アフガニスタンの民衆に破滅的な被害を与える アメリカの「報復戦争」と国連制裁 |
連日、激しい空爆が加えられている。病院、ホテル、商店街が破壊され、多数の民間人の死傷者が出ている。病院に運び込まれる血まみれの男性や、抱きかかえられた老婆、泣き叫ぶ子供達、粉々に崩れた民家が映し出されている。AIPによれば6日間の空爆で少なくとも300人もの一般市民が犠牲となっている。
しかし、米の仕掛けた戦争と空爆の犠牲者は、これら直接の死傷者だけにとどまらない。この数年、特に今年1月の米主導による国連の制裁で、既に数十万とも百万とも言われるアフガニスタンの民衆が飢餓状態に追いやられ死亡している。今回のアフガニスタン封じ込め、軍事的包囲網と空爆は、さらに破滅的な影響を与えようとしている。
GDP世界第一位の経済・軍事超大国による、一人あたりGDP世界第189位の最貧国への爆撃。この事実からだけでもこの戦争の不当性は明らかである。
■ 無差別殺戮をやめよ。アフガニスタンから手を引け
10月10日夜から11日未明にかけ東部の町ジャララバードの隣村カラム村への無差別爆撃が加えられ、民家約60戸が破壊され、村は壊滅し、160人が死亡した。ジャララバード近郊では攻撃から逃れるため既に6割以上の村民が町を離れたとも言われ、残っているのは「お金も行く宛もない極貧の人達」である。殺された人達は無抵抗の女性、子ども、老人である。ラムズフェルド国防長官は、これに対して「市民が命を落とすこともある」と事も無げに言い放っている。
アメリカはすでに空爆の2日目、国連事務所に誤爆し、4名もの国連職員を殺した。この職員はいずれも現地採用のアフガニスタン人である。もし仮にこれが米国人であったなら、白人であったなら、対応は今のような空々しいものであっただろうか。ブッシュは、アフガン人は餓死するのも爆死するのもどうせ死ぬなら一緒と考えているのではないのか。アフガニスタン人の命をどこまで軽く考えているのか。
■ 前代未聞の「戦術」−−爆弾と食糧の同時投下
米は爆弾と一緒に援助食糧を落とすという前代未聞の「珍戦術」を繰り広げている。全くの「茶番」である。だが、食糧投下のための制空権確保が空爆開始の前後に口実として流布されたのは事実である。「茶番」とは言え、「人道援助」や「難民救援」が大量殺戮の口実として使われることは許しがたいことだ。
@3万7500食。380万人あるいは550万人が厳寒の冬を乗り切るための物資の輸送を爆撃によって遮断し、破壊しておいて、わずか3万数千人が一日生き延びるだけの食糧を投下することのどこが「寛容」なのか。
A食糧投下場所が地雷原に近く、食糧を取りに行った子供たちが地雷を踏む危険性が高いと、現地NGOは警告している。
Bイチゴジャム、ピーナッツバター、レトルトパック入りの豆のビネグレットソース、乾パン等々。これはいったい何なのか。いや、そう言う方がアメリカナイズされた食品への偏見なのか。しかもご丁寧に星条旗入り。なんとも不気味と言うしかない。
C最も援助を必要とする老人や子供は取りにいけず、結局、軍や投機者によって横流しされたり、売り飛ばされたりするという批判もあった。
Dおまけに、BBCニュースを聞かせるために小型ラジオが入っているとか。盗聴器まで入っているとの説まで流れている。
−−しかし、現在のところ「効果」は確認されていないらしい。つまり、そのようなレベルで問題にできるような「戦術」ではないのだ。
アフガニスタン支援をするNGO職員たちは厳しく非難している。国境なき医師団は「軍事作戦と人道援助が同一機関により実行されることによって、既に相当に複雑な状況の中で進められている人道援助活動の危険性が増し、活動の可能性がせばめられてしまうのです」と、苦しい状況の下で進めている医療援助活動を台無しにしてしまうものと厳しく批判している。
■ 右手で爆撃、左手で食糧援助−−これはここ数年のアメリカの対アフガニスタン政策の本質を表している。
しかし、この右手で爆撃、左手で食糧援助という前代未聞の珍戦略の意義は、ここ数年のアメリカの対アフガニスタン政策の本質を見事に表現しているという点にある。
アメリカはこのようにして、アフガニスタンの生産を破壊し、数百万もの人々を飢餓状態に追いやり、難民、避難民へと駆り立てていったのである。
相次ぐ国連制裁
