劣化ウラン戦争を許すな!
米軍当局が対戦車砲弾に劣化ウランを使用すると明言
劣化ウラン疑惑の硬化目標攻撃用(貫通型)爆弾も大量使用

(ニューズレター:アフガニスタン劣化ウラン被害調査カンパ・キャンペーン No.5 (03.03.25) より)

(1)米軍当局が劣化ウラン弾の使用を公式に表明。
 まず、戦争に先立って米英両政府とも劣化ウラン弾の使用宣言とも言える態度表明を行いました。使っているか否かではありません。使うと宣言したのです。
 アメリカ国防総省は、開戦直前に劣化ウランの使用禁止を求める世界の世論に挑戦するかのように劣化ウラン弾の使用を宣言しました。3月14日米軍マテリアル・コマンドのジェームズ・ノートン大佐がブリーフィングで明らかにしたものです。劣化ウラン弾はタングステン弾よりも対装甲弾に適している。劣化ウランについて誤った考えが幅をきかせすぎている。健康に対する影響などない等々、完全な開き直りです。
 http://www.defenselink.mil/news/Mar2003/t03142003_t314depu.html
 イギリス政府も、湾岸地域に劣化ウラン弾を配備し、劣化ウランを使うことを認めています。
 http://www.guardian.co.uk/uk_news/story/0,3604,895223,00.html

 以上の米英政府の表明は、今のところいずれも対戦車兵器としての劣化ウラン弾についてです。しかしこれで従来から劣化ウラン製であることが明らかにされ、12年前の湾岸戦争でも使われた対戦車砲弾、対戦車機関砲弾についてはすでに大量に使われていることが明らかになりました。イラク全土で展開中の地上戦でアメリカのM1戦車、イギリスのチャレンジャー戦車が戦闘の最前面にたって発砲を到るところで行っています。その中にはイラク軍戦車に対する発砲の報道も含まれています。これらの主砲弾のうち特に対戦車・対装甲用の砲弾は劣化ウラン製です。ロイターで劣化ウラン製と思われる対戦車砲弾を兵員が素手で扱っている写真が流れています。
 http://story.news.yahoo.com/news?tmpl=story&u=/030321/170/3l016.html

 また、対戦車攻撃機A−10の出動も報道されています。A−10は対戦車攻撃を主任務とし、その機関砲弾は4発の劣化ウラン弾と1発の炸裂弾を工場で混合して出荷されています。A−10の出撃と攻撃への参加は確実に劣化ウラン弾の発射を意味します。その他に劣化ウラン弾を発射できるアパッチヘリ、ハリヤー、AC-130なども出撃し攻撃を繰り返しています。
 米英軍がイラクの南部を中心とするイラク全域に劣化ウランを発射していることは確実です。劣化ウラン弾の発射量はまだわかりませんが、砂漠の中が戦場だった湾岸戦争の時と比べはるかに都市に近い、住民の多数住む地域で劣化ウラン弾が使われていることは確実です。環境と人体への影響は極めて深刻なものになると思われます。(湾岸戦争での劣化ウラン弾の使用は約100万発、320トンというのが米国防総省の発表です)

(2)疑惑が指摘されている硬化目標攻撃用(貫通型)爆弾も大量使用。
 私たちが劣化ウラン製である疑惑を提起してきた硬化目標攻撃用(貫通型)の爆弾もすでに大量に使われています。アメリカ軍はバグダッドに対して1日目、2日目に巡航ミサイルを中心とする攻撃を集中しました。その後空爆の規模はいっそう拡大しています。報道では20日の開戦から23日までの4日間で発射された巡航ミサイルは計約500発に上るとされています。現時点で湾岸戦争時の約290発を上回っているのです。
  http://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20030325-00000033-kyodo-int

 開戦当日のフセイン大統領暗殺をねらった攻撃はF-117ステルス攻撃機に搭載した「バンカーバスター」によると報道されています。新聞報道などで「バンカーバスター」と呼ばれる場合、様々な硬化目標用(貫通型)の誘導爆弾を示していますが、それらはすべて劣化ウランでできている疑惑に包まれています。戦争当初の空爆、特にバグダッドに対する空爆は巡航ミサイルを中心とするものでした。南北の「飛行禁止地域」では対空火器やミサイルシステムがすでにこれまでの「平時の」空爆で破壊されてしまっているのに対して、バグダッドの対空システムが生きているために、攻撃機を差し向けると撃墜される恐れがあったためだと思われます。500発といわれる巡航ミサイルはB-52からの空中発射巡航ミサイルと海上の艦船、潜水艦から発射されたトマホークミサイルですが、これらの中にもやはり疑惑のある貫通型が含まれています。コンクリートで固めた施設や建物を攻撃する場合、貫通型の弾頭を持つ巡航ミサイルが使われるのです。イギリスの劣化ウラン兵器研究者ダイ・ウィリアムズ氏によれば、この貫通型の巡航ミサイルの弾頭も劣化ウラン製です。
 バグダッドに対する巡航ミサイルの集中攻撃と同時に、イラク南部、北部の地域に対しては誘導爆弾の雨が降らされています。バグダッドも3−4日目から航空機による爆撃を受けるようになってきました。使われている誘導爆弾の数は1500発とも2000発ともいわれています。(米統合参謀本部のマクリスタル作戦副部長は21日の大規模空爆で、爆撃機などが1000回以上出撃してイラク全土の数百カ所を攻撃し、500発以上の巡航ミサイルを発射し、数百発の精密誘導爆弾を投下したことを明らかにしている)
 http://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20030324-00000070-mai-int

