アメリカの対アフガン侵略戦争に便乗
シャロンの戦争と暴走を止めろ!
イスラエルの新たな国家テロを糾弾する!
アラファトPLO議長への武力威嚇、
暫定自治政府解体を目論む前代未聞の暴挙



[1]シャロンを止めろ!−−「報復」を口実に行われるイスラエルの国家テロを糾弾する。

(1) イスラエル軍は12月3日、エルサレムとハイファで発生した、合わせて26人が死亡、220人以上が負傷した連続自爆テロへの報復として、ヨルダン川西岸のパレスチナ自治区ジェニン、ラマッラ、トゥルカレム、サルフィトなどの警察本部などをF16戦闘機で空爆、ガザ自治政府施設へも武装ヘリ攻撃を、さらに4日未明には、西岸の自治区ラマッラとナブルスに戦車などで侵攻、自治区ガザ南部の国際空港の滑走路をブルドーザーで破壊した。7日には、原理主義組織ハマスの摘発が甘いとして、ガザ地区にあるパレスチナ自治政府の警察本部を空爆した。パレスチナ側で数人の死者と数百人の負傷者が出ている。イスラエル軍の報道官は「攻撃は今後数日間続き、拡大する」と語った。
 シャロン首相は、政府閣議でパレスチナ自治政府を正式に「テロ支援団体」と規定し、アメリカがアフガニスタンに対して行ったのと同じ"無法な"論法で、新たな国家テロを発動した。「暫定自治」とはいえ、自治政府はれっきとした政府である。その議長府や政府機関を直接攻撃の標的にし、現に破壊することなど前代未聞の侵略行為だ。PLOと自治政府が「これは宣戦布告だ」と厳しく非難したのは当然である。私たちは、このイスラエルの暴挙を満身の怒りを込めて糾弾する。

(2) シャロンを止めろ!−−この声を全世界の反戦平和勢力、人種差別反対勢力とともにあげていこう。
 マス・メディアは、今回のイスラエルの攻撃を、12月1〜2日の連続自爆テロに対する「報復」とのみ報道している。しかしこれはウソである。シャロンは受動的な対応をしているのではない。特に9.11事件以降、パレスチナ人抵抗組織の要人暗殺を国家政策として公然と遂行するに至った。むしろハマスやパレスチナ抵抗組織に執拗に攻撃を加えテロを挑発してきたのではないかとも言われている。シャロン政権は、ブッシュ政権の「テロとの戦い」を利用して、パレスチナ人民に対する強硬的武力弾圧政策をますますエスカレートさせてきたのだ。今回の攻撃は、ハマスの自爆テロを利用し逆手に取った、就任以来彼が準備してきた「シャロンの戦争」の実現に他ならない。
 シャロン政権は今年3月に発足して以降、前バラク政権を上回る形でパレスチナ住民の闘い、インティファーダに対する軍事的攻撃をエスカレートさせてきた。彼はパレスチナ住民の闘争の息の根を止める方策を兼ねてから窺ってきたのだ。
 イスラエルは昨年9月末に始まる新たなインティファーダ以降、イスラエル軍兵士や占領支配の先兵である入植者がパレスチナ人に攻撃されるたびに、イスラエル軍は重火器を使った報復を行い、少年や青年達を中心に一般市民を狙い撃ちにした形で、イスラエル側の死傷者の数倍のパレスチナ人を殺傷してきた。

(3) シャロンを政権の座から引きずり降ろさねば、取り返しの付かないことになる。国際的な非難の声でシャロンに非難を集中し包囲することが必要だ。
 パレスチナ人民の間だけではなく、イスラエルの人民の間からも、シャロン首相の侵略性と強硬姿勢に警鐘を乱打している人々がたくさん出ている。シャロンを放置すれば、これまでにない質的に新しい残虐行為、大量殺戮に突き進む危険がある。「彼は虐殺の常習犯なのだ」と。
 シャロンには、パレスチナ人民にとって決して忘れることの出来ない血塗られた前科がある。3000人以上のパレスチナ難民を惨殺した「サブラ・シャティーラの虐殺」、PLOを壊滅させようとして1982年にレバノンを侵略し、右翼民兵と共に大量虐殺を行った極悪非道の事件である。それ以前にも以降にもイスラエルによる国家テロのほとんどに深く関わってきた張本人である。そして過去の戦争犯罪をイスラエルはもとより、アメリカからも、欧州からも追及されなかった結果として、今再びその手でパレスチナ人民を虐殺しようと画策し始めたのである。しかも今回は、アメリカの無法な論理を借用してブッシュ政権の支持・承認のもとに行うというのである。


