イラク戦争劣化ウラン情報 No.16      2004年4月7日
アメリカの戦争拡大と日本の有事法制に反対する署名事務局 吉田正弘

ニューヨーク・デイリーニュース・スクープ==========
「劣化ウランに毒された?ショッキング・レポートは暴く:
おそらく州兵たちはアメリカのハイテク兵器の犠牲者であろう」(続報)


 本号は、前号「イラク戦争劣化ウラン情報 No.15(2004年4月5日)」で予告していたニューヨーク・デイリーニュース2004年4月3日号のスクープ記事の続報です。全部で3本ある記事の一面トップ記事「劣化ウランに毒された?ショッキング・レポートは暴く:おそらく州兵たちはアメリカのハイテク兵器の犠牲者であろう」は、前号の付録として掲載しました。本号で紹介するのは、残りの2本、第2記事「兵士達、健康上のリスクを知りたいと要求」、第3記事「問題の野営地の中で」です。

 米国内では、早速このスクープ記事が波紋を広げています。陸軍当局や議会が動き始めるなど、様々な反応が出ているようです。同紙4月5日号は、「陸軍はニューヨーク州兵部隊を検査する予定」との続報記事を掲載しました。これも明日には訳出し、皆さんにご紹介する予定です。


[第2記事]*****************************
兵士達、健康上のリスクを知りたいと要求
Soldiers demand to know health risks
http://www.nydailynews.com/news/local/story/180337p-156686c.html

ホアン・ゴンザレス
デイリーニュース・スタッフライター
2004年4月3日(土曜日)
ニューヨーク・デイリー・ニュース http://www.nydailynews.com
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 ウォルター・リード軍医療センターの医者達は最近、レイ・ラモス特務軍曹に、生体組織検査の結果、彼の発疹がリーシュマニア症に由来することが分かった、と告げた。その病気はスナバエによって広がり、イラクでは数百人の兵士がかかった。

 しかし、先週まで、軍医達は442憲兵中隊に属するラモスと他の2、3人の彼らの尿の劣化ウランを分析するようにという要求を拒絶した。その検査には最大1000ドルかかるかも知れない。

 本紙の調査の中で検査した9人のうちの3人−−ハーバート・リード軍曹、ウイリアム・ルイス特技兵、アントニー・フィリップ特技兵−−は11月に陸軍によっても検査された。しかし、その結果は繰り返し問い合わせを行ったにもかかわらず、数ヶ月間も保留にされたのである。

 先週、陸軍当局者が第442中隊について新聞の質問を受けた後で、そして中隊のあるグループが独立の検査を求めたことが分かった後で、ウォルター・リード病院の責任者はリードとフィリップに対して、11月に行った検査の結果は劣化ウランについては陰性だった、と伝えた。

 本紙の検査でも、リードとフィリップは陰性の結果を示した。しかし、ラモスの検査は陽性を示した。サマワで劣化ウランについての疑問を提起したのは第442中隊の兵士達だけではない。

 8月に、オランダ兵の分遣隊がアメリカ兵と交代するために町に到着した。オランダの新聞のレポートは、オランダ当局がサマワでの劣化ウラン弾の使用の可能性について前もって米国に質問したことを明らかにした。第442中隊の上級衛生兵であるホワン・ベガ軍曹によれば、オランダ兵はガイガー・カウンターで列車の車庫の回りの地域を調べて回り、そのオランダ軍の衛生兵達が彼に高い放射線レベルを発見したと打ち明けたのである。オランダの部隊は車庫に留まることを拒絶して、代わりに砂漠に野営を張った、とベガは述べた。

 そして2月に、日本軍がその同じ町に入ってきた後で、ガイガー・カウンターを持っている日本のジャーナリストは、放射線の数値がバックグラウンド・レベルよりも300倍も高い、と報告した。

 「我々がそこに着く前に、サマワでは多くの戦いがありました」と2等軍曹レイ・ラモス(41歳)は言った。「その場所はとてもほこりっぽかったし、かなりひどい砂嵐が我々を襲っていました。」

 ラモスは最初、うだるようなイラクの猛暑によって倒れたのだと思ったので、すぐに回復するだろうと予想した。

 「私の健康は、どんどん悪くなっていきました」と、彼は言った。「私は、何とかしようと毎日訓練をしましたが、ますます弱まっていきました。両手と顔の感覚がしびれたようになり、そして、偏頭痛が絶え間なく起こるようになりました。私は、脳卒中を起こしているんじゃないかと怖くなりました。」

 彼は治療のために最初バグダッド病院に送られた。ところが、神経科医が誰もいなかったので、彼はドイツに送り出され、結局は米国に送り返された。

 「私は、4ヶ月間、腹部の発疹が収まりませんでした」と、ラモスは言った。「そして、今でも、私が横になる時はいつも、手の感覚がなくなるんです。」

 ウォルター・リードの医者達はてこずってきた。彼らは、夜に彼の手の感覚がなくなるのを防ごうと、添え木を装着した。そして、たくさんの筋肉弛緩剤や鎮痛剤を処方してきた。ところが何の役にも立っていない。

