[番組紹介]
劣化ウラン戦争の恐怖を告発
テレビ朝日・サンデープロジェクト「検証!アメリカの戦争@ 見殺しにされた米軍兵士 米国が隠すイラク戦争『死の兵器』」
「検証!アメリカの戦争」と題する番組が、3回に分けて、テレビ朝日のサンデープロジェクトで放送された。番組は、アメリカの戦争犯罪と戦争利権を告発するものとなっている。今回紹介するのは、今年9月28日に放送された劣化ウランを厳しく批判するシリーズ第一弾である。
番組の内容は、劣化ウラン弾が湾岸戦争以来これまでずっと使われてきたこと、劣化ウラン弾が非常に危険であること、その放射線障害と健康破壊の深刻さは尋常ではないこと、等々を非常に分かりやすく映像で伝えていた。そして、劣化ウラン弾の危険性を充分に把握していたにもかかわらず、真実を隠し自国の兵士さえ見殺しにする米政府の非情を告発するものであった。以下に、その内容を紹介したい。
◆湾岸帰還兵の涙の意味。「この兵器は使うべきではなかった。アメリカはまた多くの人を傷つけてしまった。」
イラク戦争から2ヶ月たったバクダッドの映像がモニターに映し出されている。この映像を見て、涙を流している人物がいた。元米陸軍看護兵キャロル・ピクー:「この兵器は使うべきではなかった。アメリカはまた多くの人を傷つけてしまった。」−−この元米兵の涙の意味は何か?番組はその涙の意味を説き明かしていく。
アメリカによって様々なハイテク兵器が投入され、兵器の見本市とも揶揄されたイラク戦争。クラスター爆弾、バンカーバスター。その中で、イラク戦車部隊攻略の中心となったのは劣化ウラン弾だった。番組は、劣化ウラン兵器が対戦車破壊で抜群の威力を発揮すること、なのに放射性廃棄物、つまり厄介者の核のゴミ(米国内に約70万トン)から成り実に便利で安上がりな兵器だったことを明らかにする。だが一方で、命中した際、放射性と重金属毒性を持つチリを拡散し、放射性重金属のチリが人体、土、水、生態系を汚染、人間が吸い込むと長期にわたって身体を蝕む、とその環境と人体への放射能汚染の危険性を指摘する。米国はこの悪魔の小型核兵器を湾岸戦争(1991年)で初めて投入し、ボスニア紛争(1995年)、コソボ・セルビア紛争(1999年)を経て、今回のイラク戦争まで使い続けてきたのだ。番組はイラク・バスラ母子病院(2001年撮影)、ボスニア・ヘルツェゴビナ(2001年撮影)の子ども達の白血病、リンパ種、呼吸器系疾患などひどい放射線被害を映し出していく。
ここまではいわば劣化ウラン被害前史だ。以下で、いよいよ今回のイラク戦争で使われた劣化ウラン兵器の実態に迫っていく。
◆今回のイラク戦争でも劣化ウラン弾が使われた。番組は放射線量を実際に測定する。−−驚く専門家:「ウラン鉱床より高線量のウランの塊をばらまいたようなものだ!」
今年5月下旬、バグダッド近郊。イラク戦争から1ヶ月。劣化ウラン弾は今回、どのように使用されたのか。確かめるために、取材班は慶応義塾大学の藤田祐幸助教授に同行を求めて実際に放射線量を測定した。下記のような測定場面が続く。
バグダッド郊外に放置された米軍に破壊されたイラク軍戦車。そのうちの1台にこんな穴が開いていた。(映像で示す。)硬い戦車の装甲をやすやすと貫通している。放射線を計ってみる。日本の自然放射線(ガンマ線)標準80〜100ナノシーベルト/時だが、計測値はすでに10倍近い。戦車内部の汚染はさらに激しかった。
「すごい!1.52、1.55、1.53、1.53,1.35(マイクロシーベルト/時)。」日本の環境の実に16倍に達する放射線量。劣化ウラン弾による汚染だ。近くの住民たちは、戦車が汚染されていることを全く知らなかった、と言う。「汚染のことは誰も知らなかった。子供たちも戦車にのぼったりさわったりしていたよ。」
激戦地、イラク南部の都市バスラでも、計測した7台の戦車のうち4台から強い汚染を計測した。(戦車の映像)この戦車の場合、砲身の根元から劣化ウラン弾が入り、反対側に貫通している。恐るべき破壊力だ。放射能汚染は、周囲の22倍に達していた。劣化ウランのチリは、数ミクロンの小さな粒子。風に乗っていとも簡単に広がっていくと言われる。