[2]問題の根源は、イスラエルの軍事占領下での国家テロによる支配と「イスラエル=アパルトヘイト」体制にある。

(1) 今回の事態について、ハマスによる自爆テロが原因であるかのような報道がなされている。それが引き金を引いたことは確かだ。一般市民を無差別に殺戮する無差別テロは許されるべきものではない。私たちも反対である。しかしそれは真の意味で事の一側面、一モメントにすぎない。
 一連の「暴力の連鎖」の根源にあるもの、根本原因は何かを明らかにしないで、議論することは全く不公平であり、不誠実である。
 1948年に「先住民」であるパレスチナ人を武力で追い出したのは一体誰なのか。1967年に侵略戦争を断行しヨルダン川西岸と東エルサレムとガザ地区を奪ったのは一体誰なのか。以降34年にわたりそれら占領地を軍事占領し続けてきたのは一体誰なのか。イスラエルの不法な占領と民族追放と「難民化」を糾弾する一連の国連決議を無視してきたのは一体誰なのか。両民族、両国家の平和共存に一貫して反対し敵対してきたのは一体誰なのか。−−どんなに悪事を働き、人殺しを行い、暴虐の限りを尽くしてもアメリカと西側諸国に手厚く庇護されてきた国イスラエル、一切の国際的な非難から免れてきた国、領土拡張主義を国是に掲げるが故に国境を持たない国イスラエル、従って憲法をも持たないイスラエル、今なお入植地運動を国家政策で推進し21世紀にまで残存する世界でも唯一とも言える古典的な帝国主義的植民地主義国家イスラエル。
 「二重基準」などという甘いものではない。「国際社会」から植民地領土の暴力的略奪を許された特権国家とも言えるものである。こんな理不尽なこと、こんな不条理なことが許されてなるだろうか。私たちは、西側のアメリカや欧州や日本の政府やマス・メディアから隠蔽され守られてきたこのイスラエルの侵略主義、膨張主義の体制と構造、それを支持し容認する体制と構造こそが事柄の根源であることを根底からえぐり取り、世界の全ての人々の前に差し出さねばならない。

(2) 今回のイスラエルの蛮行をきっかけに、「和平プロセス」の危機、「中東和平の崩壊」が語られている。「オスロ合意へ戻れ」とも言われている。しかしこれもまたアメリカと西側諸国やマス・メディアによるデタラメと偽善に満ちた世論操作である。すでに今回の事態が起こるずっと以前に、「中東和平」は、その「和平」とは裏腹の、抑圧的な占領体制の実体・本質を剥き出しにしたが故に、それを押しつけた米・イスラエル自身によって「死」に至らしめられていたのだ。
 その「中東和平」の虚偽と偽善を見事に表現する言葉が「イスラエル=アパルトヘイト体制」である。南アの白人による黒人に対する非道な「人種隔離」体制、黒人達が「バンツースタン」「タウンシップ」など不毛の土地やスラム街に軍事的政治的経済的に封じ込められた「特殊な白人独裁体制」を模したこの言葉には、「中東和平」が「和平」とは全く無関係の、否、それに真っ向から反する非人道的な体制であることを告発する意味が込められているのだ。
 イスラエル政府は、内外からの批判と圧力を受け、あるいは先手を打って、1967年〜1993年まで維持してきたパレスチナに対する「軍事占領」体制を「終結」させ、新たな支配体制である「パレスチナ暫定自治政府」体制に切り替えた。1990年前後のソ連崩壊と米ソ冷戦の終焉という劇的な世界情勢の変化の中で、複雑な諸要因が折り重なって生み出された体制であり、決してイスラエル政府の意図通り、思惑通りで確立されたものではない。
 しかし今では、1993年のオスロ合意と「和平プロセス」は、イスラエルによるパレスチナ支配を恒久化する「イスラエル=アパルトヘイト」体制でしかないこと、形を変えた占領体制でしかないことが、事実でもって明らかになっている。
 昨年9月末に始まる「ニュー・インティファーダ」は、この「イスラエル=アパルトヘイト」体制に対する子ども達の不満と怒りと絶望が爆発した大衆的抗議に他ならない。1987年に始まる最初のインティファーダがイスラエルの「軍事占領」に対する大衆的抗議であったとすれば、新しいインティファーダは、「新しい占領体制」に対する大衆的抗議なのである。従ってすでに昨年の9月末の時点で、「オスロ合意」=「中東和平」は、その偽善性が故に、パレスチナ人民の側からノーを突き付けたのだ。しかしこの事実を、米欧日のどの大手マス・メディアも報道しない。そんな状況で、パレスチナ人民の過酷な状態、過酷な精神のどれほどが理解できるというのであろうか。腹立たしい限りだ。

