シリーズ<マスコミが伝えないイラク戦争・占領の現実>その16
英軍による許し難い蛮行。バスラ警察署攻撃を糾弾する!
−−「憲法押し付け」を前に米英占領軍とサドル師派との対立が激化
−−緊張激化がサマワにも波及。自衛隊の即時無条件撤退を

(1)公然たる主権侵害。植民地主義的な蛮行
 9月19日、英軍はバスラ警察に拘束された二人の特殊部隊員を奪還するために8台の戦車、装甲車とヘリコプターを投入し、バスラ警察署の壁を破壊し、5人の死者を含む多数の住民を殺傷した。二人の特殊部隊員はイラク人風の服を着て、秘密活動に従事中にイラク警察官に疑われ、反対に2人の警官を射殺したので逮捕・拘束されていたものだ。
 英国政府は当初、「壁は意図的に壊したのではない」「イラク当局と話し合いの結果」と全く嘘の発表を行った。嘘がばれるや「イラク警察が身柄をわたすべきなのに拒否した」「サドル師派民兵に引き渡す恐れれがあったので救出に踏み切った」と特殊部隊員の犯罪を棚に上げて、まるでイラク警察が悪いかのような声明を出し、英軍の蛮行を正当化した。そしてサマワの裁判所が事件後、この二人の英軍兵士に再度逮捕状を発行したが、これを拒否すると宣言した。
 バスラの英軍司令官ジョン・ロマリーは自軍による警察署襲撃を公然と賞賛し、この事件は世界中の英国兵を激励するものだ、もし人質に取られてもあらゆる手段で解放するとのメッセージを送り、テロリストには英軍は自国兵士を守るという意識を強めるだろう、と開き直ったのである。米紙クリスチャン・サイエンス・モニターは、英軍が2万5千人のバスラ警察がシーア派民兵に支配されてしまったので、これを解体し新たに作り直す計画である、と伝えている。襲撃は完全に計画的なものであったばかりか、それを正しいことと居直っているのだ。

 バスラ県知事は襲撃を非難し、謝罪と遺族への補償、英軍への非協力を宣言した。県評議会も英軍への協力停止を決議した。ジャファリ首相は沈静化に務めようと躍起だが、米英軍の傀儡である「移行政府」のメンバーの一部でさえ「目に余る主権侵害だ」と、この事件を非難している。バスラ市内では9月21日、短銃などで武装した警察官や一般住民約500人が「事件は英軍の蛮行だ」「英兵二人をイラク法廷でテロリストとして裁け」と気勢を上げデモ行進した。

 私たちは英軍のあまりの野蛮な襲撃、正真正銘の蛮行にあきれるばかりだ。徹底的に糾弾する。英軍はイラクで何をしてもいいのか。イラクの法律にも国際法にも縛られず、自分たちの作ったイラク警察にも従わず、文字通りやりたい放題なのか。対話や政治的解決を一顧だにせず、自国軍兵士が拘束された後直ちに装甲車で押しかけ、塀を破壊して武力で奪還する。英兵士を取り戻すためなら、イラク人など殺してもいいと考えているのか。これは植民地の扱い、いやそれ以下の扱いではないか。断じて許すことはできない。
※イラク南部 英軍、住民と衝突 拘束2兵士を強行救出
http://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20050921-00000012-san-int
※突入に抗議、対英協力停止 イラク南部バスラ州知事
http://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20050922-00000223-kyodo-int
※イギリスは、バスラの警察部隊を解体し取り替えるでしょう
http://www.csmonitor.com/2005/0926/dailyUpdate.html


