テロ攻撃の影響で増大する貧困
世界の貧困化の増大に関する世界銀行報告(10/1)

 10月1日、世界銀行は9/11のテロが世界経済に与える影響と関連して、世界の貧困層(一日ドル以下で生活)が1000万人増加するという報告をだした。それによれば、貧困が悪化するとともに、5歳未満の子供が、さらに20000〜40000人死ぬかもしれないと推測している。貧富の格差拡大、途上国の搾取の元凶として世界の反グローバリズムの運動によって標的の一つにされている世界銀行は、自らが生み出したその実態をリアルに評価せざるを得ない。
 私たちはこれをアメリカの覇権主義、一国主義、グローバリズムによって世界の人民はいかなる犠牲を強いられるのかという報告として受け止めるとともに、「報復戦争」が今後継続するならば、この程度では済まず、戦争はアフガニスタンの民衆だけでなく、全世界の貧困層、飢餓層にとてつもない打撃を与えるという警告として受け止めたい。
 「世界同時不況」を加速・深刻化させ、全世界の貧困層、飢餓層を絶望の淵にたたき込むこと無しにはアメリカはこの戦争を遂行することはできない。(以下抄訳 Я)



世界銀行報告
米国でテロ攻撃の跡に増大する貧困
  
さらに何百万人もの人々が、2002年に貧困に追い込まれる」(抄訳)

 2001年10月1日――米への9月11日のテロは、2001年と2002年に世界中の開発途上国の経済成長に損害を与え、来年さらに1000万人もの人々を貧困に追い込み、幼年期疾病および栄養失調との闘いを妨げるだろう、と世界銀行は今日発表された予備経済評価の中で述べている。

 9月11日以前には、世銀は、開発途上国の成長が、米国、日本およびヨーロッパでの減速の結果、2000年の5.5パーセントから2001年に2.9パーセントまでに落ちた後、2002年に4.3パーセントまで戻ることを期待していた。しかし、攻撃によって2002年の豊かな国々の回復が遅れるので、世銀は開発途上国の2002年の成長が0.5-0.75ポイントずつ低くなるかもしれないと、警告している。

 テロのために、世界中でさらに何万人の子供が死ぬだろう、また、さらに約1000万人の人々が1日当たり1ドルの貧困線以下で生活することになるだろう、と我々は推測する。これは所得の損失だけによるものである。開発戦略が混乱する場合、さらに極めて多くの人々が貧困にさらされるだろう。

 世界中で感じられる波紋

 世銀は、危機の前には、米国および他のOECDの国々が、2001年に1.1パーセント成長し、2002年に2.2パーセントまで回復するだろう、と推測していた。しかし、今では、OECD諸国のGDP成長率は、2002年に0.75-1.25ポイント低くなるかもしれない。これは、2002中頃までにビジネスが正常に戻り、消費者が過去の景気後退時と同じように金利引き下げに応え、また、新たな出来事がグローバル経済に衝撃を与えないこと、を仮定している。

 既に、高コストおよび経済活動の縮小が、グローバル貿易に水をさしているというサインがある。保険と安全のためのコストと税関手続きの遅延は、貿易のコストを押し上げる主要な要因になっている。例えば、大手の海運会社は、インドへの運賃を10〜15パーセントに値上げした。

 観光旅行に関連する貿易の流れは破格的に激しく打たれている。カリブ海で予定されていた休暇の約65パーセントがキャンセルされた。中東もまた、次の冬に観光旅行収入を激減させるだろう。

 9月11日の攻撃の後遺症は、開発途上国の異なるグループに、特にそれらの脆弱を反映して、異なる道で影響するだろう。輸出、観光旅行、物価、海外投資の減少の結果、景気後退へ失速し転落する、最も貧しい国々では、1日当たり1ドル未満で生活するる人々の数が、上昇するだろう。プラスであるがより遅い成長をしている国々では、事件がなかった場合よりもより少数の人々だけが、貧困から這い上がることができるだろう。

 低成長および景気後退は、開発途上国で最も脆弱な人々に、最も激しく打撃を与えるだろう。世銀は、9月11日の攻撃の経済的な結果がもとで、貧困が悪化するとともに、5歳未満の子供が、さらに20,000―40,000人死ぬかもしれないと、推測する。

 投資者がより安全な避難所へ逃れるとともに、既に弱い開発途上国への資本のフローはさらに衰えて、危機に対して比較的抵抗力があると考えられる国々に、ますます集中されるだろう。株式投資と融資の活動の両方がリスクのより低い国々で契約されるのに伴って、1990年代に確立した、開発途上国の資金調達のニーズに対し非常に大きなシェアを占めるという民間資本フローのパターンは、近いうちに逆転すると予想される。

 米国とOECD以外の国々で、9月11日の攻撃からの波紋は、特に観光旅行、海外に住む人々からの送金、海外投資に依存する国々で、世界の全ての地方にわたって感じられるだろう。

 最も打撃を受ける地域はアフリカであり、低い成長と収入の結果として貧困人口が2〜3百万人増加しそうな状況に加えて、さらに200万人が、物価下落のために、1日当たり1ドル未満での生活に追い込まれるかも知れない。物価は、今年平均に7.4パーセント下落すると予測され、9月11日の事件の結果さらに下がるだろう。農民、地方の労働者、その他の農業に関わる者が、負担の大部分を負うだろう。旅行と観光事業は、地域の商品輸出額のほぼ10パーセントに相当し、さらに混乱するだろう。サハラ以南のアフリカに住む貧しい3億人は、ほとんどの国々でセーフティーネットがわずかまたは存在せず、貧弱な家計は不景気を緩和するための最小の貯蓄しか持たないので、特に脆弱である。世界的な子供の死の増加のおよそ半分はアフリカで発生するだろう。

 原油価格は今$22/bblであり、攻撃に続く短い上向きのスパイクの後で、ちょうど9月11日の前よりも5/bbl低い。非石油商品の価格はさらに下落した。多くの農産物の先物は攻撃以来5パーセント下落した。これらの下落は、農産物3パーセント、鉱物5パーセントという、来年のさらなる物価下落の舞台装置を作るだろう。これらの価格は、1997-98の東アジア危機前の水準を回復しておらず、今、別のグローバルな下降に痛めつけられたのである。生産物の輸出に依存する経済にとっては、特に綿と飲料の輸出者にとっては、これは、GDP成長の低下の衝撃以上の、潜在的に大きな交易条件上の衝撃を予告するものである。
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