである。これはすでに自衛隊の任務ではなくAの仕事、つまり外務省の仕事である。
−−cも業者を雇っており、自衛隊員が直接復興活動をしているのではない。何よりも自衛隊員が外に出て作業できる状況ではない。また工兵部隊が自分で工事できるような状況でも、その程度の急造の工事で間に合うものでもない。現地には自衛隊員よりもはるかに専門的な知識を持った業者が存在する。その業者にカネを払って仕事をしてもらっているにすぎない。結局道路復旧も公共施設復旧も、特措法が規定するように自衛隊員が直接行うのではなく、カネを払って業者にしてもらっているだけだ。しかし、イラク人の雇用は自衛隊の任務ではない。
−−dの病院の復興についても、自衛隊の医官は症例研究会に顔を出す程度で、後は寄付した機器の使い方の説明をしているだけだ。結局、はじめからわかっていたことだが、本格的な修復は自衛隊などの手に負えるものではないのだ。そして、イラクにおける日本の復興支援計画の中心もイラク戦争と長年にわたるアメリカの経済制裁によってずたずたにされたインフラの整備、「発電所の建設」など大型のODAプロジェクトに移行しつつある。
(2)イラク自衛隊のふざけた日常活動の実態−−宿営地への“籠城”と「現場確認」「完成式列席」
それでは自衛隊は毎日何をしているのか。自分が雇用したイラク業者の工事ができあがったら、現場の確認と完成式に出ているだけだ。本来想定した任務=「自衛隊の部隊などが行う人道復興支援」は何もしていない。名目的な「給水活動」が終了した現在、自分がする仕事は何も残っていないのだ。自衛隊員の多くは給水活動もなく、道路補修や公共建築物の補修もなく、街で攻撃されることを避けて、ひたすら宿営地にこもっているだけなのだ。
本来、「イラク特別措置法」、それに基づく「基本計画」はイラクの復興を直接自衛隊が行うためと称して作られた。それははじめからフィクションであり、直ちに現実に合致しないことが明らかになった。給水活動はフランスのNGOがごく少人数で行っている活動に及びもつかなかった。復興活動は現地には本格的な技術と装備を持つ業者がおり、砂利を敷くだけの舗装や一時しのぎの施設補修しかできない中途半端な自衛隊の技術では太刀打ちできなかった。結局、イラク政府なり現地の県当局、市当局に資金を提供してできる仕事を、わざわざ自衛隊が直接雇用する形にして、自衛隊が役立っているかのように演出しているだけ、札束でサマワの「好感度」を買っているだけなのだ。イラク派兵自衛隊は直ちに撤退させるべきである。
このような状態にある自衛隊派兵の延長を行うことは、任務のない自衛隊員を文字通り人身御供として差し出し、わざわざ危険に晒すだけである。米国のために、同盟国である証を示すために自衛隊員を犠牲にしようとする政府に断固反対である。
*防衛庁 イラク人道復興活動の実績 http://www.jda.go.jp/j/iraq/leaf/report/pamph_j.html
【参考】自衛隊の具体的な活動を知りたければ、陸上自衛隊のホームページを見ればよい。
例えば、2005年6月に彼らのやった活動が写真入りで列挙されている。それを見れば、以下のように式典か状況確認、偵察!、視察ばかりで、汗水をたらしてイラク人とともに復興作業をしている自衛隊員は一人もいないことがわかる。
・マジッド郡内道路及びアルブ・ギター道竣工式、サマーワ民政局アスファルト舗装機材供与署名式(7月7日)
・陸自の活動継続を望む日本ムサンナ友好協会の宿営地来訪(6月26日)
・ルメイサ・スタジアム竣工式(6月22日)
・公共施設等の復旧整備(6月21日)ワルカ浄水場施工状況確認/
ベイザPHC現地偵察
・公共施設等の復旧整備(6月16日)インテサルPHC現地偵察/アル・ミサック中学校施工状況確認/ハッティーン小学校施工状況確認/アル・イザハラ女子中学校施工状況確認
・ムタワク橋現地視察 (6月14日)
・復興支援活動(6月13日) マジッド水道管施工状況の視察/県医薬品倉庫医療支援
・公共施設等の復旧整備(6月11日)ワルカ浄水場補修状況確認/ルメイサ市街地道路補修状況確認/ルメイサ浄水場現地偵察
・復興支援活動(6月8日) ハビブ・イブン・ムダーハル小学校の竣工式/ハビブ・イブン・ムダーハル小学校の竣工式/母子病院に対する医療技術指導
・公共施設の復旧・整備(6月7日) スワル診療所の竣工式/ワルガ浄水場の施工状況確認/アル・ホールド小学校の施工状況確認/アル・アグラス小学校の施工状況確認
*陸上自衛隊のホームページにある復興支援活動
http://www.jda.go.jp/jgsdf/iraq/iraq_index.html
自衛隊居座りの理由に「まだ復興が完成していない」を挙げるなら、それはデタラメも良いところだ。「人道復興支援」などやってもいないのに、そんな理屈が通る訳がない。あるいは「治安が安定していない」と屁理屈を言うなら、その原因は何なのか、私たち国民に答えるべきである。なぜブッシュが主張した「戦闘終結宣言」以降2年以上も経つのに電気も水道も下水も医療も学校も、およそ市民生活に必要な基本的なインフラが回復しないのか。米英軍は無法にもイラク政府と国家機構を何の正当な理由もなしに侵略し破壊した。それまで国家機構の中心をになったスンニ派の住民を徹底的に弾圧し、大量虐殺まで行って、イラクの全住民を代表する政府を作れなくしている。
米英占領軍が撤退しない限り、そしてそれを支える多国籍軍、自衛隊が占領体制から手を引かない限り、武装抵抗闘争は絶対に終わらない。武装抵抗闘争が続く限り、米英占領当局は自国の多国籍企業に「復興」ビジネスを担わせることが出来ない。結局は、ハリバートンやベクテルなどブッシュに近い一部の軍産複合体と石油企業と民間軍事請負会社に石油収入が消えていくだけである。イラク市民のためのインフラ復興、産業復興、雇用拡大にはほとんど使われない。イラク再建が一向に進まないのは米英の占領体制が完全に行き詰まっているからである。占領支配を続ける限り復興など出来ない。米英軍と多国籍軍・自衛隊は直ちに占領をやめ撤退すべきである。
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