米は当初、「イラン封じ込め」と、中央アジア地域の資源(米「ユノカル社」のパイプライン建設構想)の利害から、タリバンを支持した。しかし、この利権構想が破綻するや一転して、このタリバンの支配拡大をおそれるようになり、今度は「北部同盟」を支援することによって新たな内戦状態を作ろうとしてきた。
@米は、98年8月米大使館連続爆破事件に絡んで、99年7月に、ビンラディン引渡しを要求して独自の経済制裁を発動し、99年11月には、国連制裁で国際航空線を運行停止にし、在外資産凍結などを発動した。(第一次国連制裁)
Aさらに2000年12月国連制裁決議、翌1月追加制裁発動。これは、タリバンへの武器禁輸が柱であったが、一方で反タリバンへの武器援助は無制限に続けられた。一方的な性格と、飢餓状態の人民生活への影響から反対が強かったのを、米ロがごり押しした。これは、難民と餓死を決定的に深刻化させた。
Bさらに 今年6月にも第三次制裁が決議されている。
99年の制裁が、大干ばつの影響が出始めたアフガニスタンに対して、その干ばつによる物資不足に拍車をかけたとすれば、今年の1月の国連制裁は、2年にもおよぶ干ばつにあえぐアフガン人民に、決定的な大打撃を与えた。それを契機に、インフレ率は20%に跳ね上がり、市民生活を直撃した。国連がアフガニスタンを見捨てたという政治的な意味が市場経済をズタズタにした。通貨アフガニは暴落した。多くの地方では、収穫された作物は春の到来を待たずに自家消費されてしまい、種子の備蓄も尽きた。牧畜業資本(主として羊)の50%から85%にも被害(死滅)が及んだ。
首都カブールは干ばつを逃れてきた農民で「一大避難民キャンプ」になっている。国連制裁でNGOが撤退し、無医地区になっている。
メデゥサン・デュ・モンド(医療NGO)の報告では、WFPの援助物資はヘラートに避難する子供達55000人中9600人にしか行き渡らず、マスラクキャンプでは子供の死亡率は2倍に跳ね上がっている。また、5歳未満の乳幼児死亡率は20%、25%という信じられない数字が報告されている。結核、はしか、骨髄炎、呼吸器疾患、皮膚病、
マラリア、肝炎、重度の下痢等が蔓延している。
特に国の中部の人達は、麻痺を起こす有毒な草を食べている。また、北部の州にいる多くの避難民達は、イナゴと動物が食べるマグサを混ぜたものを食べている。子供達は土を食べている。
飢餓・貧困の拡大と国連援助
このような3次にわたる国連制裁の一方で、国連は次々と食料援助を決め拡大していった。国連緊急援助調整官室は2000年7月、アフガニスタン特別対策チームを設置し、世界食糧計画(WFP)は10月、アフガンに十分な食糧支援がなければ「最悪の場合、50万―100万人が餓死する」との警告を発した。国連食料農業機関(FAO)は2001年6月に出した報告書の中で大規模な飢餓の到来を予想している。国連はテロ事件の直前、9/6にもアフガニスタンへの緊急経済援助を各国に要請した。
2000年10月の飢餓予測と2000年12月の国連制裁、2001年6月のFAO報告と6月の第三次国連制裁決議、そして2001年9/6の緊急援助要請と、9/11テロ後の対アフガニスタン「宣戦布告」。
右手に制裁、左手に援助
ここに見られるのは、「右手に制裁、左手に援助」という国連を利用したアメリカの戦略である。アメリカは干ばつ・飢饉を利用してタリバン政権を追い込もうとした。すなわち、タリバン政権の安定・治安の回復のもとでの生産の持ち直し・自給の回復が、干ばつ・飢饉によって破綻するのを促進し、人民の生活が、タリバン政権の安定に依存するのではなく、国連援助へ依存し、国連なしでは生きていけない経済構造を作り出そうとしたのである。アメリカがどの程度これを確信して進めたのかは明らかではない。しかし、現在アフガニスタンの命綱を国連が握り、先進国の援助無しには立ちゆかないようになっていることがそのことを証明している。
国連は、一方では制裁によって生活基盤そのものを破壊しながら、他方では食糧・医薬品・衣服・毛布などの「人道援助」を継続し、農業をやめ、「援助」を求めて都市や国境へと「難民」「国内避難民」として流出する構造を作り出したのである。
ある国連職員は10/8のアメリカの空爆と食糧投下を見て叫んだ、「こんな事をすれば、食糧援助が戦略物資だと思われてしまう」
国連制裁へのアフガニスタン人民の怒り
