イラク戦争劣化ウラン情報 No.19 2004年8月9日
アメリカの戦争拡大と日本の有事法制に反対する署名事務局 吉田正弘
<リーフレット紹介>
政府がこそこそ劣化ウラン弾の安全宣伝を始めていた−−
非核三原則、原子力の平和利用原則を逸脱する原子力文化振興財団の宣伝パンフレット
−−政府・文部科学省は責任の所在を明らかにせよ!
−−宣伝パンフレットを撤回させ、出鼻を挫こう!
<リーフレット紹介>
「政府がこそこそ劣化ウラン弾の安全宣伝を始めていた−−非核三原則、原子力の平和利用原則を逸脱する原子力文化振興財団の宣伝パンフレット」
−−政府・文部科学省は責任の所在を明らかにせよ!
−−宣伝パンフレットを撤回させ、出鼻を挫こう!
ある方から原子力文化振興財団が「劣化ウランは安全だ」というパンフレットをメディア向けに出していますよと教えて頂いたのは7月のことです。原子力文化振興財団(以下原文振と略す)といえば、文部科学省の所管公益法人で、税金と電力会社からの補助金で動いているはずです。それに「原子力の平和利用」を宣伝するために全国の高校に毎月カラー判の機関誌「原子力文化」を送りつけなるなど、原発推進の広報活動のための団体であり、影響も小さくありません。
早速取り寄せて読んでみると、全くとんでもない文書です。『劣化ウラン弾による環境影響』という表題で、原文振がプレス向けに配布する『プレスレリーズ No.111』(6月15日付け)になっています。プレスレリーズは、過去にも原文振が「プルサーマル」など重要問題を取り上げてメディア向けに解説する「重要文書」です。しかも今回はその全編が、劣化ウラン弾が安全であり、環境への影響がない、自衛隊員も何の心配もないという何の根拠もない宣伝になっています。国際機関などを引き合いに出しながら「安全」に都合のいいところだけを一方的につまみ食いしただけで何の客観性、科学性もありません。ただただ劣化ウラン弾を使った米軍を免罪し、これに加担する日本政府を肯定する内容なのです。
原文振は何のためにこのパンフレットを出したのでしょうか。前書きの中でもはっきりと自衛隊のイラク派兵との関係に触れていますが、自衛隊派兵と関連して劣化ウラン弾が安全だという宣伝をすることが目的なのです。こういう形で日本政府自身が劣化ウラン弾の安全宣伝に乗り出し始めたのだと思います。メディア向けというところがミソです。メディアが「危険性」報道をやらないよう牽制する狙いがあることは明白です。劣化ウラン弾に不安を持つ自衛隊員や家族を「安全宣伝」で黙らせるようとしているのでしょう。極めて危険な動きであり、放置することはできません。直ちに批判を浴びせ、無責任きわまりない形での「安全宣伝」の責任追及を行わなければなりません。
(1) そこで私たち「アメリカの戦争拡大と日本の有事法制に反対する署名事務局」は「美浜・大飯・高浜原発に反対する大阪の会」と共同で、原文振・文科省・政府のこの文書『劣化ウラン弾による環境影響』を批判するリーフレットを作りました。現在、両団体のウェブサイトで公開し、ダウンロードできるようにしてありますので是非ご一読下さい。そして周りに知らせて下さい。
署名事務局 http://www.jca.apc.org/stopUSwar/DU/genbunshin.htm
美浜の会 http://www.jca.apc.org/mihama/d_uran/genbunshin_leaf.htm
(2) また、社民党の福島瑞穂議員はこの問題の重要性に鑑み、原文振・文科省・政府の責任を追及する詳細な質問主意書を臨時国会に急遽提出されました。内容的に極めて重要ですので、こちらの方も一緒に広めて頂くようお願いします。リーフレットの紹介と併せて、両団体のウェブサイトに公開しています。
