イギリスからのレポート2


新たな情報を頂きありがとうございました。かなり前に英国からUMRCへの送金方法についてお問い合わせした者です。
先日UMRCのDr.Durakovicが渡英された際に、小切手にて支援金を募金させて頂きました。 とりあえず、ご連絡致します。

先日、興味深い2つのドキュメンタリーがBBCから放送されていました。イラク侵攻時、米英軍司令部に設置されたプレスセンターにおける世界各国のジャーナリスト達の攻防をまとめた物で、”なぜ今頃?”と思ったのですが、この疑問はすぐにも吹き飛びました。

あのイラク侵攻が始まってから、”毎日のように素晴らしい成果を挙げた。” ”自軍は快進撃を続けている”、”数日後にもバグダッドに到達するだろう”などと嘘八百のようにも聞こえるコメントをBBCニュースでも次から次へと放送し続けていましたが、これには裏があったのだ。というものでした。

あの戦争は情報戦だという事が語られていましたが、やはりかなりの情報操作が行われていたようです。

プレスセンターではあの時、軍部側が勝手に設置した、質問してはいけない項目と言う物があり、プレスセンターのホワイトボードには、いくつもの聞いてはいけない事柄が挙げられていました。このような物を設置する理由として、軍部の作戦遂行の妨げになるため、軍がそこにあげる項目については、質問してはいけないし、たとえ質問しても答えない。 と言うもので、この項目の中には、”DU弾”、”誤爆”、”ミサイルの性能・正確性”、”石油利権”、”捕虜の扱い”等など、数十件にも及んでおり、さらにあきれた事には、侵攻開始から数日たった後には、”バスラ”、”Friendly fire(味方への誤砲撃)”、”イラン・シリア・バクダッドへの遊撃弾着弾”などの項目が追加されていたのです。

このような愚行に対し、怒りをあらわにした豪州のジャーナリストの、”大枚を叩いて砂漠に巨大なプレスセンターを作っているにもかかわらず、このような記者会見を行う意味があるとは思えないのだがどうお考えか?”との質問に、”われわれは他にやる事がたくさんあって、記者会見など行いたくないのに、君達が勝手にやって来たから、出来る限りの情報を提供しているのだ。 そのように言われるなら、すぐにでも止めた方良いだろう。”などと返答しているやり取りをも見る事ができ、あの時、全てのメディアは、ほとんど軍部の広告塔のようだったのには、このような背景があった事を伝えていました。

さらに、この侵攻で、2回ほどバグダッドの市場へミサイルが着弾し、多数の市民が犠牲になった事件について、その時の米の対応は、最初に誤爆であったと発表し、謝罪をしておきながら、次の日には、イラク軍が故意に自国を爆撃した可能性があるなどと主張し始め、そのままこの件はうやむやにされてしまっているように記憶されている方もいらっしゃるかと思います。

このバグダッド着弾の際、BBCの現地特派員及び英紙インディペンデントの記者がその場に居合わせており、爆撃直後に取ったであろう画像付きのコメントも紹介されていた。 英紙インディペンデントの現地記者は、あの着弾後の報道でTVでも良く映し出されていた、崩壊されたビルの前で、爆弾の衝撃を掻い潜った直後であったのか、息を切らし、血相を変えて、”戦闘機の爆音が聞こえ、英・米軍機と見られる機体から何かが落下してくるのを見た直後、この爆発が起こった。 あの爆弾の落下軌道を見れば、どう見ても地上から発射されたイラクの物ではなく、爆撃機から投下された物だ!” と叫んでいました。 自分の命が爆撃に曝されたわけですから、作り話などでっち上げる時間も心の余裕もないでしょう。

恐らく、今回の侵攻で、政府からの圧力などから、極力軍部に協力せざるを得なかったメディアも、仲間のジャーナリストの多くが、米英軍の誤砲撃により死傷し、侵攻以前にUNESCOから詳しい地図付きで、世界遺産級の歴史的資料が収められている博物館を守るように、打診を受けていたにもかかわらず、貴重な展示物はイラク人のみならず、米兵によっても、盗難・破壊されつくし、大量殺戮兵器も、世界の脅威だとも言わしめたサダムフセインも見つけ出せず、攻撃の正当性も全く見出せないこの愚行の中で、軍部に小ばかにされたジャーナリスト達の無念が、このようなドキュメンタリーを放送させたのではないかと推測しています。

最後にイラク侵攻が始まったその時、BBCのジャーナリストが、ワシントンにてAEIに席を置く、リチャード・パール(この時点では、まだ国防政策諮問委員長は辞任していない)に対するインタビューで、”(国連の後ろ盾もなく、石油利権に対するみえみえの目的を持って行うにあたり、)現米政権の政策を操作する立場にあり、今回のイラク攻撃へ最終的に持ち込んだ、あなた方は、「ギャング」と何の違いもないのでは?”と言う問いに対し、まるで、シカゴのギャング王のように低く鼻で笑ったパールは、”イラクに存在する大量殺戮兵器は、ドイツのホロコーストのような物なのだ。石油などが目的ではない。 ましてや我々はギャングではない。” と、誰もが予測できそうな、お約束のような返答をしていた。 本物のギャングが、たとえ海を隔てた、自分の権力とはあまり関係のない英国の一般世間に対してであろうと、”私が国民の脅威を煽っているギャングだ。”等と言う訳がないのは当然かも知れません。