「制裁は、一般のアフガン人を苦しめる意図のものではない。」といくら弁解しようとも、当のアフガニスタンの人々がその本質を見抜いている。以下は今年一月国連制裁実施直後の人々の声である。
報道によれば、ジャララバードの人々は、「国連制裁による不安感と孤立感の結果、ほとんどの物の値段が上がり、もともと弱含みの通貨アフガニは暴落を続けている。怒りとやりきれなさでいっぱいだ」と、口をそろえる。
「タジ・ビビさんは、県都ジャララバードの、悪臭がただよう病院の外にしゃがみこんでいたが、国連制裁の話になると、はじかれたように立ち上がった。全身を覆うブルカ(女性の伝統的衣服。黒くて長いショール)の下から、こぶしを突き出す。突然の荒々しい腕の動きで5歳になる自分の娘を転ばせてしまう、が、助け起こそうともせず、彼女は叫んだ:「いったい国連は何をするつもりなんですか! 何のためにわたしたちを罰し、苦しめるのか。もうお財布は、からっぽです。おなかも、からっぽ。今朝だって、この子に、いちばん安いパンのたったひときれだって、食べさせてやれなかったんです。これが正義なんですか? これは虐待です」
「干ばつで助けてほしいというとき、助けの代わりに罰をくれなさる。あたしの村じゃ、家畜もみんな死んじまい、川もひあがっちまって、どこにも水がない。どこにも、だよ」トル・ジャンさんは言う。この日は病気の息子を病院に連れてきたのだそうだ。「一滴でも水を見つけられたら、幸運者だよ」
(以上AP電2001/1/19 "Afghanistan's Poorest Say UN sanctions Hurting Them Most"の抜粋。HP「妖精現実 フェアリアル」の翻訳より引用)
国連主導の新政権構想はアメリカの目指してきた道
タリバン政権の崩壊を見越して、国連が新政権樹立の主導権をとるという動きが出ている。これこそアメリカが「制裁と援助」によって目指してきた道である。テロは決定的な意味を持ったとはいえ、米の対アフガニスタン政策を加速するひとつのきっかけにすぎなかったのではないだろうか。
■ 現在の時期の空爆、対アフガン戦争は絶対に許されない。数十万人の死者=餓死者、凍死者が出るのは不可避。
現在の時期のアメリカの空爆、対アフガニスタン侵略戦争は以下の二つの意味からだけでも決定的に誤りである。破滅的な結果をもたらす。
第一に、10/11月から雨期に入り、5月頃に収穫を目指すという農業サイクルの端緒の時期、秋蒔きの種蒔きの時期に全土を攻撃目標にする事の意味を問題にしなければならない。直接に国土の15%の農地をどれだけ破壊するかは別にして、このことの否定的な影響は計り知れない。(ナンとその原料の小麦粉を主食とするアフガニスタンでは、穀物生産の約8割が小麦を中心とする麦類であり、その小麦は、秋から冬にかけて作付けされる)。すでに戦争準備と数日の空爆によって、多くの農民が畑を捨て畜産を手放し種子を食糧にし住み慣れた土地を離れている。このままさらに攻撃が続き本格的な戦争状態になれば、今回の大干ばつが1999年の5月に始まったように、小麦の収穫期に当たる2002年の5月には、大不作、大飢饉が未曾有の規模で襲うことになるだろう。
第二に、国連援助の政治的意義はここではおくとして、国連と関連団体の食料援助は、雪で交通が寸断される前の10月中、遅くとも11月半ばには各地の倉庫に運び込み、備蓄しなければならない。陸路でトラックによる大規模輸送以外に手段はない。300万人、500万人が冬の寒さに耐え、飢えをしのぐに足るだけの大量の物資が必要である。それよりも、すでにWFPの備蓄は2〜3週間分しかなく、時間はない。この冬だけで、数十万人の餓死者、凍死者がでるとも予想されている。WFPは食糧搬入ができなければ北部だけでも160万人が飢餓状態に陥るとしている。北部、西部では特に干ばつの被害が大きく、北東部バダクシャンでは住民の8割が食糧支援を受けている。
アメリカは空爆という名の兵糧責めで、何十万人ものアフガニスタン人を殺そうとしている。
自衛隊の「難民支援」ではなく、飢餓、餓死、難民化の防止が先決だ
750万人の飢餓、100万人の餓死
UNHCR(国連高等弁務官事務所)は、戦争によって750万人が飢餓に陥り、100万人が餓死すると予測している。また、現在の難民は370万人。国内避難民は95万6000人。しかし、「報復攻撃」準備によって国内避難民はわずか数週間で110万人にふくれあがり、攻撃以降加速度的に増えている。国内の550万人が国連あるいはNGOのなんらかの支援を受けている。WFPによれば、国内で380万人がWFPの援助に依存している。