(2)英軍特殊部隊員はバスラでいったい何をしていたのか
 最大の問題は、この二人の特殊部隊隊員(SAS特殊空挺部隊員)が何をしていたのかということだ。なぜ二人はイラク人警官を射殺したのか。英軍はなぜ、二人を奪還するために政治的交渉ではなく、戦車やヘリコプターまで投入する武力奪還を迫られたのか。−−あらゆる問題がこの兵士が何をしていたのかに行き着く。
 まず容易に察しが付くのは、彼ら問題の兵士がイラク警察に尋問され、裁判に掛けられ、彼らの行動が白日の下にさらされれば、ブレアと英軍が致命的な打撃を被ることをやっていたということである。尋問や裁判、自白の前に、とにかく即座に奪還しなければブレア政権の権威失墜になる、つまり何か「犯罪まがいのこと」「謀略的なこと」をやっていたのではないかと推察されるのである。

 チョフドフスキー氏の記事『「潜行活動」中の英兵士はブービートラップを積んだ車を運転していた』によれば、この二人の特殊部隊員はアラブの服を着て秘密活動(潜行活動)中であり、彼らの自動車からはブービートラップの点火装置が付いた爆薬(弾薬)が発見されたという。この事実は、英軍が警察署を襲撃する前にアルジャジーラTVが放送した情報と一致する。そして、イラクの国会議員のアル・シャイカ氏は、「英兵はシーア派の宗教行事でにぎわうバスラの市場にブービートラップを仕掛けた自動車爆弾を仕掛けようとしていた」と、衝撃的な証言を行ったのである。
※「潜行活動中」の英兵士はブービートラップを積んだ車を運転していた
http://www.globalresearch.ca/index.php?context=viewArticle&code=20050920&articleId=972

 特殊部隊員の行動に疑惑を投げかけているのはアルジャジーラだけではない。バスラのムクタダ・サドル師派の事務所は、直ちに「英兵士たちの逮捕は、彼らがバスラのモスクの近くで通行人を銃で撃ったのち直ちに行われた。そして彼らの所有物の中に軽火器と中火器その他のものと一緒に、爆薬と遠隔操作の装置も発見された」との声明を発表した。BBCも、特殊部隊員が爆発物を持っていた事実を認めていた。BBCは初期の報道で、彼ら兵士が実際に車の中に爆発物を持っていたと報道したのである。しかし、その後の報道では、「小銃(突撃銃)、軽機関銃、対戦車兵器、無線装置と医療セット」を持っており、「それは戦闘地域でのSASの標準装備だ」という報道にすり替えられた(英のサイトScotsma.comnによれば兵士はSASではなく2004年に対テロ戦争向けの情報活動のために新設されたばかりの特別偵察連隊SRRのメンバーという)。
 ワシントンポストも、20日の報道では、「イラク治安当局はイラク警察官を撃ち、爆弾を据えようと計画して逮捕された二人の英兵を非難した」と報じた。
※ムクタダ・サドル派のバスラ事件に対する応答− Achcar Translation
http://www.juancole.com/2005_09_01_juancole_archive.html
※イラクは兵士の事件を追求する(BBC)
http://news.bbc.co.uk/2/hi/middle_east/4264614.stm
※英軍は拘束された二人の兵士を解放するために刑務所を直撃した(ワシントンポスト)
http://www.washingtonpost.com/wp-dyn/content/article/2005/09/19/AR2005091900572.html



 米系の反戦サイトantiwar.comに載っている上記写真(配信元はロイター)を見れば、確かに自動小銃、軽機関銃と数百発分の機関銃弾、対戦車ロケット、大型の無線装置と携帯電話がある。そのほかに大型の鋏や起爆装置のように見えるもの、さらに大型のコイル状のものや電気装置のようなものが見える。すなわち、爆薬、ブービートラップの存在も否定できない。
※ヘッドラインの背後で
http://antiwar.com/justin/?articleid=7366

 私たちが調査するだけでも、これだけの疑惑があるのだ。二人の特殊部隊員の嫌疑は極めて重大である。いったい彼らは何者であり、どんな任務についていたのか、ブレア政権と英軍は、バスラ市当局とイラク国家、イラク民衆全体に、そして国際社会に対して答える義務がある。