 これらの爆撃の様子はテレビではあまり取り上げられていません。しかし実際には空爆の主流は誘導爆弾に移っています。そしてこれが各地で住民、子どもに多数の被害者を生んでいるのです。この誘導爆弾のうちかなりの部分が硬化目標攻撃用です。空母キティーホーク上の攻撃機や格納庫に置いてある爆弾の写真が配信されていますが、GBU-24という劣化ウラン製が疑われる硬化目標攻撃型の爆弾を搭載して攻撃機は出撃しています。これらの爆弾がコンクリート製の施設(軍事施設の多くはコンクリートで防護されています)や地下施設の攻撃用に使われています。
 http://story.news.yahoo.com/news?tmpl=story&u=/030321/170/3kx1n.html
 http://story.news.yahoo.com/news?tmpl=story&u=/030321/168/3kwoc.html

 これらの硬化目標誘導爆弾が疑惑通り劣化ウラン製でれば、GBU-24(1トン爆弾)で最大750kgの劣化ウランを含みます。仮に500発使われればそれだけで湾岸戦争で使われた全劣化ウラン弾の量を超えます。これがイラク全域、とりわけ人口密集地のバグダッド周辺でばらまかれた場合に環境に与える影響はきわめて深刻です。

(3)「バグダッドの虐殺」が起こる前に戦争を止めよう!
 開戦2日目のバグダッドの大規模な空爆と破壊は目を覆うようなものでした。しかし、実際の空爆による被害はテレビで報道されている所よりも報道されない所で、より深刻になっていると思われます。バグダッドの被害も日を経るごとに深刻になっていますが、報道関係者のいない地区での空爆は、米英側が完全に制空権を握っているので相当の破壊行為が行われているはずです。米政府は、精密誘導だから心配ない、軍事目標を狙ったから云々と、あたかも民衆に及ぼす被害を最小限にとどめているように宣伝していますが、それはまったくウソです。現に24日当たりから目を覆いたくなるような映像がアルジャジーラ・テレビなどを通じて世界に配信されています。

 アフガニスタンでの空爆の民間人の犠牲者を数え続けているアメリカのマーク・ヘロルド教授の仕事は誘導爆弾の危険性を明確に示しています。アフガンでも投下された爆弾はほとんどが誘導爆弾でした。ところがこの誘導爆弾で3500人前後の民間人が殺されました。アフガン戦争で殺された兵士の数は推定1万5千人程度、その中で空爆によるものはもっと少ないと考えられるので、アフガンでは大雑把にいえば兵士3人を殺すために民間人1人が空爆で殺されたことになります。いまイラクで起こっているのは民間人居住区に布陣するイラク軍に対する攻撃です。その意味では空爆によって殺される民間人の比率はもっと高まると思われます。この結果は一部では出てきていますが、まだほとんど報告されていません。

 空爆だけでなく地上戦でも兵士と民間人が一緒に攻撃され殺されています。アメリカ軍の作戦は「イラク軍はすぐ降伏するだろう」「民間人は米軍を歓迎するだろう」「フセインはすぐに自壊するだろう」との憶測を前提に立てられたものです。ところが実際の様相はこれとは全然違うことが明らかになりつつあります。南部のバスラに入れないばかりか、占領したと宣伝したファオなどで抵抗が何日も続いています。人のいない砂漠は戦闘なしで進めても、都市部に入ろうとした途端、抵抗に遭遇し立ち往生しているのです。住民も米軍に迎合する人がほとんどいないことが明らかになっています。
 しかしこうしたアメリカの傲慢な軍事作戦の結果こそが危険なのです。彼らが予想外の抵抗で出血や遅延を迫られたり、余裕を失ったとき、必死になった米英軍が本性をむき出しにするからです。そうすれば見境なしに大虐殺に進む危険が一気に増幅されるでしょう。相手を甘く見ていた焦りが、大量虐殺の危険を招くのです。私たちは「バグダッドの虐殺」が現実味を帯びてくることを何よりも恐れます。

 バグダッドの市街戦といってもアメリカ軍は本気で市街戦をするつもりがあったようには見えません。「バグダッドを包囲すればフセインは降伏するだろう」というのが米英軍の作戦と言われています。しかし降伏しなかったらどうするのでしょうか。こんな状況で本当に市街戦に突入すれば米英は何をするか分かりません。抵抗が激しくなればなるほど逆上した米英軍は残虐行為に出るでしょう。現にラムズフェルドは、都市の住民を化学兵器である「無力化ガス」で攻撃して進むことを示唆していました。これはロシアの劇場で民間人100人以上を殺した悪名高い「殺人ガス」です。「イラクの大量破壊兵器」といいながらアメリカ自身が大量破壊兵器である毒ガスを使うつもりでいるのです。

 恐怖に襲われた米英兵士は、市街戦では子供も女性も周りで動くものはずべて敵に見えます。昨年4月のパレスチナ・ジェニンでのイスラエル軍による虐殺がそのことを示しています。だから「自己防衛」を理由に、バグダッドを一旦廃墟にしてから突入する可能性があります。しかもその後に激烈な市街戦が始まればどうなるか。文字通り死体の山をバグダッドに築くことになるのです。

 「バグダッドの虐殺」が起こる前に戦争を止めよ!とにかく一刻も早く米英の侵略戦争を止めなければなりません。私たちも決してあきらめることなく戦争が続く限り、戦争を止めるための行動を続けましょう。また劣化ウランを使った戦争の実情を世界に知らせ、戦争犯罪を暴いていかなければならないと考えています。この一つの方法として私たちの署名運動の署名・オンライン署名を「アメリカの対イラク戦争・劣化ウラン戦争と日本の加担・有事法制に反対する緊急署名」に改訂しました。ご協力をお願いします。

2003年3月24日



アフガニスタン劣化ウラン被害調査カンパ・キャンペーン−−−−−−−−−