戦車の上には、こんな看板があった。「冷たいコーラあります。」誰かが汚染された戦車とも知らず、店を開いていたらしい。
汚染されているのは、戦車だけではなかった。近くの製氷工場の中に入ると、一見して攻撃の痕がないのに、何故か汚染がある。製氷工場の壁は、周囲の1.5倍の放射線。奥には、氷を作るためのプールがあった。「天井から打ち抜いた弾が、あそこにもありますね。」天井を突き抜けた劣化ウラン弾が、プールのそこの鉄板を貫通していた。「ここはあります!ここはあります!ここは、(放射線が)強いですね!2.93、2.93」周囲の実に35倍以上の強い放射線を発している。「この黒い粉は非常に危険です!」
工場の経営者は、青ざめていた。劣化ウラン弾が、溶け出して地下水に入れば、汚染がさらに拡大してしまい、工場の再開どころではない。製氷工場のオーナー:「どうすればいいんだ・・・・」
番組は更に、イラク戦争で使われた劣化ウラン弾は実際にどれだけの放射線があるのか。製氷工場で見つけた黒い粉を厳重に封をして、日本に持ち帰り、分析を試みる。金沢大学・低レベル放射能実験施設だ。この施設は、地上では自然界の放射能に邪魔されて計測が難しいため、分析を地下で行う。金沢大学・小村和久教授:「今日は、この測定器を使って、テストしてみます。実際の試料を計ります。」
通常なら、丸一日かかる計測が、ほぼ一瞬で終わった。それだけ放射線が強かったのだ。分析の結果、破片は、高濃度のウラン238であることが分かった。肺などに吸い込んだとき、その強いアルファ線が、DNAを傷つけ、癌や奇形を誘発する恐れが強い。
小村教授:「ウラン鉱床よりも(放射線が)高いです。ウランの塊をばらまいている、と言うことになります。危険だと思います。」このきわめて危険性の高い劣化ウラン弾が、今回のイラク戦争では、都市部の人口密集地にも大量に使われていたのだ。
◆バスラの子ども達に襲いかかる想像を絶する重い放射線障害。
番組取材班は、劣化ウラン被害の最も典型的な患者が集中するバスラ母子病院を訪ねる。2年ぶりの訪問だという。病院は幸いにも今回は戦火を免れていた。しかし2年前、闘病中だった子供たちがどうなったのか?事態が更に悪化している現状に取材班は絶句する。
バスラ母子病院、ジョナサン・ハッサン医師:「(子供の写真を示しながら)この子は死にました。白血病でした。ほとんどの子供が死にました。」二人の子供は、薬のない状況の中で亡くなったと言う。肝がんの子供や癌と白血病を併発した子供が映し出される。
フセイン政権は崩壊したが、病室で、癌や奇病に苦しむ子供たちの絶望的な状況に変わりはなかった。
病院の統計によれば、湾岸戦争から4年後の95年に、子供の白血病などが増加し、さらに、99年に急増している。バスラ市の小児の白血病・リンパ腫患者数:グラフで示す。
バスラ母子病院、ジョナサン・ハッサン医師:「患者の発生する地域が広がっています。劣化ウラン弾の汚染が、風で広がったとしか考えられません。」
イラクは砂漠が多く、風をさえぎる物が少ないため、劣化ウランの汚染地域が拡大しやすい、と言うのだ。
◆何の防護、何の注意もしない米軍兵士達。
米軍に攻撃されるイラク国家計画省ビル。番組は、ここで発見した劣化ウラン弾を巡って、アメリカ兵の驚くべき反応を映し出す。劣化ウラン機関砲弾が映し出される。
記者:「劣化ウラン弾だ。」
米兵:「ここで見つけたのか。」
記者:「そうだ」
米兵:「くそ!」
記者:「ちょっと(放射線を)計ってみますか?」
「彼(米兵は)知らないですって。劣化ウラン弾のこと。」
何と、アメリカ兵ですら、劣化ウラン弾について、満足に知らされていなかった。米兵をも見殺しにする米国の「非情」論理だ。
バグダッド中心地。劣化ウラン弾の汚染状況を調べていた取材班は、人口密集地域で大量の劣化ウラン弾を発見した。元イラク政府国家計画省のビルだ。