(3)イスラム原理主義者を装い“自動車爆弾テロ”を画策していた「謀略説」が浮上
 英軍は本当に爆弾をシーア派の宗教行事で非常に多くの人々が集まる市街地のど真ん中で爆発させるつもりだったのか。イスラム原理主義者を装い無差別テロを仕掛けようとしていたのか。この事について、そんな馬鹿なことはあり得ない、と済ませるわけにはいかない。
 英軍自身がこのような謀略作戦を過去に実行しているからである。北アイルランド紛争の際に、特殊部隊員をIRAの工作員として送り込み、爆弾事件に関係させた過去がある。また、現在のイラクで米英占領軍は、憲法の国民投票が近づく中で、シーア派民衆を標的とする爆弾事件をでっち上げ、スンニ派に対する憎悪を煽り立て、米国製憲法を押し付ける雰囲気を作り出そうとしている。占領軍にとって、シーア派とスンニ派との対立と内戦の危機は歓迎すべき事なのである。

 現に私たちは、様々な謀略事件が続発していることを様々な証言者から聞いている。カナダ系の左派系サイト「グローバル・リサーチ」に発表された記事『英特殊部隊員はバスラで爆破を計画していたのか?』(ミハエル・キーファー)は、米CIAが関与すると広く噂されている謀略事件についてのアメリカ人ジャーナリスト、ダールジャーマイル氏の数々の報告を紹介している。
 また、イラク人女性リバーベンドが書いているブログ「バグダッド・バーニング」は、西バグダッドの爆弾事件で住民が逮捕されたのは、米軍の犯人を目撃したからだ、と紹介している。また、今年8月に訪日したイラク人ジャーナリスト、イサム・ラシード氏も、米軍黙認の下での「イラク警察」の格好をした部隊による殺人事件や「無差別テロ」が起こっているという衝撃的な事実を明らかにした。これら一連の犯行は、米CIAの指揮下で、シーア派やクルド人の民兵らからなるイラク傀儡政府の「諜報機関」メンバーが、秘密裏に行う「謀略」なのである。今回の英軍兵士も、爆弾を使ったり、民衆への発砲事件を組織する「挑発者」であった可能性は否定できない。
※英特殊部隊員はバスラで爆破を計画していたのか?
http://www.globalresearch.ca/index.php?context=viewArticle&code=KEE20050925&articleId=994

 たとえ爆弾事件、「無差別テロ」を引き起こそうとしていたのではないとしても、それではいったいこの特殊部隊員は何をしていたのか。一部の報道は彼らが警察署を内偵(監視)していたと書き、あるいは住民に銃を向け撃った(その通りなら謀略事件だ)となっている。しかし、内偵をしていたにしては明らかにおかしい装備だ。英軍は「SASの標準装備」とうそぶくが、対戦車ロケットまで持っていたのは明らかに異常だ。場合によっては銃を撃ち、機関銃を数百発も乱射し、対戦車ロケット弾を撃つ可能性がある任務とはどんなものか? 特殊部隊員がそのような重大な(あるいは謀略的な)任務に就いていたからこそ、英軍は交渉などせずに有無を言わさず戦車で警察署に突っ込んで腕ずくで英兵を奪い返したのであろう。
 それはどんな任務か。どう考えても通常の内偵や情報収集ではあるまい。もしそうなら、なるべく怪しまれない格好をするはずである。イラク警察に怪しまれたり、調べられれば言い訳ができない爆薬や対戦車ロケットなどを携行するはずがない。明らかになった彼らの装備が指し示している事実は、彼らが内偵や情報収集などよりもっと謀略的で危険な任務、例えばイスラム原理主義者になりすまし「無差別テロ」を工作する「謀略作戦」の任務に就いていたことを暗示しているのである。