(3) 「イスラエル=アパルトヘイト」体制とは、如何なるものか。
1)インティファーダに対する、抵抗する者に対する容赦ない武力弾圧。空爆と戦車砲と武装ヘリによる破壊と無差別殺戮。政治指導者や要人に対する暗殺。一言すれば国家テロを国家政策とする正真正銘のテロ国家体制である。
2)1967年以降の「軍事占領」体制とほとんど変わらない、ヨルダン川西岸・ガザ地区・エルサレムの軍事支配。
3)まるで「陸の孤島」のように、旧軍事占領地域の中に、「飛び地」のようにバラバラに存在する「パレスチナ自治区」。
4)これら「暫定政府」支配地域の間の往来と交通網を遮断するように縦横に走る「イスラエル領土」及び「入植地」をつなぐ幹線道路網、それを「防衛する」との名目でのイスラエル軍と警察による軍事支配。事実上「自治政府」間の交通・往来の遮断。あらゆるヒトとモノの出入りをイスラエル軍と警察が管理する「監獄」のような体制。
5)「暫定自治」地域は農業もままならぬ不毛の地であり、工業も発展の余地がない。「飛び地」から「イスラエル領内」へ出稼ぎに出るしかない。経済的従属の極地。
6)しかし更に許し難いことは、シオニストとイスラエル政府は、今なお武力により入植地をどんどん拡大しているのである。「イスラエルの安全保障」と称してパレスチナ人住居がブルドーザーで次々に強制的に取り壊されて、パレスチナ人はどんどん追い出されている。逆らう者には逮捕・拘禁と拷問と死が待っている。
 一言でも、アメリカ、EU、日本など西側政府側から、マス・メディアから、この過酷な現実が明らかにされたであろうか。報道されたであろうか。
 もし私たちがこのような目に遭えば抗議しないだろうか。人間の尊厳、生活と生存条件そのものに対する抹殺行為にどこまで服従し続けることができるだろうか。
 果たしてかかる現実に対する抗議は犯罪なのだろうか。抗議者への容赦ない弾圧と殺戮に対する自爆テロはどれほどの犯罪なのであろうか。1年、2年ではない。すでにこのような絶望的な現実が30年以上、50年以上も続いてきたのだ。
 1990年代の「和平プロセス」は、このような地獄のような現実、監獄のような毎日のもとで、しかも「パレスチナ国家」という将来展望のないまま、占領地からのイスラエル軍の完全撤退、入植地の解体、東エルサレムの返還、パレスチナ難民の帰還権の承認という根本的な問題を棚上げにしたまま、しかし西側世界に「中東和平は実現した」「もうイスラエル・パレスチナ問題は解決した」というデマゴギーが喧伝されながら、進行していったのである。

(4) 「イスラエル・アパルトヘイト体制」の下では、両者の一時的停戦などあり得ない。あり得たとしても長続きしない。これまでもそうであったし、これからもそうである。唯一の活路は、イスラエルが一切の武力弾圧を一方的に停止し、国連決議と国際法を遵守し、封じ込めをやめ、入植地を解体し、占領をやめることである。第一歩を踏み出すのはパレスチナの側ではない。イスラエルこそが、まず、無条件に一切の軍事行動を停止しなければならないのだ。それなしには、真の和平へ向けた建設的な過程は一歩も前進しないだろう。
 公正な和平が行われるためには、少なくともイスラエルが国連総会決議194、242、338を遵守し実行することが最低限必要である。すなわち、1967年以前の国境線まで撤退すること、従って東エルサレムを含む西岸地域とガザ地区から完全撤退すること。パレスチナ人の完全な主権国家を認めること。1948年と67年のパレスチナ難民の帰還権を原則として認めることなどである。要するに、イスラエルが1990年代を通じて国家政策として構築してきた「イスラエル・アパルトヘイト体制」を自らが解体することである。
 オスロ合意のような「中東和平」への復帰、「和平プロセス」の復活では何も解決しない。それは1993年にもう一度戻るだけである。そのような偽りの「和平」ではなく、真の和平、真の平和共存の道だけが解決に向かっての唯一の道なのである。