 「私には4人の子供がいます。もし私が働くことができなければ、彼らはどうなるのでしょうか?」と、ラモスは言った。彼は軍務から戻った後、ニューヨーク警察の住宅局からブルックリン第75管区の強盗部門に異動することを待ちわびていた。「私は、私の体に一体何が起こっているのか、調査してもらう必要があるのです。」

 ニューヨークのフィッシュキルにある復員軍人援護局に属する警官である、アントニー・ヨノン伍長(35歳)は、検査で陽性の結果が出た4人のうちで劣化ウランのレベルが最も高かった、と本紙の資金提供による検査を行ったアサフ・ドラコビッチ博士は言った。

 ヨノンは、吐き気、発疹と偏頭痛が始まったのはサマワでだった、と言った。「頭痛は絶え間なく起こり、どうしても止まりませんでした」と、彼は言った。「発疹は、出たり直ったりを繰り返しているようです。」

 「パトロールをする時は、我々は、いつも破裂した戦車のそばを通っていました。」

 彼は、その町の米軍部隊が駅の近くで、大きなドラム缶の中で毎晩屑と廃棄物を燃やしていたことを思い出した。「私たちがそれに火をつけると、煙と砂の混合物がみんなの体を覆いました」と、彼は言った。

 ヨノンは、小規模な手術のために8月にイラクから引き揚げ、最初にドイツに送られた。

 「彼らは我々に調査票を与えました。劣化ウランがイラクにあることさえ誰も我々に話さなかったので、劣化ウランに被曝しなかったというところに印をつけました」と彼は言った。


[第3記事]*****************************
問題の野営地の中で
Inside camp of troubles
http://www.nydailynews.com/news/local/story/180340p-156689c.html

by フアン・ゴンサレス
デイリー・ニュース・スタッフライター
2004.4.3(土)
ニューヨーク・デイリー・ニュース http://www.nydailynews.com
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第442憲兵隊が寝泊りしたサマワの車両庫
 第442憲兵隊の兵士たちは、イラクへ行く前に劣化ウランについて聞いたことは一度もなかった。

 彼らはただ、説明がつかないさまざまな体調不良が自分たちにふりかかったということを知っているだけである。

 昨年、この中隊の十数人もの兵士たちが、さまざまな病気の治療のためにフォート・ディックス基地へ送り返された。彼らの懸念に対処する軍のやり方に失望して、彼らは、自分たちの体験についての本紙の多岐にわたるインタビューに応じた。そして彼らのうちの9人は、そのあと結局、アサフ・ドラコビッチ博士が率いる専門家チームによる検査に進んで応じた。

 兵士たちによれば、彼らのうちのたいていは、昨年夏サマワに駐屯しているうちに病気になったのである。サマワは、バグダッドの南方150マイルにある町で、戦争の第1週目に激しい戦闘が行われた場所である。

 彼らの部隊は、ディワニヤ、カルバラ、ナジャフに短期間滞在した後、6月にこの町に入った。彼らは、町の郊外にある巨大な、ほこりっぽい、害虫などがはびこる、列車の発着場で野営地を設営した。

 彼らが言うには、まさにそこで彼らの問題が始まったのである。

 「ある夜、10人から15人が103度(摂氏39.4度)を超える熱を出し、悪寒や、その他さまざまな説明のつかない症状がおこった。」と、この中隊の衛生兵の長フアン・ヴェガ軍曹は述べた。彼によると、中隊の160人の兵士のうち十数人が突然腎臓結石を発症したという。

 陸軍の1990年の研究は、DUを、まさに「腎臓障害を引き起こす化学的毒性」と結びつけていた。

 「私は、指揮官にこう言ったんです。『我々は、この地獄、この場所から抜け出す必要があります。ここには何か悪いものがあるにちがいありません。』」と、34歳のニューヨーク消防局の救急救命士であるヴェガは述べた。

 兵士たちは、中隊が寝起きしている場所から100ヤード(約91メートル)も離れていないところの平積み貨車にイラクの2台の戦車が積み込まれて運ばれていったのを思い起こしている。そのうちの1台は、砲撃されてすっかり破壊されていた。

 米国防総省当局者は次のことを確認した。DU貫通体が目標にあたって爆発するとき、ウラニウム酸化物の細かいエアロゾルや放射性ダストができるので、劣化ウラン弾が命中した戦車は、戦場での放射能の最も大きな発生源の可能性があるということである。戦車が人に近いところにあればあるほど、ダストを吸引する危険性は大きくなる。

 さらに、国連のイラクに関する環境報告は、昨年、次のことを警告していた。「高性能のダスト・マスクを着用していなければ、」劣化ウラン弾によって攻撃された目標物から150メートル以内では、「DUダストを吸引する高い可能性がある」ということである。兵士たちは、ダスト・マスクを受け取ったことなど一度もなかった。




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