(4)バスラの軍事政治情勢が激変−−イラク南部最大の拠点で、英軍の占領支配が破綻
 事件後にバスラを巡る政治的状況が大きく変わろうとしている。イギリスのメディアは次々と、「バスラ警察にはシーア派民兵(サドル師派の民兵マハディ軍とイラク・イスラム革命最高評議会(SCIRI)の民兵バドル軍)が浸透していた」「今回の事件は英軍とこれら民兵の間の政治的対立、緊張激化の延長線上のものであった」と書き立てている。すなわち、「バスラのイラク警察はテロリストの息のかかったサドル師派に乗っ取られている」「英軍はテロリストと戦っているのだ」「だからテロリストの警察から兵士を奪い返して何が悪い」と言うわけだ。

 事件の伏線には英軍とサドル師派との対立激化があったのは確かだ。事件の前日前に、バスラでサドル師派の宗教者が英軍に逮捕された。英軍がバスラのサドル師派に先制攻撃をかけようとしたのだろう。事件当日、バスラ市内ではサドル師派が、逮捕された宗教者の釈放を求めて抗議行動を行っていた。当然、特殊部隊員の警官への発砲と逮捕が、民衆を怒らせ、さらに英軍が刑務所を戦車や装甲車で取り囲んだことが人々を激昂させたのは間違いない。民兵も含めて人々が英軍の装甲車に火炎瓶で対抗した。これを見て、英軍が兵士の生命の危険を感じるなり、聖職者との交換に人質に取られる危険を感じたということもあり得ただろう。しかし、どう考えても、そのことが現地住民を殺し、警察署を破壊したことを正当化しはしない。

 私たちにとって決定的に重要なことは、米軍の占領支配を南部地域で管轄する英軍の占領支配がバスラにおいて根底から動揺し、権威を失墜させ、占領統治そのものが破綻したという事実である。バスラでシーア派の人々、とりわけバスラ統治に決定的影響力を持つサドル師派が、バスラを占領統治する英軍への協力を最後的に捨てたという事実である。英軍は米軍を全面的に支援してイラク南部の占領支配を受け持ち8500人の英軍部隊を占領に送り込んでいる。
 英軍の占領担当地域がこの程度の数の兵力でコントロールできたのは、占領の最初からシーア派が治安維持に協力してきたからである。バスラは150万の人口を持つ都市である。ここを中心としたシーア派はサダム体制に抵抗していたが故に多くがフセイン体制の崩壊を受け入れ、その後も地域の治安維持はシーア派の人々による警察と民兵がカバーしてきた。この協力無くして南部の英軍によるコントロールは不可能であった。2万5千人の警官が協力して初めて8500人の英兵が南部の占領体制を維持できたのである。この根幹が今、土台から揺らいでいるのである。
 
 今更、先に紹介したような馬鹿げた方針、つまり2万5千人のイラク警察を解体して、一から警察機構を再組織することなど不可能である。事はバスラの2万5千人の問題だけではない、傀儡の「移行政府」の下で構築されつつあるイラク警察、イラク軍の半数以上はバスラと同様シーア派の民兵と関係する人々によってできている。ブッシュとブレアにとって、その「出口戦略」を策定するためには、10数万人のイラク軍と警察からなる治安機構の再建の正否が“生命線”なのである。同じシーア派とは言え、サドル師派と対立するバドル軍だけでは治安維持機構の再建は不可能である。サドル師派の部隊の協力なしには、特に南部地域では占領部隊を削減することなどできはしない。

 サドル派だけではない。米英はイラク南部でイランの影響力が強まることを極度に恐れている。すでにイランからテロリストに武器が流れ込んでいると考え、その遮断作戦を行っている。(特殊部隊員がこの種の作戦に従事していた可能性もある)。しかし、そうだとすると、サドル師派だけでなく、イランの影響力のより強いイラク・イスラム革命最高評議会(SCIRI)とその民兵であるバドル軍をも敵に回すことになる。