慶応義塾大学・藤田祐幸助教授:「劣化ウラン弾、発見。」「まだ、いくらでも出るんでしょうね。ここにも一つ。」わずか30分の間に、劣化ウラン弾の弾頭6発、さや30個を見つけた。このまま放置したのでは危険だ、と取材班は米兵に撤去を要請する。しかしその答えは下記のようなデタラメなものだった。
記者:「劣化ウラン弾だ。」
米兵:「ここで見つけたのか。」
記者:「そうだ」
米兵:「くそ!」
記者:「知らなかったのか?」
米兵:「知らなかった。たまたまここに来ただけだから。」「なんてこった! 本部に連絡してくる。」驚くことに、アメリカは自国の兵士にすら劣化ウラン弾の汚染地域について知らせていなかったのだ。連絡を受けて上官がやって来た。
記者:「すごい放射線だ!」
上官:「危険だ!さわるな!」「これは劣化ウラン機関砲弾だ。」
上官の言葉を聞いていた取材班のイラク人通訳が怒り出した。
上官:「さわるな!放射線が強いぞ!」
イラク人通訳:「そんなに危険な物を何でイラク人に使ったんだ!」
イラク人通訳:「イラク人のための戦争って言いながら、イラク人を危険にさらしてるじゃないか!」
上官:「・・・そういったことは答えられない。」
上官:「この劣化ウラン弾をずっと持っていたのか? バカじゃないのか。」
記者:「ここが(劣化ウラン弾に)汚染されていると・・・」
上官:「軍の広報に聞け! 質問には答えられない。」
上官:「問答は無用だ! 劣化ウラン弾にさわるな!」
それでは、アメリカの兵士たちは、劣化ウラン弾の危険性について、事前にどこまで知らされていたのか?今回、イラク戦争の従軍取材を行ったシカゴトリビューン紙のレイ・クインタニーラ記者は、米陸軍第三歩兵師団と共に、クエートから北上し、バグダッド陥落まで同行した。
クインタニーラ記者:(映像を見ながら)「どうやってできたかは知らないが、この穴は確かに見たことがあるよ。」
質問:「劣化ウラン弾について、軍から聞いていましたか?」
クインタニーラ記者:「まったく聞いていません。化学戦用の防護服とマスクをつけたのは、初日の数時間だけ。破壊された戦車に放射能マークがついていましたが、誰も詳しくは、説明してくれませんでした。その時、周囲の兵士も私も防護服をつけていませんでした。」
クインタニーラ記者は、劣化ウラン弾について、米軍から何一つ聞かされず、我々の取材で初めて知った、と言う。しかも、米兵たちも劣化ウラン弾のチリを防ぐマスクなどをつけていなかった、と言う。アメリカは、自国の兵士にすら劣化ウラン弾の危険性をまともに知らせず、イラク戦争を行っていた。
◆湾岸帰還兵の驚くべき放射線被害。自国兵士をも見殺しにする米軍・米政府。
しかし、それはイラク戦争が初めてではない。あの12年前の湾岸戦争でも、米兵たちは、劣化ウラン弾について、何も知らされず戦争に向かったのだ。実は、冒頭ワシントンDCで、劣化ウラン弾汚染地域の映像に涙を流したあの女性、元米陸軍看護兵キャロル・ピクーもその一人だった。
12年前の湾岸戦争で、アメリカは勝利の美酒に酔った。しかし、そうした裏で、湾岸戦争に参戦した米兵たちは、体調を崩し、病に倒れていった。元米陸軍兵士ジェリー・ウィートもその一人だ。
ジェリー・ウィート:(黒い破片を示しながら)「これは、私の身体から摘出した破片と軍服などから集めた物だ。」
彼の体内に入っていた破片は、周囲の100倍の放射線を放つ劣化ウラン弾だった。ウィートは、湾岸戦争で装甲車を運転中、友軍の砲撃を受けた。湾岸戦争から帰国したウィートだが、いきなり異変に見舞われる。出迎えた息子が急に呼吸器の異常を起こした。ウィート自身も半年後、突然のめまいと吐き気、身体中の痛みに襲われた。そして、98年には左腕に腫瘍が見つかったのだ。
ウィート:「湾岸戦争の前、誰も劣化ウラン弾について教えてくれなかった。その後、身体から劣化ウラン弾の破片が出ても、尿から劣化ウランが出ても、軍の病院は、『劣化ウラン弾による健康被害はない』と言い続けた。」
そして、おびただしい数の湾岸帰還兵たちが、ウィートと同様な症状に襲われ始めた。
兵士たちは、軍に詳細な検査と治療を求めたが、軍はそれを拒否。ついに、ある元兵士が、1993年9月6日 米下院退役軍人問題委員会で軍を告発した。そう涙したあの元米陸軍看護兵キャロル・ピクーだ。