しかし、重要な事として、BBCは、あの侵略戦争時、上記のような状態にあったにせよ、軍部寄り、極端に言えば、軍部又は米英政府のプロパガンダ広告をそのまま垂れ流す報道を続けていました。 そのような報道形態をとりながら、ジャーナリストの一部は、現米政権の政策のほとんどを担っているシオニスト系組織(世間ではネオコンとの認識ですが)の真意について、”Double loyalty=(米国・イスラエルへの)2重の忠誠心”や、論理的でも人道的でもない世界規模の強奪・軍事一辺倒政策について、大いなる疑問をあのイラク侵攻が始まる前から持ち続けており、それについて真っ向から取り組もうとしていたと言う点です。

5月28日、全く見つからないイラクの大量殺戮兵器について、英ブレア首相が”あの時点では、兵器は確かにあったのだ。 戦争が始まる直前にイラク当局が破棄したのだ。” 等と言う言い訳を発した事がニュースになっている。これを受けて、イラク侵攻開始時、侵攻の決議に反対して議員を辞職したロビンクック英元外相は、英TV局チャンネル4のインタビューで、”今回の戦争について、正当性が全く証明されていない。 これは、誤った情報で国家を欺くと言う犯罪を犯しているとも考えられる。 政府の犯罪として、詳しい調査をする必要がある。”と、述べており、翌日には、その他現職英国会議員の中からも、同様な声が上がって来ています。

また、最近のBBCニュースによれば、アフガニスタン諸地域の住民で湾岸戦争症候群患者の尿検体を、英研究所にて検査した所、『99年度実施の、前湾岸戦争従軍兵士から得られた結果に比べ100〜400倍という、異常に高いウラニウム同位体を検出』したとあります。
http://news.bbc.co.uk/1/hi/sci/tech/3050317.stm

米当局は、前回の湾岸戦争も、今回のイラク侵攻でも、そして、このアフガニスタンでも、劣化ウラン弾は使用していないと言い張っているだけでなく、その前に、DUの人体への影響その物を否定し、DUの放射能は十分に低レベルであるから、全く安全であり、このDUについては、核兵器の範疇には入らないと主張し続けている事は、皆さんもご承知の通りでしょう。

今回のイラク侵攻に先立ち、英ブレア首相は、"湾岸地域の子供達には、異常な程、白血病や小児癌の発症率が高く、このようなかわいそうな子供達は、満足にしかるべき治療を受ける事すらできていない。 これを改善するためにもイラク攻撃は必要だ。"との主張を述べていました。

これは、前回の湾岸戦争時を含め12年にわたり、劣化ウラン弾を使用した無数の爆撃による米英からの”賜物”ではないか? という疑問も出てくる上、この長きに渡って実施された経済制裁によって満足な医薬品も行き渡らなかったのではないか! と言う主張は、いつも掻き消された状態になっています。

さらに、イラク侵攻以前、英国防相は、米軍の主張と同調し、劣化ウランは人の健康に対する影響は全くないと主張していたのに反し、イラク侵攻の攻撃がいざ終結する時点では、現地派兵から帰還した英兵に対し、腎臓・肺癌を誘発するだけの劣化ウラン弾による被爆が起こっているかどうか、英国防省が被爆量検査を実施する事を4月25日に明らかにしている。 
http://www.guardian.co.uk/uk_news/story/0,3604,943171,00.html

私は上記の英紙ガーディアンでこの事実を知りましたが、他紙でも同様の報道があったようです。 今回の侵攻に際しても、前回同様、米政府は劣化ウラン弾に対する危険性は全くないと言い張っている事と比較すれば、ほんの僅かではあるが、進歩が見られたと言う事になるのでしょうか。

また、同記事では、戦場にて兵士がきちんとガスマスクを着用していれば、劣化ウランの吸引・摂取を防ぐ事ができるので、発ガンの危険性は低く抑える事が出来るだろうとの事。 確か、イラク侵攻開始時に英軍の準備状態を取材をしていたBBCなどのTVニュースでは、”フセインが生物・化学兵器を使用する可能性があるため、私達(英国)の兵士達は、ガスマスクを装着して戦う事になります。”等と言ったような解説がなされていたような・・・??? 別のこんな理由があったのかと、考えされられました。

さらに、この記事の中で、英劣化ウラン研究会の会長は、前回の湾岸戦争では、推定約340トンのDUが使用されているとし、今回のイラク侵攻では、3週間で1,000〜2,000トンのDUが使用されている可能性がある。とその算出推定量を指摘している。 ”我々のために戦った英兵が、どれだけ被爆の危険性を孕んでいるのか詳細を把握し、今後、人体への危険性を解明してゆくためにも、米英軍当局は、今回、何処にどのくらいのDUを使用したのか明らかにする必要がある。”とも訴えています。 

追加情報として、今までこちらで得られたわかる範囲の事柄を私なりにまとめてご連絡致しました。

草々

(2003.5/31 英国在住 T.C)


イギリスからのレポート1 (3/21 英 T.C)