詳しくは、上記リーフレット、あるいは質問主意書をご覧頂くとして、ここでは以下の3点を指摘しておきたいと思います。
第1の問題点は、「原子力の平和利用の啓発」を目的とする公益法人が、明らかに放射性物質の軍事利用である劣化ウラン弾をなぜ肯定するのかということです。文部科学省が現に戦争に使った爆弾、しかも放射能兵器が安全だと言い回すこと自体、とんでもないことです。戦争行為、非人道的行為を正当化するなんて言語道断です。それとも劣化ウラン弾は「原子力の平和利用」であるとでも言うのでしょうか。国内法ではウランを環境中にばらまけば違法行為、犯罪になります。ところがパンフレットはイラクで米軍が同じ行為を行ったことを肯定しているのです。これは原文振の設立趣旨に反するばかりか、「原子力の研究、開発及び利用は、平和の目的に限」るという原子力基本法第2条に根本から反します。まさに違法行為です。原文振が原子力の軍事利用、戦争犯罪を正当化したことについて、所管する文部科学省、政府の責任を追及しなければなりません。
第2の問題は、「安全性の宣伝」を、御用学者を使って「科学」を装いながら、その実ウソとデマゴギーで塗り固めていることです。“文部科学省”がすることとは到底思われません。ともかく全編デタラメです。たとえば、「劣化ウランの放射線量は天然ウランの100分の1」(!)だと強調し、花崗岩内など自然界にある天然ウランよりもはるかに害がないから劣化ウラン弾は安全だ。アルファー線核種であるウランは1mも離れれば測定できないことは明白であるのに、「1m離れたところからの測定では劣化ウランは検出されない」から安全である。(ウランで一番危険なのは微粒子の形で肺に吸入された場合であるのに、その危険についてわざと触れていないのです)さらに、放射線への感受性の高い子どもに被害が集中していることを否定し、「劣化ウランは子どもも大人も影響は同じ」と言い切る。等々。
第3の問題は、現に劣化ウラン弾によって大量の被害者が出ていることに一言もふれずに安全性を強弁していることです。イラクで白血病やガンにかかっている子どもたちやイラクの住民たち、湾岸戦争とイラク戦争、さらには旧ユーゴ戦争に参加した兵士たち、アフガニスタンの住民たちと、これまで米英軍が劣化ウラン弾/ウラン兵器を使用した場所で大量の患者が発生し死んでいっていることや、住民や兵士の尿や環境中からウランが検出されたりしていることは全く無視しています。これらの事実にもかかわらず安全だというなら根拠を示すべきです。国際機関で劣化ウランは何の被害もないと断言したところなどありません。原文振=文部科学省や政府が、もし安全だと主張するなら、実際に劣化ウランが使用された現地で住民、環境の調査を自ら行いその結果で示すべきです。サマワ帰還米兵からは劣化ウランが検出されています。サマワ帰還の自衛隊員についてもまともな調査も行わずに放置するのではなく、尿の精密なウラン分析を全員に行って被曝の有無を確認するべきです。
原文振=文部科学省や政府は自信がないのか、まだ御用学者がメディア関係者を集めてレクチャーするといった形で“こそこそ”隠れてやっている段階です。出鼻を挫かねばなりません。そのためには、まずは彼らがやり始めた「劣化ウラン安全」宣伝の事実をできるだけたくさんの人々に知らせることが大切です。そして様々な所から追及の声をあげていくこと、文科省、政府の責任追及の運動につなげていくことが重要だと思います。ぜひ皆さんも友人や知人にこの事実を知らせ、原文振の目論見を打ち砕くよう、ご協力下さい。
[注]なお、原文振のプレスレリーズをお読みになりたい方は、原文振のウェブサイト http://www.jaero.or.jp/ の「ご意見・ご質問」コーナーからメールを送れば入手できます。
関連:
「UMRCイラク・ウラン被害調査カンパキャンペーン」