キャロル・ピクー:「もう私は、排泄がコントロールできなくなっています。でも、軍がくれたのは、(尿を出す)器具だけです。」
◆危険を知りながら平気で劣化ウラン兵器の安全を説くペンタゴン。
議員の働きかけもあって、ピクーはようやく軍で尿の検査を受けることになった。そして、劣化ウランが検出された。彼女は、20種類以上の薬に頼って生きている。
キャロル・ピクー:「甲状腺が働かず、背骨がおかしくなり、歯ももろくなりました。下半身の感覚もありません。しかし、政府と軍は、今でも『劣化ウラン弾は安全だ』と言い続けています。
劣化ウラン弾は、安全だと言い続けるアメリカ政府と軍。しかし、ここに一本のビデオテープがある。ほかならぬ軍が8年前に製作したものだ。
米陸軍製作 「劣化ウラン災害への注意」:「劣化ウラン弾のチリは、長期にわたって土壌と水を汚染する。安全のため、劣化ウラン弾の汚染に近づくな!」
劣化ウラン弾の危険性を警告するビデオが、何とアメリカ軍内部で作られていたのだ。
アメリカ軍が、95年に製作したビデオ。それは、劣化ウラン弾の危険を警告し、汚染された車両の処理の仕方。劣化ウラン弾で傷ついた兵士の処置の仕方まで解説している。軍が劣化ウラン弾の危険性を十分に知っていたことを示している。
「劣化ウラン弾で傷ついた兵士の処置。放射線計測機を使え。小さな破片を洗い流せ。忘れるな! 劣化ウラン弾の汚染から離れるように。」
元アメリカ陸軍少佐ダグ・ロッキ。核兵器や生物・化学兵器防御の専門家である彼こそ、軍の劣化ウラン弾ビデオと取り扱いマニュアルを作ったその当事者だ。湾岸戦争で、劣化ウラン弾の危険性を知らぬまま被曝してしまった経験を元にマニュアルを作ったのだ。マニュアルが完成したのは、ボスニアで劣化ウラン弾が使われた95年。
しかし、議会を圧力を受けて、マニュアル作成をロッキに命じた軍は、結局、一切それを公開せぬまま封印してしまった。兵士たちは、何も知らぬまま、汚染された戦場へ向かった。
ダグラス・ロッキ:「マニュアルは使われなかった。何故なら、これを見れば、人々が、劣化ウラン弾が健康に危険なことを知ってしまうからだ。そして、アメリカ政府には、世界に対しての責任が生じてしまうからなんだ。」
今、アメリカ政府と軍は、ひたすら劣化ウラン弾は安全だと言う宣伝を繰り返している。2年前のインタビューにも軍はこう答えていた。
米陸軍軍医大佐 エリク・ダクソン:「劣化ウラン弾は、優れた兵器システムです。そして、劣化ウラン弾は、現在使われている他の兵器と比べて、健康にも環境に対しても被害の少ない武器なのです。」
◆劣化ウランの危険を告発する者を脅迫し迫害するペンタゴンと米政府。
やがて、劣化ウラン弾の危険性を告発した元兵士たちの身に奇妙な出来事が相次いで降りかかるようになる。元陸軍兵士ウィートは、旅行先のカナダで突然身柄を拘束された。
ウィート:「カナダの警察官から言われたよ。何で、FBIのリストにお前が載っているんだって。」
元米陸軍看護兵キャロル・ピクーは、イラクにまで出かけ、同じような症状に苦しむイラク兵士と会うなど、告発活動を続けていた。ところが、劣化ウラン弾に関する軍の内部資料を手に入れたところ、それを積んだ車が放火され、文書も燃えてしまった。さらに、何故か長距離電話の発信ができなくなった上に、かけてもいない国際電話の請求書が来るようになった。
ピクー:「嫌がらせの電話もかかるようになりました。『お前が今日どこへ行くか知ってるぞ』、とか。『劣化ウラン弾の証言をやめろ。調査をするな。』という脅かしを何度も受けました。」
そして、軍の劣化ウラン弾マニュアルを作ったロッキは、完成の翌年に、突然、任務を外され、軍籍を失った。その後、就職した大学の研究室にも軍がやってきた。
ロッキ:「大学で核兵器について研究を続けていたら、軍服を着た将校がやって来てこう言ったのです。『もうやめろ。放射能の問題をしゃべるな。』と。私が、『地獄へ落ちろ』と答えたら、3日後に大学をクビになったのです。」