[3]イスラエルを軍事的政治的経済的に全面的に支援・支持し今回の「シャロンの戦争」にゴーサインを出したアメリカを糾弾する。

(1) 今回のシャロンの暴走を触発したのはアメリカ自身である。ブッシュの対アフガン侵略戦争である。イラクへの戦線拡大であり、中東全域への戦争挑発である。イスラエル一国のなせるわざではない。まず何よりもこの意味でアメリカの責任は重大である。

(2) ブッシュ政権は更に罪深い行為を行った。12月2日のシャロン・ブッシュ会談において、アメリカはイスラエルの今回の「報復」を容認し、イスラエルの軍事行動が始まった直後には、ブッシュは積極的支持を表明したのだ。
 イスラエルの後見人であるアメリカが、イスラエルの新たな戦争行為を容認し支持したことは、今回の事態で生ずるあらゆる諸結果について、アメリカも完全にイスラエルと共同責任を負うことを意味する。

(3) アメリカ・イスラエルの軍事的同盟関係の歴史は長い。アメリカは、1948年のイスラエル国家樹立のとき以来、特に米ソ冷戦のまっただ中の1967年の第三次中東戦争以来、ソ連社会主義と結合して自国資源を米国の支配から防衛しようとした資源ナショナリズム的なアラブ諸国に対する番犬として、アメリカの中東支配の手先としてイスラエルを利用し、軍事的政治的経済的に多大な支援を行い全面的に支えてきた。それは、アメリカの中東支配=石油支配を確保するために不可欠のものであった。

(4) 先進国内の反戦平和運動、途上国の民族解放運動の間では、米の同時多発テロの最大の原因の一つを、この「パレスチナ問題」と捉えている。そこまでアメリカはイスラエルの凶暴な侵略体制の維持に躍起となってきた。
 シャロンが攻撃を断行している真っ最中、12月5日にジュネーブ条約締結国会議が開かれた。そこでイスラエル占領下のパレスチナを「戦時下の民間人保護」条項の対象に適用する宣言が採択され、パレスチナ人への人権侵害をやめるよう勧告されたが、ここでもアメリカとイスラエルは出席を拒否した。先の南ア・ダーバンでの「人種差別反対国際会議」で、イスラエルが非難されたときも、会議を潰そうと画策し、結局は会議から退席したのもアメリカとイスラエルであった。万事この調子だ。
 アメリカはもうイスラエルへの庇護と支援・支持をやめるべきだ。そして中東から全軍事力を撤退させなければならない。それこそが、アメリカのなすべきことである。「テロ撲滅」への真の第一歩である。


[4]イスラエルもアメリカも自己矛盾をきたしている。「シャロンの暴走をとめろ」、「パレスチナ人民連帯」で、全世界の反戦平和運動の力を結集すべきときである。

(1) PLOアラファト指導部は、ハマスとイスラム原理主義組織の一斉摘発・逮捕・拘禁に乗り出した。これはイスラエルの攻撃とアメリカの恫喝に屈服したものである。米・イスラエルに強制された形での「過激派」摘発は、パレスチナ住民の間で非難・攻撃の的になるだろう。
 これでは米・イスラエルとパレスチナの間の矛盾を、パレスチナ内部の矛盾に転化し封じ込めるものであり、米・イスラエルの思うつぼである。国際世論の関心をPLO指導のあり方の問題にねじ曲げてしまうだろう。PLO指導部が今やるべきことは、イスラエルの暴力支配と侵略行為、その理不尽と不条理、「イスラエル・アパルトヘイト体制」の真実を全世界に訴えることであり、その領土拡張主義と占領支配を暴くことである。言い訳を取り繕い、受け身にならねばならないのは、イスラエルとアメリカの側、植民地主義者、抑圧者、侵略者の側、加害者の側であって、パレスチナの側、被抑圧者、被占領者、被害者の側ではない。これこそ本末転倒である。