 バスラの治安はこの2年間いわばサドル師派とSCIRIの民兵バドル軍が内部で対立と闘争を繰り返しながらも守っていた。英軍はその協力なしに何もできない。コントロールできない。今回の事件を契機に関係は一層悪化し、英軍のコントロールは基礎から崩壊する可能性が出てきたのである。


(5)バスラ情勢の急変は、サマワ、バグダッドなど、イラクの軍事情勢全体にも波及
 イラクでの憲法を巡る国民投票を前に、英軍とサドル師派の対立が激化している。サドル師派は現在の憲法草案に反米・反占領の立場から反対である。イラクの内部分裂を回避するために、スンニ派との共同行動を強めようとしている。今度の事件で米英の占領体制は更に行き詰まりと破綻の様相を見せ始めている。イギリス国内で強まる撤退要求の声を前にしてブレアはますます苦しくなっている。

 バスラでの軍事情勢の激変の影響は単にバスラにとどまらない。同じ英軍が管轄するサマワでも、米軍が牛耳るバグダッドでも、軍事占領支配を決定づけるイラクの軍事政治情勢全般に影響を及ぼそうとしている。
−−まず、バスラでの英軍とイラク警察・イラク民兵との対立の激化によって、英軍は、市街地のパトロール、英軍兵士の配備を大幅に減らさざるを得なくなっている。英軍兵士が警察、民兵、民衆に攻撃される可能性が高まってるからである。現に最近、イギリスの外交官の宿舎に迫撃砲弾が撃ち込まれた。
−−バグダッドにも波及している。サドル師派のもう一つの拠点であるバグダッドのサドルシティでもサドル師派と米軍の間に激しい戦闘が起きている。
−−さらにサマワでも英軍とサドル師派との対立が先鋭化している。最近、英軍関係施設に迫撃砲弾が撃ち込まれてた。英軍だけではない。英軍の庇護の下、米英占領軍に加担する自衛隊にサドル師派の攻撃の矛先が向くこともあり得る事態である。日本も他人事ではないのだ。自衛隊の占領加担を直ちにやめさせ撤退させるのでなければ、イラク民衆の反感を買い、サマワの住民と自衛隊との対立が先鋭化し、自衛隊が関与する形でイラク市民あるいは自衛隊員に犠牲が出る可能性が大きくなっているのである。
※南方の不快(アジアタイムス)
http://www.atimes.com/atimes/Middle_East/GI24Ak02.html
※英軍基地に迫撃弾か イラク南部サマワ
http://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20050928-00000030-kyodo-int

 
(6)英豪軍及び自衛隊撤退の観測が浮上。反戦運動の力で自衛隊撤退を勝ち取ろう
 バスラ情勢の急変に照応するかのように、英豪軍、自衛隊の撤退の動きが観測気球として浮上し始めた。かつてないことである。
 まず、9月25日付の英紙オブザーバーがすっぱ抜いた。英軍が来年5月に本格撤退を開始するとした多国籍軍の「撤退計画文書」を、英米両政府が来月中に発表すると伝えたのだ。しかも英政府は既に、自衛隊が駐留するサマワなどから英軍を撤退させる方針を日本政府に「内密に」伝えたという。もちろんブレア首相は即座に、「イラクの治安当局が国内の安全を維持できるまでイラク駐留英軍は撤退しない」と、これをうち消したが、英軍撤退論はくすぶり続けている。
 これに続き翌26日、オーストラリア軍の司令官も、サマワを含むムサンナ州の同国軍部隊約450人を「来年5月までに撤退すると予想している」と述べた。このことが更に英軍撤退論に拍車を掛けている。
※英軍、来年5月イラク撤退 来月発表と英紙
http://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20050925-00000030-kyodo-int
※来年5月までの撤退予想 ムサンナ部隊で豪司令官
http://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20050927-00000100-kyodo-int
※イラク駐留英軍、撤退時期は未定=ブレア首相
http://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20050926-00000730-reu-int