しかし、ここで重要なのは、WFP、UNCHRなどは、それぞれ現在の援助活動と力能、援助のキャパシティをもとに飢餓人口、餓死人口をはじき出しているという事である。WFPの食糧倉庫は国内に6カ所、備蓄は3週間とも、一週間を切ったとも言われ、どのような事態が起こるのか予想することができない。550万人の内の380万人、さらに深刻な飢えに直面する100万人へと絞り込んだ援助がなされる。まずはその100万人が、次には380万人が、550万人が、あらたに危機に陥る200万人が、また国外難民の370万人が次々と危機に陥ることになる。
おそらく避難民、難民もふくめれば、飢餓人口は干ばつの影響を受けたとされる1200万人にも達するのではないか。
ペシャワール会の中村哲医師はカブールに5つの診療所をもつ実感から、年間100万人を超える患者の背後には診療にくることさえできない何倍もの飢餓、栄養失調、疾病、伝染病等々があり、現在、カブールにいる100万―150万名のうち慢性の飢餓状態の者が約30〜40%、餓死線上の者が10%前後と推測している。これを単純にアフガニスタン全土に拡大すれば、飢餓人口は600〜1000万人、餓死者、凍死者は100万人〜200万人を数えることになる。中村医師は、この冬だけで間違いなく数十万人が餓死、凍死すると警告している。
彼は、10/13の国会証言でも「難民を出さないことが大事」「自衛隊の派遣は有害無益だ」と厳しく批判した。難民を出さないためには、空爆の中止、米軍の撤退、国連制裁の解除が出発点である。
「難民支援!難民支援!」難民があふれるのを望んでいるのか
難民を意図的に大々的に宣伝し、あたかも難民が生まれるのを待ち、難民=かわいそうな人=食料援助命綱=国連救世主という図式を描こうとしている。日本政府もこれに飛びついている。ここではアフガニスタンの圧倒的多数が国内にいる貧しい農民、遊牧民、商人であるという事実を黙殺している。
前述の中村医師によれば、意外にもカブールでは人々は爆撃に堪え忍び、日常生活を続けているという。金銭的余力や親戚縁者のあるものはすでにカブールを逃げ出し、残っているものは、とどまる以外に道のない極貧の人たちである。それでも避難せざるをえない人たちは、国境ではなく険しい山岳地帯を目指している。
また、その背景には「難民キャンプ」の過酷な現実がある。たとえばパキスタンは、ジャロザイキャンプについて、灼熱の大地に日よけのテントもない、飲み水もない、人がひしめき合い伝染病が蔓延するという過酷な現実を、「援助プロパガンダのショールーム」として利用し放置しているといわれる。("The Tront Star" 2001.4.9)その灼熱地獄がまもなく酷寒地獄に変わる。このような事情が、「どうせ死ぬならカブールで」という厭世観、諦観をも生み出している。
医療NGOや、灌漑、井戸掘りなど、アフガニスタン人民の病気治療や農業自立のための活動を地道に進めているボランティアからは、「爆弾と食糧の同時投下」は論外として、食糧や衣料などの物資をくれてやるだけの国連の援助活動に大きな疑問がだされている。
タリバン政権下での治安・平和の回復と生産活動の復興
そして何よりも絶対にマスコミが報道しないのは、タリバン政権のもとで秩序が回復し、市民生活が安定し、農業生産や畜産が向上したという事実である。(グラフ参照)これについて、今年6月に出されたFAO報告は、「アフガニスタン経済の他の部門と同様、家畜部門もまた、長期にわたって続いた戦争と内戦によって荒廃した。しかしながら、この部門は全く活力を取り戻してきた。国の大部分での目に見える平和の回復によって、家畜部門の再構築が顕著な前進を示した」と95年から99年までの増産を生き生きと描いている。
■ 干ばつの原因としての地球温暖化と気候変動
伝えられる干ばつのすさまじい映像をみれば、干ばつをもたらした原因として地球温暖化の問題を意識せずにはいられない。この3年来の干ばつは、ユーラシア大陸全体をおそった未曾有の干ばつの一環であり、特に2000年春からパキスタン西部、アフガニスタン全土、イラン・イラク北部、インド北部、中央アジア諸国、中国西部、北朝鮮、と広範囲にわたって生じた。特に中国は深刻である。地球規模からみれば、アフガニスタンは巨大な砂漠の中にすっぽりと収まってしまう。