(2) パレスチナ自治政府を敵と位置づけた今回のシャロン政権の対応は、90年代を通じて追求してきた「中東和平」を自らかなぐり捨てることを意味する。シャロンの対応をそのままエスカレートすれば、それは、1967年以降の直接の「軍事占領支配」へ逆戻りすることを意味する。だが、まさにその直接の軍事占領支配を続けていくことができなくなったことの結果として、90年代の「和平プロセス」が追求されたのである。
 1987年に始まる最初のインティファーダによって、イスラエルは直接的な「軍事占領」支配の見直しを迫られた。当時、イスラエルには二つの選択肢しかないように見えた。一つは占領地域の併合、もう一つは独立国家の承認である。前者は、国際社会の猛反発が予想されるだけでなく、ユダヤ人とパレスチナ人がほぼ半々の人口比になることから、シオニズムにとって受け入れ難いものであった。後者は、イスラエルの安全保障にとっての脅威から、やはりイスラエル支配層にとって受け入れられないものであった。
 そのジレンマを解決するものが、南アで行われていた「擬制国家バンツースタン」の「アパルトヘイト体制」であった。90年代の「和平プロセス」でイスラエルが追求したことは、南ア以上によく整備されたこの「バンツースタン」体制の再版に他ならない。
 イスラエルの自己矛盾は、アラファトと自治政府を窮地に追いつめることで、自らの唯一の展望=「イスラエル・アパルトヘイト体制」を葬り去ることになるということに現れている。今回自治政府を攻撃したシャロン政権に何らかの展望があるわけではない。「自治政府をテロ支援団体とみなす」という閣議決定には、労働党の8人の閣僚が加わらず退席した。現在のところ労働党とペレスの離脱はなくなったように見えるが、連立政権は依然、崩壊の危機にある。その意味でも、アメリカの支援の有無が、やはり最後的にはシャロン政権の命運を握っている。

(3) アメリカは、「シャロンの戦争」にゴーサインを出し全面的な支持を表明したが、それは、自らの「ブッシュの戦争」を危うくする可能性を秘めている。なぜなら、アメリカに対する「テロ国際包囲網」は、「中東問題の解決へ向けてアメリカが努力する」ということを条件に協力しているアラブ諸国が、大きな役割を果たしているからである。
 そこでの問題は、アラブ諸国の政府・支配層が民衆の怒りと不満を抑えることができるかどうかということにある。すでに米の対アフガン戦争への対米支援、米批判の欠如により、親米アラブ諸国、湾岸王政諸国において、人民大衆の不満は鬱積している。
 これに畳みかけるようにアメリカが、「調停者」という表向きの姿勢をもかなぐり捨てて、公然とイスラエルの武力支配の側についたとなれば、何が起こるであろうか。アラブ諸国、湾岸王政諸国の政府・支配者たちは極めて厳しいジレンマと動揺に陥るだろう。

(4) アメリカは、「ブッシュの戦争」が危うくなれば「軌道修正」するかもしれない。その時、その「軌道修正」の度合いに応じて、唯一の支えが動揺する仕方に応じて、シャロン政権は窮地に陥るだろう。「軌道修正」しなければ、今度はアメリカの側が窮地に陥るだろう。いずれにしてもシャロンの戦争と暴走は、アメリカとイスラエルの長期にわたる同盟関係自体を根底から揺さぶる条件を拡大するものである。
 イスラエルとアメリカのそれぞれの自己矛盾と窮地がどう展開していくのか。これは中東情勢全体に、現在のアフガン戦争の帰趨とアメリカのイラクなどへの戦線拡大、つまりアメリカの軍事外交戦略全体に決定的な影響を与えるだろう。

(5) そしてまたアメリカとイスラエルの自己矛盾と窮地の展開如何は、中東における、また全世界における、平和反戦勢力が活性化し政治的進出を遂げる新しいチャンスになるかもしれない。
 今こそ、「シャロンの暴走をとめろ」、「パレスチナ人民連帯」「ニュー・インティファーダ支持」を掲げて、全世界の反戦平和運動の力を結集すべきときである。



 copyright © 2001 アメリカの「報復戦争」と日本の参戦に反対する署名運動 事務局