 サマワの情勢は緊迫の度を強めている。9月23日、イスラム教の金曜礼拝におけるサドル師派の集会で、宗教指導者が、バスラでの英軍とイラク警察との衝突事件を非難し、「サマワに駐留する英国軍は市街地に入るな」と警告、英軍の撤退を要求した。また、25日には、砲弾がイラク警察の機動隊施設付近に着弾し爆発した。その後、サドル師派民兵と警察との間で銃撃戦が起きた。
※英軍は市街地に入るなと警告=サドル師派、バスラ衝突で非難−サマワ
http://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20050923-00000100-jij-int
※サマワ市街地に砲弾着弾=銃撃戦も、サドル派反発か
http://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20050926-00000031-jij-int

 このような中、読売新聞は9月29日の朝刊の一面トップで「イラク陸自、来年前半の撤収検討…米英豪と協議へ」というすっぱ抜き記事を発表した。小泉政府のリークである可能性が高い。記事に寄れば、「日米英豪4か国は29日から10月3日まで、ロンドンで外務・防衛担当幹部や制服組らの会議を開き、サマワに駐留する陸自と英豪軍の今後の活動を協議する」「今年末にイラクの本格政権が発足する予定のうえ、サマワの治安維持を担当する英国や豪州軍が来年5月前後の撤収を検討していることを踏まえたものだ」という。
※イラク陸自、来年前半の撤収検討…米英豪と協議へ
http://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20050929-00000002-yom-pol

 全世界のイラク反戦運動は、大きな正念場に差し掛かっている。バスラ事件をきっかけに英軍の統治能力は破綻し、イラクの民衆とイギリス国内の反戦運動は英軍撤退でイラク反戦の声を集約しつつある。ブッシュも、今夏以来、イラクで戦死した遺族であるシンディ・シーハンさんの反戦の座り込みをきっかけとする反戦平和運動の高揚の圧力で、またカトリーナの襲来に全く対応できなかった責任を問われ、支持率が就任以来最低を記録している。
 小泉首相は、今年12月14日に期限が切れるイラク特措法の派遣期間を1年間延長する方針を打ち出そうとしている。サマワの情勢が緊迫し、英政府すら撤退論をリークする状況である。言語道断、全く許し難い方針である。先の衆院選で小泉は圧勝はしたが、イラクへの自衛隊居座りが「白紙委任」された訳ではない。ブッシュやブレア、そして小泉の都合による「撤退」ではなく、世界の反戦運動の力で米英軍と自衛隊の撤退を勝ち取っていこう。 

2005年9月30日
アメリカの戦争拡大と日本の有事法制に反対する署名事務局




「潜行活動中」の英兵士たちは偽装爆弾(ブービートラップ)を仕掛けた車を運転中に逮捕された。
「彼らは任務が何だったか言うのを拒否した。」
British "Undercover Soldiers" Caught driving Booby Trapped Car
"They refused to say what their mission was."

2005年9月20日
グローバルリサーチ

以下のロイターの報告はいくつかの気がかりな疑問を提起する。

なぜ、潜行活動中の英国「兵士」はイラク警察官に向けて発砲した時に伝統的なアラブのスカーフを身につけていたのか? 

その事件は、バスラでの大きな宗教行事の直前に起こった。

報告は、警察官が英国兵達を「怪しい」と思ったことを示唆している。彼らの任務の性質は何だったのだろうか?

占領軍はイラクの当局と協力していると考えられている。イギリス軍は潜行活動をしている諜報員を解放するために、なぜ戦車や装甲車で刑務所を強襲する必要があったのだろうか?

「イギリス軍は、拘置所の壁を壊して突進し、2人のイギリス軍人を解放するために」、ヘリコプターに支援された「10台もの戦車を使った。」

イラク国家警備隊によって拘束されていたイギリス「兵士」が、自分たちの潜行任務の性質と目標を明かさざるを得なくなるという懸念があったのだろうか?