湾岸戦争で、劣化ウラン弾に被曝したとされる兵士の数は、軍が報告しているだけで、320人。実際には、汚染地域に入った米兵の数は、40万人と退役軍人団体は推定している。だが、劣化ウラン弾被害について声を上げる者はあまりにも少ない。
そして、告発に立ち上がった誰もが、奇妙な事件に巻き込まれ、社会的に孤立し、変わり者と言うレッテルすら張られていった。そして、今年春のイラク戦争。自分たちと同じ被害に苦しむ者がまた生まれる。そう思った彼らは、再び声を上げ始めた。
ピクー:「(涙を流しながら)このビデオのコピーを私にくれませんか。ワシントン(政府)に突きつけてやります。
ロッキは、劣化ウラン弾が、都市の中心部で使われたことに激怒していた。
ロッキ:「なぜ、住宅街で劣化ウラン弾を使ったんだ。汚染を除去することができない。もし、他でも使用しているなら、バグダッド全域から住民を退去させなくてはならない。これは、アメリカの責任だ。悪夢だよ。」
◆劣化ウラン兵器の危険を全く報道しない米巨大メディアの腐敗。
6月11日、ニューヨーク。劣化ウラン弾シンポジウム。
シンポジウム主催者、ヘレン・カルデコット博士:「(劣化ウラン弾の使用は)戦争犯罪です。」
しかし、このシンポジウムは、メディアに取り上げられることはなかった。それどころか、劣化ウラン弾問題を取材するアメリカのメディアは、ほとんど無いのが現状だ。
ピクー:「アメリカのマスコミは、ほとんど政府の言いなりです。アメリカのマスコミが、劣化ウラン弾を大きく取り上げることは、きっと無いでしょう。」
現在、アメリカのメディアで、ほとんど唯一、劣化ウラン弾の記事を書き続けるスコット・ピーターソン記者も言う。
質問:「なぜ、アメリカのマスコミは劣化ウラン弾を取り上げないのか?」
ピーターソン記者:「それは、劣化ウラン弾問題が、複雑で非常に政治的だからだ。米軍はこの劣化ウラン弾を使い続けているし、この非常に効果的な兵器を愛していると言ってもいい。」
ピーターソン記者が、劣化ウラン弾によるイラクの健康被害を記事にしたところ、米国防総省からこんな手紙が送りつけられてきた。
『あなたの記事は、間接情報とイカサマ師の言い分を元にしており、間違いと事実誤認だらけです。あなたの記事のような間違った情報が、『劣化ウラン弾を廃棄せよ』という誤った方向へ世論を導くことになるのです。」
アメリカは、自国の兵士の告発を事実上封殺してまで、劣化ウラン弾問題をなぜ隠蔽し続けるのか。その答えはこの文書にあった。アメリカの各研究の中枢、ロスアラモス研究所発の軍内部資料。1991年3月1日発。湾岸戦争終結直後だ。
「劣化ウラン弾は、その環境に与える影響により、政治的に受け入れられず、使用できなくなる恐れがある。だが、劣化ウラン弾以上の兵器が得られるまで、その存在を守らねばならない。」
◆日本政府・外務省のウソと無責任。米軍ですら使用を認めた劣化ウラン兵器の使用そのものを否定。
アメリカ政府のこうした隠蔽体質は、日本にも影響を与えている。今年、6月30日、衆議院イラク特措法特別委員会。イラクへの自衛隊派遣論議で、米軍が劣化ウラン弾の使用を事実上認めたこの発言が問題となった。
3月26日、米中央軍ブルックス准将:「ごく少量ではあるが武器に劣化ウラン弾を使用している。」
ところが、川口外務大臣はこう答弁した。
「3月26日にブルックス准将が記者会見で(劣化ウラン弾を)使用したかどうかについては、『言わなかった』ということでございます。」
劣化ウラン弾を使ったかどうかについては、米軍は言及しなかった、と言うのだ。もちろん嘘っぱちだ。
ロッキ:「劣化ウラン弾を使うために、アメリカ軍はウソをつき続けた。日本では、自衛隊をイラクに派遣するか否かで議論を進めていますが、あなたは、本当に自分の息子や娘を汚染された地域に行かせたいですか?私はそうではありません。絶対に。」
番組は、イラクに派遣される自衛隊員が劣化ウラン弾の汚染にさらされることを警告して終わる。しかしイラク戦争によって都市部に劣化ウランをまき散らされたイラク現地の人々は一体どうなるのか。放射線障害が顕在化してくるのは、これからである。
高山