アフガニスタンの干ばつは、渇水と洪水が結合して農業を破壊した典型的な事例である。冬季に大量の雪が降り山岳地帯につもり、その水が春先に徐々に解けて農地へ流れ出すという水の循環サイクルが気候変動によって破壊され、冬に雪が降らず雪解け水に恵まれない一方、春先の集中豪雨で栄養豊富な土壌や種子が流されるという悲劇がみまった。
地球温暖化が近い将来において影響を及ぼすというのではなくて、今現在干ばつや洪水と言う形で猛威を振るい、6000万人もの人々を危機にさらし、数百万人の人々の命を奪っているという現実をアフガニスタンの問題は明るみに出した。帝国主義の経済活動の犠牲が、最も貧しい国に集中的に現れたということである。
地球温暖化との関係では「京都議定書」が注目されるが、干ばつとの関係で重要なのは94年に締結された「砂漠化対処条約」である。これは「気候変動による砂漠化」を定義し、対処すべき事を定めている。しかし、2000年5月現在、締約国は165カ国に上るが、主要国では米は敵対し、いまだに参加していない。この点でもアメリカは環境破壊の元凶である。アメリカはアフガニスタンの干ばつに対して「無関係」を装うことはできないはずである。
「深刻な干ばつ又は砂漠化に直面する国(特にアフリカの国)において砂漠化に対処するための国際連合条約」(United Nations Convention to Combat Desertification in Those Countries Experiencing Serious Drought and/or Desertification,Particularly in Africa)は、深刻な干ばつ又は砂漠化に直面する国(特にアフリカの国)が砂漠化に対処するために国家行動計画を作成し及び実施すること、また、そのような取組を先進締約国、国際機関等が支援すること等について規定した条約で、1994年に締結された。
IPCCは1992年、「気候変動が農業に対して及ぼす最大の危険性は、干ばつであることが再確認されている」とし、その破壊的な影響を公式に認めた。1987年と88年の干ばつのため米国とインドの収穫量が減少し、1990年初頭、世界の穀物準備量はわずか60日分に落ち込んだ。また、アフリカ南部に広がり続ける干ばつは、93年、「記憶に残る最悪の干ばつ」と宣言され、同年、ブラジルでは4年越しの干ばつのなかで、何百人もの飢えた農民が食料品店を襲撃。オーストラリア北東部では今世紀最悪の干ばつが報告された。このような流れの中で、「条約」は締結された。
UNCODは、すでに1977年、国連砂漠化防止会議で砂漠化の定義について、「人間活動を主要因とする、乾燥、半乾燥、半湿潤地域における土地の生産力の減退ないし破壊」としたが、UNCCDは1994年のこの「砂漠化対処条約」で、「乾燥、半乾燥、乾燥半湿潤地域における様々な要素(気候変動および人間の活動を含む)に起因する土地荒廃」と改めた。UNCCDは人間活動に並んで、気候変動を原因に加え、またUNCCDでは「土地荒廃」と明白に定義をあたえた。原因を過遊牧や農地の過酷な使用という主として現地農民の活動から、地球温暖化をはじめとする気候変動としたのである。
■ 全ての責任はアメリカと帝国主義にある。
干ばつは自然災害で仕方がないが、制裁はよくないとか、武力行使はよくないが、国連による政権のすげ替えは仕方がないとか、制裁はいいが空爆はいけないと言うようなことは絶対に言えない。アフガニスタンの惨状の責任は全て基本的にアメリカと帝国主義が負わなければならない。イギリスも日本も同罪である。
−−以下の全ての点でアメリカと帝国主義の責任を追及する必要がある。
@米の武力攻撃によって、アフガニスタン人民に多大な犠牲が出る。
A武力攻撃と「内戦」の結合。人的被害だけではない。これ自身が国と経済を破壊する。
Bすでに戦争準備と数日間の空爆で、大規模な飢餓、餓死が予測されている。
Cここ数年、そしてここ半年の国連の経済制裁で干ばつの危機を加速した。
D干ばつは地球温暖化と気候変動の結果だ。アメリカと帝国主義の生産活動の結果だ。(2001.10.13.N)
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