刑務所への攻撃に先立つ、あるアルジャジーラTVの報告は、イギリスの秘密活動中の兵士が弾薬を装填した偽装爆弾を仕掛けた車を運転していたと示唆している。そのアルジャジーラの報告はまた、イギリス軍の存在に向けられた暴動は、秘密活動中のイギリス兵がバスラの中心で偽装爆弾自動車を爆発させようと計画していたことに動機づけられたとも示唆している。

[ニュースキャンスター;アル−ハビブ・アル−グライビ]イラクの国会議員であるバグダッドのファタハ・アル−シャイクさんと電話でつながっています。この事件の詳細と事件を取り巻く事実はどんなものでしょうか?

[アル−シャイク]情け深い、哀れみぶかい、神の名において。平和なバスラの市民(神の息子)たちに対して、一昨日以来英国軍による挑発行為が続いています。無差別の逮捕が行われました。最も最近のものは、米軍の兵士を殺すテロ作戦を実行したという口実によるシャイク・アハマド・アル−ファルクシと二人のバスラ市民の逮捕です。これは根拠のない主張です。これを我々はバグダッドにある英国大使館の2等書記官[名前ははっきりしません]に確認しました。ほんの少し前に会ったときのことです。書記官は、これには証拠があると言いました。我々は断言します:あなたはこの証拠を出すか、あるいはこの問題を忘れるべきです。もし本当に真実を探したいなら、バスラの市民たちに対するイギリスの挑発からは離れて、イラク裁判所に頼らなくてはなりません。特に今日、バスラの市民たちが、イギリス人と見られるクレシダ型の車に乗ったイラク人でない二人の男を捕まえた時に起こったようなことから離れるべきです。それは弾薬を積んだ偽装爆弾を仕掛けた車で、バスラ中心部にある人気のある市場で爆発することになっていました。しかし、バスラの市民が彼らを逮捕しました。彼ら[二人のイラク人でない男]はそのとき、そこにいた人々に発砲し何人かを殺しました。逮捕された二人の人物は今、バスラの情報部にいます。彼らは国家警備隊に拘束されたのです。しかしイギリスの占領軍が彼らの犯罪を免じようと、今なお情報部を取り囲んでいます。

[アル−グライビ]バスラ選出の国会議員、ファタハ・アル−シャイクさん、どうもありがとうございました。

カタールのアルジャジーラ衛星TVの9月19日の報道のテキスト(強調を付け加えたもの)

これは孤立した事件か、それともあるパターンの一部か?

もっと深刻に、占領軍は同様の潜行任務にかかわったことがあるか?シリアのTV(2005年9月19日放送)は、次のように報告する:

数十万人のイラク人が宗教行事の記念日を祝うためにカルバラに向かっているときに、バグダッドの南のアル−マフムディアとアル−ラティフィアにある2つの検問所の近くで起こった2つの自動車爆弾の爆発で、10人のイラク人−−7人の警察コマンド、2人の民間人、一人の子供−−が殺され、10人以上が負傷した。

そして、バスラ−−それも同じ宗教行事を催している−−で起こった重要な事件においては、イラク警察が市民に変装した二人のイギリス兵を、彼らが警察官に発砲したことで逮捕した後、イラクのデモ参加者たちは警察署の近くで2台のイギリスの戦車に放火した。衝突が勃発する前に、8台のイギリスの装甲車が警察署を包囲した。現場にいた警察官は、二人の拘束されたイギリス人が伝統的なイラクのジャラバ[緩い袖なし外套]とかつらを身につけていたと述べた。

[斜字体による強調は引用者によるもの]

イギリスの下院によって、この事件の状況について、徹底した、独立の調査が命じられるべきだ。

マイケル・チョフドフスキィ

グローバルリサーチ編集者、2005年9月20日